Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

中国と台湾が分断後初のトップ会談

2015-11-04 01:47:46 | 時事
台湾からの報道によると、台湾の馬英九総統と中国の習近平国家主席(共産党総書記)が7日、シンガポールで会談するという。3日夜、台湾総統府の報道官が明らかにした。台湾側は4日に立法院や野党に説明し、大陸委員会が会見するという。馬総統も5日に会見するという。




1月に予定されている台湾総統選挙と立法委員選挙のダブル選挙で劣勢が伝えられる国民党が、この中台トップ会談で勢力を取り戻すことが出来るのでは、と馬総統は考えているのだろうか。また3月までの自身の任期中にレイムダック状態だが、なんとか成果を出して総統を退任しようとでも思っているのだろう。

ただ、国民党は総統選公認候補に決まっていた洪秀柱・立法院副院長が中国との統一を志向し親中的発言を頻発させたことで、党内では「台湾の民意とかけ離れているのでは」との危惧と不安が広がり、ダブル選の立法委員選挙を戦えないとかなりの突き上げがあった。朱立倫・国民党主席は結局、正当な手続きを経て選出されたはずの洪女史を総統選候補から強引に降ろし、臨時的な緊急的な手続きで朱主席自らが新たな総統候補となった。まだ任期が残る新北市長の辞任と総統選立候補、そして(おそらく)敗退は免れないが、それでも立法委員選挙でのなだれを打っての大敗を避けようとした。国民党内のその共通認識は「台湾人民は親中を受け入れていない。選挙に負ける」というもので、人心を得られていない馬総統は1月の次の選挙のことを顧みず、自らの手柄のみのために中台トップ会談を仕掛けたとみられる。党内に亀裂が走るのではないか。あるいは馬総統が党内でまったく相手にされなくなるかもしれない。

台湾からの報道にあるように、両岸平和や経済問題について話し合うだけで、具体的な文書に調印したり連合声明を出すことはないという。中台関係に劇的な変化がみられるような出来事になるとは思えない。

馬総統は昨年の地方首長選挙で大敗した責任をとって国民党主席を辞任しているが、国民党主席でない「中華民国総統」の馬英九に会うということで、習総書記は「中華民国の代表」に会うという理屈になり、事実上「1つの台湾、1つの中国」を認めることにはなりはしないか。国民党が野党時代に、あるいは総統でない国民党主席と中国側のトップは会談しているが、「総統」と「国家主席」が会うのは初めてのはずだ。

習総書記としては、来年、蔡英文民進党主席が総統に当選し政権交代となれば、台湾との対話の可能性はきわめて低くなるため、なりふり構わず馬総統側の提案に乗った、というところだろうか。台湾の人心をあまり把握していない、理解できない中国共産党側とすれば、中台関係が良好になれば、台湾人民は中国に好意的になり、国民党への支持が高まり、ダブル選挙で民進党の大勝に歯止めがかけられるのではないか、と勝手に思っているのではないか。

そうなるか、ならないかは来年1月までのお楽しみだ。




一人っ子政策廃止

2015-11-01 23:59:15 | 時事
中国共産党第十八期五中全会で、1979年以来続いてきた中国の「一人っ子政策」を止め、二人まで産むことが出来ると決定した。
同日公表されたコミュニケ(公報)では、様々な政策の一番最後に2行ほど触れられているに過ぎない。

「計画出産を堅持するのは基本的な国策であり、人口発展戦略を完全なものにするため、一夫婦が2人の子供を産むことができる政策を全面的に実施し、人口の老齢化に積極的に対応する」



その後、新華社などが様々な解説を載せているが、結論として、計画出産が完全に廃止されて、出産が自由化されたわけではないこと▽一人っ子政策が「二人っ子政策」に変わったに過ぎないこと▽2人目の出産に関しては、申請し許可を得てからでないと出来ないこと▽一人っ子政策の廃止は人道的観点からというより、あくまでも高齢化による労働人口の減少に対応するという経済的要因によるということ--などを指摘することが出来る。



2014年に一人っ子同士の夫婦の場合、2人目を認める、という暫定政策が導入されたが、新華社によると、2015年5月末までに全国145万の夫婦が2人目の申請を出し、139万の夫婦で手続きを済ませたという。2014年の出生人口は2013年に比べて47万人増えたという。

