Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

前原は日中関係のトラブルメーカー

2010-10-31 21:04:47 | 時事
「落としどころは前原更迭か」と書いたら、以下のような報道を見つけた。自分の考えを補強するものなのでは、と思った。

10月30日付の中国系香港紙「文匯報」は、「前原誠司是中日関係麻煩製造者(前原誠司は中日関係のトラブルメーカー)」と題する社説を掲載した。日本政府は前原外相を更迭すべきだ、と訴えている。文匯報は単なる香港の新聞ではない。「言論の自由」が束縛されている中国大陸の新聞に比べて自由度は多いが、中国当局の意を受けた編集方針で、事実上、中国政府の考えを代弁していると考えていい。

社説の内容を一部抜粋すると:

他国(米国のこと)と結託して釣魚島問題を再度議論の俎上に挙げ、日中外相会談の内容について事実でないことを広め、日中両国の東シナ海問題の原則となる共通認識上の立場について歪曲し、よって中日指導者がハノイで会談する雰囲気を壊し、結果として中日首脳会談を行うことができなかった。中日関係が困難な状況下にあるなか、前原は右翼反中勢力が主導する日本外交事務を代表しており、対抗的な対中政策を進めている。日本政府は目を覚まさなければならない。外相を替えなければ中日関係の改善はなく、日本の長期安定と発展はない。

もともと文匯報やもうひとつの中国系香港紙「大公報」は尖閣諸島問題についてはかなり先鋭な言論を乗せていたが、この社説はある意味読むに耐えないほどの攻撃的な論調で前原を攻撃している。
まさか菅首相もこれに乗るとは思えないが、中国いい加減にしろ、とまたバッシングが始まるだろうが、中国側はここまで考えている、というのを頭に入れておいたほうがいいかもしれない。

落としどころは前原更迭か

2010-10-31 14:25:41 | 時事

ベトナムのハノイで実現しなかった日中首脳会談。また日本国内では中国バッシングが激しくなるかもしれないが、一方で日本メディアもやっと、中国国内の権力闘争の反映の可能性を報じ始めた。すなわち、次期最高指導者のポストをかけて、対日融和派の胡錦濤・党総書記、温家宝・首相のコンビを中心とする共産党青年団出身者らの勢力(団派)に対して、軍や上海閥らの保守派が揺さぶりをかけている、という構図だ。
前原誠司外相と楊潔{(チ)外交部長の会談は、予定を大幅に越えて1時間以上も話し合われた。「へえーっ。決裂したわけじゃないんだ」と思ったが、どのような雰囲気、内容で話し合われたか不明だ。それでも、ギスギスした感じではなかったんだろう。前原外相は「日中首脳会談はハノイで開かれると思う」と発言するなど、ノー天気に楽観的だったのではないか。ただ、その後首脳会談を一方的にキャンセルされたことで、楊外交部長の表情からその思惑まで察知できず、前原外相はメンツを失ったわけだ。
朝日新聞によると、日中外相会談の内容を心配した中国メディアが、前原外相の会談後ブリーフィングを聞いた日本人記者に「会談の内容はどうだったんだ」と聞いて回っていた、というから、中国メディア側はただならぬ雰囲気を察知していたのだろう。
いったんは「開かれる」とアナウンスされた菅首相と温総理との会談がキャンセルされ、菅首相に同行していた福山哲郎・官房副長官は「驚いた。中国の真意を測りかねている」と発言したというが、心底そう思っているのか。そうならこんなやつらに外交を任せて大丈夫だろうか。それでも菅首相は「冷静に対処」と語っていたというから、もしかすると中国側から秘かに何らかの言及があったのかもしれない。その反映が翌日の10分間の懇談だ。温家宝総理は対日融和的な観点から中国側の立場を説明し、理解を求めたのではないか。もちろん菅首相とバイの会談が実現すれば、中国国内のネット左翼の攻撃の対象になる。冒頭写真は日中首脳会談キャンセル直前に行われた日中韓の首脳会談の冒頭、李明博・韓国大統領が強引に菅、温両首相の手を取り、握手をさせた場面だが、愛想笑いをしている菅首相に対して、温総理のムッとした顔は見ていて気の毒なほどだ。

日本各紙は、「中国はこの10分間の懇談を報じていない」としているが、31日に新華社のサイトを見てみると、海外メディアをかいつまんで引用した、冒頭の写真の記事「中日首脳未能実現河内会談(中日首脳はハノイ会談を実現させていない)」で、まず共同通信電を引用して、福山官房副長官の発言として、日中首脳がハノイで10分ほどの懇談を行い、今回、首脳会談が開けなかったことに「極めて遺憾」の意を示したこと、将来機会を設けて会談を実現したいとしたこと、日中民間交流の重要性を強調したこと、今後も戦略的互恵関係の実現へ努力すると表明したこと、を報じている。
この記事は外電を引用する形で中国側の言いたいことを間接的に示しているように見える。その中で、日本経済新聞の引用が比較的長く、
「中国側が日中首脳会談を拒絶したのは、主に主権問題で日本に譲歩した、との姿勢を国内で抱かれないようにと考えたからだ。同時に、日米が尖閣諸島問題で協力を強める局面が出ているのを抑える狙いもあった。中国側の真意は日中関係の改善にあったが、国内の根深い反日感情と保守派の圧力があったために強硬姿勢を取らざるを得なかった」
と、中国国内の権力闘争についての記述まで引用しており、中国側がこの見方を否定していないとの姿勢が伺える。

温総理は菅首相を割と大事にしていて、一方で中国側は前原外相を突き放そうとしているように見える。というのは数日前の新華社のサイトで、民主党内のタカ派の代表として前原を紹介していたからだ。その当時からちょっと気になっていた。

28日、国際先駆導報の記事を引用して、「日本政壇少壮派崛起」として、民主党内若手に反中国的な右翼的思想を持つものが少なくない、として前原誠司、枝野幸男を名指ししている。
前原については、松下政経塾出身であることも触れ、また、京都大卒業時に、指導教官の高坂正尭教授に「君の脳みそは大学教授には向かない」と言われ、政治の道を志した、とまで書かれている。日米安保を基軸として憲法9条改正(悪)、集団自衛権、再軍備などが高坂の代表的な思想だが、対中強硬派とまではいえなかった。前原は京都大の中西輝正ら中国脅威論者らの薫陶を受けて、保守思想が形成されていった、としている。菅直人首相は思想的にバランスが取れているが、次の世代、前原が首相になったらどうなるのか、として、朝日新聞の世論調査を引用し、第4位の位置にいると紹介、近い将来、このような思想の持ち主の若手が出てくるのは間違いなく、幼稚から成熟、感情から理智へと、幻想を抱かせず現実的になるように希望する一方、中国側も現実的な対応が必要だと、学者の意見として記している。

