
なぜそう呼ぶのか定かではありませんが、Alptea (ドイツ語だから -tee と綴るのが正しいのでしょうが、商品にこう書いてあるので)という飲み物があります。
要するに、ハーブティーにレモン風味と砂糖を加えたようなもので、写真の Alptea (ミグロの商品。コープでも売っています)のパッケージを見ると、Melisse (メリッサ=西洋山薄荷)、Frauensmantel (羽衣草)、Spitzwegerich (ヘラオオバコ)、Eisenkraut (クマツヅラ)、Ysop (ヒソプス、ヤナギハッカ) といった薬草を使ったお茶に、レモン汁と砂糖を加えてあると書かれています。妻が言うには、これらの草がアルプスを思わせるから Alptea というのではないかとのこと。
ミグロで買ってきて、夕食の際にウチのお子様たちに供したら大変不評でした。味にクセがあるからのようです。ところが、このクセある味が、僕にはある思い出を呼び起こしたのです。(味や匂いで記憶が刺激されるということがありますが、まさにそれです。)
このお茶、昔々に飲んだことが確かにある。おそらくその場所は、最初にスイスに来たときにドイツ語の研修を受けたフリブールでした。
ベルンから南西、インターシティで20分ほどのところに、フリブールという町があります。この町は、ドイツ語圏とフランス語圏の境界であることで知られており、フリブール大学では授業も、ドイツ語のものとフランス語のものが両方開講されています。
10月からベルン大学で学ぶことになっていた僕は、その前の3ヶ月間、このフリブール大学が開いている夏期ドイツ語講座に参加しました。フリブール大学の学生寮 Justinusheim に住んで、毎日3時間から4時間半ほどの授業を受けるのです。
ドイツ語の本を読むことはそれほど苦ではなかったものの、日本人のご多分に漏れず、聴いたり話したりが非常に苦手だった僕は、講座開始日に行なわれたクラス分けテストで一番上のクラスに入れられてしまいました(だってペーパーテストの配点が高かった)。クラスで一人だけ、会話がほとんど出来なかった自分がいかに辛い目を見たことか。言いたいことはほとんど満足に言えないし、何をいま話し合っているのかもよくわからない、なんてことも珍しくない。だんだんマシにはなっていったものの、お世辞にも楽しいとは言えない3ヶ月でした。いったいこんなことで、ベルンに行って学位論文なんぞ書けるのかと、正直不安になったものです。(その割には、ベルンに行ってからは楽しいことの連続だったのですが。)ラジオのニュースを聞かされて、その内容に関する質問に答えろ、なんていう授業には泣きそうになりました。(隣のハンガリー人の友人に答えを見せてもらってしのぎましたが。その代りに、文法のテストで答えを教えてやりました。)
で Alptea なのですが、記憶が間違っていなければ、その学生寮の食堂に置かれていたお茶がこれだったはず。記憶がいい加減なのかもしれませんが、この Alptea を飲むと、フリブールの学生寮の光景が目に浮かぶのです。安物のラジカセでニュースを録音しては部屋で何度も聴いたことや、なぜか毎日のようにカリフラワー料理ばかりが出た食堂の様子、そして、大変だった語学コースの授業風景も。
スイスに初めて出会った新鮮な印象や、フリブールでのしんどかった日々、先行きへの不安などが入り混じった気持ちを、この Alptea が思い出させてくれました。言ってみれば、初心に帰らせてくれた、というところです。ずいぶん久しく口にしておらず、こういう味の飲み物があるということすらも忘れていたのですが、先日偶然飲む機会があり、以上のようなことを思い出した、という話。
要するに、ハーブティーにレモン風味と砂糖を加えたようなもので、写真の Alptea (ミグロの商品。コープでも売っています)のパッケージを見ると、Melisse (メリッサ=西洋山薄荷)、Frauensmantel (羽衣草)、Spitzwegerich (ヘラオオバコ)、Eisenkraut (クマツヅラ)、Ysop (ヒソプス、ヤナギハッカ) といった薬草を使ったお茶に、レモン汁と砂糖を加えてあると書かれています。妻が言うには、これらの草がアルプスを思わせるから Alptea というのではないかとのこと。
ミグロで買ってきて、夕食の際にウチのお子様たちに供したら大変不評でした。味にクセがあるからのようです。ところが、このクセある味が、僕にはある思い出を呼び起こしたのです。(味や匂いで記憶が刺激されるということがありますが、まさにそれです。)
