人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

大沢在昌著「北の狩人(上)」を読む~もう一人の新宿のヒーロー誕生か!?

2014年02月18日 07時00分11秒 | 日記

18日(火)。ソチ五輪で「日の丸飛行隊」がジャンプ男子団体で銅メダルを獲得しました 41歳の葛西をはじめ4人がよく頑張りましたね。ソチはどう思う?

さて、昨日の朝日朝刊の「文化の扉」欄は「初めてのミュージカル」を取り上げています 「印象的な音楽、華麗なダンス、壮大なドラマ・・・・・・ミュージカルはオペラから発展し、ニューヨークやロンドンで花開いた」として、劇団四季の『キャッツ』は欧米型ロングラン公演を確立させ、『ライオンキング』は9,000回、観客動員数も900万人を超えることなどを紹介しています

私が興味を持ったのは記事の内容ではなく、アナウンサーの中井美穂さんが寄せているコメントです。彼女は冒頭からこう語っています

「舞台は年間200本ほど見ますが、ミュージカルも多い」

これは驚きです 私のクラシック・コンサート通いの年間170回は彼女に追いつきません 映画を含めれば200回を上回りますが、映画は映画であってライブではありません。これからは中井美穂さんに頭が上がりません 

これに関連して思ったのは、プロの音楽評論家はいったい年間どのくらい生のコンサートを聴いているのだろうか、ということです というのは、もうかなり前のことですが、ある音楽評論家が「昨年100数回(クラシックの)コンサートに行ったが、その中でベストは・・・・」と書いていたので、「そんなに少ないのか」と呆れたことを覚えていたからです。最近まったく読んでいない「音楽の友」や「レコード芸術」を見ればそれらしい答えが書かれているのかも知れませんが、買う気になりません

 

  閑話休題  

 

昨日の朝日夕刊に「物語と音楽の矛盾に違和感~佐村河内守のゴーストライター問題」と題するインタビュー記事が載りました インタビューに答えているのは「『全聾の天才作曲家』佐村河内守は本物か」と題する論考を「新潮45」の昨年11月号に発表し、佐村河内を批判した音楽評論家・指揮者の野口剛夫氏です。インタビュー内容を超訳すると

「佐村河内の交響曲第1番を聴いたが、マーラーやショスタコーヴィチなどを彷彿とさせる部分が随所にある。和洋中何でもござれの定食屋のようだった 感じたのは、4畳半の青年の苦悩。悲劇らしさはあってもあくまで個人的な感傷にとどまっており、スケール感が不足していた クラシック愛好家以外にも聴いてもらえるように、メロドラマ的で分かりやすい音楽にしてある。佐村河内氏は、そうしたプロデュース術にはたけていた。『物語』にウソがあっても、音楽はウソをつけない。個々の聴き手が自分の頭で音楽の良しあしを判断できればいいが、なかなか難しい だからこそ、レコード会社やメディアには、強い自覚と厳しいチェックが求められている

私も佐村河内の交響曲第1番のフィナーレを聴いた時、「まるでマーラーの交響曲第3番のフィナーレのように思った」旨をブログに書きました ただ、そのほとんどがクラシック音楽界の先陣の音楽をパクった音楽だとは夢にも思いませんでした それなりに”完結している”と思ったからです その意味では、野口氏が指摘されているように「個々の聴き手が自分の頭で音楽の良しあしを判断」できないし、ましてや現代音楽となれば、自分の頭で良しあしを判断するのは不可能とさえ思えるので、「レコード会社やメディアは、強い自覚を持って厳しいチェックをしてほしい」と思います

 

  も一度、閑話休題  

 

大沢在昌著「北の狩人(上)」(幻冬舎文庫)を読み終わりました これは当ブログの読者Nさんからいただいた本の1冊です。大沢在昌は1956年愛知県生まれ。91年に「新宿鮫」で第12回吉川英治文学新人賞。第44回日本推理作家協会賞長編部門を受賞しています

 

          

 

