2020年の日本と世界は?-不確実性の闇の中を進む―
年頭に当って、毎年、誰もが今年は自分にとって、また人によっては自分の会社にとって、
さらに広い視野から日本と世界にとって、どんな1年になるのか、を考えてみます。
私の率直な印象を言えば、今年は、日本にとっても世界にとっても「不確実性という闇の
中を手探りで進む年」の初年度になる、というものです。
不確実性とは、今の時点では、この先何が起こるのか予想できない状態を指します。
言うまでもないことですが、2010年の日本と世界は2019年の延長で、2019年
の状況は、それ以前の何年、あるいは何十年もの過去を引きずっています。
したがって、過去から継続していることに関してはある程度予想はできます。
他方、今年になって、想定外の出来事が、突発的に起こるかも知れない、未知の状況もあ
ります。
今年の日本をある程度予見するには、過去も含めたさまざまな角度から考える必要があり
ますが、これら全てをここで扱うことはできません。そこで、以下では、いくつかの点に
絞って、短期と、問題によっては中・長期の展望を含めて私の問題意識を書いてみたいと
思います。
①自然と環境
まず、私たちの生活を直接に脅かす要因として、台風、大雨、酷暑、干ばつなど異常気象
による災害は今年も引き続いて起こる可能性はあり、警戒が必要です。加えて、地震もい
つ起こっても不思議ではない不気味な状態にあります。
つまり、自然現象に関しては、今年もずっと緊張の1年となることは間違いありません。
しかも、もし、気温の上昇が続けば、水分の蒸発は高まり、空気中の水分量が増えるので、
大雨の危険性はさらに高まります。
②オリンピック・パラリンピック
今年度限定、という意味では、オリンピック・パラリンピックが7月~8月に東京を中心
に開催されます。
既にこのブログでも書いたように、私の個人的な見解は、このオリ・パラ東京開催には反
対です。誘致に関連しての賄賂疑惑、国立競技場の設計公募にまつわるゴタゴタ、シンボ
ルマークの盗作問題などなど、とにかく疑惑とゴタゴタだらけです。
しかし、最大の問題は、酷暑の真夏に東京で開催することで、案の条マラソン会場は東京
から札幌へ変更せざるを得なくなりました。つまり、都知事を始め関連した種々の委員会
のメンバー、政治家や行政機関は、オリンピックをレガシーとして誘致することだけが目
的で、アスリートのことを真面に考えてはいなかったとしか思えません。
そして、今回の東京オリ・パラの大義である「復興オリンピック」「コンパクト・オリン
ピック」は、どこかに吹っ飛んでしまっており、誰も見向きもしません。
大義なきオリンピック・パラリンピックが酷暑の中で、選手に病人や死者が出ないことを
願うばかりです。
③経済・社会
まず、日々の生活に大きな影響を与える消費税が昨年10月に実施され、それの影響を緩
和するために、キャッシュレス・ポイント還元などの、優遇措置が同時に適用されました。
しかし、これは今年の6月で終了し、以後は10%の消費税が家計にずっしりとのしかっ
てきます。
加えて、7~8月はオリンピックで膨らんだ工事や雇用のため、一次的には活気づきます
が、オリンピックの終了後は、それらは一瞬にして消滅し、「宴のあと」の空虚感と不況
が予想されています(1)。
これは、1964年の東京オリンピックの直後から起こった倒産、失業、不況をみればほ
ぼ推測できます。
もうひとつ気がかりなのは、政府が後期高齢者(75才以上)が窓口で支払う医療費の割
合を現状の1割から2割に引き上げようとしていることです。
だれも、好き好んで病気になるわけではありません。歳を重ねれば、いやでも医者や薬の
お世話になることが多くなります。
最近の医療費は、ちょっとのことでも薬や検査で1万円くらいはすぐにかかってしまいま
す。今までは窓口で1割負担の場合は1000円で済んだものが2000円になるといこ
となので、これは年金だけで生活している高齢者にとっては深刻な問題です。
