鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

スサノオノミコト図鐔 Tsuba

2011-05-13 | 
スサノオノミコト図鐔


スサノオノミコト図鐔

 武家を大きく分けると、朝廷のような権力者の周辺を警護する者にはじまり、あるいは国や村の起こりに関わることを考えるとそれ以前に遡る部族集団を警護する者、時代が下って特定の地域を支配し管理することを許された者、船などを用いた交易が発達するとこれを警護する者、陸上おける運輸業が発達するとこれを警護する者などとなろう。
 『平家物語』では、東国の農村を切り拓いた武士集団をまとめた源氏、大陸との交易で富を得た平氏との対立から武家の背後の様子を知ることができよう。そして両者は朝廷周辺の警護を名誉あることとしている。
 そのような歴史を遡ること神話時代の伝説。スサノオによるヤマタノオロチの退治は、武家を印象付ける話として余りにも有名。
 高天原から出雲国に降ったスサノオは、クシイナダヒメと出会う。彼女は毎年襲い来るヤマタノオロチに食われることを覚悟の、人身御供にされる運命であった。そこでスサノオはヤマタノオロチを退治して平和な土地にした。
 このように眺めると、ヤマタノオロチや、毎年襲い来ることなど、神話の多くがそうであるように何かの暗喩であることは理解できるのだが、確たる解析はできていないようだ。
 ただ、ヤマタノオロチの体内から名剣を得たことから、剣に関わる部族、さらに言うと鉄剣に関わる部族集団の存在をそこに読み取ることができよう。即ち、製鉄産業であり、ここでいう武家とはその産業を守る武家集団と、それを統治しようとする中央に与するスサノオの武家集団の対決。そのような図式が浮かび上がる。