前原は、尖閣諸島沖漁船衝突事故の際、海上保安庁を管轄する国土交通省を取り仕切る国交相だった。今度は外相として、中国の外交政策に立ちはだかっているように見えるのだろう。中国は前原つぶしを狙っているのではないか。今回の首脳会談キャンセルも、前原をスケープゴートにしているのではないか。先のような記事を受け、前原に尖閣諸島問題の責任をすべて被せ、もしかすると「懇談」で菅首相に更迭を求めていたかもしれない。それが実現したのなら、中国の求めで日本政権内の反中右翼的な人材を更迭させた、と手柄を披露し、よって反日デモを抑え、指導部内の反日強硬派、保守派を納得させようとしているかもしれない。

メール事件で懲りたはずの前原は依然として言いたい放題だ。枝野も中国批判をしている。中国から文句を言われるのは不愉快だろうが、対中関係改善を考えるなら、自重したほうがいいのではないか。

サワラの西京焼き

2010-10-28 07:41:33 | 飲食
いつも食材を買っている近所の八百屋さん兼魚屋さん兼お惣菜屋さんに行くと、大将が「サワラどうですか?」と勧めてきた。塩焼きもいいけど味噌漬けにすると、というので、やってみるか、と挑戦することにした。三枚におろしてもらって6等分に。明日のお弁当のおかずにもなるな、と。300円。

一応ネットで作り方を確認したが、味噌300グラムに、酒、みりん、云々とあるが、味噌300グラムは多いんじゃない? と、結局目分量でやることにした。

タッパーに、味噌をカレー用のスプーンで2杯。酒と同量のみりんで溶いてドロドロサラサラぐらいの濃度にして、切り身のサワラを漬け込んだ。上にも味噌がかかるようにして、フタをして冷蔵庫へ。
3時間後、我慢できないので1切れ焼いてみた。うちにはネット通販で購入した日立製の全自動両面魚焼きグリルがあり、「切り身」でスイッチを押せば、あとは機械が勝手にやってくれるので、焼き方の加減については関知せず。

写真は翌日の朝食用と昼食の弁当用にに焼いたもの。前夜、夕食に食べたものは、3時間程度漬け込んだだけでも抜群においしい。料亭の味。1日ぐらいなら味はあまり濃くないようだ。あ、うちの味噌は小坊主のイラストの一番安いやつ。それでもまったく問題なしにうまい。弁当用に冷めたものもおいしく食べられるけど、やっぱり焼きたての方が段違いにうまいなあ。皮がちょっとこげてパリッとしている。

最後に2切れ残っているので、1日以上たったものの味の濃さを確かめてみて、次への参考にしようかと。数日たつと味が濃くなるようなので、また焼くときに味噌が焦げるので、味噌は除いたほうがよいみたい。味噌床、というのかどうか、は結構持つそうなので、また魚を買って漬け込もうかなあと、味をしめた。

人民日報論文2題

2010-10-27 19:13:16 | 時事
26日、西南部の大都市・重慶でデモが発生したという。新華社は英語版だけで、このデモを報じたという。ここにおいて、中国共産党内部の権力闘争の余波に端を発したと見られる官製デモが、当局のコントロールを超えた形のデモに変遷して、当局は全力でデモを抑える段階に入っていると見られる。

27日付「人民日報」は、1面に「正確な政治方向に沿って、政治体制改革を積極的に緩やかに推進しよう」と題する鄭青原氏の署名論文を掲載した。

つまるところ、1979年から社会主義中国に即した政治改革を進めてきており、共産党の指導のもと、市場経済運営のための管理機構改革を進め、指導幹部の終身制を廃止することから国家公務員制度を打ちたて、末端の住民自治から町や村レベルの選挙制度改革を行うなど住民の参政権を拡大し、権力監視機能を強化し腐敗予防のためのシステムを整えた・・・などの政治体制改革を進めている、とこれまでの政治改革の成果を紹介している。
そして現在の非常時を乗り越えるためにも政治体制改革には客観的な規律が必要だ、としている。そのために党の指導、党の全体掌握、党が中心となって協調する作用が必要であり、社会主義制度のもとでの生産力発展、人民民主と国家の安全を維持し、中国的特色のある社会主義政治発展の道を堅持することが必要であり、決して西側の政治体制モデルに照らした多党制、三権分立のようなものとは一緒にしてはいけない、としている。

尖閣諸島を実効支配する日本に対するデモの形を借りて実際は中国の民主化、政治改革を求めている、とデモの性格をみて「我々は政治改革を進めてきているし、今後も進めていく。それは西側諸国のようなシステムの民主化ではない」との中国指導部の覚悟と決意を示し、デモを行おうとする不満分子に理解を求めているのではないか。この論文は26日夜から「翌日の人民日報に掲載される」として新華社のサイトに掲載されており、より広範囲に読んでもらいたい、との意図があるのではないか。

この前日、26日付「人民日報」の3面では、「法に基づいて理性をもって愛国の情熱を示そう」とする論文を掲載、中国各地で発生している反日デモについて「一部の群集が、一部の日本人の誤った発言に対する義憤の表現として、愛国の熱情の表現としてのデモを起こしたことは完全に理解できる。ただ、中国外務省のスポークスマンが数日前に『我々の主張は法に合う形で理性的に愛国の情熱を表現するものでなければならない。非理性的、違法的な行為には賛成できない。多くの人々が愛国の情熱を自らの本分である仕事や勉学という実際の行動に転化して改革を安定的に進めていくことを信じる』と指摘しているように、簡単ではあるが皆の考えをあらわしていると思う」としている。
そして「日本は重要な隣国であり、両国間には敏感で複雑な問題があるが、戦略的互恵関係を維持し国家や人民の利益を守ることが重要だ。改革開放政策から30余年、四川大地震、北京五輪の成功、青海の土石流などの自然災害のなか、心を合わせて困難に立ち向かうことが必要だ」と若者の愛国心をくすぐっている。