政府は、まだ検討の段階としていますが、もし実施されれば、たとえ病気になっても医者
に行くのを思い止まる人も多くなる(政府はそれを望んでいる)可能性はあります。
これでは、憲法で保障している「健康で文化的な生活」はとうてい守られません。
もう一つ、今すぐに問題と言うわけではありませんが、昨年度は新生児が初めて100万
人を割り込みました。少子化はますます深刻化しています。
日本が抱える深刻な問題は高齢化と人口減少です。北欧やフランスなどで実施されている
ような、出産と育児に対する最大限の支援政策を、今年から万難を排して直ちに始めるべ
きです。政府は、戦闘機などに巨額のお金を使っている場合ではありません。
次に、経済全般についてみてみましょう。ここでも、今年になって、希望の持てる明るい
材料はかかなか見つかりません。むしろ、今年というより、これまでの長期の問題や失敗
が、今年に入って表面化する可能性があります。
まず、第一は、「失われた20年」とも言われる、長期のデフレが解消されず、景気は一
向に上向いていないことです。
アベノミクスでは、「異次元の金融緩和」を行い、毎年80兆円という、国家予算(一般
会計)の8割にも達するお金を市場に流しながらも、そのお金の多くは「死に金」「塩漬
けされた金」として日銀にある口座に眠ったままで、投資に使われることはありません。
本来なら、アベノミクスの三本の矢は、第一の矢の金融政策と、第二の矢の財政政策で景
気に火を付け、第三の矢で、民間の投資を促す成長戦略を実現するはずでした。
しかし、7年間も「異次元の金融緩和」と金利ゼロ政策をしながら、デフレは収まらず、
成長戦略としてはカジノと火力発電輸出(原発輸出は全て頓挫)以外全く成果がでていま
せん。
アベノミクスはもう、完全に失敗しているのに認めようとはせず、今年度も80兆円のお
金を市場につぎ込むことを決めています。
アベノミクスでは、巨額の公的資金を株に投資し、株価を挙げることにはある程度の効果
はありましたが、実態経済の、特に成長戦略には何の効果もありません。
こうして、国の借金は1200兆円と、空前の規模に達し、将来世代に付け回わされるこ
とになっています。
日本の企業は現在、400兆円を超す「社内留保」(つまり「貯金」)を抱えています。
企業は、利益を上げ、さらに新技術・新製品の開発に投資することこが本来の姿です。
その企業が貯金に走っている、というのは、企業にとってもはや有望な投資先を見いだせ
ないからです。もっと正確に言えば、今の日本企業は、新たな投資機会を作り出す能力が
ないことを白状してしまっているのです。
しかも、投資をしないだけでなく、働く人たちへの配分(賃金)も可能な限り抑えていま
す。これでは国民の所得は増えるはずもなく、物はうれなくなり、国内市場を対象として
いる企業は、自分で自分の首を絞めている自殺行為です。
企業が自己防衛のため「貯金」に走っていると同様に、国民も将来の不安に備えて消費を
切り詰め、自己防衛に走らざるをえないでしょう。ますます経済は萎縮します。
そして、日本経済の命運に大きな影響を与える問題は、米中貿易戦争の行方です。今のと
ころ、一応、“一時的な停戦”状態ですが、長期的にはなんら根本的解決には至っていま
せん。これも、日本と世界の経済にとって、不確実性の闇です。
④政治
これについては、もう絶望的です。安倍政権では森友学園・加計学園の問題で、公文書の
改ざんと廃棄による証拠隠滅、昨年来、問題となっている「桜を見る会」にまつわる証拠
の文書はシュレッダーで廃棄し、パソコンの保存データも廃棄する、など、とにかく、や
ることが汚すぎます。
まさに、瀬畑源氏が安倍首相のやり方を、“「合法的」に公文書を隠蔽するたちの悪さ”、
と表現した通りです(注2)。
国会では1問1答形式の予算審議には応じずに逃げてばかりです。つまり、何をやっても
多数の力で野党の要求は拒否し、真摯な説明はしない、という状況が7年も続いています。
