のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

2011年4月の読書

2011年05月14日 15時40分48秒 | 読書歴
今年はこのペースで読書と向き合うことになりそうです。
他にもちょこちょこ流し読みしている仕事関係の本があるものの
流し読みの上に部分読みで、「読んだ本」としてあげられません。
つまるところ、私は純粋に「読書」が好き、というわけではないんだろうな、
と思いました。「活字中毒なんです!」と言える人、
どのジャンルももれなく楽しめる人に心底憧れます。

33.触れもせで-向田邦子との20年/久世光彦
34.夢あたたかき-向田邦子との20年/久世光彦

■感想 ☆☆☆☆*
 久世さんにとって、向田さんは永遠に触れられない大切な人だったんだろうな
 と思いました。「恋愛感情ではない」と何度も書いているけれど、やっぱり
 どこかに恋愛感情のようなものが混じっていたのではないかと思います。
 それぐらい、彼女を思う気持ちが伝わってくる文章の数々でした。

35.誰よりも美しい妻/井上荒野
■ストーリ
 ヴァイオリニストの夫、夫の先妻と若い愛人。息子とその恋人。
 誰よりも美しい妻を中心に愛の輪舞が始まる。

■感想 ☆☆*
 誰よりも美しい妻を誇りに思いながら、次々に若い恋人を作る夫。
 恋を求めずには生きられない夫に次々と訪れる新しい恋をすべて
 把握している妻は、そんな夫をただひたすらに見守り続けます。
 恋愛と結婚は違うし、愛情と情も違う。でも、どちらにせよ、
 つながりたい誰かがいたり、関わりたいと思う大切な誰かがいるから、
 人は孤独を感じるんだろうな、と思いました。

36.池袋ウェストゲートパーク/石田衣良
37.少年計数器 -ウェストゲートパークⅡ-/石田衣良
■ストーリ
 池袋で八百屋を営みながら、退屈しのぎになんでも屋のようなことを
 しているマコト。今夜も池袋はトラブルがいっぱい。刺す少年に
 消えた少女、潰し合うギャング団。少年たちは事件解決を求めて
 池袋を駆け抜ける。

■感想 ☆☆☆☆
 テンポのよい文章で、楽しませてくれるザ・エンターテイメント!な
 作品。メリハリの利いた文章とノリのよさを重視した会話、作りこまれた
 キャラクターと世界観で徹頭徹尾楽しませてくれます。
 それにしてもクドカンはすごい!ドラマを見てこの作品を読むと、
 あのドラマがいかに原作のテイストをかきけすことなく、話が
 再構築されているかがよく分かります。そして、原作のテイストが
 かき消されていないのに、見事にクドカンテイストにもなっていて
 そのバランスのよい話の作り方に感動しました。
 いまや、この作品はあのキャスティング以外に考えられないもの。
 また見たいなー。再放送熱烈希望。

38.ぜつぼう/本谷有希子
■ストーリ
 俺はぜつぼうしているが故に俺なのだ。
 ぜつぼう、から人間は立ち直れるのか?売れなくなった芸人の絶望の
 人生。希望よりも絶望することの方が生きる力に溢れているという
 人間の性を描く。

■感想 ☆☆☆
 文章はとても読みやすいのに、文章が読みやすいからこそ、文章の
 ざらざらした質感が特徴的な作品。読んでいる最中も、読み終えた
 後もひたすらに眉間に皺を寄せていました。主人公に共感はできません。
 それなのに、分かってしまう部分もある自分にやるせなさを感じました。
 おそらく自己顕示欲が強く、自意識過剰な人ほど、この主人公の
 気持ちの移り変わりが分かってしまうんではないかと思います。
 立ち止まることにエネルギーを費やすことで生きる実感を得る。
 そういうことってあるのかもしれない、とも思いました。
 ラストのかすかなかすかな希望が、本当にかすかなのに、
 かすかだからこそ、「それでも希望はある」と感じさせてくれる
 力強い作品でした。

39.クレヨン王国月のたまご(1)(2)(3)/福永令三
■ストーリ
 小学6年生のまゆみは、私立受験に落ちたショックで自暴自棄に
 なっていたところを見知らぬ青年三郎に助けられます。彼の運転する
 トラックでいつのまにかクレヨン王国に入ってしまったまゆみ。
 彼女はそこで、三郎、ブタのストンストン、ニワトリのアラエッサと
 ともに、「月のたまご」を救出する旅に出ることになります。
 それは、危険がいっぱいの愛と冒険の旅だったのです。

■感想 ☆☆☆☆*
 大好きなクレヨン王国を久々に読み返しました。月のたまご第1巻は
 大好きだったけれど、第2巻からは当時の私にとっては話が難しく、
 途中で放棄していました。今回、久々に読み返して、第2巻、第3巻の
 話の面白さ、描かれている人間の業の深さ、哲学的な話の展開に
 驚きました。最後まで読み通したいなぁ。月のたまごは全8巻。
 その後に4冊続編が続いて全12冊で完結だそうです。買っちゃおうかな。

42.砂漠/伊坂幸太郎
■ストーリ
 「大学の一年間なんてあっという間だ」。入学、一人暮らし、新しい友人、
 麻雀、合コン。普通のキャンパスライフを楽しむ5人の大学生は
 社会という「砂漠」に巣立つ前の「オアシス」で、超能力に遭遇したり
 不穏な犯罪者に翻弄されたり、恋をしたりしながら、あっという間に
 過ぎゆく日々を送っていく。パワーみなぎる青春小説。

