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「富士日記」 30 (旧)八月三日(つづき)

(散歩道のコヌカグサ)

土手にはこんな草が色々生えている。名前を調べれば、ひとかどの名前がある。ただ、見分けが難しく、区別はなかなか困難である。

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「富士日記」の解読を続ける。

やがて、神主飯田正房出で来たりて、拝殿を開けて、人々を登せ据えたり。先ず、

   千萬(ちよろず)の 東の夷(あずまのえみし) 向けませし
        神の御威稜
(みいづ)を 仰がざらめや
※ 千萬(ちよろず)- 数の限りなく多いこと。
※ 御威稜(みいつ)- 天皇や神などの威光。


とて、奉りたるに、いざや人々も珍しき団居(まとい)なれば、一首づゝ詠みて奉らむとて、社頭秋風と云う趣にて、詠めりければ、
※ 団居(まとい)- 人々が輪になって座ること。車座。

   夏過ぎて 幾夜か寝つる 神垣
        松に涼しき 秋風の声

※ 神垣(かみがき)- 神域を他と区別するための垣。神社の周囲の垣。
                                                           正辺
   木綿四手(ゆふしで)の 靡くも涼し 千早振る
        神の斎垣
(いがき)の 秋の夕風
※ 木綿四手(ゆうしで)- 木綿(ゆう)で作った四手。
※ 四手(しで)- 玉串や注連縄などに下げる紙。古くは木綿(ゆう)を用いた。
※ 千早振る(ちはやふる)-(勢いが激しい意で、)「神」、また、地名「宇治(うぢ)」にかかる枕詞。
※ 斎垣(いがき)- 神社など、神聖な場所に巡らした垣。


                        式穀
   幾秋か 森の松ヶ枝 枝古りて
        神垣清く そよぐ夕風


                        徴信
   吹くとなき 夕べの風の 調べさえ
        秋に澄みゆく 神垣の松


                        正房
   手向くべき 紅葉はまだき 神垣の
        御垣の松に 通う秋風


                        好道
   立ならぶ 木々の梢も 神さびて
        秋風涼し 坂
(酒)折の宮
※ 神さびる(かみさびる)- 古びて神々しく見える。

かくて、日の暮るる頃、こゝを出て、徴信、式穀には別れ、正辺の家に、今宵は泊りねと、わりなくいざなえば、好道とゝもに、ま多国玉に行きて、夜もすがら物語りし、短冊(たにざく)懐帋(かいし)など、主の乞うに任せて、書きて送りつ。
※ わりなし - 無理やりに。
※ 懐帋(かいし)- 懐紙。和歌・連歌・俳諧などを正式に書きしるす時に用いる紙。


読書:「夢のれん 小料理のどか屋人情帖8」倉阪鬼一郎 著
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