物語の主人公は秋田から新宿に上京してきた青年・梶雪人です。彼は10年以上も前に解散した田代組という暴力団のことを探りにきたのです 警察官だった彼の父親は10年以上前に何者かによって殺されたのです。なぜ殺されなければならなかったのか、それを突き止めるために上京してきたのでした 東北訛りで頼りなげに見える梶ですが、ヤクザに脅されてもビクともせずにやり返します。彼の祖父はマタギで、梶にもその血が流れています。キャッチバーで彼をカモにしようとした女子高校生の杏は梶を田舎者扱いしてバカにしていますが、あることから態度を改めざるを得なくなります。新宿署の一匹狼の刑事・佐江は梶の行動を怪しみ目を付けますが、後に梶の犯人探しに協力するようになります 田代組の幹部だった本藤組若頭・宮本、田代組で宮本に次ぐ位置にあり現在は指定暴力団・新陽会の次期組長最有力候補・近松、カタギでありながらヤクザの上前をはねようとするしたたかな金貸し・新島が密接に絡み合って誰が生き残り誰が殺されるかの物語は進みます

読み始めた時は、梶の本当の職業が分からないので、ヤクザに対してなぜそんなに強気に出られるのか、と思っていましたが、身分が明かされるとなるほどと思いました 主人公が新宿にやってきてキャッチバーに連れて行かれるという冒頭部分から、いったいどうなるんだろう、という期待感が湧いてきて、あっという間に上巻を読み終わってしまいました

同じハード・ボイルド・アクションでも「もぐらシリーズ」でお馴染みの矢月秀作の作品と違って、戦闘シーンがしつこくなく好感が持てます。下巻が楽しみです

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園子音監督映画「地獄でなぜ悪い」を観る~なぜかベートーヴェンの英雄が、第9が!

2014年02月17日 07時01分27秒 | 日記

17日(月)。ソチ五輪のノルディックスキー・ジャンプのラージヒルで葛西起明が銀メダルを取りましたね 葛西は7大会連続出場(28年!)、史上最年長の41歳でやっと個人のメダルを仕留めたとのことです。凄い根性ですね。日本中が拍手葛西を送りました

 

  閑話休題  

 

昨日は日曜日にもかかわらずコンサートの予定がなかったので、家で音楽を聴きながら本を読んで過ごしました 土曜日に「佐藤久成ヴァイオリン・リサイタル」でモーツアルトのヴァイオリン・ソナタを2曲(K.301、K.304)を聴いたせいか、無性にモーツアルトが聴きたくなり、アンネ・ゾフィー・ムターのヴァイオリン、ランバート・オーキスのピアノによるヴァイオリン・ソナタ全集(2006年録音。4枚組)を片っ端から聴きました

 

          

 

ムター+オーキスの演奏がベストだと思っている訳ではありませんが、聴いていて耳に心地よく、まとめて聴くのに便利なのでどうしても手が伸びてしまいます 例えばK.526のイ長調のソナタに関してはヒラリー・ハーンのヴァイオリンとナタリー・シューのピアノによる演奏がベストだと思います 昨日は、これも繰り返し聴きました

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日の朝日朝刊に「佐村河内氏の代理辞任」という小さな記事が載りました。超訳すると

「”全聾の作曲家”と呼ばれる佐村河内守氏の代理人を務めていた折本和司、若松みずき弁護士が15日『都合により、代理人を辞任した』と発表した。両弁護士は『具体的な経緯、理由については、守秘義務の問題があり、答えられない』としている」

ネットで調べてみたら、辞任の理由は「今後の方針について意見の相違があった」ということのようです この問題が明らかになった時に、代理人弁護士は「佐村河内氏とは手話を介して話をしている。障がい者手帳も確認している」としていましたが、後で佐村河内氏自身が「3年位前から耳が聞こえるようになっていた」と白状しています その辺りから「いつまでも、嘘に塗り固められた人物に付き合っていたら、弁護士としての立場が危うくなる 今回の一連の騒動による損害賠償の大きさを考えたら弁護費用だって支払われるかどうか分からない。早々に撤退した方が無難だ」と考えたのかも知れません。誰か代理人の代理人になる人はいないのでしょうか?それとも誰も引き受け手がなく”孤立無援”の立場を余儀なくされるのでしょうか?

 

  再び、閑話休題  

 

先日、高田馬場の早稲田松竹で映画「凶悪」と「地獄でなぜ悪い」の2本立てを観ました 「凶悪」については15日のブログに書いたので、今日は園子音監督の「地獄でなぜ悪い」について書きます

この映画は「ヤクザの組長が、服役中の妻の夢を実現させるために、娘を主演にして、娘に惚れた若者を巻き込みながら、映画狂の監督とスタッフを迎えて、抗争中の組への殴り込みを舞台にして映画を撮る」という荒唐無稽な映画です 園子音監督といえば「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」「希望の国」などシリアスな映画が多いのですが、この映画はまるで、映画好きの若者が思う存分に撮ったコメディー・エンターテインメント&オーバー・アクションのようです 何しろヤクザの抗争の現場を撮影してしまおうというシナリオなのですから

