のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

天の前庭/ほしおさなえ

2006年11月12日 18時15分07秒 | 読書歴
■ストーリ
 高校の工事現場で発見された白骨死体と日付の刻印されたボールペン。
 自動車事故で意識不明となり、そのまま九年間眠り続けた柚乃は
 奇跡的に目覚めたとき、すべての記憶を失っていた。父は同じ事故で
 死亡、母は柚乃が子供の頃、ドッペルゲンガーを見たと言った翌日に
 失踪していた。そして今、長い眠りから醒めた柚乃は、パソコンに
 残されたかつての自分の日記の中に、自分にそっくりな少女に
 出会ったという記述を見つける。ドッペルゲンガー、タイムスリップ、
 友達と注文した日付入りボールペン。彼女の行き着く真実とは?

■感想 ☆☆☆☆*
 読んでいる最中に背筋がすっと寒くなった。
 静かな部屋でひとりで読んでいると、何か音が欲しくなる。
 人の声が聞きたくなる。何に対して恐怖を抱いたのか
 それが自分にもわからない。けれども感じたのは「怖さ」。
 小さい頃、押入れの中の暗闇や、誰もいない隣の部屋に
 感じたような「えもいわれぬ怖さ」だ。

 文体は爽やかで青春ミステリを思わせる。少女の語り口で
 自分自身の過去を思い出していく様子は柴田よしきさんの
 「少女たちのいた街」を思い出した。けれども、そこに
 絡んでくる新興宗教やネット上の掲示板、
 そしてドッペルゲンガーといった要素が不穏な響きを奏でる。
 SFの要素も盛り込んでいるため、論理的な解決は
 なされない。それでも、あるかもしれないと納得できる力が
 作品にある。不条理な怖さが心に残った作品で、だからこそ
 彼女のほかの作品もぜひ読んでみたい。


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