Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

6カ国協議提案

2010-11-29 02:35:37 | 時事

中国は28日、「午後4時半(日本時間同5時半)から重要な情報を発表する」と予告、武大偉・朝鮮半島問題特別代表が会見し、12月上旬、北京で6カ国協議首席代表による緊急会合を提案すると伝えた。
中国にとっての重要情報はかならずしも他国にとっての重要情報でないことが多いが、このように事前予告し会見することは異例だろう。23日に発生した延坪島での北朝鮮軍砲撃と米韓軍事演習を巡り、中国政府が極めてあせっている様子が見て取れる。

日本などではどうして中国は北朝鮮の肩を持つのか、もっと厳しく当たるべきではないか、と考える人が多いだろう。北朝鮮は一方的に韓国に砲撃する恐ろしい国だ、とのイメージが膨らんでいるかもしれないが、彼らの言い分を聞いてみると一定の理由がある。北朝鮮はもちろん、中国も28日から始まった米韓軍事演習をこの上もなく憂慮している。この演習は「北朝鮮の脅威に対抗するため」行われるものだが、演習区域は、北朝鮮の先にある、突端に大連、旅順のある遼東半島や対岸の山東半島など中国沿海にも近い位置だ。北朝鮮だけでなく、中国も脅威に感じることは想像に難くない。そもそも中国にとって北朝鮮は、韓国など資本主義国から直接領土内に攻め入られない、同じ社会主義体制の盾、軍事的緩衝地帯の意味もあるのだ。

北朝鮮が延坪島事件を起こした後も、中国は断固とした態度を取らなかった。その理由はおそらく、上記にあげた、米韓演習を中国も脅威に感じていて、その反発から北朝鮮が起こした砲撃に一定の理解を示していたこと、この段階で北朝鮮を突き放すことで国際的孤立をさらに進め、ついには中国の言うことも聞かなくなってしまうことを憂慮したこと、があげられるだろう。
実際、砲撃事件の後の25日、朝鮮戦争で戦死した毛沢東主席の長男の毛岸英の追悼60周年記念式典が開かれ、北朝鮮の檜倉志願軍烈士陵園にある毛岸英陵墓に金正日、金正恩親子が花輪を贈ったと大々的に報じられた。砲撃事件が中朝の関係を微妙なものにすることもなく、強固な同盟関係を再確認したとみてよい。

それはなぜか。この期に及んで朝鮮戦争とか、毛沢東の戦死した長男とか、いかにも軍が喜びそうなことだ。中国指導部に、北朝鮮にシンパシーを抱き反米、反韓の考えを持つ軍を中心とした勢力がいるとみてよい。中国指導部内でもこの勢力を無視することができず、北朝鮮への態度もあいまいな形になっているのではないか。尖閣諸島問題を巡って軍部とのあつれきに疲弊した胡錦濤・温家宝コンビは、今度は北朝鮮問題を巡って軍部と駆け引きしなければならないということだ。中国が北朝鮮を使って韓国を攻撃させた、という見方は考えすぎで、ありえないが、攻撃に対して批判するどころか「よくやった」と考える勢力が中国指導部内にいることは確かだろう。

そういう中で発表された6カ国協議再開への動きだ。中国にとっては、このままでは勝手に飛んで行って、ますます言うことを聞かなくなってしまいそうな北朝鮮を取り込んで6カ国協議の席に着かせることで、議長国としての面子を保ち主導権を維持しようとしているのではないか。米韓、日米の軍事的同盟関係を牽制しようとしているのではないか。北朝鮮とつるんで中国までも国際協調の動きを見せないままでは「中国が北朝鮮を甘やかすからこのようなことになる」との日韓米の批判を受けてたたねばならない。そのような批判を打ち消すためにも、実現可能かどうかは別としても早めに手を打っておこう、というのが、今回の「重要情報発表」ではないか。

実際は協議に臨む前提条件である多くの問題が片付いておらず、韓国、日本、米国もこのまま中国の思惑通り会合に参加するとは思えない。

台湾選挙結果

2010-11-28 04:30:58 | 時事

台湾の有権者は本当に絶妙な選択をする。27日に投開票された5大市長選。与党・国民党の3勝2敗と現状維持となった。失政が目立ち支持率が低下していた馬英九政権に一定の信任を与えたことは間違いない。国民党にとっては事前の公約通り「勝利」だ。ただ、得票率は民進党が49.87%と、国民党と5ポイント差を付けて、再来年の総統選に向けて党勢回復を果たしたといっていい。「得票率が勝敗の基準」と戦前言っていたように、民進党にとっても「勝利」なのだ。

