今回ご紹介する本は、アメリカの文豪、
マーク・トウェインの傑作。
『ハックルベリイ・フィンの冒険』です。
マーク・トウェイン(本名サミュエル・クレメンズ)といえば、日本では『トム・ソーヤの冒険』が有名ですね。
ペンキ塗りの仕事を、口八丁手八丁で子供達に押し付けるシーンは秀逸!
『トム・ソーヤの冒険』の最後でトムと共に大金を手に入れた浮浪児ハック・フィン。
自然児の彼がダグラス未亡人に引き取られ、様々な規律と窮屈な服に閉口しながら、”普通”の生活を送っているところから、物語は始まります。
時に抜け出して森で眠ることもあるけれど、未亡人とその妹ワトソン嬢の犠牲的精神により、学校にも何とか通うようになったハック・フィン。
そんなところに、飲んだくれのハックの父親が、息子が金持ちになったことを知って現われます。
まるで社会の矛盾と人間の赤裸々な真実を体現したかのようなこの父親。
未亡人の所から無理矢理さらわれ、棒で殴られる毎日に、ハックは独自の生活の知恵を駆使して、まんまと父親を出し抜くのですが、勉強は出来なくてもハックの生き抜くことにかけての才能は天才的☆
特にその口のうまさったらマーク・トウェインの筆の走ること走ること♪
こうして身を隠したハックと、逃げ出して来たワトソン嬢の所の黒人奴隷ジムが偶然再会し、ジムを自由州(奴隷制度を禁止した州)に送りとどけるための二人の旅が始まります。
ハックとジム。
このコンビがミシシッピー川を筏で下りながら出会うことになる様々な人々がとってもユニーク。
スウィフトの『ガリバー旅行記』にも似た、風刺の効いた人物描写がなされています。
難破船の沈み行く船上で、自分達の運命にも気ずかずに、分捕品を奪い合う盗賊達。
誰が始めたのかわからない理由で、何世代にも渡って争いを続ける二つの”家柄のよい”一族。
公爵と王様を名乗る下品な詐欺師達。
それぞれが、人間の持つ真実の姿(欲望や憎悪や権力欲)の代弁者として登場し、ハックやジムの”無知なる力”に挑んでくるのです。
その内容は作者が「大人の読み物」と考えていたのもうなずけるものですが、マーク・トウェインの人柄と性格故か、ちっとも堅苦しくなく、ユーモアと機知に富んでいて、子供でも楽しめる物語に仕上がっています。
かつてヘミングウェイは
「アメリカ近代文学の散文スタイルは、ハックルベリイ・フィンという一冊の書に源を発した」
とまでこの作品を激賞しました。
そこまで、アメリカ文学史に与えた影響は大きかったのでしょう。
後半には、再びトム・ソーヤが登場し、読者を圧倒する”悪戯”が巻き起こります。
トムこそは、「まったく男の子って!」
・・・と、思わず苦笑してしまう魅力を体現した少年。
圧倒されすぎて、大人の読者はついてこれるかな?
どうぞ、少年達の胸踊り、波乱に満ちた冒険物語を体験して下さい。
ただし、これがただの冒険譚でないことだけは、お約束しましょう☆
「冒険はどんなところにでも転がっている。」
マーク・トウェイン 著
村岡 花子 訳
新潮文庫
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