 

          

 

組長にやくざ映画の常連、國村準、その妻に友近、その娘に二階堂ふみ、敵対する組長に堤真一、映画狂の監督に長谷川博巳、騒動に巻き込まれた男に星野源が当たりますが、個性派俳優ばかりです

さて、私が興味があるのは園子音監督の映画でどんなクラシック音楽が使われているかです 彼は映画の中で必ずクラシック音楽を使います。私が気が付いた範囲では2曲ありました。1つは、組長のところに家出した娘と男が引き立てられて、組長と対峙するシーンです なぜか、ベートーヴェンの交響曲第3番”英雄”の第2楽章”葬送行進曲”が流れていました。これは娘と一緒に連れてこられた男の死を予言しているのでしょうか

もう1つはヤクザが敵方に乗り込んで気勢を上げるシーンです。これもベートーヴェンで、交響曲第9番”合唱付き”の第4楽章、まさに合唱が流れました これから殺し合いが始まるときに”喜びの歌”を流すのはいかにも園子音監督らしいアイロニーを感じます。監督にとって、映画のシチュエーションとしてヤクザの抗争は”喜びの歌”以外の何物でもないのかもしれません

 

          

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佐藤久成ヴァイオリン・リサイタルを聴く~モンティ「チャールダ―シュ」、ラヴェル「ツィガーヌ」ほか

2014年02月16日 08時46分01秒 | 日記

16日(日)。昨日toraブログは開設からちょうど満3年を迎えました 昨日現在のトータル・アクセス数は29万5,300・IP、トータル・ページビューは96万7,048・PVで、直近1週間(2月9日~同15日)のgooブログでの順位は198万8,578ブログ中1,537位でした 毎日のようにご覧いただいている皆さまのお陰で、何とかここまでやってこれました。ありがとうございました 今日から4年目に入りますが、これからも毎日更新していきますので引き続きご覧いただければ幸いです

 

   閑話休題  

 

昨日の朝日朝刊に「佐村河内氏取り上げた番組 BPO、審議するか討議」という記事が載りました。超訳すると

「放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は14日、NHKスペシャル『魂の旋律~音を失った作曲家』他の番組を審議の対象とするかどうか討議を始めた NHKに対しては、同番組の映像の提出と、現時点での事実関係の説明も求める

これは当然のことでしょう。NHKが「調査する」と言いつつ、いつまでもモタモタしているからBPOが動くことになるのです 同じクラシック系の人物を取り上げたNHKの特集番組でも、フジコ・ヘミングのケースとは大きく異なります。徹底して調査すべきです

 

  閑話休題  

 

昨日、上野の東京文化会館小ホールで佐藤久成ヴァイオリン・リサイタルを聴きました 佐藤久成という名前は初めて聞く名前でしたが、なぜ私が彼のリサイタルを聴こうと思ったのかと言えば、コンサートのチラシに「宇野功芳企画第3弾」とあったからです 昨年私が聴いた170回のコンサートの中でベスト1に挙げたHJリムのベートーヴェン『ピアノ・ソナタ・チクルス』最終公演は、音楽評論家・宇野功芳氏の書いた評論を見て、騙されたと思って聴きに行ったものです。衝撃の出会いでした

 

          

 

佐藤久成は東京藝大卒業後渡欧。ザールラント音楽大学、ブリュッセル音楽院、ベルリン芸術大学ほかヨーロッパで研鑽を積みました ピアノ伴奏は指揮者・小林研一郎の娘・小林亜矢乃です

プログラムは前半がモーツアルトのヴァイオリン・ソナタ2曲(K.296とK.304)、後半がモンティ、サラサーテ、パガニーニ、ハイドン、ラヴェルなどの小品を並べています

自席はP列52番、右ブロック後方席です。会場は雪のなごりで足元が悪かったせいか、6割程度の入りです センターブロックのN列辺りに宇野巧芳氏の姿が見えます

プログラムの最初はモーツアルトの「ヴァイオリン・ソナタ ト長調K.301」です。コンサートのチラシにはK.296とあったのでそのつもりで予習していたのですが、急な変更だったのでしょうか?

