小雪の中のライブ

　夏姿で上半身の肌を見せ、ふくよかなサックス奏者がしんみりと寒空に奏でる音を、独り占めで静かに聞き入る猫がいた。
　誰が着せたか赤いマントとサンタの帽子にも雪が積もる。
　季節に合わせて衣装替えはあるものの、年中昼夜なく連続演奏だから、ベンチに並んで座りを笑顔で記念写真にする人を時折見られるのだが、今日は急ぎ足で通り過ぎるばかりの通行人で拍手がない。
　「止まって聞いてよ。」
　やっぱり師走か。

　旭川市のメインストリートである買い物公園は、歩行者専用のいわゆるホコテンのはしりで、市民の誇りだが、午後1時でも閑散としているから、ここだけはストリートミュージシャンのひとり舞台で、なんとも微笑ましいのだが、寒そうだ。
　この人出だと寒そうなのは、商店街も同じかも知れない。

　置物か、人形か、彫刻か、こういうのを何と呼ぶのか知らないが、癒しの空間をつくった設置者に拍手。

　小雪の中のライブは続いていた。