Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

「九二共識」中国揺れる?

2011-08-30 16:55:00 | 時事
来年1月に迫る台湾総統選挙に向けて、野党・民進党の総統候補である蔡英文主席が中台両岸交渉の前提条件となっている「九二共識」(92年コンセンサス)を「存在しない」と発言したことについて、馬英九総統(国民党主席)は直ちに反論、「九二共識は確かに存在する。私はそこにいた」と語った。

台湾からの報道によると、馬総統は28日、官邸で会見し、92年の中国側の海峡両岸関係協会と台湾側の海峡交流基金会の交渉で、中国側からの提案で、「双方はひとつの中国の原則を受け入れる」との文書が出来た。馬総統は92年8月1日に、当時の李登輝総統が国家統一委員会の席上、この大陸から来た「ひとつの中国の原則」決議を承認している、私もそこにいた、と話した。

ただ、中国・新華社通信のサイトで、このニュースを伝える記事がおそらく配信されていたのだろうが、実際に「馬英九引資料証“九二共識”存在」と書かれた部分をクリックすると、「この記事は削除されたか、すでに掲載時間を過ぎました」との中国語の説明が出ただけで、どうやら記事を削除したようだ。一つの中国の原則について、台湾側の解釈をサービスしすぎて掲載し、従来からの中国の見解を超越してしまったのではないか。

すでに配信済みの記事なので、とりあえず、検索してその記事を別の媒体のサイトで見つけ出し、読んでみると、

馬英九がいうには、香港での中台の談判で出たこの文書を持ち帰り、台湾側の海基会は11月3日、「ひとつの中国の原則について主管機関の同意を経て、口頭声明なら受け入れ可能」と大陸側にファクスするとともに文書で発表した。13日後、大陸の海協会から回答があり、11月3日に台湾側機関から「台湾側関係部門が同意し、口頭での声明というやり方で各自表現するこということに、わが方も、そちらの提案を十分尊重し受け入れる」の通知を受け取った。

と書かれていた。
おそらくこの部分だろう。「一個中国、各自表達」縮めると「一中各表」。つまり、中台双方は一つの中国の前提下で、その「一つ」についてはそれぞれ異なった2つの表現方式を認めるということ。言い換えると、中台が交渉する前提条件としての「中国は一つ」と中台ともに認める。ただその「中国」は大陸では「中華人民共和国」で、台湾では「中華民国」と考えてよい--というものだ。

前も書いたが、台湾側はこの後ろ側を付け加えることによって「一つの中国」の解釈を認めている。ただ、これは「暗黙の了解」であって成文化されてはいない。大陸側はこれを表面的には否定しているが、独立派・民進党の陳水扁総統をスケープゴートにして国民党側と交渉を進めるために、認めてはいるが表立ってはまったく触れていない。

それなのに、この記事では、大陸側が「各自表達」について通知、つまり文章で「認める」としたと書かれていることから、中国側の大原則に外れていることになり、ただちに削除したのだろう。


この映像は交渉窓口機関の台湾側の辜振甫・海基会理事長(左)と中国側・海峡会の汪道涵会長。ちなみに辜理事長は生前、この「九二共識」の存在を否定していたという。

蔡英文主席の声明に対して、中国共産党側も直ちに九二共識を擁護する立場を表明して、馬政権を支持し民進党を攻撃するスタンスを示しているが、あまり深追いすると、事実上の「1つの中華民国」の立場を追従してしまうことになる。その無様なやり方がどこまで続くか。

ゴーヤ収穫

2011-08-30 10:10:29 | ゴーヤ日記

種から発芽し、ベランダで育ててきたゴーヤ。あんまり大きくならないうちに実が黄色くなってしまってきたので収穫した。全長9・5センチほどか。あまり期待していたほど大きくならなかった。一度油カスをまいてみたのだが。で、残り大きく実をつけそうな雌花はない。あーあ。今夏の収穫はこれだけなのだろうか。ある種の体験学習ですな。もう少し早く育て始めないと。朝晩は涼しい風も吹くようになってきているし。

これにてゴーヤ日記は終わりなのだろうか・・・。もう少しならないかなあ。

さて、どうやって食べよう。ゴーヤチャンプルを作るほどの量はないし。

台湾総統選の争点

2011-08-25 18:16:37 | 時事
来年1月14日に、立法委員(国会議員)選挙とダブル選挙で実施される台湾総統選に向け、野党・民進党の総統候補となる蔡英文主席は8月22日、「十年政綱総綱」(今後十年間の総合的な政治綱領)を発表した。台湾の中央通信によると、「和而不同、和而求同(和して同ぜず、和して同ずることを求める)」の精神で台湾海峡両岸(台湾と中国)の戦略互恵関係を構築しようと呼びかけるものだという。

