「新月伐採」が流行っているようだ。
冬の下弦の月から新月までの間に伐採した木は、虫がつかず腐りにくい、木が反ったりしない、火事にも強い……といいことばかり並ぶ話である。
神奈川県でも秦野市森林組合が始めたという記事が、神奈川新聞の一面に載っている。ヒノキを冬の新月期に伐採して、葉がらしした製品を売り出したそうだ。
静岡の天竜で始めたのは知っていたが、そんなに広がっているのかと試みにググってみたら、出るわ出るわ、ものすごい数。かなりの地域で「新月伐採」に取り組むグループが誕生しているらしい。
ところが、開けど開けど、みんな好意的なものばかりで、懐疑的に記していたのは『だれが日本の「森」を殺すのか&田舎で暮らす!』プログ、つまりここだけだった(^o^)。(2005年6月28日)
こりゃいかん、もう少し「懐疑的」なことを記さねばならん、と思った次第。
なお、別に私は「新月伐採」を敵視しているわけでもなければ、完全否定しているわけでもない。この手のブランド化が国産材を売るのに有効なら、それはそれでよしと思う。しかし、その根拠は、あやふやな「経験」に頼っていることも知っておくべきだ。
木の生長リズムに月の引力が関係あるという考え方なら、満月でも同じはず。それに冬は、木の生命活動がほとんどストップしている……。一世を風靡した人間のバイオリズムも、最近では否定されていたのではなかったかな。
なお私は、新月伐採は含水率を低下させるといったデータ自体が、あやふやすぎて信頼してもよいのか疑問を持っている。腐りにくい、虫がつかないというのも、どれほど客観的なデータだろうか。
なお「新月伐採」とは、単に新月の時期に木を伐ることではないらしい。伐った木は谷側に倒すとか、葉枯らし乾燥するなど、ほかにも条件があるとか。
谷側に木を倒すのは理解に苦しむが、葉枯らし乾燥は有効である。あきらかに含水率は下がる。梢も切り落としていたら、木口から水分は抜けやすくなるかもしれない。これを一緒にするなら、何も新月の時期に伐採しなくてもいいのではないか。
それに虫がつかない、反らない、などの特徴は、心材(丸太の中心部に近い部分。細胞が死んで木質化が進んでいる)のものではないか、と思わせる。辺材(丸太の外側で生きて成長する部分)まで、そんな効果があるのかどうか。
新月伐採した木の製材は、板にしたのか柱にしたのかによっても違ってくる。その後の乾燥過程や使用状況によっても変化するだろう。
なお、「法隆寺にも応用された」と記した記事があるが、その証拠を示してほしい。だいたい法隆寺の木材は、どこから調達したかもわからないのに、どうして伐採方法までわかるのか教えてほしい。
こうしたオカルト染みた情報をばらまくから、信用できないのだ。
新集成材の付加価値が高いことをアピールするための日本向けの販売手段と考えています。
新月伐採が効果があるというのは経験に基づくものらしいのです。
つまり樹種が異なり、気候、地形が異なるのに、その明確でない経験を国内に適用することは無意味なことです。
新月伐採と称せられる事業を行おうとしているのは、認証制度などのように費用がかからず、新たな努力も必要なく、取り組みやすいことであると推測できます。
ただし、「新月伐採」の名称が商標登録などをされていると、事業が軌道に乗った段階で名称の使用禁止を言ってくるかも知れません。
何の技術的な裏付けもなく名称だけで販売しようとする危険性があります。
よい商品を地道に売り続けることが将来の信用になりよい結果をもたらします。
一応、“本当の”「新月伐採」は、トレーサビリティを重要視していて、「葉枯らし乾燥」もしていること、伐採は基本的に冬であること(夏でもよいと言っているところもある)などを条件にしているようです。
でも、決して木材の品質を保証するものではない。伐った日を定めるだけです。ようはイメージ戦略でしょうね。伐採という負のイメージを、新月という神秘的な言葉でごまかしたものという意見もある(^o^)。
こうした意見を、もっと表に出して、消費者に考えてもらわないと危険です。
森林施業研究会ニュ-ズ・レター No.30 2005.11.25
http://www.affrc.go.jp:8001/segyo/news/news0511/news0511.html
ドイツトウヒは現在日本に大量輸入され利用されているが、材質及び腐朽の点で心配だとの声が聞かれた。渡邊顧問から「ドイツトウヒで家を造った人が10年以内に後悔して、スギやヒノキで家を建て直そうと思う時代になれば、国産材が見直される。変な材料を使ったことに対する大きな反省をしないと、本当に国産材が戦える時代は来ないのでは?」
森林の見える木材ガイド|樹種詳細 ドイツトウヒ
http://www.fairwood.jp/woodguide/wood/europe/whitewood.html
発表者欄には博士号を持ち、著名な外国の研究所で長年研究してきた経歴が書いてあった。
しかしその内容は、単に同じ場所から切り出した材木で、時期をずらし(新月とそれ以外)て、気の盆やお椀を作り、経時変化をみるという、現象論的分析。
確かにひび割れなど、新月伐採の方が少ない。
でももともと木材は同じ地域でも個体差が大きいのは良く知られている。優れていると結論付けるにはサンプル数が少ないし、実験条件も明らかにされていない。
僕としては、何故?理由が知りたかったのだ。
実験水準の取り方や、サンプル数に対する考え方、さらには強度因子に対する分析の甘さなど、研究者としての木材に対する研究態度を疑ってしまう内容で、ガッカリした。
もしこれが他の学会での発表だったら、発表者は袋叩きにあうであろうし、第一恥ずかしくて発表できないと思われる内容だった。
ひょっとするとこれが今の林業に対する研究レベルなのかもしれない。
本も読みましたが、木材伐採の基本的なことを押さえているという印象でした。
過去の文献で何かないかと調べていましたら、法隆寺の西岡棟梁のコメントが20年以上前のビーパルに載っていました。しかし、「木八竹六」の話で新月伐採は、竹のことで木には言及していませんでした。
私は、伐採に関してきちんとした手順や行程を確立する時期にきているような気がします。そこで、「材を傷めないように寒伐り、時間をかけた天然乾燥、材にあわせた製材」が大切であると私は結論付けています。
数も少なすぎる。まっとうなデータにしたければ各条件で100くらいは必要でしょう。そして条件も同一にしているかわからない。新月と満月の間には最低でも2週間あるし、伐採直後の含水率を測定しているのかも疑問。
ちなみに弁解しておくと、林学・木材学のレベルは、そんなに低くありません。かなり綿密な研究もされています。それが現場に活かされているかどうかは別として。
それにしても、海杉さんは、すでに実験をしているんですね。そして見事、外しましたか!(笑)。やはりこの精神が必要と思います。
ドイツトウヒ(ホワイトウッド)は、腐朽しやすいことは、それこそ実験で示されています。ただ、それも使い方次第で地面に接したり湿気が多くなければ、そんな簡単に腐るわけではない。私もツーバイフォー材で実験中ですが、森の中に5年置いても腐りませんね。
また西岡棟梁の竹に関するコメントを木にしてしまっては困りますね。それに西岡棟梁が法隆寺の近くに住んでいたことで、いつのまにか法隆寺が新月伐採の木で建てられたことにされたというわけですか。