K.301のソナタはコンサート旅行のため滞在中のマンハイムで1778年2月頃に書かれました 通常3楽章から構成されるソナタの中で、この曲と次に演奏するK.304は2楽章から構成されています

佐藤久成と小林亜矢乃が登場し、さっそく演奏に入ります。佐藤の演奏は今まで聴いた誰の演奏とも異なる独特なスタイルを持っていると感じました 彼は確かな技巧に裏付けられた絶対の自信を持ってモーツアルトに対峙します モーツアルトの父親はヴァイオリン教則本を書いたほどの人だったので、モーツアルト自身も父の手ほどきを受け、相当の腕前だったはず 佐藤は、まるで今作曲したばかりの曲をモーツアルト自身が演奏するかのように演奏します。「どう、いま書きあがったばかりのソナタだけど、いいでしょ!」と聴衆に語りかけながら演奏しているように見えます ちょっと引きずるように、思い入れたっぷりと弾きます。最弱音から最強音までのレンジが広く強烈なインパクトを与えます

2曲目のK.304のソナタも同じアプローチで弾きます。この曲は滞在先で最愛の母親を亡くした哀しみを反映した短調の曲ですが、佐藤は慈しむようにていねいにメロディーを奏でます

 

          

 

休憩後の第1曲目はモンティの「チャールダ―シュ」です。チャールダ―シュはハンガリー・ジプシー民族舞曲で「酒場風」という意味をもっています 佐藤はゆったりした部分は思い入れたっぷりと、速いパッセージは唖然とするほどのスピード感で弾きます

2曲目はサラサーテの「アンダルシアのロマンス」です。これはスペイン舞曲集の中の1曲ですが、佐藤は南スペインのアンダルシアの郷愁を漂わせるような曲想を色彩感豊かに演奏します

3曲目はパラディスの「シシリエンヌ」です。パラディスというのはウィーン生まれの盲目の女流音楽家で、モーツアルトがピアノ協奏曲第18番K.456を彼女のために作曲したことでも有名です。穏やかでいい曲です

4曲目はパガニーニの「ラ・カンパネラ」です。超絶技巧のフラジオレット奏法を駆使して、この難曲をいともたやすく弾き切ります

5曲目はポーランド出身のシマノフスキの「アルトゥーザの泉」です。静かで神秘的な音楽を奏でます

そして5曲目はハイドンの「セレナーデ」です。この曲の原曲は弦楽四重奏曲第17番の第2楽章です。研究によると、第13番から第18番までの弦楽四重奏曲はハイドンの信奉者でアマチュア音楽家のホーフシュテッターがハイドンの様式を真似して作曲した作品であるとの説が濃厚ということです。ちっとも知りませんでした 佐藤は、この有名なメロディーも、オーソドックスな演奏スタイルではなく、思い入れたっぷりに引きずるように演奏します

6曲目はベディンガーの「オード・エロティーク」です。ベディンガーはスウェーデン出身の作曲家ですが38歳の若さで死去しました。佐藤はゆったりとしたノスタルジックな曲を慈しむように演奏します

そして最後はラヴェルの「ツィガーヌ」です。ツィガーヌとは「ジプシー」の意味を持ちます。前半はピアノ伴奏なしの「ラッサン」を哀愁タップリと弾き、ピアノ伴奏が入る後半の「フリスカ」を圧倒的な力強さで弾き切りました。この曲は佐藤の真骨頂です

アンコールは、エルガーの「愛のあいさつ」を、誰も演奏したことのない弾き方で弾きました 次いでショパンの「ノクターン”遺作”」をロマンティックに演奏しました。まだまだ帰らない聴衆のために、ゴセックの「ガヴォット」を最後に演奏し、リサイタルを締めくくりました

佐藤久成の演奏は初めて聴きましたが、いい意味で個性的で素晴らしい演奏家だと思いました 伴奏の小林亜矢乃も佐藤のヴァイオリンによく付けていました。このリサイタルを企画した宇野巧芳氏にお礼を言わなければなりません。また是非聴いてみたいと思います

 

          

 

演奏に満足して東京文化会館を出ると、残雪の上で雀たちが胸を膨らませて寒さに耐えながらエサを探して彷徨っていました 「食料は見つかった?」と訊いてみたら、1羽の雀が「うん、チュンぐらいのが一つだけね。雀の涙ほどの同情ありがとう。でも、同情するならエサをくれ!」と答えました。ごめん、持ってないし

 

          

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映画「凶悪」を観る~本当のジャーナリストが追い詰めた未解決殺人事件の首謀者

