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のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

国境の南、太陽の西/村上春樹

2009年03月10日 23時50分03秒 | 読書歴
18.国境の南、太陽の西/村上春樹
■ストーリ
 一人っ子として、ある欠落感をもっていた始は、小学校時代、
 同じく一人っ子の女の子、島本さんと友達になる。
 25年後、「ジャズを流す上品なバー」を経営し、絵に描いたような
 幸せな生活を手にしていた始は島本さんと再会し、激しい恋におちる。

■感想 ☆☆☆☆
 村上さんの小説を読んでいると、ひしひしと「孤独」を感じる。
 人はひとりで生まれて、ひとりで死んでいく。それはごくごく当たり前の
 ことだけれど、それ以上の孤独を思い知らされる気がする。人は生まれて
 死ぬまでの間に、目に見えるもの、見えないものを数多く手に入れていく。
 そして同時に、人はただ生きているだけで、手に入れる以上に多くのものを
 少しずつ少しずつ失っていくのだとも思う。その上、失っていくものの
 多くは「見えないもの」ばかりで、私たちは普段、失っていることにすら
 気付かない。
 そして、ふと気がついた時に、自分が多くのものをいつの間にか失って
 いることに気が付くのだと思う。そういったことを考えながら、この本を
 読み終えた。

 読後に言い知れない寂しさを覚える作品。人は愛する人と出会えても、
 出会えなくても、家族になれたとしても、なれなかったとしても、
 ふとした瞬間に寂しさを覚えてしまうし、孤独を感じてしまう。
 むしろ、愛する人と出会えてしまった後の方が感じる孤独は大きい
 のかもしれないと思った。

 いつもの私だったら、この作品の主人公の身勝手さに怒りを抱いている
 と思う。結末としては、身勝手なうえに都合がいい、と思われても
 仕方がない展開だとも思う。それなのに、主人公の喪失感の大きさが
 理解できてしまった。今後も彼は喪失感を抱えたまま生き続けるの
 だろう。だからといって、それから逃げることはできないし、
 そうなる前に引き返すこともできなかったのだとも思う。

 「どうしようもないこと」がこの世の中には確かにある。
 そう思わせてくれる物語。そして、だからこそ、主人公だけでなく、
 その主人公を見守る妻や、その主人公の前から消える島本さんの孤独
 までが理解できてしまい、よりいっそう切なく、寂しい気持ちになる。
 愛し合えたとしても、そして愛し合っているからこそ、
 埋められない孤独があるのだろうな、と思った。

 改めて村上さんの文章の美しさも満喫できた。
 その文章の美しさゆえに主人公が感じる「孤独」や「寂しさ」が
 際立つのだと思う。


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