4月21日の人民日報に中国の人口問題についての論文が掲載されていたので、書かなきゃ書かなきゃと思っていたら時間がたっていた。28日の人民日報は1面トップで「経済社会の発展がよりよい人口環境を作り上げるため、人口政策を強化する」と、胡錦濤総書記が中央政治局の人口問題の会議での演説を載せていた。筋はこの21日の論文に沿ったものだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/0f/6a54f2ec6c7891d11ff385252d025a73.jpg)
21日の論文は結構辛辣なもので、「人口の素質と構造、分布問題は経済社会の持続的発展できるかどうかに影響を与えるボトルネックだ」と警鐘を鳴らしている。
簡単に紹介すると、(1)人口は増えるのに質は低下(2)年齢、性別に偏りが生じている(3)人口の地域分布が不均衡--をあげている。
(1)は、中国は毎年800万人ずつぐらい人口が増えているが、このうち80万-120万人は障害を抱えており、労働力の質に悪い影響を与え、家庭と社会の負担になるだろうと予想している。
20歳の貴州省の農村出身の趙華という高卒の女性を例に挙げ、江蘇省常州市の紡績工場に出稼ぎに出たが、1年前にリストラに遭い、本来働いて高齢者や子供の世代を食べさせるべき世代に属する彼女が、失業したことで他人に養われ食べさせてもらう対象となってしまった、と憂いている。
相当乱暴な議論だ。そもそも農村の低学歴の単純労働者を沿海地区の工場に出稼ぎさせ、低賃金の労働力を武器に、安い生産物を海外に売って外貨を稼ぐ、という構造は中国当局が奨励したものだ。その結果、中国が「世界の工場」となる基礎を築いたはずだ。世界の経済需要や産業構造の変化で、安価な単純労働力が不要になると、「質が低い。困ったことだ」との一言で片づける。本来、教育水準を向上させ、良質な労働力としての大衆の知的水準、技術水準を上げるのは中央政府、地方政府の仕事のはずだ。出稼ぎの農民工が都会で戸籍を与えられず、その子供が学校に満足に通えないことも、この労働力の質の低下を助長している。
また障害児が多く生まれるのも、彩色饅頭や毒入り牛乳、豚肉を牛肉の風味に変える薬など、得体のしれない食品偽装事件が次から次へと起こること、また、衛生状態も芳しくなく、医療体制も十分に整備出来ないことと関連しているのは否定できないだろう。論文が嘆く話ではない。当局の失政が招いた結果だ。
(2)の年齢、性別の偏りは、もっぱら「一人っ子政策」の産児制限による偏りだ。跡取り息子を求める農村部などでは、あからさまに「間引き」が行われ、男女の人口比は男のほうが圧倒的に多い。論文でも、結婚適齢期の男女比は男のほうが120万人も多く、10年後の予想では2400万人の男が結婚できないという事態になる、と予想している。
一人っ子政策は、高齢者の扶養問題にも影響を及ぼし、2人で4人分の高齢者を養わなければならない構造になる。
(3)は、農村部から都市部への人口流入が激しいということだが、中国当局は基本的に農民に都市戸籍を与えないから、かれらの身分は宙ぶらりんのままだ。地方都市に魅力的な雇用を多く創出しなければ、この問題は解決しない。
と、いずれも中国が、目先の発展と金稼ぎを優先して、地方や弱い者への配慮をしてこなかったツケだ。自業自得といってよい。人口問題を云々することでは何の解決にもならず、社会福祉や産業構造の全面的な改革をもって初めて解決に至る問題だ。
28日の人民日報の記事ではさすがにそこまで深入りせず、これらの深刻な問題に直面して人口問題を解決しましょう、と胡錦濤総書記が演説したことに触れている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/0f/6a54f2ec6c7891d11ff385252d025a73.jpg)
21日の論文は結構辛辣なもので、「人口の素質と構造、分布問題は経済社会の持続的発展できるかどうかに影響を与えるボトルネックだ」と警鐘を鳴らしている。
簡単に紹介すると、(1)人口は増えるのに質は低下(2)年齢、性別に偏りが生じている(3)人口の地域分布が不均衡--をあげている。
(1)は、中国は毎年800万人ずつぐらい人口が増えているが、このうち80万-120万人は障害を抱えており、労働力の質に悪い影響を与え、家庭と社会の負担になるだろうと予想している。
20歳の貴州省の農村出身の趙華という高卒の女性を例に挙げ、江蘇省常州市の紡績工場に出稼ぎに出たが、1年前にリストラに遭い、本来働いて高齢者や子供の世代を食べさせるべき世代に属する彼女が、失業したことで他人に養われ食べさせてもらう対象となってしまった、と憂いている。
相当乱暴な議論だ。そもそも農村の低学歴の単純労働者を沿海地区の工場に出稼ぎさせ、低賃金の労働力を武器に、安い生産物を海外に売って外貨を稼ぐ、という構造は中国当局が奨励したものだ。その結果、中国が「世界の工場」となる基礎を築いたはずだ。世界の経済需要や産業構造の変化で、安価な単純労働力が不要になると、「質が低い。困ったことだ」との一言で片づける。本来、教育水準を向上させ、良質な労働力としての大衆の知的水準、技術水準を上げるのは中央政府、地方政府の仕事のはずだ。出稼ぎの農民工が都会で戸籍を与えられず、その子供が学校に満足に通えないことも、この労働力の質の低下を助長している。
また障害児が多く生まれるのも、彩色饅頭や毒入り牛乳、豚肉を牛肉の風味に変える薬など、得体のしれない食品偽装事件が次から次へと起こること、また、衛生状態も芳しくなく、医療体制も十分に整備出来ないことと関連しているのは否定できないだろう。論文が嘆く話ではない。当局の失政が招いた結果だ。
(2)の年齢、性別の偏りは、もっぱら「一人っ子政策」の産児制限による偏りだ。跡取り息子を求める農村部などでは、あからさまに「間引き」が行われ、男女の人口比は男のほうが圧倒的に多い。論文でも、結婚適齢期の男女比は男のほうが120万人も多く、10年後の予想では2400万人の男が結婚できないという事態になる、と予想している。
一人っ子政策は、高齢者の扶養問題にも影響を及ぼし、2人で4人分の高齢者を養わなければならない構造になる。
(3)は、農村部から都市部への人口流入が激しいということだが、中国当局は基本的に農民に都市戸籍を与えないから、かれらの身分は宙ぶらりんのままだ。地方都市に魅力的な雇用を多く創出しなければ、この問題は解決しない。
と、いずれも中国が、目先の発展と金稼ぎを優先して、地方や弱い者への配慮をしてこなかったツケだ。自業自得といってよい。人口問題を云々することでは何の解決にもならず、社会福祉や産業構造の全面的な改革をもって初めて解決に至る問題だ。
28日の人民日報の記事ではさすがにそこまで深入りせず、これらの深刻な問題に直面して人口問題を解決しましょう、と胡錦濤総書記が演説したことに触れている。