台湾の有権者は、中国と経済的交流を深めている国民党政権に一定の評価を与えて政権を安定させる一方で、次期総統選に向けて民進党への支持も回復していることを示して「国民党、気を抜くなよ」と牽制しているわけだ。


特に、今回、最大有権者数となった新北市(旧台北県)で、次期総統選を視野にいれた蔡英文・民進党主席が善戦、100万票を獲得した。台北市でも国民党の現職に蘇貞昌・元行政院長(首相)が迫った。また、国民党の実力者、現職の胡志強・台中市長に民進党候補が肉薄した。この2人はおそらく2012年の総統選で民進党の正副総統候補になると見られ、かなりの手ごたえを感じたのではないか。実際、もしこの2人が当選して市長に就任してしまえば、総統選立候補前に市長の任期途中で職を辞さなければならず、有権者の批判を受けていたかもしれない。そういう意味では得票でかなりの実力を示して、あと2年間選挙活動に専念できる、という点で民進党にとっては落選しても決して悲観的な状況ではない。
前日、台北県で発生した連勝文・国民党中央委員への銃撃事件で、国民党支持者が危機感を感じ投票に赴いたことも、国民党がぎりぎりで勝利したことの一因になっている可能性が高い。

一方で、もともとの地盤である南部・高雄市では陳菊女史が圧倒的な勝利をし、民進党の実力を見せつけた。うーん。2年後が楽しみだ。





台湾の選挙でまた銃撃事件

2010-11-27 03:59:21 | 時事

台湾ではあす、台北市や新北市(旧台北県)、高雄市など5大市の市長選や市議選の投開票日。前日の26日、台北県の市議選の応援に参加していた連戦・元副総統(国民党名誉主席)の長男で国民党中央委員の連勝文氏(40)が、銃撃された。顔を負傷したが生命に別状はないという。だが、流れ弾にあたった一般市民が死亡した。犯人はその場で取り押さえられた。

選挙運動最後のお願いのときの銃撃といえば、2004年の総統選挙の最終日の3月19日、台南市で該当パレードしていた民進党の陳水扁と呂秀蓮の正副総統候補が銃撃を受け負傷、翌日の選挙結果では陳水扁が僅差で当選したことを思い出さざるを得ない。このとき選挙で陳氏に敗れた国民党候補は連戦氏だった。この暗殺未遂事件は、国民党側は「自作自演」と攻撃したが、検察当局は事件後に自殺した男性による単独犯と結論づけ、捜査は終了した。

台北県(新北市)といえば、民進党の蔡英文主席が市長選に立候補している重点地区。これまでの世論調査によると、蔡主席が国民党の朱立倫候補を僅差でリードしていると報じられている。これまで北部は国民党が優勢で、高雄や台南など南部で民進党が強いとされてきたが、もし蔡主席が新北市長に当選したら、再来年の総統選挙への弾みになるに違いない。支持率が低迷傾向の馬英九総統ら国民党陣営には大ピンチだ。

まさか、国民党側がやらかしたとは思えないが、明日の選挙結果は注目だ。

台湾からの報道によると、警察当局の初期捜査の結果、逮捕された林正偉容疑者は「馬面」という暴力団組織の一員と見られているが、特に政治的な動機はないという。そういえば、陳水扁銃撃事件をネタにした香港映画「弾道」では、犯人はやはり総統に雇われた暴力団関係者として描かれていた。香港映画なので、反台湾独立、反陳水扁の中国共産党系の息のかかったストーリーみえみえだったが。

弾は連勝文氏の左下あごから口の中をつきぬけ、右の頬から外に出たという。命に別状はないが、顔面骨折しており手術したそうだ。腹を弾がかすっただけの陳水扁に比べれば傷は重いなあ。自作自演とするのはちと無理かも。