これで、果たして日本は民主主義国家といえるのか、と思います。もし、この状態が今後
も続くとしたら、日本の政治はますます腐敗の泥沼の中に沈んでゆくことになります。
自民党の規定によれば、安倍首相の総裁任期は今年1年、ということになっています。し
かし、党内にはさらに規定を変え四選もあり得るとか、そのためにも野党の態勢が整う前、
今年の早い時期に、大義なき総選挙を、自民党の思惑だけで行うかもしれない、など、今
年の国内政治は波乱含みで、不確実性の闇の中を進むことになります。
このことと関係していますが、安倍首相は、今年中に何とか憲法改正の議論を進め、国会
での発議まで持ってゆきたい、との姿勢を強調しています。
しかし、いまのところ憲法審査会の議論は進んでいないし、憲法改正を望んでいないのに、
それでも強引に発議し、国民投票までもってゆくつもりなのでしょうか?今年は日本と日
本人にとって正念場です。
最後に、「外交の安倍」を謳っている割に、昨年までは、大した成果はありませんでした。
日中、日韓、日朝、日露の懸案事項は一歩も進まず、大量の兵器を購入したり、余剰のト
ウモロコシを買い付けたり、アメリカへの大盤振る舞いだけが目立ちました。
他方で、日米貿易交渉では、農畜産物の関税引き下げは飲まされましたが、日本側が強く
望んでいた車への関税引き下げは、“今後の協議に委ねる”、と体よく逃げられてしまい
ました。日本だけが不利益を被る、完全に、外交上の失敗です。しかし、この日米貿易交
渉は、今年の1月1日より発動していますので、日本の農家、とりわけ畜産農家がどうな
るのか心配です。
最後に、突然、降って湧いたように、トランプ大統領が、イスラム国排除のため先頭に立
って戦っていたイランの英雄、次期大統領とも目されている、ガーセム・ソレイマーニ革
命防衛隊司令官の殺害を命令し無人飛行機による爆撃で殺害しました。
安倍首相は先の閣議で海上自衛隊をオマーン湾に、「調査・研究」の目的で派遣すること
を決定しています。万が一、日本人の隊員が両者の戦闘に巻き込まれたら、政府はどうす
るのでしょうか。
この問題は、これまでになく深刻な事態を招く危険性があります。トランプ氏との密接な
関係を“売り”にしている安倍首相は、本来ならアメリカを説得して、イランとの核合意
に復帰し、軍事力を行使しないよう説得するべきなのに、何もしていません。
安倍首相は、トランプ大統領への忠義とイランとの良好な関係の維持との板挟みに陥って
いますが、自衛隊を派遣したことで、イランからは明らかにアメリカと行動を共にした、
とみなされるでしょう。
以上を総合すると、今年は日本にとっては不確実性に満ちた夜道を手探りで歩くような、
暗い気分になります。これが、単なる私の個人的な杞憂であることを願うばかりです。
ここまで書いたとき、イランによるイラク国内の米軍基地へのロケット砲攻撃の報道が
ありました。これは、”第三次世界大戦”のような大規模な報復戦の突破口となってし
まうのか、その影響が日本と世界にどんな影響を及ぼすのか、不確実性が一層、大きく
なっていまいました。
--------------------------------------------------------------------------------------
ピッツバーグの朝焼け(辺り一面が火事になったように空一面が真っ赤でした) ピッツバーグの夕日(幻想的な夕日でした)
(注1)ここではくわしく書きませんが、例えば https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/10011
あるいは https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55912 を参照されたい。
(注2)毎日新聞 2020年1月6日 05時00分(最終更新 1月6日 08時25分)
https://mainichi.jp/articles/20200105/k00/00m/040/187000c?fm=mnm
