Takepuのブログ

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民進党は蔡英文女史再出馬へ

2014-04-16 22:47:52 | 時事
台湾と中国のサービス貿易協定に反対し立法院を占拠していた学生たちが約束通り10日に退去した。台湾メディアは16日、学生退去のきっかけをつくったとされる王金平・立法院長(国会議長)が3月29日に、最大野党・民進党の立法委員団総召集人(国対委員長のようなものか)の柯建銘氏と密談、事態収拾について協議していたと報じた。

王院長と柯委員は、13年に発覚した電話盗聴問題の双方の当事者。王院長は議会対策のため柯委員と通じていて民進党への処分に手心を加えたなどの疑惑が持ち上がり、党内ライバルの王氏追い落としを狙う馬英九総統(国民党主席)側の働きかけで盗聴記録が公開されるなどして王院長が追及され、党籍抹消処分となった。王院長は徹底抗戦、台北地裁は王院長の地位保全を求める仮処分申請を認め、党籍は維持されたままだ。

16日に柯委員は取材に対して「29日に王院長と会い、1時間半ほど話した。1週間たって事態収拾できなければ国家的危機だとして、王院長は民進党の要求をのんだ」と話したという。

馬総統の人気は2016年まで。王金平は後継総統を狙っているのか。

一方で民進党は5月に予定される党主席選挙の立候補受付を14日に始めたが、有力候補の一角にして現職の蘇貞昌・党主席と、かつての党主席で陳水扁総統時代に行政院長も務めた謝長廷氏が相次いで不出馬を表明した。これによって民進党主席の有力候補は、先の総統選挙で馬英九に惨敗した蔡英文女史だけになり、2016年の総統選、それよりも前に、11月の統一地方選で蔡主席をトップに、落ち目の国民党と戦うことになる。

蔡女史がまだ出馬表明もしていないのに、馬総統は16日、民進党政権下で蔡女史が行政院(内閣)で中国大陸との問題を所管する大陸委員会主任委員(閣僚級)だったときに、中台人民条例を提案し、中台の締結事案は立法院の事前審査が必要ない、と言っていた、などと昔の話を蒸し返し、早くも蔡女史攻撃を始めた。いつでも公開討論(弁論)する用意がある、とまで話した。自分の目の黒いうちに蔡女史のイメージダウンをはかろうとの意図が見える。

これに対して民進党側は、民進党政権になる前は国民党政権が大陸政策を国会の監督も受けずにやっていたが、政権をとったばかりの民進党はそのレールにのっただけで、中台交流が活発になっている現在だからこそ、学生たちも立法院の監督を要求したわけで、今と当時を一緒くたにされては困る、馬総統は鹿を馬というようなすり替えをしている、と批判した。国を治めるのは弁論に頼るのではない、馬総統は自分が総統であることを忘れるな、あなたは大学弁論部の部長ではない、と突き放している。

蔡女史の相手は馬英九ではなく、その後継者であり、挑発にのる必要もない。馬のあせりが見える。

親中国寄り、外省人の利益を代弁する中国時報のHPも、馬と蔡の対決をあおるような写真と見出しを掲げているが、マスコミによる世論操作が透けて見える。

で、国民党は馬後継に誰を出すのか? 王金平が出馬するといっても、国民党内が黙っていないだろう。かつての宋楚瑜のように党を割って出る可能性もあるだろうか。

党を割る、といえば馬後継として下馬評にあがっている一人が郝(カク)龍斌・台北市長。父親は国民党の元老で参謀総長も務めた外省人のカク柏村。李登輝政権下で行政院長(首相)も務めたが、台湾化を進めた李登輝総統(国民党主席)に反発し、国民党を出て「新党」を結成、96年の最初の民選総統選挙では新党の副総統候補となった。外省人の馬政権下では新党の色合いが最も近いのかもしれない。台北市長の任期が総統選前に切れるので、出馬は可能だ。

