39.ありがとう/川上弘美
■ストーリ
小田原の小さな飲み屋で、あいしてる、と言うあたしを尻目に
生蛸をむつむつと噛むタマヨさん。
「このたびは、あんまり愛してて、困っちゃったわよ」と
こちらが困るような率直さで言うショウコさん。
百五十年生きることにした、そのくらい生きてればさ、
あなたといつも一緒にいられる機会もくるだろうし、
と突然言うトキタさん。ぽっかり明るく深々しみる、
よるべない恋の十二景。
■感想 ☆☆☆
私の苦手な短編集。案の定、前半は川上ワールドに入ることが
できずに疎外感を味わいながら読み続けた。1編1編が短く
詩のような表現で、感情移入を妨げられているような気がしていた。
けれども、読み終えるときには、12編で作り上げられている
恋の世界にどっぷりと入り込み、言葉ではうまく表現できない
寂しさとかやるせなさに押しつぶされそうになっていた。
ミカミさん、タマヨさん、というふうに人の名前はカタカナで
表され、「個人」として特定されているのではなく、記号のように
扱われている。誰なのか分からないと伝え辛いから、とりあえず
こう呼ぶよ、というような投げやりな感じ。きっと作者は
名前や登場人物それぞれの特性に対しては思い入れがないのだと思う。
作者が伝えたいと願っているのは、愛が始まるとき、愛が
続いているとき、愛が終わりそうなとき、愛が終わった後、など
そのときどきにある人の感情なのだと思う。どんなに人を愛しても
人は孤独からは解放されない。なぜなら、幸せな一瞬は永遠ではないから。
そういったことを思い知らされる一冊だった。
人は誰かを好きになればなるほど、
自分の孤独を思い知らされるのかもしれない。
そんな寂しい気持で本を閉じた。
■ストーリ
小田原の小さな飲み屋で、あいしてる、と言うあたしを尻目に
生蛸をむつむつと噛むタマヨさん。
「このたびは、あんまり愛してて、困っちゃったわよ」と
こちらが困るような率直さで言うショウコさん。
百五十年生きることにした、そのくらい生きてればさ、
あなたといつも一緒にいられる機会もくるだろうし、
と突然言うトキタさん。ぽっかり明るく深々しみる、
よるべない恋の十二景。
■感想 ☆☆☆
私の苦手な短編集。案の定、前半は川上ワールドに入ることが
できずに疎外感を味わいながら読み続けた。1編1編が短く
詩のような表現で、感情移入を妨げられているような気がしていた。
けれども、読み終えるときには、12編で作り上げられている
恋の世界にどっぷりと入り込み、言葉ではうまく表現できない
寂しさとかやるせなさに押しつぶされそうになっていた。
ミカミさん、タマヨさん、というふうに人の名前はカタカナで
表され、「個人」として特定されているのではなく、記号のように
扱われている。誰なのか分からないと伝え辛いから、とりあえず
こう呼ぶよ、というような投げやりな感じ。きっと作者は
名前や登場人物それぞれの特性に対しては思い入れがないのだと思う。
作者が伝えたいと願っているのは、愛が始まるとき、愛が
続いているとき、愛が終わりそうなとき、愛が終わった後、など
そのときどきにある人の感情なのだと思う。どんなに人を愛しても
人は孤独からは解放されない。なぜなら、幸せな一瞬は永遠ではないから。
そういったことを思い知らされる一冊だった。
人は誰かを好きになればなるほど、
自分の孤独を思い知らされるのかもしれない。
そんな寂しい気持で本を閉じた。
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