これまで成都、綿陽、徳陽など四川省、陝西省西安、河南省鄭州など反日デモが発生した地域の指導者を見ると、実はいずれも共産党青年団出身など、胡錦濤総書記に近い、と見られる人々だ。彼らの動静を追ったわけでもなく共青団出身というだけで、必ずしも胡錦濤系列の団派に属しているとは単純にはいえないとは思うが、あくまでも想像の範囲で考えると、トップが胡錦濤系列で、五中全会に出席するため地元を離れて北京に行っている間にデモを起こされたとは考えられないか。地方権力にねじれが生じ、団派の省委書記を突き上げ、その結果として胡錦濤総書記らを窮地に追い込めるため、団派系指導者の都市で当初デモが発生した、という見方だ。
公安部門はかつて全人代常務委員長を務めた喬石が握り、喬が引退する際、曽慶紅・前国家副主席に継承されたといわれる。いうまでもなく江沢民前国家主席の懐刀で、父親に紅軍幹部・曽山を持つ太子党のまとめ役だ。曽慶紅引退後は公安部門のリーダーシップは太子党に引き継がれたと見てよい。

ところが26日にデモが起きた重慶トップの党市委書記は薄熙来。大連市長、遼寧省長などを経て重慶に来た。八大元老(八老)の一人、薄一波・元副首相の次男。つまり太子党だ。反日デモがついに太子党のお膝元に波及してしまったということで、重慶でのデモ発生は他地域とは性格が違う。重慶から管理外デモになったというのではなく、その兆しはすでに徐々にあって、重慶が象徴的な地域だということだ。中国当局が人民日報に論文を連日掲載し、必死になってデモの火消しをする理由はここにあるのではないか。

東京国際映画祭での中台あつれき

2010-10-26 15:17:02 | 時事
23日開幕式が開かれた第23回東京国際映画祭。直前に、中国側の江平監督(中国代表団団長)が「台湾」の名称ではなく「中国台湾」か、最低でも「中華台北」を使え、と主催者に迫り、台湾出席者が出席を取りやめ、中国側も遺憾の意を示して欠席したという。(写真は東京国際映画祭の主催者側が江平団長に謝罪したとの図。中国雅虎=yahoo=にあった)

これまで東京国際映画祭では「台湾」の名称でトラブルはなかったというが、今回は尖閣問題もあり、やや配慮を欠いていたのではないか。尖閣問題が影響したのか、香港からの報道では当初出席予定だった章子怡は急遽、出席を取りやめたという。昨年は梁朝偉や金城武、林志玲ら「レッドクリフ」の出演者であふれていたのに。このときは中国、台湾、香港の出演者が一緒に出ていたんだなあ。

たしかに江平監督のゴリ押しは横暴だが、彼らも、もし「『台湾』のままでの開会を許した」として帰国したら、現在問題を大きくしてデモで憂さを晴らしたいと手ぐすねを引いている中国国内のネット反日勢力のいい標的になっていたかもしれない。
映画人も最近特に政治問題に敏感で、昨年7月、新疆ウイグル自治区でのデモのあとラビア・カーディル議長の映画を上映しようとしたメルボルン国際映画祭に出席予定だった中国の賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督らがボイコットしたこともあった。最近では映画「精武風雲・陳真」の香港でのプレミア上映会の舞台に突然、乱入した藤原紀香に対して、主演のアクションスター・甄子丹が「釣魚島は中国の領土だ」と言い放ったとも伝えられている。これらは中国の映画検閲や上映許認可が映画人に有形無形の圧力を与えていると考えるべきだろう。
このような状況を考えれば、原理原則を言えば、バレーボールの国際試合などで見られるように「中華台北(チャイニーズタイペイ)」を使い、青天白日満地紅旗(中華民国旗)ではなく台湾の五輪旗を使うなど、「2つの中国」「1つの中国、1つの台湾」と指摘されないような配慮が必要だった。東京国際映画祭の主催者側はその辺の政治的配慮にオンチだったと言わざるを得ない。これまで通りの「台湾」を使ってしまったことで、台湾側出席者に期待を持たせすぎてしまったのは罪だ。台湾側の出席者もその辺は配慮して、名刺などには「中国,台湾」と印刷していたそうだ。
台湾メディアの報道を見ると、問題が大きくならないよう沈静化を図っているようだ。台湾有力紙の多くが大陸出身者の子孫である「外省人」に牛耳られていることもあり、台湾独立派とは一線を画しているところが多いからだ。もちろん独立派の媒体もある。

台湾総統府は24日、「台湾人民の感情を傷つけ、中台両岸の平和的発展に不利であり、大陸当局は見過ごすことはできない。直ちに圧力を停止すべきだ」との声明を発表した。
聯合報によると、呉敦義・行政院長(首相)は「中国代表団の江平団長が重大や誤りを犯したことは明らかであり、中国代表団が我々(台湾側)に強硬に『中国台湾』の名称を用いることを強いるのは絶対に適当でない」とし、「もし、中国側は『世界には1つの中国、すなわち中華人民共和国しかない』との数年前の硬直化した主張に戻るのなら、理性を欠き、中台両岸が近年進めてきた平和発展の大方針に背くものだ」と語った。


聯合報はまた、直ちに大陸側の反応も掲載した。国務院台湾弁公室(事務室)の孫亜夫・副主任が25日、「中台両岸の交流は人の心の赴くところで、大勢の望むところだ。開けた門はもう閉めることはできない。我々は不必要な消耗は避けるべきで、中華民族全体の利益が守られるように希望する。大陸は当然、台湾が国際的な組織、活動、会議へ参加することを希望しているが、2つの中国、1つの中国1つの台湾の状況を作り出さないような前提で、中台両岸の交渉を進めるのが合理的だと考えている」と話した。東京国際映画祭での事件については「完全に状況を把握しておらず、この問題について単独で意見を述べるのは困難だ」と直接的な言及は避けた。今後の中台関係に悪影響を及ぼさないように配慮したと見られる。

台湾では「江平事件」として、中国当局の意を汲んだものではなく、江平監督個人の発言という突発事件だった、との解釈に立っている。「台湾の映画が中国大陸で上映できなくなるぞ」と江監督が脅した、と伝えられることについても「一個人の発言で中台の経済協議が覆ることはありえない」と一笑に付している。
ただ、江平監督個人については、「歓迎されざる人物」として今後永久に台湾入境が認められなくなる可能性が高そうだ。

中台関係の前提条件について追加説明すると、「1つの中国」の原則については、「九二共識」(92コンセンサス、92合意)という考え方に基づいている。すなわち「双方とも、1つの中国の原則は堅持しつつ、その解釈は各自で異なることを認める」(一中各表)という考え方だ。ただ、これは台湾側が主張している解釈で、「1つの中国とは、大陸側は中華人民共和国、台湾側では中華民国とそれぞれ解釈することを妨げない」とする考え方だ。これに対して中国側では「双方とも1つの中国を堅持する」(一中原則)とするだけで、玉虫色の解釈のなかで、中台は交流を進めている。
1992年に香港で中国側(海峡両岸関係協会)と台湾側(海峡交流基金会)の民間交流団体が協議したときに口頭で得られた合意とされる。台湾側では当時の辜振甫海峡交流基金会理事長、李登輝総統、その後の陳水扁総統らとも「合意などなかった」と否定していたが、2005年の連戦・国民党主席と胡錦濤・共産党総書記との国共トップ会談の席上、合意事項として「九二共識」の文言が明記された。現在の馬英九総統もこれを引き継ぎ、中国との交流のベースにしている。

