レンタル屋さんで映画を借りて来ました。
「かもめ食堂」、「めがね」に続く荻上直子監督作品。
「トイレット」(2010年)
監督は日本人ですが、出演者にはカナダ人若手俳優を起用し、全編カナダロケ。セリフもすべて英語(日本語字幕)。登場する日本人は、もたいまさこさんただ一人という映画になっています。
何でトイレ?
何でエア・ギター?
何でロボットオタク?
何でスカート?
という映画(苦笑)
主人公の三兄妹は母親を亡くし、もたいまさこさん演じる英語の通じない祖母となしくずし的に共同生活を送るはめになります。
その中で一番しっかり者の次男のレイ(アレックス・ハウス)は、ちゃんと仕事を持ち、一応自分の世界も持っている社会人(オタクだけど)
そんな彼が、ひきこもりの兄に、生意気な妹、そしてよく知らない日本人の祖母と、いきなり共同生活を送ることになってしまい、毎日つまらない問題に振り回されることに。
「家族」なんてやっかいなだけ!
こんなことなら大好きなプラモデルを作っている方が何倍もマシだ!
そんな叫びが聞こえてきそう(笑)
でも、ストーリーが進むにつれ、観客にはわかってきます。兄も妹も、それぞれに問題を抱えていて、それでも自分の人生を切り開こうと必死でもがいているってことに。そして、大切なところで、兄妹のことを、家族のことを、ちゃんと愛しているということに…
そして中盤、最初はそんな家族をやっかいに感じていたしっかり者の次男に、皮肉な展開が待っています。
でも何でエア・ギター?(笑)
でも何でスカートなのさ?(笑)
美しいトロントの街並み(舞台設定はどこの国かわかりません)、テーブルを囲んで作るギョウザ、足踏みの旧型ミシン。
「センセー」と名付けられた猫、バス停のベンチに座る老婦人(サチ・パーカー)。
物語に展開の派手さはありませんが、空気感がとてもすっきりした映画。
三兄妹が祖母を呼ぶ、英語にまじって聞こえる「ばーちぁん」という言葉が新鮮でした(彼らはグランマとは呼ばずに、まるで名前のように「ばーちゃん」と呼ぶのです♪)
以前テレビのドキュメンタリーで、日本のトイレ(ウォシュレット)に感動し、故郷の東欧へ日本のトイレを苦労して持って帰った留学生を取り上げていましたが、この映画を見て思い出してしまいました。
実家に帰るとさっそく取り付け、家族が次々と試してみるのですが、その度に歓声が上がるのです!
そんなにスゴイの、日本のトイレ(笑)
私的には、ばーちゃんは実は英語がわかるのでは? と勘ぐってしまいました。
あと、次男の同僚でインド人の彼もよかった!
家族ってやっかいで、伝わらなかったり、変に伝わりすぎちゃったりしてホント面倒くさいけれど、それでもやっぱり家族は家族なんですよね。
最後に次男がトイレに入るシーンがよかったなぁ。
…ここだけ読むと変なふうに想像されちゃうかも知れませんが、ちゃんとお子さまも安心して見られる映画ですからね。
念のため☆
三上延さんの小説『ビブリオ古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫)には様々な本がキーワードとして登場するのですが、登場人物の中に”せどり”を生業とする笠井菊哉、通称「男爵」というキャラクターが登場します。
”せどり”というのは古書業界の用語で、掘り出し物を安く買い、それを高く売って差額を収入とする行為。
その「男爵」、笠井菊哉の登場する本として『ビブリオ古書堂』の中で紹介されている本が本屋さんにあったので、読んでみました。
梶山季之 著
『せどり男爵数奇譚』(ちくま文庫)
もともと1974年に出版された物を、2000年に再刊した本です。
古書業界の人々から「せどり男爵」と呼ばれている笠井菊哉。
彼が主人公に語るという形で展開する古書を巡る数々の出来事。
戦中、戦後の混乱期。
士族出身の古書マニアの老人に指南を受けたり、GHQ統治下でユダヤ人の富豪とシェークスピアの初版本を巡りし烈なかけ引きをしたり。
梶山季之さんの書くものだけあって、「ワ印」だとか艶本だとか、危ない話もたくさん出てきます。
中には本の表紙に人間の皮を使った「人皮本」の話まで(!)
