鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

富士の巻狩図鐔 藻柄子宗典 Soten Tsuba

2011-05-06 | 
富士の巻狩図鐔 藻柄子宗典


富士の巻狩図鐔 銘 藻柄子入道宗典製

 探せばまだ拾い上げる装剣具もあろうかと思うが、源平合戦に関わる画題は奥州攻め辺りまでであろうか。後は、以降に頼朝の周辺で起きた出来事が題に採られている作例を二、三紹介する。

 建久四年五月、頼朝は富士の裾野で大規模な軍事訓練を行った。それ以前にも自らの力を誇示するため、武士という階級制度を明確に示すために度々軍事訓練を行っていた。
 この巻狩とは、広い範囲を雑兵が取り囲んで獲物を追い立て、待ち伏せた馬上の武士が弓で射獲る手法。重要なのは馬上で弓を扱うこと。現代の流鏑馬と呼ばれている行事に当時の様子が窺いとれよう。
 この鐔では、雪をかぶった富士を背景に、裾野に繰り広げられている狩りの喧騒な様子が、鉄地に濃密な金銀の象嵌で描き表わされている。