年頭に当って、毎年、誰もが今年は自分にとって、また人によっては自分の会社にとって、
さらに広い視野から日本と世界にとって、どんな1年になるのか、を考えてみます。
私の率直な印象を言えば、今年は、日本にとっても世界にとっても「不確実性という闇の
中を手探りで進む年」の初年度になる、というものです。
不確実性とは、今の時点では、この先何が起こるのか予想できない状態を指します。
言うまでもないことですが、2010年の日本と世界は2019年の延長で、2019年
の状況は、それ以前の何年、あるいは何十年もの過去を引きずっています。
したがって、過去から継続していることに関してはある程度予想はできます。
他方、今年になって、想定外の出来事が、突発的に起こるかも知れない、未知の状況もあ
ります。
今年の日本をある程度予見するには、過去も含めたさまざまな角度から考える必要があり
ますが、これら全てをここで扱うことはできません。そこで、以下では、いくつかの点に
絞って、短期と、問題によっては中・長期の展望を含めて私の問題意識を書いてみたいと
思います。
①自然と環境
まず、私たちの生活を直接に脅かす要因として、台風、大雨、酷暑、干ばつなど異常気象
による災害は今年も引き続いて起こる可能性はあり、警戒が必要です。加えて、地震もい
つ起こっても不思議ではない不気味な状態にあります。
つまり、自然現象に関しては、今年もずっと緊張の1年となることは間違いありません。
しかも、もし、気温の上昇が続けば、水分の蒸発は高まり、空気中の水分量が増えるので、
大雨の危険性はさらに高まります。
②オリンピック・パラリンピック
今年度限定、という意味では、オリンピック・パラリンピックが7月~8月に東京を中心
に開催されます。
既にこのブログでも書いたように、私の個人的な見解は、このオリ・パラ東京開催には反
対です。誘致に関連しての賄賂疑惑、国立競技場の設計公募にまつわるゴタゴタ、シンボ
ルマークの盗作問題などなど、とにかく疑惑とゴタゴタだらけです。
しかし、最大の問題は、酷暑の真夏に東京で開催することで、案の条マラソン会場は東京
から札幌へ変更せざるを得なくなりました。つまり、都知事を始め関連した種々の委員会
のメンバー、政治家や行政機関は、オリンピックをレガシーとして誘致することだけが目
的で、アスリートのことを真面に考えてはいなかったとしか思えません。
そして、今回の東京オリ・パラの大義である「復興オリンピック」「コンパクト・オリン
ピック」は、どこかに吹っ飛んでしまっており、誰も見向きもしません。
大義なきオリンピック・パラリンピックが酷暑の中で、選手に病人や死者が出ないことを
願うばかりです。
③経済・社会
まず、日々の生活に大きな影響を与える消費税が昨年10月に実施され、それの影響を緩
和するために、キャッシュレス・ポイント還元などの、優遇措置が同時に適用されました。
しかし、これは今年の6月で終了し、以後は10%の消費税が家計にずっしりとのしかっ
てきます。
加えて、7~8月はオリンピックで膨らんだ工事や雇用のため、一次的には活気づきます
が、オリンピックの終了後は、それらは一瞬にして消滅し、「宴のあと」の空虚感と不況
が予想されています(1)。
これは、1964年の東京オリンピックの直後から起こった倒産、失業、不況をみればほ
ぼ推測できます。
もうひとつ気がかりなのは、政府が後期高齢者(75才以上)が窓口で支払う医療費の割
合を現状の1割から2割に引き上げようとしていることです。
だれも、好き好んで病気になるわけではありません。歳を重ねれば、いやでも医者や薬の
お世話になることが多くなります。
最近の医療費は、ちょっとのことでも薬や検査で1万円くらいはすぐにかかってしまいま
す。今までは窓口で1割負担の場合は1000円で済んだものが2000円になるといこ
となので、これは年金だけで生活している高齢者にとっては深刻な問題です。
