Takepuのブログ

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映画「風声」すごい

2009-12-20 03:42:02 | 映画鑑賞

中国建国60周年の国慶節時期に封切られた戦争スパイ映画「風声」を見た。これはすごい。監督は中国版「東京審判」でちょっと変な日本人像を描いた高群書。脚本と共同監督が陳国富。主演は若手4大女優の一人、周迅(ジョウ・シュン)。李冰冰(リー・ビンビン)、王志文(ワン・チーウェン)、張涵宇(チャン・ハンユー)、黄暁明、蘇有朋(アレック・スー)ら実力者たちがからみ、緊迫した芝居を見せる。蘇有朋って、趙薇(ヴィッキー・チャオ)の出世作「環珠格格」で、乾隆帝の王子にしてヴィッキー演じる小燕子の彼氏の役を演じた奴だよなあ。当時はツルンとした顔をしてたけど、それなりにふけて貫禄がついたなあ。

時は第2次世界大戦中の上海。蒋介石の国民政府から離れ南京に日本傀儡政権を樹立した汪兆銘(精衛)政府内部の暗号解読チームが物語の中心。この中に潜んだ共産党のスパイが連絡役を果たし、日本軍高官の暗殺を遂行する。解読チームが一つの離れのような場所に集められ、暗号を解いた結果、チームのメンバー内に内通者(老鬼)がいるとの結論を得る。老鬼と命令を発した黒幕(老槍)を見つけるべく神経戦が始まり、彼らを尋問、拷問し追い込み、共産党スパイをあぶり出そうとする。この緊張感は、設定は違うけど香港の最近一番の傑作映画「インファナルアフェア」に通じるところがある。

周迅はすごい。ネタばれになるかもしれないが、腹が据わった狡猾、妖艶かつ可愛らしい暗号解読員を演じる。「画皮」の妖怪役もすごかったが、この映画は彼女の代表作になるのでは。李冰冰もきれいだけど、周迅の存在感には負ける。
日本軍将校役の黄暁明の喋る日本語は吹き替えのようだ。で、彼が中国語を喋るところも、いかにも日本人が喋る中国語のように発音されてリアル。

拷問シーンが残酷だから、日本ではR指定になるかなあ。それより、蒋介石政権、汪兆銘日本傀儡政権と共産党の支配が並び立つ当時の中国の複雑な政治状況を前提に物語は進むので、その辺は普通の日本人には無理だろうから、日本へは配給されないだろう。
現在の中国人にとって、汪兆銘は「漢奸」(ハンジエン)=裏切り者=と教えられているから、汪兆銘政権の位置づけがやはりステレオタイプのような感じだ。と汪兆銘の肩を持つのは、彼の日本の留学先が僕の母校で大学の先輩に当たるからだ。ってあんまり関係ないけど。当時、中国を赤化させないためには、国共合作までした頑強な蒋介石より、日本と組んででも共産党を排斥しようという汪兆銘のような選択肢も現実的だったと思うけど、アメリカはあんまり乗り気ではなかったみたいだ。というよりソ連が中国共産党をあんまり信じてなくて、なぜか蒋介石政権に肩入れしていたから。
展開が濃厚で一瞬でも目が離せない。DVDだから巻き戻しして確認すること数回だった。スパイの一人は途中で分かるが、最後にどんでん返し、というか、背景説明があり「ふーん。なるほど、すごい」となる。どっしりと重く、悲しいけど、中国人には愛国を訴える展開なんだろうな。いい出来だ。建国60周年記念だけど「建国大業」よりレベルはずっと上だ。


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