「政綱」は、就業や教育、民主化、環境、平和的国際戦略など六つの論点を軸にまとめられており、「世界戦略」と「公平正義」が全体の基本理念となっている。「世界の一員として中国と接し、戦略互恵関係を構築すること、自主的な経済発展と相互往来を増やすこと」を呼びかけている。

「和而不同、和而求同」とは、従来の中国大陸政策を軌道修正し穏やかで建設的な両岸関係を模索することが、台湾が平和的発展を求める国際社会の一員として求められる姿勢だとしている。

最大の争点になると見られるのは、蔡主席はこれ以外に「九二共識」なるものは存在しない、との見解を発表したからだ。

「九二共識」(92年コンセンサス)とは、1992年に中国側の海峡両岸関係協会と台湾側の海峡交流基金会の両交渉窓口機関が香港で行った協議で、「ひとつの中国」の原則について合意し、今後の交渉を進めるベースとなる考え方で、台湾側は「九二共識、一中各表」と、うしろに「一つの中国の解釈は、中国と台湾でそれぞれの解釈で」を加えて、「一つの中国イコール中華民国だ、大陸では一つの中国といえば中華人民共和国だ、と解釈することを認める」と解釈することで、台湾内の反対を抑えて、中国との交渉、協商、を進めてきた。ちなみに中国大陸側はこの「一中各表」は認めていないが、独立派の民進党の勢力拡張を抑えて国民党政権をカウンターパートとして維持したいために黙認している。

台湾独立を党是とする民進党としては、中国大陸側と一定の関係改善を築くことで、総統選で有権者の支持を得ようと考えたもののようだ。
国民党主席で、初代民選総統だった李登輝は、台湾と中国はそれぞれ別の国とする「両国論」を主張するなど、事実上民進党的な台湾独立の考えを持っていたが、それに続く陳水扁総統も急進的な台湾独立の政治を実行した。大陸の中国共産党政権はこれに反発、民進党政権時代は長く中台断絶の時期が続いた。
経済不況のなか、一人勝ちする中国経済にあやかろうと、2008年に3人目の民選総統となった馬英九の国民党は中国大陸との接近を図り、関係融和を進めてきた。ECFA(中台両岸経済協力枠組協議)などで、経済的結びつきを強めてきた。

馬英九のように、大陸との関係改善を有権者に訴えるべく大陸を味方につけるのか。大陸側は民進党には勝ってほしくないから、国民党政権との関係改善をさらに進めるように内政干渉するだろう。

一方で民進党は、台湾の人々が「統一も求めず、かといって独立を宣言して大陸と断絶するのは避けたい。独立でも統一でもない状態」を望んでいるとして、大陸との経済を中心とした関係改善を含んだこの綱領を出してきたのだろう。

つまり、遠い将来の統一を前提にした国民党なのか、両国論に代表される2つの政治実態を認めるような関係に中台両岸を持っていくとする民進党なのか。

仮に有権者が「蔡総統」を選んだとしたら、共産党も民進党と付き合い始めなければならなくなるのではないか。1月までに、有権者の選択肢に影響を与えるどのような事件がおきるだろうか。共産党は民進党の綱領に回答を示すのだろうか。

中国無人偵察機墜落

2011-08-25 11:06:09 | 時事
25日の香港紙「明報」は、中国人民解放軍の国産ステルス型無人偵察機が最近、河北省障泊艪ナ墜落したと報じた。BZK-005高高度長距離無人偵察機で、北京の沙河空港を離陸し訓練を終え、障泊艪フある村の林の中に墜落し炎上、幸い地上に負傷者はなく、当局が現場を封鎖、夜になって同機の残骸を回収した。村人が明報の取材に対して、軍用機が墜落し多くの軍人が現場に来たと答えた。

墜落した偵察機は、解放軍総参謀部無人偵察機総站の直属で、ハルビン航空機工業グループと北京航空大学の共同設計で、重量1250キロ、連続航行時間は40時間、巡航速度は自足150-180キロ、地上8000メートルの高高度の偵察任務が可能--という。

同機が墜落した村では、ネットへのつぶやきによると、「夜10時、国道のT字路付近のトウモロコシ畑の裏に墜落した」、別のつぶやきでは「昨日、友人から聞いた。写真を撮ったという。両翼12、3メートルで、頭から落下した」--などなど。

