大木昌の雑記帳

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オミクロン株の感染爆発―米軍に対して思考停止となる日本政府―

2022-01-08 22:17:49 | 健康・医療
オミクロン株の感染爆発―米軍に対して思考停止となる日本政府―

新型コロナのオミクロン株がすさまじい勢いで感染爆発を起こしています。

12月末には一旦、全国の新規感染者が40人台まで減少し、ようやくこれで今回の新型
コロナウイルスは沈静化したかたと。ほっと胸をなでおろした人が多かったのではないで
しょうか。

実際、テレビ報道などでは、感染者ゼロの県が大多数を占めるようになりました。

しかし、専門家の間では、人びとの気のゆるみ、年末年始の旅行や会食などの増加によっ
て、年明けの最初の週から第二週にかけてコロナウイルスの感染者が再び増加するのでは
ないか、と危惧していました。

これまで、三蜜を避け、マスクを着用し、手指消毒をし、会食を控えるなど日本人の用心
深さが功を奏して、デルタ株の関してはほぼ克服できたと誰もが思いました。

ところが、この時すでに、オミクロン株という新たな脅威がひたひたと日本に侵入しつつ
ありました。

岸田首相は、オミクロン株の日本流入時には外国人の新規入国の全面停止を行い、先手を
打った厳しい水際対策を講じた、と公言しました。

というのも、オミクロン株は、これまでのデルタ株と比べても数倍の感染力をもっている
ことが、すでに欧米では実証されていたからです。

たとえば、1週間のうちに、デルタ株とオミクロン株がすっかり入れ替わってしまった例
はたくさんあります。

海外でのオミクロン株の感染爆発を目の当たりにして政府は、外からのウイルスの侵入を
防ぐために、水際での侵入防止のため空港などで厳しい防疫体制をしいていました。

ところが、正月明けには、新規感染者が徐々に増え始め、1月7日には全国で6214人
の感染者が報告されました。

そして、驚くべきは沖縄の感染者数で、1月2日には51人だった感染者が7日には何と、
1414へと、わずか5日間で28倍近くに激増してしまいました。

当初、新規感染者のうちデルタ株とオミクロン株の割合がどれほどか分かりませんでした
が、ゲノム解析が進むと、多くの感染者がオミクロン株であることが分りました。

もちろん、新規感染者は他の都府県でも大幅に増加しましたが、沖縄は突出しています。

そして、もう一つ、気になる事実は、沖縄だけでなく、米軍基地がある都市や地方でもコ
ロナ換算者が激増していることです。

米軍当局は昨年末には基地内の軍人の間でクラスターが発生していることを確認していま
したが、とりたてて基地内でも周辺地域へのまん延防止策を取っていませんでした。

『東京新聞』(2021年1月8日)が報じているように、「水際対策 米軍の『大穴』があ
ったのです。

今回は、この問題に焦点を当てて、現在の日本が抱えている根が深い問題を考えてみたい
と思います。

まず、その前に、良く知られているように、米軍の関係者はアメリカから日本にやって来
るくるときには、直接飛行機で基地に入り、日本側のバスポートの審査も一切の検疫を受
けません。

つまり、現行の「日米地位協定」では、日本政府による検疫を強制することができないこ
とになっています。

地位協定の第9条は「米国は米軍人、軍属、家族を日本に入れることができる」としてお
り、さらにその際、検疫は「米軍の検疫手続きを受ける」となっています。

つまり、検疫の関して日本が立ち入ることができない、とされています。

実は、昨年の9月、日本で緊急事態宣言が出ていた時にも、米国は独自の判断で出国時の
検査を取りやめています。入国後も、基地内を自由に動き回ることは禁止していませんで
した。

しかし、12月15日にはすでにキャンプ・ハンセン基地内でクラスターが発生しており、
軍当局はこの事実を知っていながら、何ら手を打ちませんでした。

12月20日になって、到着後2週間は外出制限がかけられましたが、その時はすでに多
くの米兵は街に出歩いていて、ウイルスは市中に広がっていたと思われます。

米軍基地内部と周辺地域での感染者が増える状況に対して、林外相はようやく、米兵の出
国72時間以内の検査を要請し、12月26日以降、米軍はそのように規則を改めました。

