私的図書館

本好き人の365日

十二月の本棚 3

2003-12-20 00:47:00 | 日々の出来事
「毎年クリスマスがめぐって来るごとに
私はディケンズのクリスマス・カロルを読む。」

解説の村岡花子さんのこの言葉に影響されて、私も毎年この季節になるとこの本を開くことにしています。

と、いうわけで今回ご紹介するのは、クリスマスにぴったり☆

チャールズ・ディケンズの『クリスマス・カロル』です。

ケチで冷酷で人間嫌いのがりがり亡者…と、ひどい言われようの主人公スクルージ老人。
彼がどれほど非情な人間かというと、スクルージの姿を見かけると、盲導犬でさえ見知っているらしく、飼主を戸の蔭や路地の奥へ引っ張り込むほど。

そんな彼のもとへクリスマスの前夜、七年前に亡くなったかつての相棒、老マーレイの亡霊が現れ、スクルージを心底怯えさせます。
もう亡霊一人だけでも十分なのに、こともあろうにマーレイの亡霊はスクルージにこう告げるのです。

「お前さんのところへ三人の幽霊が来ることになっている」

次々と現れる三人の幽霊と不思議な旅をすることになるスクルージ。

スクルージほどではないにしろ、日々の生活の中で、ついつい自分のことばかり考えて、他人の感情を無視してしまうことがあります。
苛立ってやさしくなれない自分に気が付き、自己嫌悪を繰り返す日々。

「やさしさの出し惜しみ」と私は自分の中で反省しています。

やさしさに限りなんかないのだから、この胸の泉からいくらでも湧き出て来るものだから、人に配る苦労を惜しまない。

やさしさの出し惜しみはしない。

スクルージはお金にうるさいばかりか、幸福や優しさといったことにまで出し惜しみをしています。
まるで誰かに取られるとでも思っているかのように。

そしてそれが自分から幸福や優しさをかえって遠ざけていることに気が付かない。

スクルージは幽霊に連れられて、様々な物を見ることになります。
貧しいけれど心暖かい人々。
質素だけれど家族で囲む楽しい食卓。
あるものを分け合い、互いにいたわり合ってせーいっぱいこの人生を楽しいものにしようとする人々のその姿に(そして自分自身の姿によって)スクルージの冷たい心はしだいに変化していきます。

このあたりの展開はまさに絶品!
さすがはディケンズ、読者の心をつかんで離しません!

スクルージはクリスマスのまさにその日に新たな生を受けます。
おさな子イエスの生まれたその日に。
生まれ変わった彼の姿はまさに必見です♪

スクルージは、我々誰もが持っている心の一部です。
だからこそ、世界中の人々に受け入れられ、読み継がれているのでしょう。

クリスマスも間近なこの季節、あなたも三人の幽霊と不思議な旅に出かけてみませんか?
素敵なプレゼントが用意されているかも知れませんよ。
では、スクルージから最後に一言☆



「クリスマスおめでとう!」



チャールズ・ディケンズ  著
村岡 花子  訳
新潮文庫