中国版ツイッターで墜落写真も発見。すごい速報性だ。

中国オンライン攻撃

2011-08-24 21:51:00 | 時事
中国当局による米国へのサイト攻撃は常々言われてきたが、中国側は「根も葉もない嘘。われわれこそがハッキングを受けている」といい続けてきた。しかし、今回、中国当局による米サイトへのハッキングの証拠が、図らずも中央電子台(テレビ局)のドキュメンタリー番組で露呈してしまったとの指摘がある。

F-Secure(エフセキュア)というフィンランドのインターネットセキュリティ会社のブログで指摘された。番組はCCTV7(軍事・農業)チャンネルのドキュメンタリー番組「軍事科技」で、人民解放軍の専門家が、中国で反体制宗教団体とされている法輪功のサイトを攻撃しているところを解説している場面だ。問題の部分の拡大部分。YouTubeから。

だいたい、こんな風に書いてある。

 この番組は、サイバー戦争の可能性とリスクに関する、かなり標準的な20分のドキュメンタリー番組のようだ。しかし、理論について話している間にも、カメラの映像では、米国の標的に対して攻撃をローンチしている中国政府のシステムが示されている。これは非常に珍しいことだ。最も可能性の高い説明は、編集者がその重要性を理解していなかったために、この映像が最終編集版に含まれたというものだ。


画面には、中国人民解放軍情報工学大学 攻撃対象を選択 ターゲットIP 法輪功サイトのリスト・・・・

という手順に従ってマウスが動く。ただ、ここで「明慧網站」というターゲットを選択して現れる
「138.26.72.17」
というIPアドレスは米国の大学に属するものだ、というのだ。F-Secureのブログでは、どのような攻撃をしているかははっきりしない、としているが、米国の大学を標的に持つソフトウエアの存在は初のニュースであり、中国人民解放軍の情報工学大学で開発されたものだという。

人民解放軍製のハッキングソフトの存在が明らかになり、また米国への攻撃が明らかになっていることから、他の公的機関への攻撃も当然ありえるだろう、というのが、このブログの考え方なのだろう。



ユニバ女子サッカー日中戦

2011-08-22 15:19:39 | 時事
中国広東省深センで開かれているユニバーシアードの女子サッカー決勝で21日、日本と中国が当たり、中国が延長で2-1で18年ぶりの優勝を果たした。スタジアムのチケットは売り切れ、ネット配信の中国CCTVテレビで見た限りでも5万人ぐらい入っていたのでは? 日本がボールを持つと「ブーッ」と地響きのようにブーイングがすごいし。ワールドカップを制した「なでしこ」の系統の日本女子に勝った! ということで、もう少し大騒ぎしているのかと思ったら、中国メディアは結構冷ややかだ。

上の写真が22日付人民日報1面。下の方に文字だけ「ユニバ中国女子サッカー奪冠」と触れている。終面の運動面では大きな写真があるが、女子サッカーだけの記事ではない。

スポーツを通じた教育の必要性を説いている。と、いろいろ見ていたら、大学生の運動選手か、運動選手が大学生なのか、と中国の競技人口の底の浅さを指摘し、手放しでは喜べない、との論調が目立つ。

その一つ、湖南日報の運動面を見ると、下の方に小さく女子サッカー優勝の記事があるが、その左側、つまり本記原稿は「女子サッカーが勝利しても飢えを満たしてはくれない」で、この原稿の方が優先的にレイアウトされているといっていい。

内容は、
「学生チーム、といっても、7人はフル代表か元フル代表で、そのうち2人はフル代表の主力だ。決勝のスタメンのうち、中国側は1989年以前に生まれた選手が8人、日本側はすべて89年以降に生まれた選手だ。フル代表の選手をユニバチームに派遣するのは、「大を以て小を打つ」になってしまうが、中国サッカー界の底辺がきわめて脆弱で、特に女子サッカー人口は少ないので、仕方がない。純粋な大学生をそろえたチームにするのは不可能で、便宜的に大会のために大学生籍をとったプロ選手を呼ばなければならなかった」と振り返っている。
そして、
「今回、中国女子サッカーの勝利は、絵に描いた餅であり、飢えを癒やすことはできない。一時の勝利で、日本サッカーとの溝を埋めることはできず、中国サッカーは20年前からの負債を抱え続けている。
サッカーというスポーツは、きょうあすに収穫を得られるものではない。日本や韓国は数十年も発展しつづけて今のレベルに至った。1978年、日本でサッカーが授業のカリキュラムに組まれてから、サッカーは学校の体育の重要な科目となり、結果として日本サッカーが全面的に発展することになった。ユニバの経験を通じて、数がなければ質を語ることはできない、(サッカー)人口がなければ才能を語ることはできない、日韓の青少年サッカーと学校活動での育成の経験を学び、多くの子供に小さいときからボールに触れさせて、さらに多くの選手をまず学校で育て、その後専門的なチームで成長させる事ができれば、中国学校サッカーが真の才能の揺りかごになるだろう」と、言っていることはきわめてまともだ。
やや学校スポーツを強調し過ぎる嫌いはあるが。日本の場合は体育でサッカーを取り入れたからサッカーが強くなったというより、地域で地道にスポーツ少年団などの活動を続け、その組織とネットワークが広がり、多くの子供たちがサッカーに触れられるようになったからだろう。野球も同様にリトルリーグから高校野球の甲子園大会を頂点に、子供たちがスポーツの真剣勝負をする場が整っているからだ。

