Takepuのブログ

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映画「1911」見た

2011-12-01 02:44:29 | 映画鑑賞
辛亥革命100周年の記念映画「1911」を見た。郊外のシネコンで18時からの部を見たが、観客は全部で8人程度か。
そもそも中国語の題名は「辛亥革命」。日本の観客がこれではわからないだろう、とマヤ文明の伝説で地球が滅亡しそうになる「2012」やキムタクが出ていた香港映画「2046」みたいに、年号を出せば何となく興味を引くだろうという魂胆か。訳のわからない題名にすれば、目を引くだろう、という考えか。
中国の歴史的な事件を描いた映画、というよりジャッキー・チェン(成龍)作品だ、という位置づけだろう。ジャッキーは総監督で、息子も出演している。
ジャッキー・チェンは黄興という日本の一般の人はほとんど知らない辛亥革命の総司令官を演じている。が、人物設定は映画を見ていてもよくわからない。

孫文役のウィンストン・チャオ(趙文宣)はアン・リー(李安)監督の「ウエディング・バンケット」でゲイの青年を演じるなど、活躍してきたが、97年の「宋家の三姉妹」(メイベル・チャン監督)や、「孫文100年先を見た男」【原題=夜・明(Road to Dawn)】でも孫文を演じており、ちょっと二枚目過ぎるが、孫文役が続いている。

この辺からネタばれですので、映画を見ていなくて、映画を楽しみたいという人は読まない方が・・・・

映画の中では、孫文と黄興は悪役にも不まじめな役にも描けず、結局聖人君子のように辛亥革命の成功に向けて突き進む、そして二人の熱き友情、みたいなくそまじめなテーマで見ている方はちょっと恥ずかしい気もする。ジャッキー演じる黄興と妻となる徐宗漢(李冰冰)との関係も全体のストーリーの中で十分に描けてはいない。

辛亥革命を描いていることについては、革命の行方を大急ぎでなぞっているだけで、ある程度知っていればそれなりにストーリーを追っていけるが、そうでなければ、退屈な映画なのでは。一番最初に女性革命家の秋瑾が処刑される場面が出てくるが、日本人だけでなく、中国近現代史に疎い中国の若者さえも、よく意味がわからないに違いない。
特に中華人民共和国による制作ゆえ、台湾側から見たヒーローであり、大陸的には大敵の国民党の蔣介石、彼は袁世凱と戦う孫文の晩年から活躍したが、蒋介石は出てこないうちに物語は終わってしまう。結局辛亥革命はどうなったんだ、袁世凱が掌中に納めた中華民国はどちらに行くんだ、という疑問には答えられないまま、消化不良のまま物語は終わってしまう。
一番最後に、字幕スーパーで、「孫文の遺志を継いだ中国共産党によって・・・・」とあるが、蒋介石も出さずにいきなり共産党かよ、と苦笑せざるを得ない。

劇中では中国では裏切り者、親日派、として評価が低い汪兆銘(精衛)はしばしば出てきたが、再評価なのか、あるいは孫文たちを引き立たせるために出て来させたのか。最近の中台接近で、蒋介石を悪く描くことは遠慮しておこう、それなら汪兆銘に悪いところは全部持っていってもらおう、ということか。

で、結局この映画で一番生き生きと描かれているのは、袁世凱だろう。辛亥革命の成果をかすめ取った男とは言えるが、朝廷と革命派の間で現実的な駆け引きを続け、自らが大総統となる道を探っていく。その生臭さや人間臭さは、教科書の中の聖人としか描けない孫文や黄興に比べて、魅力的に描かれている。

実際、最近の学会では袁世凱が清朝を退位させ欧州列強に中華民国(帝国)の存在を認めさせたことが、その後の中華民国も現在の中華人民共和国も、版図として清朝の領土を踏襲している正当性を維持している理由になっているとの考え方があるようだ。
孫文が共和制云々と理想論を語れば、中国統一は遅れ、欧州列強は中華民国を承認せず、また、清朝も政権を譲渡しなかったろう。そうすれば、清朝の領土をそのまま引き継ぐのは不可能で、おそらく日本や欧州列強は中国の領土を「正当に」かすめ取っていたに違いない。

レッドクリフのスタッフを動員した、というが、孫文の映画としては、孫文生誕120周年の1986年に日中合作で制作された映画「孫中山」の方が、もっと人間味が描かれていたような気がする。大和田伸也が宮崎滔天役で、中国で当時人気が高かった中野良子がその妻役で出演していたし、熊本県荒尾市の宮崎滔天故居がロケ現場になっていた。いまの日中関係では、当時のような日本側の協力者について描くことは難しいのだろうな。孫文が金集めをするシーンもほとんどが華僑か欧米相手だった。

辛亥革命100年で、しかも全国政治協商会議がバックについているのなら、また、ジャッキー・チェンが総監督(事実上はプロデュースだろう)ならもうちょっとドラマチックな映画になるのでは、と期待していたが、やはり愛国お勉強映画の域を出ないようだ。残念。




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