2014年02月15日 08時45分56秒 | 日記

15日(土)。昨日の朝日夕刊に「高橋の演技曲にNHK言及せず~代作問題」という小さな記事が載りました。超訳すると

「ソチ・オリンピックのショートプログラムに出場した高橋大輔は、佐村河内守氏が自作と偽っていた楽曲の一つ『ヴァイオリンのためのソナチネ』を予定通り使用し、14日未明にNHKが中継した 演技開始後、アルファベットで高橋の名前と曲名が表示されたが、作曲者名は他の選手とは違い、表示されなかった NHKアナウンサーの実況でも、羽生結弦、町田樹の演技の時にはあった楽曲への言及はなかった。NHK広報部は『佐村河内氏を巡る一連の問題を踏まえ、現場の判断で曲の紹介をしないことにした』としている」

これは、佐村河内守氏の存在を最も広く世間に認知させたのは昨年3月に放送されたNHKスペシャル「魂の旋律~音を失った作曲家~」だったことに基づいています。結果として、”公共放送”NHKが嘘に塗り固められた内容の放送を流したため、多くの人たちが騙されたからです。この機に及んで佐村河内氏の名前も、真の作曲者である新垣隆氏の名前も出す訳にはいかなかったのだと思います

週刊文春の記事によると、NHKスペシャルで佐村河内氏を特集するに至った経緯については、今なお調査中ということのようです 私はNHKは取材の過程で「ある程度、佐村河内氏の耳は聞こえている」ことに気が付いていたのではないか、と勘繰っています また、作曲中の彼を写さないようにという条件設定も実に怪しかったのではないか思っています

 

  閑話休題  

 

東京は2週連続、週末に大雪です 雪は都民に何か恨みでもあるのでしょうか?

高田馬場の早稲田松竹で映画の2本立てを観ました 1本は白石和彌監督「凶悪」、もう1本は園子音監督「地獄でなぜ悪い」です。今日は「凶悪」について書きます

「凶悪」は、このtoraブログでもご紹介した新潮45編集部編「凶悪~ある死刑囚の告発」(新潮文庫)を脚色して映画化したものです

 

          

 

ある日、雑誌社に死刑囚・須藤から手紙が届きます。その内容は、自分を貶めて、のうのうと生きている”先生”と呼ばれる男を告発して復讐したい ついては”先生”がかかわった未解決事件を告白するのでそれを記事にしてほしいというものです その手紙は記者の藤井に託されます。藤井は刑務所に収監されている須藤に面会に行き、未解決殺人事件の全貌を訊き出します。そして自ら現場に赴いて須藤の証言の信ぴょう性を確認していきます 藤井がそれを記事にしたことから、警察が動き、ついに”先生”は逮捕され裁判にかけられ”無期懲役”の判決を受けます。告発した須藤はそれで満足だと言いますが、取材により悪の実態を知り尽くした藤井は”死刑”にしなければ気が収まりません。ジャーナリストである藤井にとって、この事件はなお未解決で、まだまだ”先生”を追い詰める作業が続きます

真実をあばき出そうともがく雑誌記者・藤井を山田孝之がクールに演じます 未解決殺人事件の首謀者”先生”を告発する死刑囚・須藤を、テクノバンド電気グルーヴのメンバーで俳優のピエール瀧が演じます。本物のヤクザのような迫真の演技に思わず後ずさりしそうになります そして、諸悪の根源、未解決殺人事件の首謀者”先生”に個性派のリリー・フランキーが当たります この3人の”役者”がそろって「凶悪」は”ノンフィクション”に深みを与えます

この作品を観て思うのは、かつて週刊誌の記者の中には、藤井のような骨のある記者が確かに存在したのだということです 今はどうでしょう。芸能人や、ちょっとした有名人のスキャンダルを追いかけることに血眼をあげ、人の人権なんかそっちのけで「週刊誌が売れれば良い」という記者が多いような気がします

 

          

                 

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ハイドン「ひばり」、ベートーヴェン「ラズモフスキー3番」、ドヴォルザーク「アメリカ」を聴く

2014年02月14日 07時00分30秒 | 日記

14日(金)。昨日、丸の内地区の消防関係の研修会があったので出席しました 会場は「日本橋公会堂」というところで、地下鉄・人形町駅で降り、徒歩で5分ほどの所にありました。人形町というところは初めてですが、江戸情緒を演出した街並みが印象的です。研修会では「今後の東京の地震災害」というテーマで東大地震研究所の纐纈(こうけつ)さんが講演しました 大地震の余震はいつまで続くのかという問題について、