ちなみに、ネット上でやっと見つけたユニバの中国女子サッカーチームのメンバー。最高年齢は1984年2月生まれだから、27歳と6カ月。

一応、ユニバの出場資格は:
●大会が開催される年の1月1日現在で17歳以上28歳未満
●かつ、大学または大学院に在学中、もしくは大会の前年に大学または大学院を卒業した人
●プロ、アマ選手ともに出場可能

このBI・YAN(比の下に十、妍)という選手は本当に年齢制限ギリギリだし、本来の意味での大学生とは言えないだろう。ナショナルチームがよい成績を残すと、国民が喜んで愛国心を鼓舞することができるため、主催国でもあり、中国はどんな手を使ってでも金メダルの数を増やしたいのはわかる。ただ、18年前にユニバで優勝し、あるいは99年のW杯で準優勝してから、底辺を広げる努力をせず組織を放置し、結果としてサッカー人口が極めて少なくなってしまった。社会主義体制ゆえスポーツエリートのみを養成し、それ以外の国民の健康と参加型のスポーツ普及については、触れてこなかった。今更ながら、それに気がついてきているなら、まだ望みはあるか。日本が歩んだように数十年はかかると思うが。

教育にスポーツを用いない中国では、代表選手の素養の低さ、というか、サッカーやバスケットボールの試合でしばしば乱闘騒ぎが起きる。中国サッカーは八百長も問題となるなど、社会主義は成果主義でスポーツエリートだけを養成する。スポーツだけしていればいい環境下では、スポーツ馬鹿だけがのし上がり、心の教育が出来ていない結果、国際試合などで醜い乱闘騒ぎがおきるなど、精神面を制御できない場面をしばしば見る。フランス元代表の英雄、ジダンは二度と中国でサッカーの試合をしたくない、とまで言った。

いまの議論は学校スポーツの特性を履き違えていて、代表チームが強くなるために学校スポーツを取り上げている。本来はトップが強くなることを求めるための学校スポーツではなく、子供の健康、国民の健康のための大衆生涯スポーツの普及を考えない限り、体力のないもやしのような中国人を大量生産するだけだろう。

温家宝小芝居の訳は?

2011-08-21 15:50:00 | 時事

7月23日に温州で発生した中国高速鉄道追突脱線事故で、事故発生からかなりたった7月28日になってから温家宝首相が現場を視察、「11日間、病床にいたので来るのが遅くなった」と言い訳した件で、8月16日の台湾紙「中国時報」が面白い報道をしていた。鉄道部大改革を影で操ったのは温首相で、この視察の日をもって鉄道部(省)独立王国にメスを入れる転換点になったという。

「鉄道部整頓に温家宝は本気だ」と題した記事で、北京の消息筋の話として、事故の翌日、7月24日に開かれた中国共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会の席上、鉄道部の徹底整頓を主張する温首相に多数の支持は得られず、胡錦濤党総書記もどっちつかずの態度だったという。温首相は「以病明志」、つまり病気であることを出して自分の志を見せつけよう、と覚悟を決めたという。

事故現場で鉄道部の実態、事故処理のやり口があまりに深刻だということをほのめかす一方で、遺族の声に耳を傾け現場での会見でも「病気だ」と話し、鉄道部の厚い壁を破れない孤立感と無力感を演出し、視聴者の同情を得る作戦だったようだ。温首相は、北京に帰った後、再び政治局常務委員を説得、胡総書記もついに温首相の主張に同意したという。

それまでの鉄道部は、劉志軍部長(大臣)と張曙光副総工程師(副総技師)が今年はじめに更迭され、国務院(政府)が鉄道部独立王国の整理を始めようとしても、鉄道部内では「税関を管理した奴を送ってきても、俺たちは管理できない。お笑いだ」と皆話していたという。劉鉄道相の後任に、盛光祖・海関(税関)総署署長兼党組書記を持ってきたことに対するあてつけで、大臣を代えても中央指導部のいうことを聞かない状況は変わらなかったという。

