先日、書道のお稽古に伺った折、何気なく
「墨の値段って色々あるけれど、どうやって決まるのかしら」
と、ふともらしたら先生が次の本を貸して下さいました。
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文房四宝(墨、筆、硯、紙)の中で「墨」について書家の榊莫山先生がお書きになった本です。
墨の材料は「煤、膠、香料」で種類としては「油煙墨」と「松煙墨」の二種類、作られてから十年ぐらいでようやく性能が冴えてくる。
四十年から六、七十年くらいの間が墨色のきらめく時期 - など色々学びましたが、印象に残ったのは次の文です。
「変幻きわまる墨色」の項で
『東洋の芸術ともいえる水墨画は、そんな墨と水と、硯と紙の神秘から湧きでるようにしてあらわれた。
長谷川等伯の「松林図」も牧谿の「猿猴図」も、見ているとそんな神秘の匂いが、深く鋭く伝わってくる』
と記述されています。
篠田桃紅さんのベストセラー「103歳になってわかったこと」の続編「ひとりで生きる作法」でも
『私は墨のなかにあらゆる色を見ている』
『幼いときから墨と付き合ってきて、おのずからそこに無限の色を見るようになりました』
と墨が表現できる無限の可能性について述べられています。
榊獏山や篠田桃紅、堀文子などの芸術家が絶賛する水墨画が長谷川等伯の「松林図」です。
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この写真は夫が日本を離れる時、仕事でお付き合いしていた方からいただいた「東京国立博物館」の本に掲載されていたものです。
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2010年の「等伯展」には行けなかったので、いつか「松林図」の実物を鑑賞できたらなぁと思っています(博物館の国宝展示は常時、替わっているので)。
でも今年の一時帰国では能登半島を訪れる予定なので等伯が描いた七尾市付近の海岸で松林の風景を眺めることができるかもしれません。
等伯は息子を亡くした後、失意の中で故郷の「松林」を描いたということなどが安部龍太郎の「等伯」に記されています。
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それにしても堀文子さんの「等伯展を見て」の感想文には気持ちが引き締まりました。
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『物欲に狂奔する貧相な人間の蠢く今の東京に、等伯の強靭華麗な鉄槌が振り下ろされたような、衝撃の1日であった』
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