このお茶、昔々に飲んだことが確かにある。おそらくその場所は、最初にスイスに来たときにドイツ語の研修を受けたフリブールでした。
ベルンから南西、インターシティで20分ほどのところに、フリブールという町があります。この町は、ドイツ語圏とフランス語圏の境界であることで知られており、フリブール大学では授業も、ドイツ語のものとフランス語のものが両方開講されています。
10月からベルン大学で学ぶことになっていた僕は、その前の3ヶ月間、このフリブール大学が開いている夏期ドイツ語講座に参加しました。フリブール大学の学生寮 Justinusheim に住んで、毎日3時間から4時間半ほどの授業を受けるのです。
ドイツ語の本を読むことはそれほど苦ではなかったものの、日本人のご多分に漏れず、聴いたり話したりが非常に苦手だった僕は、講座開始日に行なわれたクラス分けテストで一番上のクラスに入れられてしまいました(だってペーパーテストの配点が高かった)。クラスで一人だけ、会話がほとんど出来なかった自分がいかに辛い目を見たことか。言いたいことはほとんど満足に言えないし、何をいま話し合っているのかもよくわからない、なんてことも珍しくない。だんだんマシにはなっていったものの、お世辞にも楽しいとは言えない3ヶ月でした。いったいこんなことで、ベルンに行って学位論文なんぞ書けるのかと、正直不安になったものです。(その割には、ベルンに行ってからは楽しいことの連続だったのですが。)ラジオのニュースを聞かされて、その内容に関する質問に答えろ、なんていう授業には泣きそうになりました。(隣のハンガリー人の友人に答えを見せてもらってしのぎましたが。その代りに、文法のテストで答えを教えてやりました。)
で Alptea なのですが、記憶が間違っていなければ、その学生寮の食堂に置かれていたお茶がこれだったはず。記憶がいい加減なのかもしれませんが、この Alptea を飲むと、フリブールの学生寮の光景が目に浮かぶのです。安物のラジカセでニュースを録音しては部屋で何度も聴いたことや、なぜか毎日のようにカリフラワー料理ばかりが出た食堂の様子、そして、大変だった語学コースの授業風景も。
スイスに初めて出会った新鮮な印象や、フリブールでのしんどかった日々、先行きへの不安などが入り混じった気持ちを、この Alptea が思い出させてくれました。言ってみれば、初心に帰らせてくれた、というところです。ずいぶん久しく口にしておらず、こういう味の飲み物があるということすらも忘れていたのですが、先日偶然飲む機会があり、以上のようなことを思い出した、という話。
アルプス茶と称するハーブティのティーバッグは、ドイツでもスロヴェニアでも売っています。アルプスを思わせるというか、実際、入っているのは、山の牧草地に生えているような草が大部分です。
味覚や嗅覚の記憶、味覚や嗅覚が触発する記憶ってありますね。ドイツのクリスマスの、クローヴやシナモンの匂いのあふれる街の記憶とか、小学校の、べたべたに油の引かれた板張りの床の匂いの記憶とか(歳がばれるか)。
「いい話」ってのは、ドイツ語で泣きそうになったくだりですか?
小学校の板張りの床の匂い、わかります。そんな校舎を僕の通った小学校でも当時使っていました。若干の年の差はあれ、やはり同世代ってことでしょうか。
不確かで、したがってお節介でしかない補足をすると、Ysops は日本では英語名のヒソップで一番良く知られていると思います。紫のきれいな花をつけます。図鑑によってはこれと Eisenkraut とが同一であるかのように書いてあるのですが、どうなのか。Melisse は、イコール Zitronenmelisse なので、ハッカ=ミントではなくて、これも日本では英語名で知られているレモンバームのことではないかという気がします。ただ、ヨーロッパの牧草地でレモンバームが自生しているのは見たことがないので、Alptea に入っているからには違うかもしれません。ミントの亜種は数が多いですし。
そうそう、ABlog へのリンク、ありがとうございました。
ABlog、たくさんの人にぜひ見てもらいたいと思いまして。
Melisse、やっぱりレモンバームで正解のようです。たとえばここ
http://homepage2.nifty.com/omigon/herb/herb31.htm
を参照。
レモンバーム、なんと日本の我が家の狭い狭い庭に育っているそうです。妻が言ってました。だから Melisse がレモンバームだってことは彼女は知ってたんですって。
我ながら本当に生物オンチだ。庭にそれがあるのも知らなかったなんて。