大相撲初観戦

2010-11-26 00:10:53 | Weblog

初めて相撲観戦をしてきた。23日、大相撲九州場所が行われている福岡国際センターに行ってみた。最後列の椅子席だが、手前の升席はかなりガラガラ。20日に満員御礼になったというが、これは順調にいけば横綱・白鵬が双葉山の69連勝の記録に並ぶ日で、この日だけは前売りが売れていたらしい。実際は白鵬の連勝記録が途絶えてしまったので、客足もよくなかったのだろう。その後の21日の日曜日も、この23日の勤労感謝の日の祝祭日も、かなり空席が目立った。こんなことなら前売り券を買わなくてもよかったかな、と思った。それにしても、北海道とか青森とか盛岡ならもっと客がはいるかもしれないなあ。

そもそも相撲観戦のだいご味ってなんだろう。一番安い椅子席Bでも前売り3100円。序の口とか序二段とか朝からやっているが、本当の相撲好きはまだしも、そんなに長くは観戦できないなあ。一番安い椅子席でも、福岡国際センターでは、土俵までの距離はそんなに遠くなく、取組は十分見ることはできる。ただ、サッカーや野球はテレビ画面からはみ出した部分、サッカーならディフェンスラインの動きとか、野球なら内外野の選手の配置とかなど、競技場でのみ見ることが出来ると楽しみがあるが、相撲はテレビ放映とそんなに変わらないかな。スロー再生などがある分、かえってテレビの方が楽ちんかな。

サッカーなら大型ディスプレーに得点シーンなどの場面を再生することもあるが、福岡国際センターにはそんな設備はないし。

テニス観戦に似ているかなあ。それでもテニスは、競技場の雰囲気を味わうだけでなく、コート外のスポーツメーカーの出店に行くのも、テレビ放映されないダブルスの試合を見るのも、練習コートで練習している有名選手を眺めているのも楽しい。

伝統芸能を一度見たということで、今後積極的に相撲を見に行くことはないと思う。

メディアスクラム

2010-11-13 02:43:47 | 時事
尖閣衝突事故のビデオ流出問題で、海上保安本部から事情聴取を受けている海上保安官(43)が13日未明、初めてコメントを出した。

「このたび世間をお騒がせしたこと、及び、多くの人々に多大なるご迷惑をおかけしたことを一番最初に心からおわび申し上げます。本日私がここに宿泊致しますのは、あなたたちマスコミのおかげです。私がこの建物を出たならばさらに多大なる迷惑を多くの人々にかけてしまうからです。本日、私がここに泊まるのは私の意志に基づくものであります。過熱した報道を少しは控えてください。」

だそうだ。このコメントを見て、この保安官が望む立ち位置がわかるような気がする。自分の行為に喝采を送り、同情し罪の減免を願う「怒れるネットウォッチャー」からの支援を受けたいと思う一方、マスコミ不信がうかがえる。入手した映像をマスコミを通じて世に出して自らの主張を訴えるのではなく、ユーチューブで自ら不特定多数を対象に公開することを選択した理由なのだろう。

調子に乗ってんじゃないのか? マスコミが過熱報道するような大それたことをしたわけだ。報道によると、ちゃんとした供述をしないで、はぐらかすようなことしか話していないようだが、もし、自分がしたことに道理があると思うなら、説明責任があるのではないのか。なぜ国家公務員という立場で入手した映像を、政府が公開しない方針であることを知りながら不特定多数に見せるためにユーチューブに流したのか。その理由が明らかにならない限り、マスコミが5管庁舎前で待ち続けるような報道体勢は変わらないだろう。

朝日新聞のネット配信記事を見ると、
「5管は12日夕までには保安官を帰宅させ、本人の記者会見を認める方向で調整を進めていた。しかし、総務部長によると、保安官は13、14日も5管の庁舎に宿泊し、会見は保安官自身と海上保安庁の意向で中止させたという。 」

会見から逃げて説明責任を果たすことを避けたわけだ。海保ももともと会見を認める方向で調整していたということは、逮捕させないつもりではないか。任意聴取の途中段階で記者会見を設定するなど聞いたこともない。13、14日は聴取せず、週明けに逮捕するか否か判断することになるようだが、海保は会見させることで、情状酌量を狙おうとしたのではないか。

警視庁捜査一課は逮捕できるのか。それは映像の中身が国家公務員が守秘義務を果たすべき機密かを証明できるか否かだろう。ビデオは一定期間は海保内の多方面に流布していて「機密」でなかったと、海保は組織をあげて既成事実を作るのではないか。それから、検察は起訴できるのか。これは中国人船長を釈放したときに多くの人々が激怒したことを勘案して、世論の反応がどうなるかを視野に入れて判断する可能性がある。

