いつものウォーキングの途上 突然浮かんできた 古いうたの歌詞 いまは黙して行かん その続きが出てこない 小林旭だったか 淡く歌っていたのは 夢はむなしく消えて 今日も闇をさすらう ちがったかな 淡きのぞみ儚きこころ 切れぎれに誰かの 歌声が聞こえてくる 仰げばずっと青空 きょうも太平洋側は晴れ 北の国は厳しく寒いらしい 窓は夜露に濡れて いや 結露に濡れていた 冬の夜明けは なかなか明けきらず だらだらとつながる 夢を振り払うように ようやく抜け出すが すこし体は重くなって 明るさの方へ 新しい方へと 踏みだそうとすると 引きずっているもの 夢のつづきが 電車も学校も 座る席が見つからない 帰り道も探せない そんな夢の おぼろな道を辿りながら いつもの道をウォーキング 万歩計は持たない 歩くところは ほぼ決まっている いつもの道だから 距離も時間も 計るには及ばない 刻み続けるのは ただ妄想の歩幅 富も名誉も恋も 遠きあこがれの日の 歌もまた夢のようで 繋がったり切れたりの 記憶の中を行き交い いまは黙して歩かん 歩数ではない 脚のつかれ息のみだれで その日の体調をはかる まばゆい陽ざしに 目を開かれることもある しばれそうな風に 背中を押され 駆け出すこともある ただ黙して歩かん いずこへか何処までか いずこへでもなく 何処まででもなく 淡きのぞみ儚きこころ いまは黙して行かん ゆうべの夢と 古き歌のはざまを ただ歩き続けている