Takepuのブログ

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ザ・グレート・ウォール(長城)見ました

2017-05-06 17:57:33 | 映画鑑賞


中国の張芸謀監督の中国米国合作映画「ザ・グレート・ウォール(長城)」を見た。4DXという椅子が揺れたり風が耳元に吹いたり背中に熱気があたったりと、テーマパークの出し物のような効果を付加したちょっと料金が高いやつで見た。

人工衛星から見える唯一の建造物・万里の長城が作られた理由が、従来言われている北方騎馬民族の漢民族居住地区への侵入を食い止めるためのもの、ではなく、60年に一度現れて全てを食い尽くす化け物「饕餮(とうてつ)」をくい止めるためだというのだ。

この辺からネタバレです。

ルネサンス期の世界三大発明(火薬・羅針盤・活版印刷術)はいずれも中国で発明されたものだが、その火薬の爆発力を手に入れようと、ヨーロッパからシルクロードを経て中国に潜入、その秘密を持ち帰ろうとしていた傭兵ウィリアム(マット・デイモン)とトバールが、偶然の戦闘で饕餮の腕を切り落としたことから、捕らわれた中国の防衛隊の中で、饕餮の力をそぐ秘密を解明し、一緒に戦うことになる。

都が汴京(いまの河南省開封)というから、梁あたりの時代設定だろうか。そもそも北方の女真族、金の侵略を受け、北部をほぼ占領された時期だ。

この饕餮が、中国の腐敗汚職官僚を象徴しているとして、映画のストーリーを、汚職官僚を壊滅させるべく王岐山を使って奮闘している習近平政権を示しているという説があるらしいが、ま、たぶん違うと思う。いまや張芸謀は徹底的な体制派映画監督と見ていいと思うが、そこまでヨイショしたストーリーではないと思う。

かえって、饕餮という恐ろしい怪物、本当にゴジラ映画とかを見慣れている日本の我々にとっては、あまりイマジネーションの沸かないつまんない怪物のデザインで、これが張芸謀の、あるいは現代中国人の少数民族観なのだ、とするとうがちすぎだろうか。
チベットしかり新疆ウイグルしかり、中国共産党政権にとって、少数民族問題は目の上のタンコブで、おそらく万里の長城を作った秦以降明までの中国人は異民族を饕餮のような感覚で見ていたのだろう、と想像してしまう。

で、それを結局、中国のきれいな女優(景甜)演じる司令官と良い関係になったマット・デイモン、つまり白人の男性が中国の危機を救う、というストーリーが、良いのか悪いのか、米中合作映画ゆえのストーリーなのかも知れないが、愛国映画にはなっていない。

中国の汚職官僚を白人男性にやっつけてもらう、というのなら、愛国ではないだろう。それこそ、かつて胡錦濤派の大番頭で失脚した令計画・元党中央弁公庁主任の弟で米国に亡命申請したとされる令完成が米国政府に持ち込んだとされる中国共産党のトップシークレット、習近平の醜聞などもあるとされる情報をもとに、中国官僚主義の腐敗を米国が解決する、といううがった見方にはならないだろうし、そんなことをしたら映画も上映できない、張芸謀もただではすまない。

軍隊を攻撃や防御の種類に応じてコスチュームを色分けするのは張芸謀映画の定番。もはや珍しくもなく、手の内見たり、という感じで、戦闘シーンも金かければ出来るでしょ、っとCG満載。司令官とマット・デイモンが「信任」という言葉をキーワードにしているが、それがないのが今の社会でしょ、と言う程度で、メッセージが伝わるほどでもない。

もうちょっと簡単に、できの悪い怪獣モノ、強いて言えば異民族に対する今も存在する見方、を反映しているのではないかと思ってしまう。映画があまりヒットしなかった、というかコケたというのも理解できる。


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