■感想 ☆☆☆☆
 物語の核となるものは通り魔強盗と空き巣事件。2つの事件が登場人物
 5人の日常に少しずつ影響を与え、大学生活の四季を彩る。
 それぞれの季節に起こるちょっとした事件とその結末。そして迎える
 旅立ちのとき。読み終えた後、胸にこみ上げてくるものがあった。
 それにしても、キャラクターの造詣が見事。特に中心人物、西嶋は
 初読の際に、なんて自分勝手で自己流で都合よくポジティブなんだろう、
 と少しイライラしながら見守っていましたが、今回、読み返してようやく
 彼の魅力に気付くことができました。その場その場で意見が変わっても
 ぶれることなく「自分の気持ち」を優先させるその姿勢が彼の言葉に
 説得力を与えていた。
 「目の前の危機を救えばいいじゃないですか。
  今、目の前で泣いている人を救えない人間がね、
  明日、世界を救えるわけがないんですよ。」

43.アイスクリン強し/畠中恵
■ストーリ
 ビスキット、チヨコレイト、アイスクリン、シユウクリーム、スイートポテト。
 南蛮菓子から西洋菓子へと呼び名が変わり、新たな品々が数多登場。
 そんなスイーツ文明開化の東京で、孤児として生まれ育った真次郎は、
 念願の西洋菓子屋・風琴屋を開いた。そこには甘い菓子目当てに元幕臣の
 若い警官達が訪れ、それに伴い厄介ごとも次々と現れて・・・。

■感想 ☆☆☆
 作者お得意のキャラモノ作品。世界観が作りこまれています。
 さくさくと読み終えて読後感は爽やか。ただ少し軽すぎて物足りなさを
 感じることも。楽しく読める1冊であることに間違いありません。
 続編「若様組参る!」もある模様。こちらも読みたいなー。

44.ブルータワー/石田衣良
■ストーリ
 悪性の脳腫瘍で、死を宣告された男が200年後の世界に意識だけ
 タイムスリップした。地表は殺人ウイルスが蔓延し、人々は高さ2キロ
 メートルの塔に閉じこめられ、完璧な階層社会を形成している未来へ。
 平凡なひとりの男が世界を崩壊から救う物語。

■感想 ☆☆☆
 9月11日の自爆テロを見た著者が「書いておきたい」と思った物語。
 戦い、いがみ合うことでは「明日」も「希望」も望めないという
 著者の想いが伝わってくる作品でした。

45.イキルキス/舞城王太郎
■ストーリ
 物語には生をもたらすキスと、死を招くキスがある。青春、恋愛、
 セックス、暴力、家族。みんなカナグリ生きている。

■感想 ☆☆☆
 これでこそ舞城さん!と思わず喝采したくなるようなハチャメチャな
 でもリズム感があるおかげで読み続けると癖になる文章。
 とんでもない話の構成と発想力。そして、何より人間に対する希望。
 誰かが誰かを思う気持ちが与えてくれる希望の大きさをまったく
 素直でない描写でじんわり温かく描いてくれていました。
 読みこなすのに力がいるけれど、やっぱり癖になる。
 そう思える大好きな作家さんです。

46.阪急電車/有川浩
■ストーリ
 恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車。関西のローカル線を
 舞台に繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。
 人と人が交差する物語。

■感想 ☆☆☆☆☆
 1冊の薄い文庫本に16の短編。1編1編は、読みやすい文章という
 こともあって、あっという間に読み終えられます。けれど、各編が
 リンクし合い、ある話の主人公が他の話でチョイ役で再登場したり
 ふたたびヒロインとして再登場したり、と連携しているためか、
 短編集にありがちな物足りなさをまったく感じさせません。
 人生には出会いがあって、別れがあって、電車の中という限られた
 空間で出会っても、お互いの人生にちょっとずつ影響を与え合って。
 誰もが自分の人生の主人公で、そして誰もが誰かの人生の脇役なのだ
 ということをしみじみと味あわせてくれる温かい作品でした。
 そして、登場人物がみなまっすぐ背筋を正して生きている清清しい
 作品でもありました。
 
47.冬の薔薇/パトリシア・A・マキリップ
■ストーリ
 ロイズは人には見えないものを視る目を持つ風変わりな少女。
 ある日、彼女は森の泉のほとりで、ひとりの若者が光の中から歩み出て
 くるのを見た。若者の名はコルベット。呪われていると噂され、廃墟に
 なっているリン屋敷の跡取りだという。

■感想 ☆☆☆*
 スコットランドの民間伝承「タム=リン伝説」を題材にした作品。
 同じく「タム=リン伝説」を題材にしたダイアナ・ウィン・ジョーンズの
 「九年目の魔法」を私が大好きだと知った教会員の方が貸してください
 ました。同じ伝説がテーマとなっていて、話の筋はやはりどこか同じもの
 を感じさせてくれますが、作者や作風が異なるため、(当たり前では
 ありますが)まったく異なる作品。同じ伝説をテーマにしてここまで
 異なる物語を作り上げられるのか、と作家さんの発想力に敬服しました。
 ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品はファンタジーでもどこか
 かわいらしさとコメディを持ち合わせた作品ですが、マキリップの
 この作品はどこまでも幻想的で美しく、どこかモネの絵を思い出させる
 雰囲気でした。物語の始めでは幼く恋とは縁遠い「少女」だった
 ヒロインが長い長い冬を越えて、ラストで一気に美しく花開くその
 瞬間が美しく圧倒的な作品でした。 


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