習近平氏、党中央軍事委副主席に

2010-10-18 18:16:03 | 時事

15日から開かれていた中国共産党第17期中央委員会第5回総会(五中全会)で18日、習近平・国家副主席が党中央軍事委員会副主席に追加選出された。新華社が午後5時10分(日本時間同6時10分)に報じた。これで胡錦濤氏の後任として次代の中国の最高指導者になることが確実と見られる。具体的には2012年秋の第18回党大会で総書記に選出され、翌13年3月の全国人民代表大会(全人代=中国語では「人大」=)で、国家主席となるだろう。

江沢民・前国家主席から胡錦濤氏へ権力が継承されるときは、江氏は党総書記は02年11月の第16期一中全会(党大会直後に開催)で政治局常務委員とともに退任したが、党中央軍事委主席については04年9月の16期四中全会まで手放さず、この約2年間で江氏は院政を敷いて上海閥を多く中央政界に押し込んだ、とともささやかれた。最終的には05年3月の第10次全人代で江氏が国家中央軍事委主席を退き、胡錦濤氏が党、政府、軍の3権の最高位を得ることになった。このため、18回党大会段階で軍事委主席まで習氏に譲られるのか、胡錦濤氏が影響力を残すために軍事委主席の座には当面とどまるのかが焦点だ。いずれにしても第5梯団(世代)と呼ばれる次世代は習近平・党総書記兼国家主席、李克強・国務院総理(首相)のコンビで中国のかじ取りを進めていくことになろう。

予想をはずしたのは、成都や西安、鄭州で発生した反日デモのタイミングがあまりに五中全会の開催とピッタリあったことが、団派優勢で太子党がデモで揺さぶり、と推測した理由だが、おそらく五中全会開催前に軍事委副主席選出については胡錦濤側と話がついていたのだろう。まさか、反日デモで脅して後継者の地位を獲得したとは思わないし、思いたくもないが、訪日の際に宮内庁の原則を曲げて民主党政権が天皇会見を実現させたこともあり、日本に対して強硬姿勢をとらず、戦略的互恵関係を維持・発展させてほしい、と願いたい。
当面、党内基盤を固めるためにも多方面に気を遣い、目に見えた政策を行い始めるのは数年たってからだろう。最高指導者が替わったからといって、突出した政策の変更がすぐに見られるとは思えない。

最高指導者としては胡耀邦、趙紫陽、江沢民、胡錦濤までは改革開放の総設計士と呼ばれた(トウ)小平のメガネにかなって引き上げられてきたが、習氏は小平の死後、江氏によって上海から中央に引き上げられた。(トウ)小平時代以後の初めての最高指導者となるわけだ。

ただ、思想的には父親の習仲勲・元副首相ら八大長老(八老)の影響を脱するのは難しいだろう。八老とは、89年の天安門事件のころ、当時の政治局常務委員(趙紫陽、李鵬、喬石、胡啓立、姚依林)をしのぐ権力を事実上持っていたとされ、趙紫陽解任やその後の江沢民引き上げ、戒厳令発布を事実上決定した8人。すなわち
(トウ)小平、陳雲、彭真、楊尚昆、薄一波、李先念、王震、穎超(周恩来夫人)=のちに宋任窮、万里、習仲勲が李先念・王震・穎超と入れ替わる。

当時の決定を覆すのは難しいだろう。

反日デモは17日には四川省綿陽、18日には湖北省武漢に飛び火したと報じられている。今後このまま収束するのだろうか。
胡錦濤・国家副主席時代で党中央軍事委副主席に選出されるまえの99年5月、NATO軍が旧ユーゴスラビアの首都ベオグラードにある中国大使館を誤爆し、3人が死亡、20人以上が負傷する事件があった。中国国内では学生らによる反米デモが激化し、米中関係は緊迫した状態になった。このとき、胡副主席は学生たちの愛国的な精神を賞賛した上で違法デモは許さず、米との外交交渉は政府が行う旨のテレビ演説を行い、これによって反米デモは沈静化した。ひとつ間違えば学生デモを激化させる可能性もある局面で、おそらくこの演説の功績で、胡は同年9月の第15期四中全会で軍事委副主席に選出され、ポスト江沢民の地位を不動のものにした。胡錦濤にとっての大きなハードルだったはずだ。

同様のことが習近平にも起こるのだろうか。習は北京五輪の総責任者となり指導者としての格をあげようとの意図が見られたが、開会式での少女の口パク問題や、総合演出でのCGの利用など、あまりいい印象は得られなかった。香港情報などでは、口パクは有名な歌手である妻を通じて習自らが提案したとの説もある。はたから目に見えるような大きな試練を経ずに、最高指導者の地位を手に入れてしまったようにも見える。
もしデモが深刻化したら、沈静化を図るための演説を行ったりするのだろうか。

尖閣問題で反日デモ

2010-10-17 03:00:36 | 時事
中国の地方都市で、尖閣諸島の領有権を巡る反日デモが発生してしまった。
現段階では、新華社の英語版のみで報じられている。中国語版にはなく、これは国内にはあまり伝えたくないが、外国にはアピールしたいニュースの場合にしばしば見られるやり口だ。デモが全国各地に波及するのを恐れてはいるが、一方で、尖閣諸島の領有権問題で中国人民が怒っている、というポーズを海外に知らしめて、「そもそも領土問題は存在しない」とする日本政府に対して、領有権問題が存在すると広くアピールするものとなっている。

新華社英語版サイトによると、四川省の省都、成都市で午後2時から約2000人の大学生がデモを行い、午後3時半には平和裏に終了したとしている。
陝西省西安市では7000人以上の大学生がデモ行進、「釣魚島は中国領土だ」「日貨排斥」などを訴え、日の丸を燃やしたものもいたという。日本の運動メーカー、ミズノの現地店では警官隊と対峙したが、混乱はなかったとしている。このほか、デモのルートにある日系の店舗は閉められたという。
河南省鄭州市では、午後2時ごろから大学生が街を練り歩いた。ある参加者は、上海での抗議行動の様子をインターネットで学んだ、と話したという。

東京では右翼団体3000人が、中国大使館前に集合している、とも伝えている。

まあ、彼らの公式見解はこんなものでいい。尖閣諸島をめぐる問題で、海保船に漁船を衝突させた中国人船長は中国に帰し、軍事施設を盗撮したとして拘束されたフジタ社員も日本に戻った。何をいまさら問題を蒸し返すのか?