マスコミのこの問題に対する報道も行き詰っているようだ。筋の話はどうなるのか、それがわからないため、枝葉の部分を取り上げて報じざるを得ない。某地検特捜部のようにストーリーを描いて、それに沿った報道もできないほど、筋が読めないのだろう。

尖閣ビデオ流出告白

2010-11-11 03:14:40 | 時事
神戸海上保安部の43歳の航海士が、尖閣沖漁船衝突事故のビデオ流出を「自分がやった」と告白した問題。海保には「罪を問わないでくれ」などとの電話がかりまくっているとのことだが、余計なお世話なのではないのか。仮にも国家公務員であり、海を守るという海上保安庁だ。憂国の気持ちからこのビデオを公開しようとしたのなら、生半可な気持ちではなく自らの職を賭してでも、との覚悟はできていたはずだ。国家公務員には守秘義務がある。それを承知の上での行為だろう。にもかかわらず、もし今でも海保の職にすがろうとしているとしたら、ビデオを公開した志さえ疑わしい。

警視庁に聴取されたこの航海士は、とりあえず一度逮捕されるだろう。ただ、データをユーチューブに送ったとされる神戸の漫画喫茶のビデオの画像が不鮮明で、この航海士がPCを扱っている様子が確認できないのなら、自供だけで公判維持は無理だ。公開されたビデオが機密だと判断されれば公務員法の守秘義務違反にも問われるだろう。ただ研修資料名目でビデオは海保内のあちこちに出回っているようで、この航海士が「極秘資料とは思わなかった」と証言するなどしたら、守秘義務違反に問えないかもしれない。

有罪にはしにくいし、そのまえに起訴するのも難しい。証拠不十分で不起訴か起訴猶予になるのでは。ただ、国家公務員が守秘義務を犯したことは問題であり、懲戒免職処分は免れないのではないか。

映画「海猿」とか見てちょっと勘違いして調子こいてるんじゃないか。自衛隊や海保や警察は国を守る建前から、命令に絶対なのではないのか。国を憂いて個人の判断で勝手に国家機密を漏洩するなど、ある意味、日本の国家権力のヒエラルヒーに対する冒涜だ。国家システムとして公務員がそのシステムに反抗するとすれば、罰されるのは当たり前だろう。

以前から述べているように、衝突した漁船の中国人船長を釈放したのも、中国に屈したという簡単な構図なのではなく、次代の中国の指導者の人事問題をにらんだ非常に高度な判断に基づいたもののはずだ。外交とは一海保職員がチープな正義感にかられて勝手に突っ走って判断して済むような問題ではない。情状酌量の余地はない。この構図は5・15事件や2・26事件の青年将校の発想とある意味同じだ。きわめて危険だ。

もうひとつ興味深く思っているのは、ビデオ映像をテレビ局や新聞社、週刊誌に持ち込まないで、ユーチューブで自らが公開したことだ。さまざまなところで言われているように、テレビ局はともかく新聞社などに、もしこの画像が持ち込まれたとしたら、44分全部は公開されなかったろう。新聞はどこかのカットを数枚静止画で載せておしまい。そう考えて、あるいはあまり考えなかったかもしれないが、結局、自らユーチューブに乗せて発信した。もちろん、ネタを報道機関に提供したら、それが報道する価値があるのか報道機関が判断し、もし発表後にトラブルが起きたら、もちろん報道機関がその責任を負う。今回、自らユーチューブにアップしたことで、責任はこの航海士が取らなければならない。
そう。ニュースはもう自ら発信できる時代なのだ。もちろん、画像なりニュースのネタなどの加工の仕方はテレビ局や新聞社のほうが玄人なのだろうが、そもそもそのような小手先のテクニックなど必要としない、でかいネタならば、自らユーチューブなりブログなりで公開、発信すればよい。ただ日本のユーチューブの動画を見ていると、テレビ画像を落として載せているような安易なものが多い。自分で動画を撮って載せればいいのに。その動画の見せ方、切り取り方が課題になってくるはずだ。

