鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

這龍図三所物 後藤祐乗 Yujo-Goto Mitokoro

2011-12-12 | 鍔の歴史
這龍図三所物 (鍔の歴史)


這龍図三所物 後藤祐乗

 後藤宗家初代から十四代までの這龍図三所物の揃い物がある。その初代の作。鍔の歴史というタイトルだが、後藤家には基本的に鐔がないので、小柄笄目貫など装剣小道具に対象を広げて鑑賞する。
 後藤家の揃い物は、江戸時代後期にコレクションの対象として人気が高まったが、そもそも初代の作品は極めて少なく、元来の揃い物として、しかも三所物として同図を見つけることは極めて困難であった。また、江戸時代には式正の拵に用いるための金具として三所物が必要とされ、後藤家ではそれらの要求に応えるために初代と極められる古作を探し出し、三所物に仕立て直していた。ところが、特に小柄が少ないため、笄から紋をはずして赤銅魚子地の地板に据紋することによって小柄を製作し三所物とせざるを得なかった。
 三所物のほかに、現在、間々見られる揃い物は十六代揃い小柄などで、それらを見比べても三所物の揃いは極めて貴重であると言わざるを得ない。いずれ、後藤家の揃い小柄をも紹介していこうと思うが、今回は龍の図の作品を、代ごとに幾つか鑑賞されたい。ただし、代々が祖先の同図を手本として製作するという家風があり、このような作品を写真で比較観察しても自ずと限界がある、その点は容赦ねがいたい。
 目貫は金無垢地容彫。小柄笄は波文地に金地高彫された這龍を据紋したもの。