温首相の体を張った会見以降、鉄道部の粛清が始まり、まず中央指導部が高速鉄道の神話を自ら打ち消し、すべての車両の減速を打ち出して速度より安全を重視する原則を示し、調査委員会から鉄道部の人間を追い出し、数々のトラブルや故障が明るみになってきている。

温首相は、かつて政治改革を主張した際にも指導部の中で孤立したことが頭にあったのか、今回は引退後も特にどの派閥にも属さなず後腐れもないと覚悟を決めて思い切って鉄道部に大ナタを振るったという。

写真は7月28日の事故現場での温首相の会見風景。手前の記者団の中でシマシマのダサい帽子をかぶっているのが、香港メディアが指摘した、事前に質問することが決まっていたと見られる新華社などの記者。

結果として高速鉄道事業の見直しが始まり、温首相の小芝居も意味があったわけで、温首相、ブログで批判して失礼しました。

税務総局声明の謎

2011-08-19 02:35:16 | 時事
中国税務総局が8月15日に出した「2011年47号」すなわち「個人所得税徴収修正に関する若干の問題についての公告」が偽物である、との声明について、頼りの香港紙は、16日付の紙面では求められるような言及がなかった。ただ、ネットを検索すると、(当たり前だが)話題になっていることは確かで、いくつかの問題を考えるヒントは得られた。

幻の「47号」公告は、個人所得税法上の年末ボーナスの課税問題の矛盾をただす内容らしい。「1元余計に多くボーナスをもらえば、所得税を2万元余計に払わなければならない」という情勢を正す措置がとられる、というような内容らしい。累進課税の考え方で、一定の金額を超えると損をするラインが存在するらしく、そのような弊害を正す措置をとる、と「偽公告」は告げていたという。

第一財経日報の取材に対して、何人かの専門家は、「確かに指摘されるような税制上の問題点は存在する」「個人所得税の改革は進行中で、技術的な誤差はあり、改革の中で正していかなければならない。ただ今回の税法改革の中で修正されるものではない」などと答えている。実際、12日の新華社の取材に対して税務当局者は、年末ボーナスの課税問題について改革を行うとの考えはない、と回答しているという。

はじまりは13日の広州日報のA10面に「年末にボーナスへの課税方法が変わり、多くボーナスをもらって結局課税で損をする、という状況が改善される。9月1日から実施される」と解説付きで掲載されてからのようだ。北京晩報(夕刊紙)にも似たような記事が載ったが、北京晩報は「広州日報を引用したものだ」という。いずれも「近く税務総局が発表する」としている。これを受け、中央電視台(テレビ局)や中央広播電台(ラジオ局)も報じ始めたという。そして一日おいて15日、税務総局が打ち消しの声明を出すことになる。

とっかかりの広州日報が疑わしいが、ニュースソースについては口をつぐんでいるようだ。広州日報のサイトで検索すると当日の新聞のPDF版を見ることができる。問題の記事は右端上部のようだ。白く塗りつぶされていて、もう見られなくなっている。

「公告」の中身は突拍子もないものではなく、きわめて自然な内容で、中国の権威ある多くのメディアも納得しだまされたらしい。

ということで、「何者かが税務総局の名を盗用して……」という税務総局の声明の、「何者か」が誰なのか問題になってくる。中央電視台のキャスターのツイッターで多くの人々がこの問題をつぶやく中で、「何者か」は「当局のどこか」と同じなのではないか、との声が上がる。そうでなければ、多くのマスコミが「公告は税務総局のものだ」と信じるわけがない、としている。

推測するに、個人所得税法上の問題点を解決すべく、税務総局内部で検討されていた草案が流出したのではないか? あるいは、実際に公布される直前の段階で、何らかの反対が入り日の目を見なくなった素案で、作成作業を進めていた若き官僚が反発、一部新聞を通じて素案を意図的にリークしたのではないか。それゆえ、「声明」でも「何者か(有人)」と犯人を特定するような表現をしているのではないか。

ここで言えるのは、中国の省庁が、法制上の問題点をきちんと解決する態度をとれていないこと、それに対する内部の突き上げまであること、職務上に知り得た情報を、容易に流すほど公務員の士気が低下しているということ……などが考えられる。明らかに政権末期、体制末期なのではないか。

税務総局がミスか!?