アメリカでは莫大な金がかかる調査報道を新聞社が嫌って、退社した記者たちがNPOを結成して調査報道を行い、新聞社などに売り込むような動きも出てきているという。今回の事件で考えられるのは、報道機関の位置づけに大きな転換期が来ているのではないか、ということだ。

寒い。おでんつくった

2010-11-09 20:44:28 | 飲食

きょうは風が冷たくて寒かったので、おでんをつくった。
といっても、一袋にいろんな具が入っているものを買って、大根、ジャガイモ、こんにゃく、はんぺん、ちくわぶを別に買って加えた。あ、ゆで卵も。おでんセットに入っていた粉末のダシに醤油とさらにダシを加えて煮た。
ちくわぶやはんぺんは関西以西ではおでんの具として存在しないようなことも聞く。こっちのおでん屋に行った時に「好きな具をどうぞ」と言われて「ちくわぶ」と答えたら、なんじゃそら、みたいな反応だった。知らない人のために、写真のジャガイモの下、大根の上に乗っかった2つの白いのがちくわぶ。近所のダイエーにはある。さすが全国規模。九州ではおでんの具といえば牛筋らしいが、僕は特にこだわらないので、なし。
大根は十分に柔らかくなったけど、一晩置いたほうが味がしみこむのでは。明日の弁当だな。

甄子丹の映画「精武風雲・陳真」みた

2010-11-09 19:10:16 | 映画鑑賞
中国・香港のアクションスター、甄子丹(ドニー・イェン)の最新作(?)かな、中国で9月に封切られた「精武風雲・陳真」を見た。カンフー映画にはかすりもしないほど疎いのだが、李小龍(ブルース・リー)の第2作目にして大ヒットした「精武門(ドラゴン怒りの鉄拳)」に続く物語というか、オマージュなのだという。ブルース・リーの作品も中華民国時代に日本の柔道館に師匠を殺された陳真が日本人に復讐するという内容。
この「精武風雲・陳真」も第一次世界大戦で、中国人苦力(クーリー=肉体労働者)として戦場で物資運搬などをしていた主人公(甄子丹)が、戦闘のなかで友人が銃で殺され、ものすごい脚力と身体能力で戦場を駆け巡り、刃物だけでドイツ兵を何人も殺す、というシーンから始まる。
(すでにネタバレ注意です)
舞台は日本の軍人らが幅を利かせている開戦直前の上海で、甄子丹はナイトクラブのオーナー(黄秋生=アンソニー・ウォン)に気に入られて共同経営者となっている。そこのスターダンサーのの舒淇(スー・チー)といい仲になるが、彼女は日本軍のスパイだった。で、日本軍が反日中国人との名簿を発表、次々に暗殺していくなか、ブルース・リーが演じたカトーのようなマスクをかぶった甄子丹がそれを阻止していく。日本軍はこのマスク男を追い、日本軍のトップの大佐(木幡竜)は、かつて自分の武道家の父(倉田保昭)を殺した男・陳真を探していた。第一次大戦で一緒に欧州にいった仲間らが次々と日本軍に殺され、甄子丹は単身、日本の道場(何の武道なのかは不明。柔道というより空手、日本の敵役の大佐のフットワークはボクシングみたいだ。木刀もあるから剣道?)に殴りこみに行く、というストーリー。

甄子丹といえば、「葉問(イップマン)」も日本人と対決する物語だった。陳可辛(ピーター・チャン)監督作品の「十月囲城」は、建国の父、孫文が広州入りする際、清朝宮廷派の暗殺団から命をかけて孫文を守る、ある意味、愛国物語。NHKがスペシャル番組の中で紹介していて、陳可辛は僕が香港時代に好きな監督だったので期待してみたが、期待はずれだったので、特にこれまで感想は書かなかった。

これらの映画がヒットするのは、尖閣諸島の問題などが勃発するや、これらの映画をみた「単純な」(失礼)、愛国心と日本軍国主義に反対する強い気持ちを持った中国の人々を必要以上に鼓舞し反日精神を高揚させる作用を与えたのではないか。尖閣反日デモの底流にはこんな気分も関係しているのではないか。

映画製作者もマーケットの需要を考えるわけで、悲しいかな、今の時期は愛国心をあおり、反日をあおるこのような作品が大いに受けるのかもしれない。それに合わせて、反日の内容の映画が連発的に上映されるのは、ある意味仕方がないのか。愛国はともかく、反日が商売になるのは悲しいね。