また、若手ナンバーワンなのは朱立倫・新北市長。まだ若く、市長任期も途中なので、馬英九が台北市長の任期を2期全うしてから総統候補になったように、自らが傷つく今回の総統選は見送って次回を、との可能性は低くない。

いずれも蔡女史の相手としてはやや力不足か。とはいっても、前回の総統選で中国政策に具体性がなく有権者に嫌われ惨敗した、と分析される民進党の蔡候補だったが、次の総統選、あるいは統一地方選では、これまでの独立志向、だけでなく、現実的な対中国政策も求められる。ましてや大陸の共産党政権が毛嫌いする李登輝総統の「二国論」を起草した蔡女史である。その辺が有権者にフィットするモノなのか、民進党が現実路線へ転換できるのか、正念場だろう。


台湾の学生たちが立法院退去へ

2014-04-08 00:24:05 | 時事
中国との「サービス貿易協定」に反対して、台湾の国会にあたる立法院を占拠していた学生たちは7日、立法院から10日に退去すると発表したという。3月18日から続いていた台湾学生運動のうねりが収束に向かうが、まったくイニシアチブを握れなかった馬英九総統は窮地に追い込まれ、台湾政局は混沌とするだろう。

6日には与党・国民党内で馬総統と対立する王金平・立法院長(国会議長に総統)が、学生たちを見舞い、リーダーには面会出来なかったが「立法院などによる監視機能を定めた法律が成立するまではサービス貿易協定の審議を始めない」と表明、学生たちは一定の評価を示し、混乱収束に向かったと見られる。占拠が長引けば民心を失うとの判断もあったかもしれない。

馬総統は7日、国民党の立法委員(国会議員)による会議の席上、王金平院長の声明はサービス貿易協定の審査に反対するものではなく、政府の主張とあいたがえるものではない、としたが、実際は自らが何を語っても動かなかった学生たちが、政治的ライバルの王院長の声明で事態収束に向かうことに、地団駄を踏んでいるに違いない。王院長は今回の会議も含めて、馬総統が開催したサービス貿易協定に伴う学生運動解決のための会議を欠席しており、党内の軋轢が深まるのは確実なようだ。

王院長は日本統治下の高雄生まれの73歳。国民党の中でも李登輝元総統に近い本省人グループの代表人物という。2005年の党主席選挙では対抗馬の馬英九(当時台北市長)に惨敗。このときの馬側の王に対するネガティブキャンペーンが相当厳しいものだったためか、副主席就任要請を断っており、また08年総統選の副主席候補出馬要請も蹴った。13年には、民進党立法委員議員との電話盗聴記録が公開され、検察側への上訴断念を働きかけた容疑で、国民党の党籍抹消処分を受けたが、台北地裁が王院長の地位保全を求める仮処分申請を認め、党籍は当面保留されている。などなど、馬総統とは決定的に決裂している。


学生たちは、一定の成果を得たとして、今後も中台協議監督条例草案、サービス貿易協定の審査、公民憲政会議の開催--を引き続き要求していくという。

今回の運動は蜜月状態に入ったと見られていた中台関係に大きな衝撃を与えた。中国側が「協定遵守を」と強い態度で要求すればするほど(おそらく中国側は空気が読めないので、そうするだろう)、台湾で経済不況がより悪化して中国依存度が高まらなければ、中国への反発は強まり、「反中」の空気が強まるだろう。

馬本人は香港生まれだが、親は中国湖南省出身の外省人のカテゴリーに属する。中国大陸から蒋介石に率いられて台湾に来た人々に連なるアイデンティティーを持ち、中国との統一を志向していると言っていいだろう。2期目後半(3選はない)の馬総統が、中国との関係強化を焦り急速に進めたことによる逆風がこのような形で出て、台湾の人々も一定の理解を示したことで、次の民意代表選出、総統選挙などで、台湾の主体性、独立性を強調する民進党の考え方が今以上に受け入れられる可能性が出てきた。