「富岡製糸場で学習会」を行いました
4月26日(火)、富岡製糸場で会員を対象とした学習会を行いました。近藤会長を始め会員25名と推進課の秋山さんが参加しました。会場は2号館に付設した製糸場内食堂です。
曇りがちではありましたが木々に若葉が芽吹き始めた気持ちの良い季候でした。
10時30分、近藤会長の挨拶に続き、富岡製糸場総合研究センター所長の今井幹夫先生から「富岡製糸場が全国に及ぼした影響~工女たちの活躍と器械製糸の普及~」と題した講義を拝聴しました。
〈今井先生の講義〉
富岡製糸場は大規模で、かつフランス製の優秀な製糸器械を導入しているため、弱小な民間資本では手に負えず、模範工場の役割が果たせなかったという主張がある反面、技術と管理面も含む組織と同時に工場制度を一つのパッケージとして導入した点に模範工場としての本質的意義があるという評価もあるという。
先生は、器械製糸技術の伝播と器械製糸場の普及という事例は十分に検証することができるとして、その代表的な事例を取り上げながら富岡製糸場の果たした役割について話をされました。県別工女の人数と器械製糸場の普及率、工女たちの退場後の主な活躍事例、富岡製糸場を模範として造られた各地の製糸場などについて
詳細な説明をされ、富岡製糸場は「長いスパンで捉えた時、模範工場としての役割を確実に果たしたといえよう」と結論付けられました。
12時から1時間は昼食タイムです。今朝いただいた印刷物「街中おもしろマップ~昼メシ編~」には市内の約30軒の店と食事内容等がイラスト入り手書き地図に分かりやすく紹介されていました。参加者は地図を片手に思い思いの店に出かけ昼食を摂ってきました。製糸場を含め富岡市へ行く方々から食事処の質問を受けることもあるので、いろいろな店の特徴を知っておこうと思い、初めての店に数名で行ってみました。
<場内見学>
午後1時から場内の見学です。
製糸場の境野さんの案内で約1時間、一般の見学では未公開の箇所を見学しました。3号館貴賓室、東繭倉庫2階、鉄水槽、鉄製煙突の基部、排水溝などです。参加者は境野さんの要領を得た説明に感心しながら、普段は入れない箇所をしっかり目に焼き付けるかのように見入っていました。地震のことも考慮して、今回ブリューナ館の地下室には入りませんでした。
先頃の東日本大震災の際にも、繰糸場のガラスが7枚破損しただけという最小限の被害ですんだ富岡製糸場は、レンガ1個の歪みも見られません。自分の目で確認し、改めて先人の知恵と技術力に感心しました。
2時過ぎ、製糸場を後にして富岡市立美術博物館に向かいました。タイミング良くこの日から企画展「富岡製糸場資料展」が始まったのです。昨年、片倉工業が富岡市に千百点余りの資料を寄託しました。官営期、三井期、片倉期に関する根本資料が含まれていて、その中から製糸場の歴史を伝える上で欠かせない資料7点を今井先生が厳選し、展示したものです。
製糸場建設前の計画段階とみられる建物の配置を描いた「製糸場設計図面」、製糸場設立の由来や条例、諸規則等を網羅した「富岡製糸所記」、埼玉と長野の全工女の入退場期などを記録した「工女名簿」には横田英や春日蝶の名前が見られ、当時へ思いを馳せました。
今井先生はこの後会議を控えている忙しい身でありながら、美術博物館で約1時間に渉り展示資料について詳しく説明してくださいました。まだ整理・解析を待っている資料も含めて、新しい発見の喜びと未知への期待に込める熱い思いが伝わってきました。
3時30分、予定どおりの時間で解散し、各自常設展示の福澤一郎の作品を鑑賞して帰途に着きました。参加者の感想は、「奥の深い講義を受けて、興味深い箇所の見学や貴重な資料を見ることができ、とても充実した一日でした」ということでした。
最後に講師を快く引き受けてくださり、丁寧な資料を用意して精力的に講義・説明をしてくださった今井先生、そして終日側面から協力していただいた富岡市世界遺産推進課の結城さん、
岸さん、森田さん、製糸場内の案内をお願いした境野さんに深く感謝いたします。 (Y.I記)