そもそも、中国では学生による自発的なデモは考えにくい。大なり小なり官製デモの色合いが濃い。北京、上海、広州などの大都市では発生していないことも変だ。それは、北京では15日から18日まで、中国共産党中央委員会第5回総会(五中全会)が開催されているため警備が極めて厳しいからだろう。経済大都市の上海、広州も、もし大規模なデモが発生すれば経済活動が停滞してしまう。これらの大都市で反日デモが発生してしまうと、各地に飛び火し収拾がつかなくなり、中国政府が抗議対象になってしまう可能性さえある。

五中全会の最中にデモが発生するということは、胡錦濤・温家宝指導部にとって極めて由々しき事態だ。反日デモゆえ、全否定して軍や警察組織を使って鎮圧することはできない。エスカレートすると、共産党指導部の基盤を揺るがしかねない。これは党上層部内の反対勢力が、胡・温コンビら共産党青年団グループの勢力(団派)に揺さぶりをかけるためにデモを利用しようとしたのではないか。

折りしも五中全会では、ポスト胡の最有力候補、習近平・国家副主席が、次期最高指導者に限りなく近づくとされる中央軍事委員会副主席に選出されされるかもしれない、という観測が飛び交っていた。あくまでも机上の空論、想像だが、副主席選出はまたも見送られるのかもしれない。それで、もともと公安権力を握っている習国家副主席らの太子党勢力が、デモをあおる、あるいはデモに好意的な姿勢を示して、胡・温コンビに対してイニシアチブを握ろうとしたのではないか。

18日、五中全会は閉幕する。人事案件はどうなるだろうか。また、デモは1日で沈静化するのだろうか。イトーヨーカドーやミズノのアンテナショップが襲われれば、日本企業の中国進出を躊躇させる。日中関係がようやく回復する兆しを見せてきていたのに、「反日カード」がまた権力闘争の道具に使われるとすれば極めて遺憾だ。

劉暁波氏にノーベル平和賞

2010-10-08 18:19:51 | 時事

中国共産党の一党独裁を批判し中華連邦制を訴えた「08憲章」起草の中心人物であり、中国の反体制活動家で元大学講師、劉暁波氏(54)に2010年のノーベル平和賞が授与されることが決まった。「08憲章」をメールなどで広めたとして、国家政権転覆扇動罪で昨年12月25日に懲役11年、政治的権利剥奪2年の判決を受け今年2月に刑が確定、遼寧省錦州市の刑務所で服役中だ。

これまでノーベル賞を受けた華人としては、

1957年の物理学賞で、当時の中華民国(台湾)の李政道、楊振寧両氏
1976年の物理学賞で、丁肇中氏(米国生まれ)
  86年の化学賞で、台湾(中華民国)の李遠哲氏
  89年の平和賞で、インドのダラムサラに亡命中のチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世(華人というよりチベット人というべきか)
1997年の物理学賞で、朱棣文氏(米国籍)
1998年の物理学賞で、崔氏(米国籍)
2000年の文学賞で中国大陸出身でフランス国籍を取っていた作家の高行健氏
2008年、下村修氏と共同授賞した米国籍の銭永健氏
2009年の物理学賞で高錕氏(英国籍)

--の9人がいるようだが、皮肉なことに中国大陸内に住む中国人としては今回の劉暁波氏が初受賞となる。(新華社情報で追加。新華社にはダライ・ラマ14世と高行健氏は入っていない)

中国外務省高官が今年6月、ノーベル賞委員会に「もし劉暁波に平和賞を授与したら、ノルウェーと中国の関係が悪化するだろう」と圧力をかけていたと、ノーベル委員会が明らかにしたとの報道があった中での、授賞決定となった。

授賞発表直後の記者会見でも、LIVE映像で伝わる記者とのやり取りで集中したのがこの件で、断片的に聞こえる英語の回答によると(なんといってもこのスポークスマンは5ヶ国語に堪能なそうで、さまざまな言語による質問にその言語で答えている)、「ノーベル委員会は独立しており、中国の圧力は関係ない」「中国は経済発展はしているが人権改善を進めるべきだ」などと整然と答えていたようだ。

台湾メディアに掲載されたノーベル委員会の見解をみると、授賞理由として「劉氏は長期にわたり非暴力のやり方で中国で基本的人権を獲得するための活動を進めてきた。人権と平和は密接に関係している、と委員会は一貫して信じている」としている。
委員会は「過去数十年、中国経済は発展し、現在、世界2大経済体となり、数百万人が貧困を脱し、政治参加空間はすでに拡大している。中国は新たな地位に立つことで、もっと多くの責任を担うべきだ。中国は署名している多くの国際公約に違反しており、憲法35条には『中華人民共和国人民は言論、新聞、集会、結社とデモの自由を持つ』と書かれているが、実際は中国公民が自由を行使しようとするとき、厳格な制限を受ける」と中国の現状を説明している。
そして「劉暁波氏は過去20年間、一貫して中国の人権を得るための発言を続け、1989年の天安門でのデモに参加し、08憲章発表に関与した。それから1年、国家政権転覆扇動罪の罪名で、懲役11年、政治権利剥奪2年の判決を受け、服役中だ。劉暁波は、この判決は中国憲法の基本的人権に反していると一貫して主張している。中国国内外の人々が基本的人権を獲得するため、劉暁波はすでに中国人権運動の象徴となった」としている。


発表から1時間たったが、新華社のサイトにはこのニュースは掲載されていない。黙殺か? と思って念のため外交部(外務省)のサイトを覗いたら、馬朝旭・報道局長が記者の質問に答える形でコメントを載せていた。

「ノーベル平和賞は『民族の和睦を促し各国の友情を増進し軍縮を進めるため、平和会議を開いたり宣伝するなどの努力をした人』に授与されるべきだ。これがノーベルの願いだろう。劉暁波は中国の法律に抵触し中国の司法機関が判決を下し服役中の犯罪者であり、その行為はノーベル平和賞の趣旨に背いている。ノーベル委員会はこのような人間に平和賞を授与することで完全にその趣旨に反しており、賞への冒涜だ」

と評論し、中国とノルウェーの関係に影響を与えるか否かとの質問に対しては、

「両国関係は近年、良好に発展しており両国民の基本的な利益に有利な状況だ。今回ノーベル委員会が劉暁波授賞を決め、平和賞の趣旨に反したことで、両国関係に損害を与えるだろう」と答えた。