江戸時代から家の家宝として伝わってきた和書の秘蔵本が、明治維新と続く大戦で思わぬ所から出て来たり、希少本が田舎の資産家の倉の中で忘れられていたり、未亡人により売りに出されたり、それを発掘し、手に入れる古書店関係者たちの手練手管が面白い♪
興味のない人にはゴミ同然の紙の束が、欲しい人には何億円というお金を払っても欲しいのだから、本を巡る世界は奥が深い!
『ビブリオ古書堂』と違って、年配のオジサンたちが活躍するので、ちょっとむさ苦しいところはありますが、これはこれでとっても面白かったです。
本の世界はまだまだ知らないことがいっぱいあります。
同じく『ビブリオ古書堂』に登場する小川清さんの『落穂拾い・聖アンデルセン』(新潮文庫)も読んでみたいなぁ~
こうやって広がっていくから読みたい本がどんどん増えてしまう…
小説はあまり読まないという人でも、”せどり”とか古本屋をあつかったマンガ、芳崎せいむさんの『金魚屋古書店』(小学館)なんかを読むと、その楽しさが少しはわかってもらえると思います。
こちらは古書は古書でもマンガの古書。
古本屋さんでずっと探していた本を見つけた時なんか、本当に小躍りしたいほど嬉しいですからね。
ずっと探している本がまだたくさんあるんです。
こんな本読んじゃうと、古本屋巡りがますますやめられなくなっちゃうなぁ。
やってしまった…
朝起きたらコタツがつけっぱなしでした。
昨日の夜からずっと?
あぁ、電気代が…
頑張ってきた節電が…
いや、やっぱり電気代がぁ~
いちシーズンに一度はやってしまうんですよね。
はぁ、洗濯する時にくつ下の片一方だけを忘れたりしない、そんなキチンとした人間になりたい。
最近読んだ本です。
有川浩さんの、
『ストーリー・セラー』(新潮社)
ちょっと前に出た本ですが、作家の女性とその夫で会社勤めの男性が登場します。
作者とダブるところも多々あって、有川さんが自分の夫に向けて書いたラブレター?
なんて思えてしまう♪
作家の女性が編集者と電話でやりあうシーンとかあって、すごい迫力!
ロマンチストなのに理屈っぽく、言葉を仕事としている彼女は理路整然と感情を吐き出します!
「あんたが悪いんだらか黙って私の怒りを受け止めなさい!」みたいな発言には、普段は男だからとか女だからという言い訳が嫌いな私も、思わず(女の人らしい)と思ってしまいました(苦笑)
ちなみに有川浩さんは女性です。
AパートとBパートに分かれているのですが、Aパートでは女性が不治の病におかされます。
親族との確執。
人気作家に対する嫌がらせ。
うつ病の発症。
それでも、一番の読者である夫のために書き続けたい。
私の小説を「面白い」といってくれたあの人のために…
彼女が最後まで書き綴った文章には、ジーンとくるものがありました。
実の父親が痴呆の祖母(父親にとっては実の母親)を放置し、汚いものにはさわろうとしない態度に、人間の弱さや卑怯さが垣間見れます。
主人公が自分の家族を評して「何も起こっていないときに普通に付き合ってる分には普通の善良な人たちだよ」と語るのが印象的。
人間って、”いざっ”て時にその真価が問われるんですよね。その時に、化けの皮もはがれてしまう…
有川さんの書く恋愛って、いつも読んでいてすごく照れくさいのですが、今回も恋愛パートはかなり恥ずかしく、強引で照れくさいことになっています☆
語りが一人称と三人称がごっちゃになっている感じなので読みにくかったりしますが、そこもきっと狙いなんでしょうね。
Bパートでは夫の方が病気になるパターン。
病気だからって急に優しくなった妻に、わざとケンカをふっかけるシーンが心に残りました。
自分の命があと少しだとわかったら…
愛する人がもうすぐ死んでしまうとわかったら…
人はどう接し、何を伝え、何を残すのか。
ラスト、すごく気になる作者と編集者のやりとりが収録されています。
作家が自分の一番プライベートな部分、内面や感情を切り売りして作品を書くというのは昔からずっとそうでしたが、このお話はどこまでが実話でどこまでがフィクションなの?