2011-08-16 02:17:31 | 時事
新華社によると、中国税務総局が以前、対外公布したとされる「国家税務総局の個人所得税改正に関する若干の問題の規定についての公告」(2011年47号)について15日、何者かが税務総局の名義を盗用し勝手に解説し、解説文を媒体に載せ、納税者に重大なミスリードをしたとして、税務総局はこの「公告」の文献と解説文について発表しておらず、偽造であるとし、法に従って公文書偽造者を追及する、との声明を発表した。


新華社の配信は15日18時12分だ。ご丁寧に税務総局のサイトと、この声明がある場所、実際の声明文も画像で掲載している。

なんじゃこりゃ? 誰かが税務総局のサイトにハッキングしてこの文章を載せたのか? いやいや、それはなかなか難しいだろう。中国当局の官庁のサイトがそんなに容易にハッキングされたなどと、当局が明かすわけがない。発表してから当局に、あるいはもっと上層部に見解の相違が生まれて、打ち消しに走っているのか。それとも税務総局内部の人間の個人的見解が公式見解として掲載されてしまったのか。

税務総局に限らず、中国の公式サイトからはこの「公告」が削除されていて、どんなものなのか、わからない。

とりあえず、この「公告」なる文章を入手し分析中。あすの香港紙がわかりやすく解説してくれればいいのだけど。
ざっと見たところでは、個人の所得税減免の対象となる項目がいくつもあげられているようだ。膨大な量の文章なので、読み解くのは大変だ。

日本をプチ攻撃

2011-08-16 02:05:03 | 時事
日本批判が、中国人民の反政府行動の熱をさましてガス抜きする、中国当局のいつものやり口だと書いたが、15日、新華社や人民日報のサイトを見ると、日本がそれほど大きなヘマを犯してないので、枝葉末節な日本批判の原稿がかいま見られる。

人民日報は「国家海洋局は日本の福島原発の汚染物質がすでに中国海域に進入していると述べた」との記事を15日午前8時26分付でサイトに配信した。「科技日報」の原稿を引用したもので、12日に国家海洋局環保司が書面で「観測の結果、公海海域ははるか日本の影響を受け、核汚染物質が我が国管轄の海域に進入している可能性を排除できない」と回答したという。福島の東25平方キロの海域で水質検査した結果、サンプルからセシウム137とストロンチウム90が通常の300倍と10倍観測され、通常海水からは検出されないセシウム134も検出されたという。半減期は30年なので、これが長期間になれば中国にも影響を与える、という内容だ。
3日前の取材をなぜ15日に掲載するのか、という感じだ。うさんくさい。

新華社は同日18時40分、直ちにこれを否定する原稿を配信。「国家海洋局は、福島原発の漏えいは目下のところ我が国海域に影響を与えていない」として、15日に新華社記者の取材に対し、国家海洋局は福島原発事故の海洋環境の影響に対して重大な関心を示しているが、目下のところ、日本の東、東南部の西太平洋海域に影響が見られるだけであって、我が国(中国)には影響は見られない、と打ち消した。
鍵となるのは、日本の東側で観測された高濃度の放射性物質に汚染された海水が日本列島をぐるりと回って中国側に行くか、という問題で、新華社の原稿では、基本的には日本の東側に影響を与えるが、複雑な小さな渦の影響で西南側に来ないとはいえない、ただ、福島原発事故以降、中国当局が観測しているが影響はない、としている。そして今年下半期にも二度目の海洋調査を行い、結果は公開する、としている。

この早速の打ち消しは何なのか?「科技日報」といえども、可能性について言及しただけの、あまりに行き当たりばったりな結論に、新華社はパニックが起きることを恐れて打ち消しに走ったに違いない。ただ内容は敢然と否定したものではなく、人民日報の内容をなぞっただけで、結論のみ「まだ大丈夫」としている。

続いて、8月15日ゆえの国会議員の靖国神社参拝について、人民日報が、「靖国神社参拝で日本人の双重(二面)性が再度暴露された」と配信した。8月6、9日に広島、長崎の原爆投下に際して平和活動を行っているが、1週間もたたないうちに靖国神社を参拝しており、8月は、国際社会に日本の戦争の反省の態度に対する二面性の考えを示すよい機会だ、としている。
特に、安倍晋三・元首相が首相在任中は靖国参拝をしない、と言及したのに、今は参拝していることを「日本人の二面性を深刻に反映している」としている。「安倍が在任中は国家利益を重視し、首相退任後は部分的な民意を重視、あるいは自らの心の内に基づいて参拝している」と安倍の本性をわきまえた記述をしているのに、いかにも安倍の変心、といったようなトーンの原稿を書いている。
安倍が福田赳夫・元首相の系列で、親台湾・反中国の佐藤栄作・元首相の流れをくむ清和会に属しているなど、思想的には靖国参拝も反中国も明らかなことは、首相在任前からわかっていたことで、中国の当時の論調に「ハト派」だとか「アジア重視」だとか、片腹痛いと鼻で笑ったものだった。日本問題について取材、執筆する記者は、もう少し日本を勉強、理解した方がいいんじゃないの、と思ったものだ。