政府は、まだ検討の段階としていますが、もし実施されれば、たとえ病気になっても医者
に行くのを思い止まる人も多くなる(政府はそれを望んでいる)可能性はあります。
これでは、憲法で保障している「健康で文化的な生活」はとうてい守られません。
もう一つ、今すぐに問題と言うわけではありませんが、昨年度は新生児が初めて100万
人を割り込みました。少子化はますます深刻化しています。
日本が抱える深刻な問題は高齢化と人口減少です。北欧やフランスなどで実施されている
ような、出産と育児に対する最大限の支援政策を、今年から万難を排して直ちに始めるべ
きです。政府は、戦闘機などに巨額のお金を使っている場合ではありません。
次に、経済全般についてみてみましょう。ここでも、今年になって、希望の持てる明るい
材料はかかなか見つかりません。むしろ、今年というより、これまでの長期の問題や失敗
が、今年に入って表面化する可能性があります。
まず、第一は、「失われた20年」とも言われる、長期のデフレが解消されず、景気は一
向に上向いていないことです。
アベノミクスでは、「異次元の金融緩和」を行い、毎年80兆円という、国家予算(一般
会計)の8割にも達するお金を市場に流しながらも、そのお金の多くは「死に金」「塩漬
けされた金」として日銀にある口座に眠ったままで、投資に使われることはありません。
本来なら、アベノミクスの三本の矢は、第一の矢の金融政策と、第二の矢の財政政策で景
気に火を付け、第三の矢で、民間の投資を促す成長戦略を実現するはずでした。
しかし、7年間も「異次元の金融緩和」と金利ゼロ政策をしながら、デフレは収まらず、
成長戦略としてはカジノと火力発電輸出(原発輸出は全て頓挫)以外全く成果がでていま
せん。
アベノミクスはもう、完全に失敗しているのに認めようとはせず、今年度も80兆円のお
金を市場につぎ込むことを決めています。
アベノミクスでは、巨額の公的資金を株に投資し、株価を挙げることにはある程度の効果
はありましたが、実態経済の、特に成長戦略には何の効果もありません。
こうして、国の借金は1200兆円と、空前の規模に達し、将来世代に付け回わされるこ
とになっています。
日本の企業は現在、400兆円を超す「社内留保」(つまり「貯金」)を抱えています。
企業は、利益を上げ、さらに新技術・新製品の開発に投資することこが本来の姿です。
その企業が貯金に走っている、というのは、企業にとってもはや有望な投資先を見いだせ
ないからです。もっと正確に言えば、今の日本企業は、新たな投資機会を作り出す能力が
ないことを白状してしまっているのです。
しかも、投資をしないだけでなく、働く人たちへの配分(賃金)も可能な限り抑えていま
す。これでは国民の所得は増えるはずもなく、物はうれなくなり、国内市場を対象として
いる企業は、自分で自分の首を絞めている自殺行為です。
企業が自己防衛のため「貯金」に走っていると同様に、国民も将来の不安に備えて消費を
切り詰め、自己防衛に走らざるをえないでしょう。ますます経済は萎縮します。
そして、日本経済の命運に大きな影響を与える問題は、米中貿易戦争の行方です。今のと
ころ、一応、“一時的な停戦”状態ですが、長期的にはなんら根本的解決には至っていま
せん。これも、日本と世界の経済にとって、不確実性の闇です。
④政治
これについては、もう絶望的です。安倍政権では森友学園・加計学園の問題で、公文書の
改ざんと廃棄による証拠隠滅、昨年来、問題となっている「桜を見る会」にまつわる証拠
の文書はシュレッダーで廃棄し、パソコンの保存データも廃棄する、など、とにかく、や
ることが汚すぎます。
まさに、瀬畑源氏が安倍首相のやり方を、“「合法的」に公文書を隠蔽するたちの悪さ”、
と表現した通りです(注2)。
国会では1問1答形式の予算審議には応じずに逃げてばかりです。つまり、何をやっても
多数の力で野党の要求は拒否し、真摯な説明はしない、という状況が7年も続いています。
これで、果たして日本は民主主義国家といえるのか、と思います。もし、この状態が今後