ただ、農村などを中心に違法に2人目を出産し戸籍に入ってない、いわゆる「黒孩子」がいることから、人口動態的にはどれくらい影響があるかは不明だ。また、都市部を中心に子供の教育に多くの費用をかけることから、2人目は経済的に無理、一人で十分、という考えが広まっていて、「二人っ子政策」を享受するのはおそらく、あまり経済的に恵まれていない農村部になるのではないか、と予想する。都市部と農村部で貧富の差がますます拡大するとみられる中で、農村人口ばかり増えることで、中国の将来の高齢化への対応にメリットがあるか、といえば、やや悲観的だ。失礼な言い方をすれば、「貧乏人の子だくさん」となれば、教育を受ける機会が都市の豊かな階層に比べれば劣り、不本意な就業に甘んじなければならなくなる。これまで「安価な単純労働力」によって発展してきた中国経済が曲がり角を迎えて減速傾向にあり、ハイテクなど高付加価値の産業育成が待たれる中、経済的観点から見ると優位には思えない。

また、農村戸籍を暫定的に都市戸籍に移す、という政策もとられているが、都市戸籍を得ることで農民工が「虎の子」の土地を奪われてしまうことを避けるため、あまり普及していないと聞く。人口問題を解決するためには、この都市と農村の貧富の差、社会保障の格差を解消しなければ先には進めないと思う。このままでは中国も「中進国のワナ」から抜け出すことは難しいのではないか。



南京大虐殺を世界記憶遺産

2015-11-01 16:36:38 | 時事
ユネスコで南京大虐殺の資料が世界記憶遺産に決まったという。
日本政府は「遺憾。ユネスコへの拠出金停止も考える」と、当時はすごい剣幕だったが、拠出金停止は踏みとどまったようだ。

ユネスコの世界遺産選出を批判して拠出金停止をするなら、日本が選ばれたこれまでの世界遺産への正当性も否定することになるからだ。
南京がだめで、明治日本の産業革命遺産やシベリア抑留が良い、と単純に言うわけには行くまい。

南京大虐殺のどこが遺憾なのか。


好意的に解釈すると、中国側は30万人、日本政府は最大20万人という犠牲者の数が見解の相違ということでまとまっていないことに対して、意見の一致をみてから、世界遺産に申請すべき、ということか。



中国側の立場にたてばそれは無理でしょ。まえも書いたように、南京大虐殺記念館に「300000」とのプレートがあるように、当局として30万人と喧伝していて、それを日本が文句を言ったからと引っ込めるわけにはいかない。
それをすれば、まさに習近平政権が「弱腰」「親日」とレッテルを貼られて、政権維持そのものがピンチになる。

ただ、この剣幕を日本のマスコミがそのまま報じると、まるで「南京大虐殺の幻」というような、大虐殺そのものがなかったような主張がそこはかとなく流れていくように見える。

いうまでもなく、日本の歴史学者の見解では最大20万人、数千人から数万人まで、犠牲者の数はさまざまなれど、南京に進駐した日本軍が民間人を含めた中国人を大量に(ここの数字に見解の相違があるのだろうが)殺害した、というのは日本政府も認めているわけで、南京大虐殺がなかった、それなのにユネスコがある、とお墨付きをつけた。それはけしからん、という論理にはならないはずだ。

それでは、同時に決定されたシベリア抑留に関する舞鶴の記録はどうなのか。旧ソ連、現ロシアは案の定、文句を言ってきた。
シベリアで苦しんだ方々や関係者には理解に苦しむかも知れないが、ソ連側の立場にたてば、南京についての日本の主張も同じようなことを言っているのではないか。

官営八幡製鉄所など、明治日本の産業革命遺産はどうなのか。
朝鮮半島から大量の労働者を動員させ、八幡製鉄所は1894年の日清戦争で清に勝利したことで得た戦時賠償金の一部を投入して造られた。
当時の大日本帝国の国家予算の数倍、と言われる賠償金を清に強いたことで、清の国力が衰え、その後辛亥革命を成功させる遠因になったかもしれないが、一義的には、清の国民、中国の納税者に苛酷な課税を強いたとは言えないか。

歴史にイフ=Ifはないかもしれないが、清が日清戦争を経ていなければ、西欧の文化や技術を導入しながら中国の価値観は生かす「西体中用」の考えに基づいた洋務運動によって清の近代化が進んだかもしれない。

日清戦争だったり、辛亥革命だったり、日中戦争、その後の国共内戦と、中国の庶民にとっては、政権の奪い合いで戦乱は続いたわけで、落ち着いた日々を過ごすために、清だろうが、民国だろうが、人民共和国だろうが、平和であればいい、とは言えまいか。

だから、現在、戦闘状態を停止させたゆえ、共産党政権は維持されているのであり、その政権が維持される正当性とは、日中戦争の状態が終わり、国民党政権との勝利の上で戦闘状態を終わらせたことだろう。
台湾にある国民党政権(いまは複数政党制で民進党政権になる可能性大だが)との統一を考える共産党としては台湾の中華民国政権を全否定するわけにはいかず、いきおい、戦前の日本の軍事進出をかたきにせざるを得ない。

その辺を考えれば、なぜ南京の犠牲者が30万人で、一歩も引かないか、理解できまいか。