Takepuのブログ

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台湾選挙分析記事

2016-01-17 14:48:23 | 時事
16日に投開票された台湾総統選挙と立法委員選挙。野党・民進党の蔡英文候補が新北市長選、先の総統選の敗北を乗り越え3度目の正直で当選した。5月20日の就任式で初の女性総統となる。

同時に実施された立法委員選挙でも民進党が単独過半数を軽々と超え、113議席中68議席を獲得(6割)、台湾憲政史上初の執政党となる。

台湾メディアのまとめをながめてみて気づいたことがいくつか。



蔡主席は得票率56.1%の圧勝とはいえ、2008年の馬英九初当選の時の得票率58.4%には及ばなかった、という声があるが、敗北したとはいえ、4割は取っている(08年は2大政党による一騎撃ちだった)。今回の国民党は3割しか取っておらず、票の失い方はハンパでない。



投票率が下がった。今回の投票率は66.2%と、1996年に民選総統選が開始されてから初めて7割を割ったのだという。前回投票して今回投票に行かなかった人は単純計算すると約150万人。国民党の朱立倫候補は民進党の蔡英文候補に300万票の差をつけられていることから、前回の国民党支持者の多くが今回棄権したとの見方ができるのではないか。すなわち、国民党の王如玄・副総統候補の軍宅転売問題で軍関係者や元軍人の「鉄票」、従来から国民党の支持基盤だった客家が、蔡主席の父親が客家だったことや国民党政権の施政に批判を強めてきたことなどから、棄権を含めた意思表示をした可能性がある。
総統選では客家の多い新竹、苗栗も民進党の得票が上回っている。国民党が従来の支持基盤を地滑り的に失ったと見ることが出来るのではないか。



昨日も書いたが、アイドル歌手周子瑜の国旗問題は、タイミングがあまりにも悪すぎた。緑の十字の中央に台湾島が描かれた民進党の旗をふるならともかく、中華民国・台湾が国旗としている青天白日満地紅旗をふることが台湾独立なら、台湾のあらゆる公共施設が台湾独立を標榜していることになる。中国大陸政権がいちゃもんをつけるように、中国と台湾が同じ土俵で活動する国際的な舞台では、台湾は「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」として、旗も5つの輪と梅の花の「五輪旗」を使うなど十分に譲歩してきた。大陸側は、「台湾は中国の一部」と、「中国台北(チャイナ・タイペイ)」を求めているが、そこまでは譲歩していない。返還以降「中国香港」「中国マカオ」などの表記はすでに使われている。それと同じというニュアンスだ。

中国大陸を主たる活動拠点にしている台湾出身の歌手が青天白日満地紅旗をして「台湾独立」と中国大陸政権に媚びるなら、これは「売国」ともいえる行為なのではないか。

台湾の人々がそう考えても無理はない。黄安はこの発言で台湾から総スカンを食いそうだ。


台湾ダブル選挙 民進党圧勝

2016-01-17 03:08:50 | 時事
16日投開票なった台湾総統選で、前評判通り民進党の蔡英文主席が過半数をはるかに超える得票で圧勝した。中国大陸との接近や経済失政で評判がガタ落ちになった国民党の馬英九総統のしりぬぐいに追われた国民党の朱立倫主席に圧倒的な大差をつけた。


(中国時報のサイトから)

それだけでなく、同時に投開票された立法委員(国会議員)選でも全113議席中民進党が68議席を獲得する歴史的勝利となり、蔡英文政権は安定的に運営される見通しとなった。

選挙分析はともかく、今回の選挙は国民党の失策があちこちに目立ち、国民党は解党的打撃を受けたと見られる。

まず、国民党の総統候補選出のゴタゴタ。先の主要都市市長選で完敗した責任を取って党主席を辞任した馬英九総統の後を受けた党主席となった国民党若手のホープであり切り札の朱立倫・新北市長は当初、総統選への立候補をしないことを表明。呉敦義副総統も、党内実力派の本省人、王金平・立法院長(国会議長)も出馬しないことで、軽量級の洪秀柱・立法院副院長のみが立候補を表明、周囲があれは無理だろうと冷ややかに見る中、党内の正式な手続きをクリヤーして正式に国民党公認候補になってしまった。洪女史は現政権の中国政策を超越するような親中発言を繰り返して、総統選はともかく立法委員選にも不利だと国民党内の不安を招き、結局ウルトラCの党内手続きで嫌がる朱立倫主席を総統候補に引っ張り出さずを得なくなった。

馬英九総統が空気を読めない性格を最大限に見せた習近平・中国共産党総書記兼国家主席とトップ会談したのも逆風だったろう。馬や習はこの会談が国民党にとって有利にはたらくと思い込んでいたのだろうが、若者が立法院議場を選挙した「ひまわり革命」以来、中国に偏りすぎる姿勢はマイナスととらえられることにKYの馬英九は気づいていなかった、というか、自分のことだけを考え、国民党や後継の朱立倫のことなどこれっぽっちもかんがえていなかったのだろう。

副総統候補の汚職問題。朱立倫・国民党総統候補の副総統候補に指名されたのは王如玄女史。戦後国民党とともに台湾に渡った軍人のための住宅「軍宅」を転売して莫大な利益をあげていたとし、批判を受けた。国民党の「鉄票」と言われた軍関係者や元軍人の支持を急速に減らした。

国民党にとってさらに追い打ちをかけたのは、投開票日直前になっておきた「国旗問題」。韓国ガールズユニット「TWICE」メンバーの台湾出身歌手周子瑜が番組の中で中華民国旗(青天白日満地紅旗)を持っていたことに対して、中国大陸で活動する台湾出身歌手黄安が「周は台湾独立運動を支持している」と批判した。中国のファンから批判を受けた周は動画サイトなどでの謝罪に追われたが、今度はこれを見た台湾人が反発。「何もわからない16歳の少女が中国の圧力で屈辱的に頭を下げさせられた」などの意見があふれた。大陸との交流を進める政策を主張している国民党だが、朱立倫候補もフェイスブックで周に優しい言葉をかけて火消しを図ろうとしたようだったが、事件のタイミングが悪すぎた。中国寄りの国民党に大きな逆風となったことは間違いないだろう。

立法委員選挙まで民進党に過半数を取られ、壊滅的大敗となった理由の一つに、この投開票日直前の事件が影響していたのではないか。

まるで陳水扁が二期目総統選投開票日前日の遊説中に狙撃を受けて軽傷を負ったのが追い風になったのに似ているような気がする。

台湾の選挙には、言葉では説明できないような、何かが起きる。