夢七雑録

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東京文化財ウイーク2021・豊島区・その1

2021-11-06 20:59:13 | 東京の文化財

東京文化財ウイーク2021で、豊島区は6件の企画事業を行っているが、その中に自由学園明日館100周年記念・洋風建築ぬりえ散歩という企画があり、自由学園明日館、雑司ヶ谷旧宣教師館、鈴木信太郎記念館の3館を対象として11月28日まで行われることになっていた。そこで、ぬりえはともかくとして、3館に加えて豊島区の文化財をめぐる散歩をしてみる事にした。

(1)自由学園明日館

池袋駅を西側に出てメトロポリタン通りを南に向かう。途中、交差点の角に元池袋史跡公園があり、この付近に弦巻川の源流でもある丸池があったということだが、今は池や流れの跡形もない。ホテルメトロポリタンに沿って先に進み、次の交差点を渡って右手の角を入り、上り屋敷通りに出る。通りの名は平成になってからの通称のようだが、通り自体は古くからあったらしい。ここを道なりに進んで案内標識により右に入ると、国指定重要文化財(建造物)の自由学園明日館に出る。道路の右側には中央棟と西教室、東教室が並んでいるが、背後の高層建築に負けない存在感がある。設計は帝国ホテルの設計のため来日していたF.L.ライトで、遠藤新が助手を勤めていた。竣工は中央棟と西教室が大正11年、東教室が大正14年だが、自由学園の創立は大正10年なので完成前の教室を使用して開校したらしい。この建物は文化財を使用しながら保存する動態保全を採用しており、集会などで使用することが可能になっている。また、有料だが内部を見学することもできる。

中央棟や東西の教室はすでに入館したことがあるので、今回は道路の左側にある講堂に行く。講堂も重要文化財(建造物)で設計は遠藤新。昭和2年の竣工である。今年は11月3日まで館内で「文化財の中で文化財を知る」という無料の展覧会を行っていたので入ってみた。講堂は関東大震災後の建築であり、中央の床に対して両脇の床を高くする耐震も考慮した設計になっている。講堂は平成26年から3年かけて保存修理工事が行われ、耐震診断の結果に基づいた耐震対策のほか防火対策も行われたというが、見た目は工事前と変わらなかったようである。文化財である講堂の中で、豊島区の文化財についての展示を見て回り、縄文時代後期の貝塚が池袋にあることに気付く。文化財ウイークには茂呂遺跡も公開されている筈だが、発見された黒曜石の産地は同じなのだろうか。

講堂を出て講堂沿いの道を歩き、南側の入口付近から講堂をしばらく眺め、それから、上り屋敷通りに出る。通りは線路沿いの道となるが、この辺にあった筈の開かずの踏切の場所が分からぬまま、西武池袋線の下をくぐる。上り屋敷通りもここ迄で、この先は線路沿いに目白駅に向かう道となる。平成も終りの頃、目白駅から明日館に向かう道をF.L.ライトの小路と呼ぶようになったらしく、そのルートは上り屋敷通りと重複する区間があったようである。開かずの踏切が廃止された後、代わりに設けられた歩道橋でJRの上を越える。歩道橋の名は“花のはし”。線路敷内の土手に花々が咲き誇ることを願ってのことらしい。 

歩道橋を渡って左へ行き、西武池袋線のガードは無視して、車に注意しながら曲がりくねった道を先に進む。この道は鬼子母神に通じる江戸時代からの道でもあった。明治通りを渡って、鬼子母神西参道を先に行くと鬼子母神の裏手に出る。裏口から入るのも気が引けるので左側の道を進んで横から境内に入る。雑司ヶ谷鬼子母神堂は国指定の重要文化財(建造物)で、本殿は寛文4年、拝殿は元禄13年の建立。江戸時代には浅草寺や目黒不動と並んで多くの人が参詣に訪れた場所でもある。

鬼子母神の境内には、都指定の天然記念物であるイチョウがある。幹囲6.6m、樹高32.5mの大木で、御神木として扱われているようである。

鬼子母神の境内を出て、鬼子母神表参道を歩く。参道の途中に、雑司が谷案内処のある並木ハウスアネックスがあるが、この建物は砂金家長屋(いさごけ ながや)として国登録の有形文化財(建造物)になっている。この建物は昭和7年に建てられた昭和モダンの長屋建て店舗兼住宅で、1階は仕事場として2階は和室として使われていたという。

並木ハウスアネックスの裏手にある並木ハウスは、砂金家が昭和28年に建てた上質な木造賃貸アパートで、この建物も国登録の有形文化財(建造物)になっている。手塚治虫が都内で最初に入居したのはトキワ荘だが、その後、並木ハウスに転居している。並木ハウスは現在も入居者があり、立ち入ることは出来ない。

鬼子母神表参道の鬼子母神大門ケヤキは都の天然記念物に指定されている。地元の人たちの努力もあって、ここまで維持されてきたのだろう。

さて、この先を続けて歩くことも可能ではあるのだが、途中、思いのほか時間を要してしまったため、日を改めて歩くことにした。

 

 


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