Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

薄煕来事件の行方

2012-06-24 14:30:20 | 時事
24日の香港紙「明報」など香港メディアは、22日に重慶市党代表大会が閉幕し、引き続き兼任して市党委書記を務めることになった張徳江・副首相が講話で「重慶市の幹部は妻や子供、身辺工作人員の管理をしっかりやってほしい」と求めたというエピソードを伝えた。笑ってしまうほど安直だが、薄煕来問題を念頭においての発言であることは明らか。
また、英BBCのサイトは、今回の代表大会で、薄煕来時代から市長だった黄奇帆市長が副書記に当選し、また薄煕来時代に薄書記と密接な関係を築いていた劉光磊・政法委員会書記が引き続き市党委常務委員に選出されたとことから、中央当局は薄色を一気に払拭することより、重慶市の安定を最優先した、との見方を示している。

また、同日の香港英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」のサイトによると、解放軍総政治部と中央軍事委紀律委員会は、軍高級幹部の資産状況について、報告するよう求めた。軍の腐敗・汚職に打撃を与えようとする当局の突出した行動だ、と軍事専門家は分析しているという。軍の機関紙「解放軍報」が「軍隊党員指導幹部の個人関連事項を報告することについての規定」を出し、高級軍幹部の収入や不動産、投資状況について報告を求めたという。

23日から朝日新聞が薄熙来問題などで新情報を含めた企画「紅の党」をスタートさせたが、そこでも郭伯雄・中央軍事委副主席が訪日を取りやめ、国内の軍の掌握に全力を尽くしている、と伝えた。いくつかの海外メディアも同様の見解だが、それだけ軍の風紀が乱れていたり、薄熙来問題で取りざたされたグーデター計画などに中央当局が神経質になっていると見られる。
朝日新聞の企画では、薄処分について、当局が難渋している、との見解も示されている。また、薄が大連で江沢民を厚遇した話を具体的に示したりしている。以前大連出身の友人に聞いた話とつながるが、描写がより具体的だ。政治局会議で必ず発言した、などのエピソードも興味深いが、それが何を意味しているのか、までには触れていない。意味づけはともかく、聞いたことは全部書いてしまおう、というような意欲も見られるが、分析材料を提供してもらうという点ではあながち悪いことではない。本にするなども視野に入れている企画だと思うが、今後の展開に期待したい。

映画「最愛」観た。

2012-06-15 14:25:56 | 映画鑑賞
カメラマン出身の顧長衛監督の2011年の作品「最愛」を観た。薄煕来問題でマスコミ相手に訴訟を起こしたアジアン・ビューティーこと章子怡(チャン・ツィイー)と香港四大天王の一人、郭富城(アーロン・コック)の共演。

売血でHIV患者が大量発生した村での出来事を映画化した。中国で実際に起きている問題を取り上げ、HIVへの無知から差別を生む中国社会に一石を投じようとした意図はよくわかる。ただ、社会派チックな展開を期待していたが、美しい章子怡とかっこいいが、映画ではちょっと抜けたような表情の田舎男、アーロンの純愛物語に落とし込んだ。いろいろと検閲がかかる可能性がある中国映画の場合は、今回のように愛情物語に落ち着かせたほうが、問題は少ないのだろう。
田舎の風景にアーロンと、特に章子怡が、美しすぎて溶け込めない。田舎の服を着ているが、あんな腰の細い足の長い、スタイルのよい、なおかつ色の白い田舎のお姉さんはいないだろう、と違和感はある。ただ、二人とも熱演していて、そんな違和感は小さなものだ。
特に、藤原紀香と付き合ったといわれた時期もあったマッチョでワイルド系のアーロンが、髪の毛をボサボサにして田舎のにーちゃん臭ささ満載の演技をしたのは、なかなかよかった。

で、村人から差別を受けて村から離れた石組みの小屋に二人で住んでいながら、赤い服を着て結婚証を手にするなどのところは、中国社会でイリーガルにならないように、「結婚」という社会システムの中で落ち着いた関係を描いて、中国社会を混乱させることなく、得てして封建的な考えを持つ観衆をも納得させるような意図を持って描かれたのではないか。

ただ、章子怡の赤い服はあまりにきれい過ぎて、また中国の田舎にはそぐわない風景。あんなきれいな赤い服を入手できるのだろうか、などと思ってしまう。

また、高熱を発したアーロンを、自分が水風呂に入って体を冷やして、アーロンに抱きついて体温を下げ看病したシーンなど、エロティックなはずだが、顧長衛のカメラワークがいいのか、いやらしく見えない。ただ、章子怡の体当たり演技は大変だったろうなあ、と思う。
章子怡、まじめでいい仕事してるじゃないか、と薄熙来問題で嫌な思いをさせられたこともあり、同情し、応援したい。

ストレートに売血によるHIV被害の村を描いて、弱いものの味方になって体制側を告発するような社会派のドキュメンタリー作品が撮れないのなら、このような方法がもっとも中国の観客、中国社会に受け入れられるのだろう、と思った。

ところで、田舎なのに違和感を持つほど美しく着飾って演じさせた章子怡に対して、顧長衛監督の妻で女優の蒋雯麗も出演しているが、これはNHKドラマ「大地の子」で主人公の陸一心の妻を好演したが、今回は章子怡を引き立てる対象なのか、思いっきり汚れメイクをしていた。自分の奥さんなら何でも出来る、ということか。

章子怡かわいそうに

2012-06-12 22:32:31 | 時事
アジアン・ビューティーこと中国の映画俳優、章子怡(チャン・ツィイー)が香港紙「りんご日報」と雑誌の「壱周刊」を香港高等法院に提訴したという。また、米国で活動する反体制中国語サイト「博訊」も米国の法律事務所に起訴手続きをしたという。