作者の「フフフ…」という含み笑いが聞こえてきそうなラストでした。
とうとう読んでしまった…
以前から目に付いていて、人気があるのも知っていたのですが、「古書店」「美人の女店主」「本にまつわる事件」という、いかにも本好きを狙ったような設定に、意地でも手を出すもんかと思っていました。
三上延 著
『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』(メディアワークス文庫)
舞台は鎌倉。
小さな通りに面した古ぼけた木造家屋。
大きな看板もなく、ひっそりとたたずむそのお店の名前は「ビブリア古書堂」
父親の跡を継ぎ、妹と二人でその店を営んでいるのが、色白でほっそりとした美人と形容される栞子(しおりこ)さんです。
普段は引っ込み思案で対人関係が苦手、しゃべるのもたどたどしく自信なさげな栞子さんが、本のこととなると途端に立て板に水が流れるがごとく雄弁に語りだし、その鋭い観察眼と、幅広い古書の知識、そしてそこから導き出される推理で、本にまつわる様々な事件を解決していきます。
…美人のくせに内気で恥ずかしがり屋、その上隠れ巨乳って、どれだけ文系草食男子の願望を実現してるんだ?
栞子さんみたな人、実際にいたらいくら本の知識があっても、他の職業じゃ絶対やっていけないって!
夢を見るにもほどがある!
…でも、そんなツッコミを入れながらも、これがついつい読んでしまう。
事件の内容や推理の仕方などは、多少乱暴なところがありますが、とにかく登場する本や、古書の知識、出版業界なんかの話が面白い♪
岩波書店の『夏目漱石全集』
太宰治の初版本『晩年』
サンリオSF文庫。
青木文庫の『論理学入門』
絶版本、廃刊本。
1冊100円の本から数百万もする希少本まで。
登場する本はどれも実在のものばかり。
私なんて思わず小川清の『落穂拾い・聖アンデルセン』(新潮文庫)という本が読みたくなって、古本屋で探してしまいましたもん。
極度のビブリオマニアで、空気を吸うように本を読む栞子さん。
入院しても、いつしか病室は本の山…
本好きも、ここまでいくと病気の一種なのかも知れません。
しかし、やっぱり読んでしまう…
いま、第2巻『ビブリア古書堂の事件手帖2―栞子さんと謎めく日常』を読んでいるところです。
あぁ、作者と出版社の思惑にまんまとのせられみたいでくやしい~
でも面白いんだよなぁ…☆
小さい頃の刷り込みってなかなか抜けないですね。
夜中に口笛を吹くと蛇が出るよってよく親に言われていたので、未だに何かのはずみで、夜中つい口笛が出てしまった時なんか、「まさか」と頭ではわかっていても体がビクッとしてしまいます。
田舎なのでヘビがしょっちゅう出るんですよ。
子供時代を過ごした家は山奥のオンボロ木造平屋建てだったので、天井をネズミが走るなんてしょっちゅう。
たまに寝ている時に天井が運動会みたいに騒がしくなる時があったのですが、私と妹が興味しんしんで目を輝かせている隣で「ヘビでも入りこんだんだろう」と両親は関心なさげに布団をかぶっていました。
家の周りにいたのがマムシ。
祖母がこれを素手で捕まえてよくマムシ焼酎を作っていました。
切り傷、虫刺されに効くとかいって、ガーゼにしめらせて傷口にあてるのですが、これが強烈な臭いがするんです。
タヌキやキツネもよく出たし、雪が降ればウサギの足跡がよく残っていました。
父親の山仕事について行くと、カモシカのかじったあとを教えてもらったり、イノシシの解体を見せてもらったり。
幼い頃から山はどこか近寄りがたく、たくさんの命がいる神聖な場所でした。
「ユイにとって、じぶんのママが本当はキツネだということは、それほど大きな問題ではなかった。」
富安陽子さんの「シノダ!」シリーズ。
その文庫本第1弾。
『チビ竜と魔法の実』(新潮文庫)
を読みました☆
現代のマンションに暮らす、ごく普通の小学校5年生、信田結(ユイ)。
小学校3年生の弟と、まだ3才の妹、そして両親の5人家族だが、ちょっと普通と違うのは、ママが本当はキツネだってこと。
でも、そんなことは全然気にならない。そんなことより大変なのは、いつも信田家に問題を持ち込む親戚の方!!
