【行政視察報告書】
江南市議会議員 山 登志浩
視察日:2009年11月20日(金曜日)
視察先:東京都稲城市
視察テーマ:介護支援ボランティア制度について
(制度の概要)
高齢者が介護保険施設などでボランティア活動を行った場合、活動実績に応じてポイントが与えられ、これに対して「介護ボランティア評価ポイント転換交付金」(年間最大5,000円)を交付する制度。実質的に介護保険料負担を軽減している。
2006年度に稲城市が「(仮称)介護支援ボランティア特区」の提案をし、2007年5月に介護予防事業として実施することが認められた(全国初)。2007年9月スタート。
(制度の目的)
高齢者が介護支援ボランティア活動を通じて地域貢献することを積極的に奨励・支援し、高齢者自身の社会参加活動を通じた介護予防を推進する。そして、いきいきとした地域社会となることを目指している。
(内容)
対象者:介護保険料を滞納していない65歳以上の高齢者(第1号被保険者)
事業:①介護保険対象施設②稲城市が委託する地域支援事業(介護予防事業)③ふれあいセンター(社会福祉協議会)④高齢者会食会⑤その他
活動:①レクリエーションなどの指導、参加支援②お茶だしや食堂内の配膳・下膳などの補助③喫茶などの運営補助④散歩、外出、館内移動の補助⑤模擬店、会場設営、利用者の移動補助、芸能披露などの行事の手伝い⑥話し相手⑦その他施設職員と共に行う軽微かつ補助的な活動(例:草刈、洗濯物の整理、シーツ交換など)
ポイントの付与:介護支援ボランティア手帳に押印されたスタンプの数に応じて最大5,000ポイントの評価ポイントを付与する。
注意点:ボランティア活動をしたいと思う高齢者のために創設された制度であって、介護サービスの代替ではない。身体介護、生活援助の活動は対象とならない。ボランティア活動に対する対価ではないため、保険料が自動的に割り引かれるわけではない。
(考察)
介護支援ボランティア制度は、高齢者のボランティア活動と介護予防をリンクさせ、その両方を後押ししている。
最近、地域のために汗を流したいと意欲を持った高齢者が増えてきた。また、自治体と市民が協働関係を構築する必要性が叫ばれており、高齢者の活動の場が増えてきた。しかし、これまで自治体が担ってきた仕事を市民に下請け役として担わせる事例が少なくない。そこでは市民のためというよりも、自治体の都合が優先されており、市民に過度の負担を迫っていることさえある。
一方、稲城市の制度は高齢者の自主性を尊重しており、高齢者が地域社会の一員として誇りを持つことができる。制度発足時(2007年9月末)、ボランティア登録者は180人であったが、今年10月末には369人と倍増していることからも、市民協働の好事例として評価できる。
また、高齢者の活発な活動は、彼らの介護予防につながり、やがて介護給付費を抑制することに資する。稲城市が今年1月にボランティア登録者に実施したアンケート調査によると、活動を始める前と現在とを比較すると、「張り合いが出てきた」との回答が過半数を占め、健康観が変化している。
介護給付費抑制を主眼として、老人保健施設などで筋力向上トレーニング教室が行われている。しかし、稲城市の場合、日常生活の中で無理せずに元気をつけられる。「ボランティアは他人のためにするのではない。自分のためにするものだ」というボランティア精神がしばしば説かれるが、まさにこれを実践しているのが稲城市である。
さらに、稲城市の高齢化率は今年度16.5%(推計)と全国平均を大きく下回っている。しかし近い将来、稲城市においても高齢化が進行することは間違いない。将来のことをあらかじめ予測して対策を打ち出すという政策判断は、介護施策において重要な視点である。
現在、国、自治体ともに厳しい財政事情の中で全てのことをこれまで通りやり続ける体力はない。江南市においても、選択と集中の考え方のもとで、時代の一歩先を見据えた先進的介護施策を考えるべきである。ぜひとも介護支援ボランティア制度を江南市の現状にあわせて採用すべきである。