3つ目は、人民日報のサイトが15日13時42分に配信した「環球時報」のサイトからの引用で、「日本がベトナムの宇宙開発に70億円を援助」と報じた。共同通信の原稿を受けたもので、本来ODA(政府開発援助)は発展途上国の貧困問題を解決するために使われるものなのに、人工衛星計画という宇宙開発に使われるのはまれだ、としている。
現在、中国はベトナムと南沙諸島の領有および石油開発、施設破壊の問題でトラブルを抱えており、ベトナムへの印象はきわめて悪い。日本がそれに肩入れするとは、ましてや軍事技術にも転用が可能な人工衛星発射計画に支援するとは、いかがなものか、というトーンだろう。

さて、あしたの人民日報はどのように日本批判をしてくるのか。石原慎太郎・東京都知事が「参拝しないやつは日本人じゃねえ」とか言ったことを大きく扱うのだろうか? あるいは新華社などが抑えたものになるのか。賢明なる中国人民はそんな簡単な「引っかけ」には乗ってこないと思うが。

ゴーヤ大きくなった(8月15日)

2011-08-15 13:45:34 | ゴーヤ日記
ベランダのゴーヤだが、ひとつが十分大きくなってきて、今はNHK朝ドラの「ちゅらさん」で出てきたゴーヤーマン(ちょっと古いか)のキーホルダーよりちょっと大きいぐらいか。大きくならなくてもあと1週間ぐらいで収穫するべきなんだろうな。ちなみにスーパーで買って冷蔵庫に入れておいたゴーヤが、多少破裂していて、中を割ると白い綿はまったくなく、種が真っ赤になっていた。これが熟してはじけるということか。ゴーヤ本体は黄色くなっていはいなかったが。

そろそろ、肥料を与えたほうがいいのだろうか。

これ以外にもいろいろゴーヤになりそうな雌花のあとは発生している。これが一番ちっちゃいの。

いくつか現認できる。花が開いたら雄花とくっつけて受粉しなければ。

これは少し成長したやつ。一応受粉は済ませた。マンションの上のほうだと、昆虫もやってきてくれないので。

あと、どのくらいゴーヤが生えてくるのだろうか。べランダの金属部分とかに触れている葉は枯れたりしている。あまり気にしていないが、下のほうの葉は色が変わったり、落ちたりしている。ゴーヤの実は上のほうにしかできないのだろうか。

大連で大規模デモ

2011-08-15 11:11:42 | 時事

大連で1万2千人規模の抗議デモがおきた。YOUTUBEで見ても、すごい規模だ。化学工場の汚染物質という、人々がもっとも関心を持つテーマだとしても、新幹線事故のあとの反政府行動を警戒する時期に、突然これだけの人々を巻き込むことが出来るデモが発生してしまったことは、中国当局にとって大変なショックだろう。
新疆ウイグル自治区の事件の抑圧にのみ目を向けて、個別の大都市の動きには無警戒だったのかもしれない。
抗議デモの要求をすぐにのんで、工場の停止を決めたことも、当局に対して迅速な措置、とほめられるかもしれないが、中国各地で不満を持っている人々に、「デモを起こせば要求が通る」と思わせる前例を作ってしまった。

写真は即時停止を報じる15日付の人民日報6面。左下に小さく掲載されている。

反中国当局的な動きには、反日の事案をでっち上げてそちらに庶民の目を向けてガス抜きすることがしばしばだ。黒龍江省方正県の満蒙開拓団の犠牲者のために県政府が建立した慰霊碑を、「非国民だ」とネット批判が殺到して撤去した問題も、味千ラーメンのとんこつスープが袋入りのインスタントだと批判された問題も、おそらく新幹線事故への人民の関心と不満をそらすために、人民がもっとも食いつく日本帝国主義と食の安全の問題をクローズアップしたものを、あえてあのタイミングで流したものだろう。そういう意味では、新幹線問題で当局の報道規制を跳ね除けて報道したと賞賛された中国マスコミだが、一方で、その沈静化に向けて当局の意を受けて、いわばガセネタを飛ばした。中国マスコミに何の節操もないと思われても仕方がないだろう。
きょうは8月15日。中国当局が何か日本批判をするかもしれない。ちょっと要警戒か。

温家宝後継に李克強

2011-08-10 22:07:24 | 時事
香港特別行政区政府は9日、李克強・第一副首相(政治局常務委員、序列7位)が16-18日、香港を訪問すると発表した。香港紙「明報」が数日前に李副首相が香港を訪問することを報じており、最近では副首相級で香港を訪問した例はなく、次の首相含みでの香港訪問だとしていた。