「博訊」は薄熙来事件でいろいろな情報を配信していたので、ここでも時々引用したりして紹介したが、最近になっていいタマがなくなったのか、突拍子もない情報が散見していた。章子怡の件もそのひとつで、薄熙来が大連市長時代からつるんでいた大連の財界人、徐明を通じて、章子怡に枕営業させていた、というような下品な話だ。
薄問題について「博訊」はこれまで、その後新華社や中国当局が肯定するような情報も特ダネ的に流していたが、今回のようなネタも少なくなく、やはり中国情報は玉石混交なのか、あるいは、薄の評判を下げるため、サイトの注目度を上げるため、お下劣な情報を提供していたのか、薄事件については、しばらくここで触れるような決定的な情報はなかったこともあり、更新は控えていた。

英BBCの中国語サイトによると、「りんご日報」は5月29日にこの「博訊」のサイトの情報を引用して報じたということで、彼女は名誉と尊厳を傷つけられ、経済的損失も受けた、として法的手段に訴え出たらしい。
薄煕来は公人だし、実際に重慶市党委書記を解任され、党中央政治局委員も停職処分になるなど、一定の処分を受けている。これに対して章子怡は映画スターといえども、あくまでも民間人だし、自分が仕事上、あるいはプライベートで犯罪など悪事を犯したわけでもない。

デビュー作の「我的父親母親」(邦題・初恋の来た道)が一番印象的で、その後「英雄」や「パープルバタフライ」などでも好演、「梅蘭芳」の京劇の男役はちょっと不自然だったが、「非常完美」は話題作だった。スーパーヒットはないにしても、そこそこ活躍していたのに、「大富豪と結婚が決まった」「破談した」などとゴシップを流され、今回のゴシップもあまりにレベルが低すぎで、中国のスキャンダル報道にさらされ、かわいそうだ。

中国のスパイって

2012-06-01 11:01:25 | 時事
読売新聞が「特ダネ」として、在日本中国大使館の李春光・前一等書記官(45)がスパイ行為をしていた、とする“ニュース”を報じた。外交官が商業目的で金銭授受をしてはいけないウィーン条約違反であり、外国人登録証を偽って複数の銀行口座をもったという外国人登録法違反と公正証書原本不実記載などの疑いで、書類送検された、というもの。

読売と張り切って追いかける産経以外の新聞の記事にはスパイの文字もなければ、ご本尊の読売にも「これがスパイ行為だ」と確定する容疑を提示できない始末。

確かに書類送検された容疑やウィーン条約違反は法に触れるのだろうが、それをもってスパイといえるのか。中国人が国会議員と接触したり、あるいは情報を得ることがイコールスパイ活動なのか。中国の外交官やメディア関係者はしばしば情報収集活動の成果を上部機関に報告するなど、諜報活動に従事することがあるとされるが、合法的な取材やインタビューによる情報までもが、スパイ活動なのか。
中国ならそれは当たり前。当たり前すぎて、日本の新聞記者も中国と同様にスパイとみなされて、取材記者ビザが押されているパスポートを持っていると、普通の観光客なら認められる2週間ビザ免除での入国を拒否され、中国観光が出来ないことがある。

中国以外の多くの国が、また日本の外交官、特に防衛庁派遣の武官らや、日本企業従業員らも中国で情報収集して現地の公安当局に摘発される例もある。
2010年9月に、河北省石家庄市で軍事施設を違法撮影したとして拘束されたフジタ社員4人がいたが、もちろん尖閣諸島近海で海保の船に体当たりして中国人船長が拘束されたことに対する報復の意味合いが強いが、中国側からすれば、軍事施設周辺にうろうろするのも、この李書記官への日本公安当局の対応と同様、スパイ行為とみなされても仕方がないのではないか。フジタ社員が口を割らないだけで、日本の公安当局の依頼を受けていたかもしれない。

ということはともかくとして、公安当局の出頭要請に対して、李春光書記官が拒否し、まんまと国外に逃げられてしまったことで、事件として終わってしまい、悔しさのあまり、公安当局に理解があり反中国的な報道が目立つ読売新聞にリークしたというのが実態ではないか。本当にスパイ行為をしていれば、それを監視し、どのような情報がどのような手口で盗まれ、中国のどの機関にどのような方法で送られているのか、その書記官を泳がせて情報を集めることこそ、公安の仕事なわけで、それが技術的(公安捜査官に能力がなかった)、物理的(逃げられてしまった)な理由で出来なくなり、尖閣衝突の中国人船長と同様に、逃げられたあと聴取も出来ないような相手に対して書類送検する、というお粗末な処理をすることになったのだろう。

李書記官は、スパイ行為というより、内縁の妻と一緒に日本企業の香港法人の役員になったとの報道があるなど、日本での経済活動に色気を示していたわけで、日本で銀行口座を持つことで蓄財を安全に中国国外にプールし、外交官を辞めた後、その財産を享受する、いわゆる「裸官」を目指していたのだろう。そのやり方がそれこそ薄熙来や周永康のように上手でしたたかではなく、自分の権力で出来る範囲のお粗末な蓄財だったゆえ、公安当局に簡単に補足されたということだろう。あるいは大物なら公安当局も見逃し、泳がせる可能性もある。

決定的なスパイ行為を特定していたら、もしそれをリークなどで公にしてしまえば、公安側の手の内がわかってしまう。それこそ、日本の公安の能力を判断する「国家機密」だろう。一番肝心なその部分は読売にリークするわけもなく、それゆえ読売の報道は、思わせぶりに「スパイ」をほのめかすものに終始しているのだろう。
さらに李前書記官が接触していたのが民主党議員だとして、自民党など野党に責任を追及させようとするなど、政局に持っていこうとするのも、胡散臭い。読売らしい。