江南市議会議員 山 登志浩
視察日:2009年11月20日(金曜日)
視察先:東京都稲城市
視察テーマ:介護支援ボランティア制度について
(制度の概要)
高齢者が介護保険施設などでボランティア活動を行った場合、活動実績に応じてポイントが与えられ、これに対して「介護ボランティア評価ポイント転換交付金」(年間最大5,000円)を交付する制度。実質的に介護保険料負担を軽減している。
2006年度に稲城市が「(仮称)介護支援ボランティア特区」の提案をし、2007年5月に介護予防事業として実施することが認められた(全国初)。2007年9月スタート。
(制度の目的)
高齢者が介護支援ボランティア活動を通じて地域貢献することを積極的に奨励・支援し、高齢者自身の社会参加活動を通じた介護予防を推進する。そして、いきいきとした地域社会となることを目指している。
(内容)
対象者:介護保険料を滞納していない65歳以上の高齢者(第1号被保険者)
事業:①介護保険対象施設②稲城市が委託する地域支援事業(介護予防事業)③ふれあいセンター(社会福祉協議会)④高齢者会食会⑤その他
活動:①レクリエーションなどの指導、参加支援②お茶だしや食堂内の配膳・下膳などの補助③喫茶などの運営補助④散歩、外出、館内移動の補助⑤模擬店、会場設営、利用者の移動補助、芸能披露などの行事の手伝い⑥話し相手⑦その他施設職員と共に行う軽微かつ補助的な活動(例:草刈、洗濯物の整理、シーツ交換など)
ポイントの付与:介護支援ボランティア手帳に押印されたスタンプの数に応じて最大5,000ポイントの評価ポイントを付与する。
注意点:ボランティア活動をしたいと思う高齢者のために創設された制度であって、介護サービスの代替ではない。身体介護、生活援助の活動は対象とならない。ボランティア活動に対する対価ではないため、保険料が自動的に割り引かれるわけではない。
(考察)
介護支援ボランティア制度は、高齢者のボランティア活動と介護予防をリンクさせ、その両方を後押ししている。
最近、地域のために汗を流したいと意欲を持った高齢者が増えてきた。また、自治体と市民が協働関係を構築する必要性が叫ばれており、高齢者の活動の場が増えてきた。しかし、これまで自治体が担ってきた仕事を市民に下請け役として担わせる事例が少なくない。そこでは市民のためというよりも、自治体の都合が優先されており、市民に過度の負担を迫っていることさえある。
一方、稲城市の制度は高齢者の自主性を尊重しており、高齢者が地域社会の一員として誇りを持つことができる。制度発足時(2007年9月末)、ボランティア登録者は180人であったが、今年10月末には369人と倍増していることからも、市民協働の好事例として評価できる。
また、高齢者の活発な活動は、彼らの介護予防につながり、やがて介護給付費を抑制することに資する。稲城市が今年1月にボランティア登録者に実施したアンケート調査によると、活動を始める前と現在とを比較すると、「張り合いが出てきた」との回答が過半数を占め、健康観が変化している。
介護給付費抑制を主眼として、老人保健施設などで筋力向上トレーニング教室が行われている。しかし、稲城市の場合、日常生活の中で無理せずに元気をつけられる。「ボランティアは他人のためにするのではない。自分のためにするものだ」というボランティア精神がしばしば説かれるが、まさにこれを実践しているのが稲城市である。
さらに、稲城市の高齢化率は今年度16.5%(推計)と全国平均を大きく下回っている。しかし近い将来、稲城市においても高齢化が進行することは間違いない。将来のことをあらかじめ予測して対策を打ち出すという政策判断は、介護施策において重要な視点である。
現在、国、自治体ともに厳しい財政事情の中で全てのことをこれまで通りやり続ける体力はない。江南市においても、選択と集中の考え方のもとで、時代の一歩先を見据えた先進的介護施策を考えるべきである。ぜひとも介護支援ボランティア制度を江南市の現状にあわせて採用すべきである。