到着後の検査はようやく12月30日なって、24時間以内と5日以降に実施されること
になりましたが、これはクラスターが発生してから2週間後のことです。

ところが、今回の沖縄の状況をみると基地内にクラスターが発生しているにもかかわらず、
年末には米兵がマスクもせず、基地周辺で酒を飲み歩き、米兵の飲酒運転事案が4件も起
きています。

これからも分かるように、米兵は基地の外に自由に出歩いていますし、米軍当局は兵士に
たいして厳格な行動規制を命じてきていません。

こうしたアメリカの姿勢に対して、玉城沖縄県知事は怒りをあらわにしています。

ちなみに、2021年1月7日の1日だけで、米軍基地内における新型コロナ感染者を見
ると、三沢基地133人(前日比+51人)、横田基地85人(+20)、横須賀基地
213人(+133)、厚木基地88人(+19)、岩国基地529人(+105人)、
嘉手納基地101人(0)、キャンプハンセン282人(0)となっています。

米軍は1月5日以降、基地内では予防接種の有無にかかわらず、マスク着用を義務付けて
います。しかし、基地の外では、米兵はマスクなしで私服で出歩いています。

横須賀からの現地レポートによれば、
    6日夜、米軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)のメインゲートから約100メ
    ートル南にある「どぶ板通り商店街」。一角にあるバーでは、私服姿の外国人
    2人がマスクを着用せずにビリヤードを楽しみ、時折、大声で叫ぶ様子がみら
    れた。近くのカウンター席は、別の客で埋まっていた。男性従業員(21)は
    「客の9割が外国人で、米軍関係者も多い。マスクをせずに入店する人も一定
    数いる」と打ち明ける(注1)。
との現実を伝えています。

意外と見落としがちですが、米軍人にはある程度の行動規制があっても、市内に住むそ
の家族に関しては、なんら規制がありません。

現在の基地および基地周辺の感染者の増大には、家族が介在している場合が無視できな
いようです。

政府は、米軍基地を抱える沖縄・山口県とそれに隣接する広島に「まん延防止等重点措
置」の適用を決めました。

しかし、横田基地を抱える東京都と横須賀基地を抱える神奈川県は、なぜかこの重点措
置の申請をしていません。

もう一つ不可解なのは、岸田首相は、米軍基地がオミクロン株の流行と密接に関連して
いることを承知しながらも、感染拡大と米軍基地との関連を認めておらず、「地位協定」
の内容を変更するつもりはないことを明言しています。

歴代の政権は、日本は米軍に守ってもらっている、との認識が心に刷り込まれてしまっ
ており、米軍に関してはほとんど思考停止状態になっています。

「地位協定」は日米が交渉した結果合意した「協定」なので、事態が変われば再協議し
て内容を改定することは、原理的にはできます。

しかし、アメリカ側からの反発と拒絶を恐れて何も言えない状態にあります。

同じように米軍の基地がある韓国の場合、在韓米軍は隔離終了時の検査を韓国側で実施
しているのです。ところが、在日米軍は日本側での変異株検査を拒否しています(注2)。

拒否されたらすごすご引き下がるのではなく、韓国のように粘り強く交渉して、韓国側
の検査を義務付ける努力をすべきです。それが政府の役割であり、義務だと思います。

どう考えても、アメリカ政府と軍は、日本をよほど下に見て侮っていると思います。あ
るいは、日本の政府は交渉能力が欠如しているのか、日本人の健康と命を守るより米側
への忖度を優先しているとしか考えられません。

これでも日本は本当に独立国なのだろうか、と疑いたくなります。

少なくとも、日本人の命に係わる事態が発生しても協定の見直しができないようでは日
本の国と国民を守ることはできません。

今回のコロナ禍で、アメリカと向き合った時の日本政府の弱体ぶりが、隠しようもなく
さらけ出されました。

日米の力関係は、以下の1コマ漫画で隠しようもなく明らかに表現されています。岸田
首相と思われる日本人が、外出禁止の看板を掲げていますが、米兵は「聞かない力」を
行使して、外出しています。つまり岸田首相の「お願い」は、まったく「効かない」、
つまり効果がないのです。

米兵に無視される日本政府の「お願い」

『東京新聞』(2022年1月12日)




(注1)『産経新聞』電子版 (2021年1月7日1)https://www.sankei.com/article/20220107-LBD4IPTTYVKEDCLWO6FRWG4NSQ/
(注2)『琉球新報』電子版 (2021年12月31日 06:00)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1447639.html

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