甄子丹はこの映画の香港でのプレミア上映に乱入した藤原紀香に「釣魚島は中国領土だ」と言ったと前書いたが、調べてみると、これは香港メディアの誤報で、実際は舒淇に「君は映画の中で日本軍のスパイを演じ日本語の台詞もあったから、彼女に日本語で『ラマ島(香港島のすぐ西側にある小島)はおれたちのものだ』といってやれよ」とジョークを語っただけだという。これが間違って伝わったという。舒淇も藤原紀香に伝えていないという。
それから、上海西郊の松江区にオールド上海の映画撮影村があるからとはいえ、この時代の上海を舞台にした映画にはもう食傷気味だね。愛国映画を撮るにはこの時代が一番楽なんだろうな。監督は香港の近年の映画では最高傑作「インファナル・アフェア」のアンドリュー・ラウ(劉偉強)だって。うーん。「インファナル・アフェア」と違ってこういう映画はストーリーとかは関係ないんだろうな。ブルース・リーやカンフーが好きな人は感激してみてしまうんだろうなあ。確かに甄子丹のアクションは素人の僕が見てもキレキレで素晴らしいと思った。

そういえば甄子丹の「錦衣衛」(李仁港=ダニエル・リー=監督)も見た。これだけ彼のアクションばっかり見てると、もう結構です、という感じも。でも、こっちのほうがよかった。明朝の秘密警察「錦衣衛」のトップ甄子丹が、勅命を受けて組織を離れて裏切り者を消し、奪われた玉璽を取り戻そうと西域を舞台に活躍する内容。協力者の娘に趙薇(ビッキー・チャオ)、この撮影のあと出産したんだなあ。甄子丹は、いろんな武器がはいった木箱をいつも持っていて、この武器の使い方が見せ場なんだろうなあ。

映画「唐山大地震」見た

2010-11-06 16:55:50 | 映画鑑賞

中国で大ヒット、アバターをしのぎ、中国映画史上最高の興行収入となったといわれる映画「唐山大地震」を見た。1976年7月28日午前3時過ぎ、中国河北省唐山市付近を震源とするM7・8の地震が襲い、24万人が死亡したとされる。
映画はこの本当にあった地震を題材に、地震発生のとき、子供だった男女の双子が瓦礫の下敷きになり、救出中に救助隊が「二人のうち一人しか助からない。どちらか選べ」と母親に無情な選択を強いる。母親は涙ながらに「男」と選択する。女の子の方は運び出され遺体として放置されていたが、奇跡的に蘇生し、解放軍の子供のない夫婦にもらわれる。そしてそれぞれの人生を生き、成長し、四川大地震の現場で偶然再会する。

この年は1月8日に当時、中国人民から最も敬愛されていた周恩来総理が死去、7月6日には朱徳・元帥(全人代常務委員長)が死去と、大きな事件が次々と起こった。地震後の9月9日には中国建国の父であり最高指導者の毛沢東が死に、中国国民を苦しめてきた四人組(江青、張春橋、姚文元、王洪文)が捕らえられ、1966年から10年間続いた文化大革命が終了した。映画の中でも毛沢東の葬儀は再現されている。

子供のうちどちらか一人しか助からない、どちらか選べ、というのは舞台回しとして、ちょっと残酷すぎる究極の選択だ。この当時の中国では後継ぎとしての男子を尊重する傾向があり、そのような考えからの選択なのだろう。その結果、救出の際に男の子は片腕を失う。

女の子の成長してからを演じた張静初は、釈由美子と相武紗季を足して二で割ったようなきれいでスリムな女性。大学で医学を学ぶが、すぐに上級生の変な男とくっつき、妊娠し不本意な退学をする。どうして、あんな情けない男とくっついて、人生を変えてしまうのか。中国の映画やテレビなどではこんなストーリーが多く見られる。

男の子の母は再婚もせず、片腕になった息子を育て、男の子は旅行会社の経営者になる。流行の業界の成功者になるところは「一杯のかけ蕎麦」に似ているね。ちょっと恣意的だ。

中国人の観客が号泣した映画。出来はいいしCGも迫力がある。特に前半部分はかなり力を入れているように見えるが、作り方に受け狙いの作為的な感じは否めない。後半の物語を終わらせるための舞台回しはちょっと急いで話を展開しているように見える。