新華社はこれを受けて英語版でのみ、午後6時47分14秒(日本時間午後7時47分14秒)に
Awarding Liu Xiaobo Nobel peace prize may harm China-Norway relations, says FM spokesman.(劉暁波のノーベル平和賞授賞は中国とノルウェーの関係に害を与えるだろう、と外務省報道官は言う)
と配信した。

尖閣諸島や南沙諸島問題などアジア諸国との軋轢、人民元切り上げを求める米国など西側諸国に対して強硬な態度を貫く中国の姿勢に加え、中国外務省自らがノーベル委員会に圧力をかけるなど「いけ好かない奴」とのイメージが増幅され、中国の意に反してさらに授賞に反映、影響したのではないか? 
そもそもノーベル賞はダライ・ラマ14世に平和賞を授与するぐらい、西側民主主義の価値観で決定するわけで(去年はオバマ米大統領だったし)、中国はそれならダライ・ラマ授賞以降、ノーベル賞に見切りをつけて黙殺するぐらいの態度が必要だったのではないか。

金正銀のままだ・・・

2010-10-06 13:36:54 | 時事

日本でも報道された北朝鮮の金正日総書記が、軍事訓練を視察、三男の正恩・軍事委副委員長が同行したというニュース。後継者含みで朝鮮人民軍の大将に任じられてから初めての動静であり、5日、朝鮮中央通信が配信したものだ。
これを中国国営の新華社通信も5日深夜に報じたが、「訓練視察には、先日開かれた朝鮮労働党代表会議で新たに党中央軍事委員会副委員長に選出された金正銀も同行した」と従前の「正銀」を使っている。日本側の「漢字は何を当てるのか」との問い合わせに朝鮮中央通信が「正恩」と答えて、各社訂正した後、初めての中国での動静報道だったので注目していたのだが。ええ? どういうこと? 漢字が違ってた、と騒ぐのは日本で、それも各社カタカナ表記だったなかで唯一それまで「正銀」を使っていた毎日新聞だけなのだろうか?

日中首脳会談実現

2010-10-06 11:06:27 | 時事

5日、ASEM首脳会議出席のためブリュッセルを訪れていた菅直人首相と中国の温家宝首相の接触が実現した。日本外務省は「日中首脳立ち話」と、中国外交部は「温家宝和菅直人進行交談」(話を交わした)と、双方とも「会談」との言葉は使っていない。
がっかりすることはない。双方とも反対派を意識して偶然を装い低調な接触を演出したのだろう。
共同通信によると、細野豪志・民主党前幹事長代理は9月末の極秘訪中の際、中国側の外交政策を仕切る戴秉国・国務委員(副首相級)と会い、ASEMの舞台を利用した日中首脳会談の実現を打診していたという。
菅直人首相は、当初欠席を予定していたASEMに急遽出席することを決めた。ただ、細野前幹事長代理の交渉もよい感触が得られなかったのか、菅首相は外遊前のぶら下がり取材でも温首相との会談は「ありません」と断言していた。

よほど首脳会談実現に自信がなかったのだろう。(読売新聞によると、仕分けで海外出張に制限があったという。外務省と政治主導との軋轢もあったようだ)。菅首相は外務省中国課の専門家や中国語通訳を同行させなかったという。温首相との25分間の会話は、菅首相の発言は英語通訳が中国側の英語通訳に伝え、温首相の発言は中国側が用意した日本語通訳が日本語で菅首相に伝えたという。
読売新聞によると、温首相は駐日中国大使館勤務経験が長い中国外務省アジア局の日本担当者を同行させたが、当初は会場入りの予定はなく必要な登録手続きをしておらず、登録済みの別の中国代表団メンバーの名義で入ったという。

それだけに、日中双方とも接触は実現の可能性が極めて低いと思っており、25分間の偶然出くわしたような演出による首脳同士の接触は、直前になって突然決まったと考えてよいだろう。

自民党などは、中国語通訳を同行させなかったことについて「政権の危機管理が問われる大問題だ」と、国会で政府を追及する方針のようだ。確かに今回の菅首相のASEM出席は、中国との関係改善を模索するのが大きな目的だったはずだ。それなのに通訳や専門家を連れて行かないのはどうか。もしフジタ社員の釈放などが急遽話し合われることがあったら、どうするつもりだったのだろうか? 「危機管理が問われる」決定的な失態とは思えないが、一流国のすることではない。国会での自民党の追及に、菅首相はどう言い訳するか。
ただ、菅首相の発言は中国側が訳して温首相に伝えたのではなく、あくまでも日本の英語通訳を通じて中国側に伝わっており、異訳や誤訳はあるまい。「危機管理」が問われることはないが、確かにまだるっこしいだろう。

中国側が日本の専門家を同行させていたように、中国側は対日姿勢を緩和させる気満々だったのではないか。実際、人民日報は5日紙面の1面3番手でこの接触を報じている。新華社のたった9行の記事だが、見出しの活字は、サルコジ仏大統領との会談よりやや大きく、いわゆる突っ込みニュースとして大きな扱いをしている。日本の各紙朝刊は最終版の締め切り時間を過ぎてからの第一報だったため入っていない。もちろん翌日夕刊では各紙一面トップだが。新華社のサイトでも「温菅交談」は右肩の一番上の目立つところに配置されていた。中国側がこのニュースを重要視していることがわかる。

話した内容についても、
温家宝は、釣魚島は中国固有の領土と改めて述べた。
温家宝は中日戦略的互恵関係を維持し推進することは、中日両国と両国民の根本的利益に合うと示した。
双方は、両国民間交流と政府間コミュニケーションを強化し、適切な時期にハイレベル会談を実現することで合意した。

一つ目は、国内を納得させるために一応原則論を話しておかないといけないためだが、二番目と三番目は事実上日中関係を元に戻す努力を示している。特に「民間交流強化」とは、軟禁状態のフジタ社員の解放もそう遠くないことを示唆しているのではないか。

ただ、温首相の反応はやや早すぎるのでないか、関係回復のサインを早く出しすぎなのでは、と心配な気もする。もし中国最高指導部の中で権力闘争が起きていたとしたら、10月15日の五中全会に向けて、もう雌雄は決したのかもしれない。
ちょっと楽観的過ぎるだろうか。

