鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

スサノオノミコト図鐔 源重強 Tsuba

2011-05-14 | 
スサノオノミコト図鐔 源重強


スサノオノミコト図鐔 銘 源重強(花押)

 鉄地を地荒し風に凹凸を付けて極端な高彫にし、クシイナダヒメとその前におかれた八との酒壷、これに向かうヤマタノオロチ、そして迎え撃つスサノオ。重強(しげあつ)は江戸時代後期の会津正阿弥派の工。鉄の素材を活かし、巧みに地を透かし去って迫力ある場面を創出している。
 神話や伝説は、現実の出来事を別の形に置き換え、あるいは集団を神という個に変えて表現している。現実にある遺跡や事物との対比から、神話の背景にある現実を探ることの面白さは計り知れない。この点は確たる記録というわけではない『平家物語』にも共通しよう。伝承されることの背後には、何らかの意味があるのだ。
 装剣小道具の画題については、室町時代や江戸時代に入ってからの創作が加わっており、殊に歌舞伎などの演劇からの影響は、別の意味で興味がある。