明報のスクープが当たった形だ。ただ、これで首相就任は確実、というのは、銭其シン副首相も、1996年全人代常務委員会香港特別行政区準備委員会予備工作委員会主任に就任、中国代表団として香港返還式典に出席。銭副首相は当然首相になっていないから例外だが、と、これで首相に決まりだ、と言い切れるのだろうか、と思っていた。明報が言っている副首相レベルでの香港訪問はない、というのは、返還業務以降の話としてなのだろう。

明報を疑うわけではないが、10日の「サウスチャイナモーニングポスト(南華早報)」が、「李克強が香港訪問する。次の総理になるのを確認した」と報じ、確実なのかな、と思うようになった。サウスチャイナには、かつての著名なコラムニストで今は米国のシンクタンクの研究員となっているウイリー・ラム(林和立)氏が「李克強は今回の訪問でさらに一歩、温家宝総理の後任になると証明された」とコメントを寄せていたからだ。
ウイリー・ラム氏はサウスチャイナの特ダネ記者として鳴らしたが、親英反中の編集方針だったサウスチャイナが、香港返還以降、中国本土から大陸の英字紙「チャイナ・デイリー」の編集幹部が入り編集権を掌握するなどして仕事がやりにくくなり、サウスチャイナを飛び出した形になっている。

温家宝首相は常々、今期で引退することをほのめかしており、後任の最有力は胡錦濤総書記や温家宝首相と同じ共産党青年団派(団派)の李克強だった。当初から太子党の習近平総書記、団派の李克強首相とバランスをとると見られていた。ただ、太子党が押し気味の傾向も見られ、首相候補には第2副首相の王岐山や広東省党委書記の汪洋、まあ、ありえないとは思うが、太子党がゴリ押しするなら重慶市党委書記でスタンドプレーの目立つ薄熙来も喧伝されていた。

李克強が首相になるのなら、これで一応バランスの取れた形となった。

新疆に厳打

2011-08-06 09:45:20 | 時事

中国高速鉄道事故を起こした責任追及を進める中国マスコミへの規制について、暴動が全国的に広がることを中国当局は最も危惧している、と先日書いた。案の定、新疆ウイグル自治区の治安悪化を重く見た当局は、「厳打」態勢に入ることを決めたようだ。
香港紙「明報」によると、先日、大規模なウイグル族と漢族の衝突で死者を出し情勢不安となっている新疆ウイグル自治区の治安維持について、国家反テロ工作協調グループは反テロ工作会議を区都ウルムチで開催、孟建柱・公安部長兼同グループ長が胡錦濤国家主席ら中央指導者の「重要指示」を伝えたという。直ちに事件を解決し、暴力恐怖勢力に徹底的な打撃「厳打」を与えよとの内容だという。
孟公安部長は、新疆の各党委政府は民族分裂に反対し国家統一と安全のための任務を果たし、まじめに総括しろと訴えた。明報はこれを張春賢・新疆ウイグル自治区党委書記のウイグル懐柔政策がゆるすぎる、との批判を暗に示したものだ、と報じている。
張春賢書記は、「新疆王」とまで呼ばれ独裁体制を築いていた王楽泉前書記が、2010年4月、一連の新疆暴動の責任を取る形で更迭されたあとを受け就任、「最も開放的な書記」といわれ、胡錦濤主席の信任が厚いともいわれている。
一方で、孟建柱公安部長は、胡錦濤の政敵といわれる周永康・政治局常務委員・党中央政法委員会書記の下にいる公安部門のナンバー2。上海副市長も歴任しており、江沢民系だろう。権力闘争の匂いがプンプンしてくる。

「厳打」は、犯罪撲滅キャンペーンで、凶悪犯を逮捕するために町が戒厳状態のようになる。パトロールも徹底され、ホテルや繁華街の出入りなども厳重になる。ますます観光客が遠のくだろう。
明報によると、実際、観光客はすでに激減で、明報記者が滞在しているカシュガルのホテルは75室のうち20室のみが埋まり、300元(約4000円)の宿泊費も250元程度に値下げしているという。カシュガル観光局長によると、観光地のエイティガール寺院(2枚目の写真)も以前は一日平均800人前後の観光客が来たのに、4日、入場券は273枚しか売れず、香妃墓地(冒頭の写真)も1200人着ていたのが360人などと激減しており、700万元の損失で、観光客回復まで1ヶ月はかかるだろう、と見ているという。

「厳打」のために町が戒厳状態になっているうえに観光客が激減していては、夏の観光客かきいれ時に大変な損害だ。これも胡錦濤系の党委書記に押し付けられるのだろうか。