風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

2010年05月05日 | 詩集「風のそとへ」
Shika


山国で育った


目をとじると
どこまでも青いものが広がる
海だった


そうやって彼は
ときどき山を越えた


どど~んと鯨になる
風のように
しなやかに両腕を伸ばし
海のかたちをなぞる
きらきらとしんしんと
星が流れた


まぶたの裏に
だいじにしまい
しまい忘れる


いつしか
目をあけても
海がある
もういちど目をとじると
とおく鯨のような
山があった


(2008)


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