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本好き人の365日

小説『アントキノイノチ』

2011-11-19 18:52:00 | 日本人作家
映画も公開された、さだまさしさんの小説、

『アントキノイノチ』(幻冬舎文庫)

を読みました。

…ヤバイ、誰か涙とめて。

遺品整理業を行う会社を舞台に、人間の尊厳、命についての物語が描かれています。

さだまさしさんにはやられました。
彼の作品『解夏』も読みましたが、小説家顔負け。
こちらの心にグイグイ迫ってくる内容と文章で、この本もいっきに読んでしまいました。

題名については読んでのお楽しみとして(苦笑)、これから読まれる方、本を手に取ってみようと思われている方には、遺品整理の現場について、かなり具体的な描写がされているので、注意が必要です。
ご飯を食べた後に読むと気分を悪くする方がいるかも知れません。
それくらい壮絶なんです。しかし、それが命。それが本当の人間の姿。
どうか、その場面と向き合って読み進めて下さい!
この小説の良さは、最後まで読み切るとわかります。

「生きるって、とっても恥ずかしいことなんだよ」

生きていた人間が残した品々。それは生々しく、赤裸々な人間の生を浮かび上がらせる。しかし、どんな時も仏様の尊厳を守って遺品整理の仕事を行う登場人物たち!

彼らはいいます、俺たちの仕事は天国への引越し屋なんだと。

心に傷を負った主人公。
親友の悪意によって、心の壊れてしまった彼が、遺品整理業という仕事の中で、会社の先輩、遺品整理を依頼してくる遺族、そして故人が残した品々とふれ合ううちに、しだいに変化していきます。

心の中で彼を苦しめていた重い鎖がしだいに形を変えていく…
そして同時進行で描かれる彼の過去。
破綻の予感を感じながら、しだいに追い詰められていく主人公の様子には、読んでいて胸が痛みました。

自分を苦しめるものと向き合うのは勇気がいりますよね。
誰でも逃げてしまいたいと思うもの。
でも、心の中に閉じ込めてしまっても、前には進めない。
いつかは向いあわなくちゃ…

主人公とヒロインの女の子が、それぞれ自分の過去と向き合う、読んでいて(さださん、そこまでするの!?)と思うような場面があるのですが、二人の行動にはすごく教えられるものがありました。

私も自分の逃げていたものとちゃんと向き合わなきゃ、と思わず思ってしまったくらい。

家族を捨てて男と逃げた母親が、孤独に亡くなり、ずっと音信不通だった残してきた二人の娘宛てに書いた、出したくても出せなかった手紙というのが出てくるのですが、私はそこで一番泣きました。

家族とは会わなきゃダメですね。

無縁社会。
孤独死。
家族と暮らすことなく、誰にも看取られずに亡くなることが当たり前になってしまった現代。

この小説にはモデルとなった遺品整理業者の方々が本当にいらっしゃるそうです。
映画は小説とちょっと設定が違うようですが、見てみたいと思いました。

はぁ~、泣き疲れた。

主人公とヒロインの二人が叫ぶところが好きです。

「元気ですかーー!!」って♪


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