も続くとしたら、日本の政治はますます腐敗の泥沼の中に沈んでゆくことになります。
自民党の規定によれば、安倍首相の総裁任期は今年1年、ということになっています。し
かし、党内にはさらに規定を変え四選もあり得るとか、そのためにも野党の態勢が整う前、
今年の早い時期に、大義なき総選挙を、自民党の思惑だけで行うかもしれない、など、今
年の国内政治は波乱含みで、不確実性の闇の中を進むことになります。
このことと関係していますが、安倍首相は、今年中に何とか憲法改正の議論を進め、国会
での発議まで持ってゆきたい、との姿勢を強調しています。
しかし、いまのところ憲法審査会の議論は進んでいないし、憲法改正を望んでいないのに、
それでも強引に発議し、国民投票までもってゆくつもりなのでしょうか?今年は日本と日
本人にとって正念場です。
最後に、「外交の安倍」を謳っている割に、昨年までは、大した成果はありませんでした。
日中、日韓、日朝、日露の懸案事項は一歩も進まず、大量の兵器を購入したり、余剰のト
ウモロコシを買い付けたり、アメリカへの大盤振る舞いだけが目立ちました。
他方で、日米貿易交渉では、農畜産物の関税引き下げは飲まされましたが、日本側が強く
望んでいた車への関税引き下げは、“今後の協議に委ねる”、と体よく逃げられてしまい
ました。日本だけが不利益を被る、完全に、外交上の失敗です。しかし、この日米貿易交
渉は、今年の1月1日より発動していますので、日本の農家、とりわけ畜産農家がどうな
るのか心配です。
最後に、突然、降って湧いたように、トランプ大統領が、イスラム国排除のため先頭に立
って戦っていたイランの英雄、次期大統領とも目されている、ガーセム・ソレイマーニ革
命防衛隊司令官の殺害を命令し無人飛行機による爆撃で殺害しました。
安倍首相は先の閣議で海上自衛隊をオマーン湾に、「調査・研究」の目的で派遣すること
を決定しています。万が一、日本人の隊員が両者の戦闘に巻き込まれたら、政府はどうす
るのでしょうか。
この問題は、これまでになく深刻な事態を招く危険性があります。トランプ氏との密接な
関係を“売り”にしている安倍首相は、本来ならアメリカを説得して、イランとの核合意
に復帰し、軍事力を行使しないよう説得するべきなのに、何もしていません。
安倍首相は、トランプ大統領への忠義とイランとの良好な関係の維持との板挟みに陥って
いますが、自衛隊を派遣したことで、イランからは明らかにアメリカと行動を共にした、
とみなされるでしょう。
以上を総合すると、今年は日本にとっては不確実性に満ちた夜道を手探りで歩くような、
暗い気分になります。これが、単なる私の個人的な杞憂であることを願うばかりです。
ここまで書いたとき、イランによるイラク国内の米軍基地へのロケット砲攻撃の報道が
ありました。これは、”第三次世界大戦”のような大規模な報復戦の突破口となってし
まうのか、その影響が日本と世界にどんな影響を及ぼすのか、不確実性が一層、大きく
なっていまいました。
--------------------------------------------------------------------------------------
ピッツバーグの朝焼け(辺り一面が火事になったように空一面が真っ赤でした) ピッツバーグの夕日(幻想的な夕日でした)
(注1)ここではくわしく書きませんが、例えば https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/10011
あるいは https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55912 を参照されたい。
(注2)毎日新聞 2020年1月6日 05時00分(最終更新 1月6日 08時25分)
https://mainichi.jp/articles/20200105/k00/00m/040/187000c?fm=mnm