薬品につけて上海蟹

2010-10-05 10:43:22 | 時事
種類の違う安い蟹を「洗蟹粉」で薬品処理して上海蟹として卸していた! 4日付新華社は、江蘇省揚州市の夕刊紙「揚州晩報」を引用して、偽上海蟹を売っていた黒幕の様子を紹介した。
南京の水産品公益市場に記者がバイヤーを装って潜入、蟹卸売り業者から、大量に買い付けるなら河川で捕れる安価な「稲田蟹」に薬品をかけて色や汚れを落とし上海蟹として売れば、2倍の利益になる、と持ちかけられたという。
白色の「洗蟹粉」をかけると、もがいていた稲田蟹も10分ほどで動かなくなり、水洗いすると黄色や黒っぽい色が落ち、偽上海蟹の加工工程は全体で20分ほどという。もちろん蟹自体にもダメージを与え、1、2日程度で死んでしまうため、早く売りさばくことが必要という。
この粉は繊維用の漂白剤と見られ、鼻をつく刺激臭があるという。酢酸の1万倍ほどの酸性度で、たんぱく質を分解する成分も入っており、結石ができるなど、人体に影響を与えるという。

今年は養殖上海蟹の管理が厳しくなり、水揚げが減っていることもあり、例年より高値だと聞く。そのようなところにつけこんで、偽物が横行するのだろう。新華社が取り上げるということは、氷山の一角であり、一網打尽にするまで怖くて、上海やその郊外のそこらの安食堂では蟹は食べられないね。上海蟹を食べるなら信用ある名門店にしないと。上海万博期間中でこのザマかよ。あーあ、まったく、いい加減にしてくれよ、中国。

人民日報の逆襲

2010-10-04 16:45:35 | 時事
10月3日人民日報で中国にとっての尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権についての論文「国際法の視野のもとでの中日釣魚島紛争」が掲載された。いうまでもなく、中国が領有権を持つとする従来からの主張をまとめたものだ。おそらく9月28日付毎日新聞の「記者の目」で1953年の人民日報が「尖閣諸島」の名称で事実上、日本の領土と報じていたと紹介したことに対し、現代の見解を示したものだろう。

書いたのは海洋発展戦略研究所の賈宇・副所長で、人民日報の1面トップとかではなく3面の下のほうで、ややおとなしい扱いだ。

「一、釣魚島は中国固有の領土」と題して、「中国が最も早く釣魚島を発見、開発し、主権を先に占有した」としている。その根拠として「釣魚島とその付近の海域は古くから中国人民が漁をし、薬を採取し、風を避け休憩するなどの活動場所としてきた。明代末期に中国人民によって発見、利用、命名された。『更路簿』『順風相送』などの中国の古籍には、中国漁民による海域や航路が示されている。
続いて「琉球はもともと明、清の藩属国ととして、明、清に朝貢し、明、清は大使を遣わし琉球諸王として冊封(宗主国と属国の関係のような外交関係の一種)していた。釣魚島は琉球と往復する航路上にあり、使者はこれらの島々を目印にした。『使琉球録』など公文書に、これらのルートが仔細に書かれている。釣魚島が琉球の範囲に属さないことは史実が証明しており、中国が釣魚島の主権を先に取ったといえる。(中略)1171年(南宋乾道7年)、福建の鎮守、汪大猷は澎湖に軍営を建て、各島に駐屯し、台湾と釣魚島は軍事上は澎湖の管轄に、行政上は福建泉州晋江の管轄に入った。1562年(明朝)の『籌海図編』、1863年(清朝)の『皇清中外一統與図』でも明確に示されている」としている。

「二、日本の釣魚島主権についての依拠は不成立」では、主に「無主地先占」(いかなる国家にも属していない土地は先に占有したものが領有権を持つ)について記している。
「釣魚島と付属する島々は明朝時代に中国政府が海上防衛区を定めて統治権を確立している中国固有の領土であり、悪環境のため定住者がおらず、漁民が季節によって住むだけで、無人島であっても無主島ではない」としている。これについては明治政府が尖閣諸島を日本領土と決める前の1885年、井上馨・外務卿が山県有朋・内務卿に「清国はこれらの島々に既に名前をつけていて、わが政府の考えに猜疑心を抱いている」などと書簡を送っていることも紹介している。

「三、日米協定は日本の釣魚島の主権を与えることはできない」では、「1943年の『カイロ宣言』で、米英中は1914年の第一次世界大戦開始後に日本が占領した太平洋上の島々や中国の領土は剥奪する、と規定した。45年の『ポツダム宣言』では“本州、北海道、九州、四国とわれわれが決定した小島”とし、46年の『連合国最高司令部訓令667号』では、日本4島と対馬、北緯30度以南の琉球諸島と1000の小島、と規定された。ここに釣魚島は含まれていない」としている。
これに対して、「1951年に日米が、対日戦勝国の中国とソ連を除外して結んだ『サンフランシスコ講和条約』では、北緯29度以南の南西諸島(琉球群島と大東群島を含む)などを米国管理下におくとした。1953年12月25日、米国統治下の琉球政府が公布した『琉球列島の地理的境界』(第27号布告)では、釣魚島を含む北緯24度、東経122度内とした。71年6月17日に日米が沖縄返還協定を結んだとき、これらの島は返還区域となった。日本政府が釣魚島の領土主権を主張する根拠だ」として、これらは無効としている。中国は71年12月30日の声明で「米日両国は沖縄復帰協定で、わが国の釣魚島を返還区域としたが違法だ」とした。

中国の主張を聞いていると分が悪いぞ、日本。「10年間調査した上で、だれも領有していないと確認したので1895年に自国領土とした」との主張は、その前に日本政府の中で「清国がすでに名前をつけていて日本を警戒している」と認識していたことになる。サンフランシスコ講和条約も事実上2国間条約だから、俺らは認めない、といわれれば、それまでだし。明、清と琉球の当時の力関係を考えれば、境界線については中国側の一方的な解釈に近い気もするが。法的根拠はないし。

じゃあ、どうして1953年の人民日報では日本領土、としていたんだよー、と思いたくなるが。

香港映画「葉問1、2」見た

2010-10-02 21:20:07 | 映画鑑賞

2008年の香港の映画祭の話題をさらったドニー・イェン(甄子丹)主演の映画「葉問」。ブルース・リー(李小龍)の師匠という、実在の人物の戦前、戦中の香港を舞台にした、武術に生きる男の苦労と苦悩が描かれている。ウィルソン・イップ(葉偉信)監督作品。サモ・ハン・キンポー(洪金宝)がアクション監督。
あんまりヒットしたので柳の下の二匹目のドジョウを狙うのは香港映画ではよくある話で、前作はずいぶん前に見ていた。いずれも日本未公開。

