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ヴィム•ヴェンダース監督 映画『Perfect Days』

2024-02-17 14:27:00 | 日記
もうひと月以上前のことですが、付近に住む日本人の友人2人とご一緒にケルンにある小さな映画館で『Perfect Days』を観ました。
あの時はこの映画がアカデミー賞の国際長編映画部門でノミネートされる前で、私たちは主演の役所広司さんがカンヌ映画祭で男優賞を受賞した映画ということで観に行ったのですが、日本人の観客は私達だけで、他のドイツ人の観客はヴィム•ヴェンダース監督の作品ということで観にいらしていたようです。
この映画館にはもうひとつ上映ホールがあり、大多数の若い観客は宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』がお目当てだったようです。
ちなみにドイツ語のタイトルは“Der Junge und der Reiher“(「若者と鷺」)です。
カントやニーチェを生んだ哲学者の国ドイツで「君たちはどう生きるか」なんてまるで哲学の命題みたいですからね。

前置きが長くなりました。
映画鑑賞前後に日本上映前の舞台挨拶とヴェンダース監督へのインタビューをYouTubeで視聴しました。
監督が映画の主人公平山についての想いを語るところが印象深かったです。
「平山という人物のモデル」をあえてあげるとすれば友人のカナダ人の詩人でシンガーソングライターのレナード・コーエン(1934-2016)だということです。
コーエンは1960年代禅に傾倒しロサンゼルス近郊の禅センターで修業を積んだそうです。
修業のひとつとしてまずトイレ掃除をさせられることをはじめとして、僧侶の生活などについてのコーエンの話が今回の映画の主人公に投影されているかもしれない、そして「コーエンに礼が言いたい」と監督の優しいお人柄が滲み出る素敵なインタビューでした。
そういえば映画の平山の生き方も僧侶を彷彿とさせられます。
起床から日中の公共トイレの掃除という仕事を終えて、銭湯に行き、屋台でいっぱいひっかけ、夜は文庫本(幸田文の『木』など)を読みながら就寝、翌朝はまた近所のおばさんが家の前の路上を掃除する音で目覚め、歯を磨き身支度をして、出勤前には公園の樹木の根元から生えた幼木を根ごと新聞紙に包んで持ち帰り育てた鉢植えに水をやる→つましい日常の生活が淡々と描写される映画です。

映画では「木漏れ日」の情景が多く登場します
主人公の平山は公共のトイレ掃除の合間の昼食時間にはいつも行く公園のベンチでコンビニのサンドイッチを食べます。
樹木の木漏れ日を古いカメラで撮影し、休みの日にはカメラ店にフィルムを持って行き現像してもらうのです。
こんな感じの木漏れ日です(我が家の近くの森で昨年7月に撮った写真です)


監督は木漏れ日をKomorebiと日本語でおっしゃっていました。
こんな日本語をどこでお知りになったのだろうと考え、
もしかしたらと思ったのが以前拙ブログでもご紹介した『翻訳できない世界の言葉』という本です。





この本には他の外国語では一言で言い表せない世界各国の言葉が載っています。
著者はアメリカ人で2014年まずアメリカで出版されました。
その後ニューヨークタイムズや、Amazon USAでベストセラーになったということですから、
監督もこの本でKomorebiのことをお知りになったのかもしれません。
日本語からは他に「積ん読」「侘び寂び」「ボケっと」が載っています。
最後にドイツ語の「龍のエサ」とオランダ語の「ダチョウの政治」をご紹介します。







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