突然キツネの姿でソファーの上に現れる、時代劇が大好きな鬼丸おじいちゃん。
変身が得意なママの妹、スーちゃん。
そしてキツネ一族の問題児、ママのお兄さんの夜叉丸おじさん。
その他にも、不吉な予言を告げるのが趣味のおばさんがいたりして、信田家はいつもおかしな事件に巻き込まれます!
小学校低学年から読める内容で、カラスの森や、ヘビの宝物、不思議な木の実など、ワクワクする小道具も満載♪
シリーズはすでに6巻まで出ているみたいですが、大人が読んでも面白かったです!
キツネのママと、人間のパパの間に生まれた子供たちは、キツネ一族の不思議な力も受け継いでいて…
このお話は「信田妻」という伝説から生まれました。
歌舞伎や文楽の演目にもなっていますね。
その昔、人間と結婚したキツネが正体がバレて森に帰っていく。
その時生まれた男の子が、かの陰陽師、安倍晴明だといわれています。
ドタバタだけれど、明るく面白い。
続きも読んでみたくなりました☆
火曜日がサービスデイで、レンタル半額だったので借りて来ました。
荻上直子監督。
小林聡美主演。
もたいまさこ、市川実日子、加瀬亮、光石研出演。
「めがね」(2007年)
この映画、とっても感想が書きにくい(苦笑)
面白いとも言いづらいし、感動したとも言いづらい。
でも「いいなぁ~♪」と思える映画でした。
小林聡美演じる女性が、離島のひなびた宿に泊まって、のんびりしたり、ちょっとあせったり、食べたり飲んだり、たそがれたりする映画。
すごく個人的な感想を書くと、パラダイス映画。
天国ってこんなところかなぁ、みたいな☆
天国というと、雲の上で薄絹の衣を着てってイメージや、美男美女に囲まれてとか、それぞれのイメージってあると思うのですが、例えばディズニーランドのような天国だったら、何年かは楽しいと思うのですが、きっと飽きちゃうと思うんですよ。酒池肉林でも、それが毎日だとキツイ。人間が落ち着くことのできるのは、やっぱり慣れ親しんだ風景や感覚のはずだから、森や川や空は欲しいし、お腹が空いて、ご飯も食べたい(何万年もお腹が空かないなんてやっぱり嫌)
すると、よく考えてみると、天国って日常とそんなにかけ離れてちゃいけない気がするんです。
海に沈む夕日を眺めたり、みんなでバーベキュウをしたり、一人で考えたり、朝寝坊をしたり。
これから映画『めがね』をすごく勝手に解釈します。
もたいまさこ演じる謎の女性は神様。
いつやって来るのか、どこから来るのかは誰も知らないけれど、みんなが待ち望んでいる。
宿の主人は天使。
人間たちを天国に連れてくる役回りなんだけれど、門は狭く(看板がとっても小さい)、聖書や予言はどれもあいまいでわかりにくいので、普通の人はよく迷う(地図がとってもあいまい♪)
でも本人に悪気はなくて、「僕の書く地図はわかりにくいみたい。わかりやすく書いてるつもりなんだけどな」なんて言っている。
人間(小林聡美)はそこが天国とはわからずにとまどって、ニセモノの天国(新興宗教)にも行ってみるのだが(マリン・パレス♪)、そこではみんなで畑を耕したりしていて慌てて逃げ出す。
そこに助けに現れるのがやっぱり神様(もたいまさこ)
みんなやたらと、もたいまさこさんの自転車の後ろに乗りたがるしね(笑)
小林聡美が宿に戻る時、荷物を入れたスーツケースを置いて行くのも象徴的。
天国に持っていくものなんて体(精神)ひとつでいいんですよね。
「一度死んだら、二度と死なない」
ビールが飲めて、美味しい朝ご飯があって、自分の居場所があるって、ある意味天国だよなぁ~
私も神様の隣で台所仕事を手伝いたい。
この映画を見ている時、コタツに入ってもやしのヒゲを取りながらのんびり見ていたのですが、その時に「めがね」=「天国」という考えが浮かんできました。
本当はな~んにも考えずに見るのが一番の映画なんでしょうけどね。
いい時間を過ごせました☆