(この辺からネタバレです)ぶっちゃけ、日本占領下の香港で、日本軍相手にうまく立ち回れない葉問が、食べるものにも事欠く状態のなかで、友情のためと、なぜか勝ち抜けば米が貰えるという都合のいい武術の大会が日本軍によって開かれ、抑圧された香港人のうっぷんを晴らすかのように、葉問が強敵の日本の将校をやっつける、というストーリー。
日本から池内博之も出演しており、中国人が勝手に想像する、あり得ない空手?を披露する。戦前、戦中なら柔道か合気道だと思うのだが、ま、香港人、勝手にやって。

単純に日本を懲らしめて香港人が喝采する映画ではなくて、前半部分は道場破りとか、日本軍に協力して甘い汁を吸う、中国語で「漢奸」と呼ばれる売国奴になってしまう、かつての友人の苦悩も描かれている。
池内博之演じる日本人将校も、まあ、乱暴者とはいえ、中国功夫(カンフー)に敬意を表した紳士的な武術家として描かれている。まあ、日本人的には違和感満載だけど。


柳の下のドジョウを狙った「2」は、日本が去ったあと、香港でいくつもの道場がしのぎを削る状態のなかで、弟子を育成し、旧来からの道場の親方らに甄子丹の葉問が徐々に認められていく様子が描かれる。後半、また外国人を駆逐するシーンがメーンとなり、今度は日本人が相手でなく、英国人のボクサーになる。これは乱暴者で無法者で、「1」で日本人をそれなりに尊厳をもって描いたのに対して、「2」は、本当に嫌なやつとして描いている。その中で香港で最大の道場を開いているサモ・ハン・キンポーは戦いに敗れて死んでしまう。
もう、この辺からは抑圧された中国人が欧米人への復讐をして、憂さを晴らすという程度の低いストーリーに成り下がっている。「1」に比べて「2」は、数段もレベルが下がる。それでも香港の労働者たちは嬉々として観ていたのだろう。

ところで、「レッドクリフ(赤壁)」以降、日本における中国映画の人気が上がっておらず、配給元も二の足を踏んでいるという。東京国際映画祭には上映されるらしいが。まあ、日本人にはあまり受けるとは思えない映画だけど。どうしても見たい人はネットや、香港や中国大陸でDVDを見つけて観てください。

甄子丹の次回作の「精武風雲・陳真」は、香港でのプレミア上映会の舞台に、突然、藤原紀香が登壇したそうな。その紀香に甄子丹は面と向かって「釣魚島は中国の領土だ」と言い放ったという。映画俳優は中国国内のマーケットを無視しては商売できないので、心からそう思っての発言かは不明だが、映画の中のヒーローの様子とは違って、大人げない奴だな。この映画は尖閣諸島問題が影響して、日本上映が難しいとのことだ。

ちっとも威張れる日本でない

2010-10-01 12:41:10 | 時事
9月30日の尖閣沖衝突事件についての衆院予算委員会集中審議で、自民党など野党は「衝突した中国船の船長を釈放したのは政治介入だったのか」と追及している。菅直人首相は「政治介入という言葉を、捜査に対する介入があったのか、と言われれば、一切ない」と完全に否定した。
自民党など野党は「政治介入がある」と追及することで、何を証明したいのか? もし民主党政権が政治介入を認めたとしたらどんなメリットがあるのか?

自民党の小泉純一郎政権時の2004年、尖閣諸島に上陸し、入国管理法違反(不法入国)容疑で沖縄県警に逮捕された中国人活動家は直ちに強制送還された。小泉首相は「大局的判断」を強調したが、これは「政治介入」そのものだろう。谷垣総裁ら自民党の連中はこれが正しいやり方だったと思っているのだろうか。

今回は、日中間にいらぬ軋轢を生まないように領土問題に触れず、あえて不法入国容疑ではなく、中国船が海保船にぶつけてきた公務執行妨害容疑。実際は官房長官や国交相あたりから「強い要望」や「助言」などの体裁で不起訴か起訴猶予の形での釈放、解決を促したのは明白だろうが、あえて政府が介入しないことを装い、強調することで、日本が中国と違う三権分立の民主的法治国家で、中国のように上層部の鶴の一声で法律も何も超越するような独裁国家とは違うところを見せているのではないのか。

今回、中国が船長の解放を迫って増長しているように見えたのは、彼らの頭の中に普通にある「小泉みたいに超法規的行為で簡単に釈放できるだろ」という考えが前提にあったからだろう。あえて、中国側の手に乗らず、法治国家であることを強調、「司法独立だから、政府は容易に手を出せない」と中国側に見せつけて、今後、同様事件が起きないように牽制したのではないのか。どちらが外交的に配慮しているか、僕は民主党だと思う。
船長釈放直後の会見で「政治的配慮から釈放した」と苦渋の表情を見せた那覇地検だったが、この日「政治的介入はなかった」と断言しているのは、法治国家たる日本を中国に見せつけるメリットが分かったからだろう。

自民党はそれが分かっていて「政治介入」を追及しているのだろうか?

ところが日本が誇る司法の独立、三権分立が崩れ去るような事案が出た。大阪地検の証拠フロッピー書き換え事件で、ついに前部長検事が逮捕された。法を守るのでなく、自分の都合のいいように事件を作って、人を罪に陥れるのは日本も同じではないか、と中国になめられてしまうことを危惧する。

また、九州で右翼がバカなことをして、民主的な文化的法治国家たる日本に泥を塗った。

新華社によると、9月29日に福岡で中国団体旅行者の乗ったバスを右翼が取り囲み恫喝したことや、福岡や長崎の総領事館に右翼によって燃焼物が投げ込まれたりしたことを受け、中国観光局が30日夜になって、これから日本を旅行する中国人観光客に対して「安全に注意」と警告を発した。日中関係が悪いときにもかかわらず日本に来てくれる中国人は、本来、もっと大事にして、親日派、知日派を育成しなければならないのではないのか。

船長を釈放して、中国側もフジタ社員3人を解放して、いよいよ日中関係も好転するかな、と思ったら、なかなかうまくいかないようだ。

以前、「国慶節で何か動きがありますか?」と書き込みしてくれた国慶節さん。あなたの見立てが当たって、国慶節前に3人が解放されましたね。
4人全員を一度に返さないのは、もちろん中国側の思惑があるからだ。中国内の反日勢力が怒って騒がないように配慮したことと、釈放された3人への口止め効果、今後の日本政府への牽制のカードに使うことなどを考えたというのは常識的な見方で、外れてはいないだろう。
そもそも、新華社で4人拘束の第一報から高橋定さんのみ実名で報じられていたことから、3人の会見等で触れられていない、何か特別な行動を高橋さんがした、と中国側が見ている可能性がある。