それから監督の馮小剛(フォン・シャオガン)の作風、クセなのか、ところどころにエッチっぽい、っというか性的な表現がある。地震直前に双子の夫婦がトラックの中で事をいたすシーン、女の子が悪夢を見て目が覚めると、父親が後ろから抱きかかえ、妻に、もう大人の娘なのだから、そんなパンツ一丁で娘に触れるな、と諭されるシーン、大学の宿舎を父親がたずねると、上級生と事をいたしていた風を暗示するシーン。いわゆる観客サービスなのだろうか。ストーリー展開にはあまり関係ないとは思うが。その辺は伊丹十三監督にも似ている。

反日デモ収束か

2010-11-02 06:30:48 | 時事
尖閣諸島の領有権を巡る日中のあつれきで、菅直人首相との日中首脳会談を直前になって温家宝総理がキャンセル、10分間の立ち話で済ませたあとの週末、中国ではどうやら大規模な反日デモは発生しなかったようだ。日本経済新聞によると、10月30日に寧夏回族自治区銀川や吉林省長春で小規模な集会はあったというが、大規模になる前に抑えきれたようだ。一部地域で不動産高騰や馬英九台湾総統への呼びかけなどのスローガンが見られ、反日デモが政府批判、ひいては民主化要求に変わるかもしれないと恐れた中国当局が、土日に授業を行い大学生を大学の外に出さないようにしたり、何度もデモ抑止を求めるなどの対策が功を奏したのだろう。あるいはロシアのメドベージェフ大統領が北方領土を視察し、その行方を見守ろうとしているのかもしれない。

中国の媒体は、デモ低調化を進めるため触れていないが、もともと尖閣諸島問題を先鋭的に扱ってきた香港の媒体の一部などでは、11月1日に浙江省温州で反日デモが計画されていたが中止になった、と報じている。ニュースソースはいずれも日本の駐上海総領事館の情報のようだ。写真は英国のBBCの中文版だが、香港テレビや亜視テレビなどでも短行で同様に報じている。これに対して、名古屋で反中デモが起きた、と報じた媒体もある。香港では日本の右翼のデモに抗議した中国側の人民の行動、という構図を作りたいのか、複数のメディアが名古屋でのデモを報じている。集会やデモの自由のある日本と、中国とはデモの意味が違うことを意識的に棚上げして報じている。
ハノイで温総理が菅首相を袖にして、前原誠司外相に対して攻撃をしかけ一定の効果が出たこと、民主党が12月に訪中団を計画していると発表したこと、11月中旬に横浜で開かれるAPECに胡錦濤国家主席(党総書記)が出席すること、などから、日中の軋轢を高めることをやめるべきだ、という時期に入っているのだろう。デモをしようとしていた民衆も身の危険を感じ始めたのではないか。ただ、11月8日に広州で開催予定のアジア大会の男子サッカー日中戦で、示威行動を計画している、との報道もある。

尖閣諸島問題では、日本側が海保船から漁船が衝突した際の7分間に編集したビデオを一部国会議員に限定的に公開したが、未編集のすべてを公開しておらず恣意的に編集されては原因を特定できない、公開して中国側にも中国漁船に非があることをアピールすべきだ、との論調があるが、中国側はまったく意に介していない。

おそらく、そもそも酒に酔った一方的な愛国心に燃えた船長があとさき考えずに衝突させた、というのは中国側も実は認識していて、この船長拘束事件をきっかけに、尖閣諸島問題を日中に存在する領土問題として世界にアピールする目的を果たせればよかっただけだ。
1日、中国外交部の馬朝旭・報道局長は定例記者会見で、「(どちらが先にぶつかったかが問われているわけではなく)日本の海上保安庁の巡視船が(中国の領海である)釣魚島海域で中国漁船に干渉し、取り囲み拘束したことが違法であり、中国の主権と中国漁民の正当な権利を侵犯している。いわゆるビデオがこの事実の真相を変えるものではなく、日本の違法行為を隠すことはできない」と答え、取り付く島もない。仮にビデオを全面公開して中国漁船側の衝突行為が明らかになったとしても、中国側は一切すっとぼけて、自民党など野党が主張しているような効果が得られるとは思えない。
もちろん、ビデオの内容については僕も見てみたいが、日中の軋轢を解決させる手段だとは考えないほうがいい。