うちのヒルザキツキミソウが毎朝いくつか咲いている。いまの時期だけ。
ヒルザキツキミソウは、ほわ、と咲く。胸に灯をともすみたいに。名前を知らない頃から大好きだった花。植えた覚えはないのに、どこからか種が飛んできて、うちのちいさな土に降り立ち、毎年咲くようになった。野葡萄もそうだけど、ずっとあこがれていた植物が勝手にやってくるっていうのはもう奇跡というしかない。
ところで、今年、私の職場のチームに入ってきた新人コーディネーターS氏(26歳)がすごい。きょうでまだ5日目だというのに、仕事をさくさくとこなす。
私のつたない説明を黙ってきき、理解する。
今朝、依頼していた書類の文章を考えてもらっていたら、「一度、チェックお願いします」と持ってきた。
うーん。 専門家の先生に依頼するにしてはちょっと上からなものいいかしら、と思って、隣のY氏にも助言をお願いする。
Y氏「そうですねぇ、ここと、ここは言い方を変えたほうがいいでしょうね」
と、ふたりで赤で直していくうちに、S氏が作ってくれた上半分はすべて赤線をひき、いろいろ書きこむと真っ赤になってしまった。いやぁ、こういうの返されたらショックだろうなぁと思いつつ、
私「ちょっといまのYさんにもアドバイスもらったんだけど、下の部分はこれでいいと思うけど、ちょっとお願いする文章にしては上からな感じがするからこんなふうに直してみました」
S氏「あー。なるほど、こういうふうに言えば、先生方も気持ちよく受けてもらえそうですね」(笑顔)
その、自然な返しにおののく。なんだか打ちのめされる。
自分の席へ戻って、Y氏にいまのことを告げたら、
Y氏「なんか、失った20年を感じますね。前向きっていうか、人に教えてもらってありがたいっていう気持ち」
私 「そうそう! 赤だらけにした私に対して、まったく嫌な気持ちを持ってないっていうふうだった」
Y氏「まさしく神対応ですね。オレやったら、なになおしてんねん、せっかく考えたのに、とか思う」
私 「まぁ、ふつうはあんなに赤でなおされたらいい気しないですよねぇ」
ふたり「・・・・・」(初心を思い出している)
やっぱり、年代がまったく違うひとと仕事をするっていうのは得るものが大きいなと思う。年代だけじゃないと思うけれど。なんだろう、あのさわやかさは。
私「私ら泥まみれですもん」
Y氏「ら、ちゅうな(笑)」
コロナ関連の電話が鳴り続ける職場に、ほわ、と咲いたヒルザキツキミソウみたいだと思った。