8日(土)。予想していたことが起こっています。スポニチのネット・ニュースによると、聴力を失った作曲家で「現代のベートーヴェン」と呼ばれる佐村河内守氏が作曲したとする曲が、実際には桐朋学園大学の非常勤講師・新垣隆氏が作曲したものだったことが明らかになってから、これまで出されていた佐村河内守の名義で出ていたCDが、ネットオークションの国内最大手「ヤフオク!」で値が高騰しているというのです
CDの発売元の日本コロンビアが佐村河内守名義で発売したCDの出荷と配信を停止したため、プレミア感が高まったためです 「交響曲第1番”HIROSHIMA"」は6日22時55分現在で、86点出品されており、そのうち84点は一連の”騒動”以降に出品されたものとのことです このCDの定価は2,940円ですが、最高で8,000円まで高騰しているといいます 日本人って、どうしてこうあさましいのだろうか、と思います。私も1枚所有していますが、売り飛ばそうという気持ちはさらさらありません
(「交響曲第1番”HIROSHIMA"」のCD)
(昨年の全国コンサート・ツアーのプログラム表紙)
新聞報道によると、今後の佐村河内守氏がらみのコンサートは一切中止になるはずなので、手元にあるチケット(3月6日に川口のリリアホールで開かれる「弦楽とピアノで奏でる佐村河内守の世界」)がどうなるのか、チケットぴあのホームページで調べてみました
予想通り「公演中止による払い戻し」のお知らせが載っていました。告知の中で「諸事情により、演奏会の趣旨と異なる内容となったため、公演中止となりました」と書いています 払い戻しは、3月15日(土)までにチケットを買った店舗で受け付けるとしています。CDは手元に残りますが、コンサートは聴かなければ意味がないので払い戻してもらいます
(幻のコンサートになってしまった3月6日のチケット)
閑話休題
昨夕、銀座のヤマハホールで堤剛スペシャル・コンサートを聴きました プログラムは①ヘンデル「パッサカリア」、②マルティヌー「ロッシーニの主題による変奏曲」、③ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第4番変ロ長調”街の歌”」、④湯浅譲二「Congratulations for the 70th Birthday」、⑤ボッケリ―二「2つのチェロのためのソナタ・ハ長調」、⑥メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第2番ハ短調」です 出演は、チェロ=サントリーホール館長・堤剛、水野由紀、ヴァイオリン=若手のホープ会田莉凡、ピアノ=須関裕子です
自席は1階K列15番、右ブロックの左通路側。333席の会場はほぼ満席です
1曲目のヘンデル(J.ハルヴォルセン編)「パッサカリア」は、ヘンデルのチェンバロ組曲第7番の最終楽章をアレンジした曲です。会田莉凡が赤をベースとした銀のラメ入りの鮮やかなドレスで堤剛とともに登場します 彼女の演奏を聴いていていつも思うのは確かな実力に裏付けられた力強さと抜群の安定感です。渾身の演奏でした
2曲目のマルティヌー「ロッシーニの主題による変奏曲」は、ロッシーニの歌劇「エジプトのモーゼ」の終曲をテーマに作曲されたものです チェロの水野由紀が朱色の、ピアノの須関裕子が青緑色のドレスで登場します ロッシーニの歌劇が元になっているだけに、曲自体が面白く、チェロもピアノも腕の見せ所満載です。私はこの二人は初めて聴いたのですが、二人とも音楽性が豊かですごく良いと思います
3曲目のベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第4番変ロ長調”街の歌”」は、本来ピアノ、クラリネット、チェロのための曲ですが、クラリネットの代わりにヴァイオリンで演奏されることが多くなっています。演奏は会田莉凡、水野由紀、須関裕子の3人です
第1楽章の冒頭から、この3人は聴衆の心を捕えます。第2楽章アダージョは、ヴァイオリンとチェロの会話にピアノがそっと寄り添う様子が微笑ましく、やっぱりベートーヴェンはアダージョが一番だと再認識させられる素晴らしい演奏でした 第3楽章は、まさに演奏する喜びに満ちた見事なアンサンブルでした
休憩時間に、何気なしに前の席の番号を見ていて、I(アイ)列がないことに気が付きました 私の席はK列ですが、その前がJ列、その前がI列のはずがH列になっているのです 後ろの席を振り返ると、M,N,O、PのうちO列がないのに気が付きました。これはアルファベットのI(アイ)を数字の1と間違えないように、同じくO(オー)を数字のO(ゼロ)と間違わないようにという配慮だと思われます 他の会場ではあまり見たことがありません
休憩後の1曲目、湯浅譲二「Congratulations for the 70th Birthday」は、2012年に堤剛の生誕70年の誕生日を祝うために作曲されたものです ご本人が演奏しましたが、途中、微妙に「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」のメロディーが聴こえてきました
2曲目のボッケり―二「2つのチェロのためのソナタ・ハ長調」は、チェリストでもあり、125曲もの弦楽五重奏曲を作曲したボッケリー二が作ったものです もちろん堤剛と水野由紀の演奏です。お互いに間合いを取りながら演奏しましたが、第1楽章を聴いていて、ハイドンのチェロ協奏曲によく似ているな、と思いました 影響を受けたとすれば、むしろハイドンがボッケリー二から影響を受けたと言うべきでしょうが
さて、私がこのコンサートのチケットを買ったのは、最後のメンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第2番ハ短調」を聴くためです 演奏は会田莉凡、堤剛、須関裕子の3人です
第1楽章のアレグロは”秘めた情熱”とでも言うべき短調特有の曲想ですが、3人の奏者はメンデルスゾーンの魅力を見事に引き出していました 第4楽章のフィナーレに至るまで、こういう演奏こそメンデルスゾーンに相応しいと思いました
最後の一音が鳴り終るや否やブラボーと拍手 の嵐が起こりました。
最後に4人がいっしょに登場して一礼した後、堤剛だけ出てきて次のように語りました
「今日はありがとうございました。全員でアンコールを演奏したいのですが、ピアノとヴァイオリンとチェロが2人ということで・・・・・・・・。私が一人でアンコールを演奏したいと思います。パブロ・カザルスの”鳥の歌”です」
チェロ1本によるこの曲は、チェロの名手カザルスが国連で演奏して世界中に話題を巻き起こした曲です 堤はチェロにしみじみと「鳥の歌」を歌わせました
この日の収穫は、会田莉凡の演奏が聴けたことはもちろんですが、ピアノの須関裕子、チェロの水野由紀という演奏家を知ることが出来たことです。この二人も今後の活躍が期待されます