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ニッポン硬貨の謎/北村薫

2006年11月12日 18時34分14秒 | 読書歴
■ストーリ
 一九七七年、ミステリ作家でもある名探偵エラリー・クイーンは
 出版社の招きで来日し、公式日程をこなすかたわら東京に発生
 していた幼児連続殺害事件に興味を持つ。
 同じ頃、大学のミステリ研究会に所属する小町奈々子は、
 アルバイト先の書店で、五十円玉二十枚を「千円札に両替してくれ」
 と頼む男に遭遇する。
 敬愛してやまない本格ミステリの巨匠エラリー・クイーンの未発表
 遺稿を北村薫さんが翻訳したという体裁で描かれているこの作品は
 エラリー・クイーン作家論も兼ねているパスティーシュ作品である。
 エラリー・クイーン生誕百年記念出版。

■感想 ☆☆☆☆☆
 ☆5つをつけましたが、エラリー・クイーンに興味がまったくない人、
 彼の作品をまったく読んだことがない人にとっては読み進めるのが
 辛いかもしれない、と思われる作品ではあります。
 ただ、エラリー・クイーン作品に興味がなくても若竹七海さんが
 出題した「五十円玉二十枚の謎」を知っている方は、
 楽しめる作品になっています。どちらも知らない方にとっては
 少し辛いかもしれません。

 そして、どちらも知っていて、どちらにもわくわくした私にとっては
 夢のような作品でした。図書館でエラリー・クイーンの作品に
 出会ったのは小学生高学年の頃でした。それから中学卒業頃までは
 わくわくしながら作品を読み薦めた記憶があります。作者の名前と
 同じ主人公が作品中で探偵として活躍するスタイルが当時の私には
 新鮮で、まるで現実の出来事のように思いながら読んでいました。

 その頃のことを懐かしく思い出させてくれた作品です。
 けれども、作者、北村薫さんの本の読み方、考察の深さ、
 博識ぶりに圧倒される作品でもあります。同じ作品を読んでいながら
 その味わい方が全く異なります。同じ作品を読んだからこそ
 彼の賢さに基づいた作品の読み込み方に尊敬の念を
 抱かずにはいられません。

 「スキップ」や「ターン」で見せるやわらかい文体は消え
 翻訳調の硬い文体で綴られるこの作品は、まさに
 エラリー・クイーンの作品のようで、作品の設定も
 章毎に挿入されている少し長めの(注)もすべてが楽しめる
 作品でした。

 ・・・頭がよい人が羨ましくなる作品です。


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