「2004年12月26日に起きたスマトラ島沖地震はマグニチュード9.1だったが、その6年後の2010年10月25日にマグニチュード7.8の余震が起きている それを踏まえると、大地震から6年後くらいまでは大規模な余震が起こる可能性がある したがって、2011年3月11日に起きた東日本大震災についても同じように考え、備えておくことが必要である」

と話されました。ということは、2017年頃までは大きな余震があると思っていた方が良いという結論に達します これは大変です。会社としても個人としても。ある程度は覚悟を決めて対処しなければならないと思いました

 

  閑話休題  

 

昨夕、上野の東京文化会館小ホールで「弦楽四重奏の夕べ」を聴きました これは都民芸術フェスティバルの一環として開かれたものです。プログラムは①ハイドン「弦楽四重奏曲第67番”ひばり”」、②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第9番”ラズモフスキー第3番”」、③ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲第12番”アメリカ”」。有名な弦楽四重奏曲を作曲年代順に並べたプログラムです。演奏は、ヴァイオリン=徳永二男(元N響首席)、漆原朝子、ヴィオラ=川崎和憲(元N響首席)、チェロ=毛利伯郎(読響首席)です

 

          

 

自席はR列28番、センターブロック後方の席です。会場は魅力のプログラムを反映してかほぼ満席です

1曲目のハイドン「弦楽四重奏曲第67番ニ長調」は「ひばり」という愛称で呼ばれています。第1楽章第1主題が、ひばりのさえずりを想わせることから付けられたようです 「交響曲の父」と呼ばれるハイドンは「弦楽四重奏曲の父」でもありました。ソナタ形式の導入、4楽章形態の確立はハイドンの功績です

数あるハイドンの弦楽四重奏曲の中でも、私はこの「ひばり」が一番大好きです それは「イタリア弦楽四重奏団」の演奏と切り離せません。この曲に関する限り、彼らの演奏がベストだと思っています

 

          

 

拍手の中、演奏者の登場です。向かって左から徳永、パープル色のドレス・漆原、毛利、川崎という態勢を採ります 第1楽章「アレグロ・モデラート」が始まります。何かちょっと違和感があります 原因ははっきりしています。私の頭の中にはイタリア弦楽四重奏団の演奏が理想の姿として確立しているので、どうしても、それを基準に”比べて”しまうのです こういう聴き方が一番良くない(偏見を持って聴く)ことは分かっているつもりですが、どうしてもそうなってしまうのです 頭の中で「ひばり=イタリアSQ」の等式が出来上がってしまっているのです 

何とか、耳に聴こえてくる演奏だけに集中して、やっと第4楽章で純粋に曲を楽しめるようになりました 忘れられない名演奏というのは、ある意味困ったものです

2曲目はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第9番ハ長調」ですが、「ラズモフスキー第3番」の愛称で呼ばれています。ベートーヴェンは1806年に3つの弦楽四重奏曲を作曲しました。これは当時ウィーンに駐在していたロシア大使のラズモフスキー伯爵に献呈されたことに由来しています

この曲の第1楽章冒頭の長大な序奏を聴いていると、混沌とした中からやっと明確な主題が現われてくるモーツアルトの「不協和音クァルテット」の冒頭部分を想い起こします 第2楽章の冒頭はチェロの強いピチカートが印象に残ります。第3楽章メヌエットから第4楽章アレグロ・モルトへは切れ目なく演奏されます この第4楽章こそ、この曲の最も魅力的な楽章です。ヴィオラ→第2ヴァイオリン→チェロ→第1ヴァイオリンと繋がる「フーガ」の推進力をどのように表現したらよいのか どんどん新しいエネルギーが生まれて来るような力強さを感じます。これぞベートーヴェンと言いたくなります

 

          

 

休憩後はドヴォルザーク「弦楽四重奏曲第12番」ですが、「アメリカ」の愛称で呼ばれています 彼は1892年から約3年間ニューヨークのナショナル音楽院の院長として招かれ、現地に滞在しましたが、その時に有名な「新世界交響曲」とともに書いたのが、この第12番の「アメリカ」だったのです

この曲の中で一番有名なのは第2楽章「レント」の哀愁を湛えた曲想です ドヴォルザークは故郷が恋しかったに違いありません。これは徳永のヴァイオリンが光りました

拍手に応え、アンコールとしてハイドン「皇帝クァルテット」~第2楽章を演奏しました この曲は現在のドイツ国家になっています。この演奏が一番良かったと思います ある意味、彼らはこの曲をアンコールすべきではなかったといえます。本来のプログラムがかすんでしまうからです あるいは「ひばり」に代えて「皇帝クァルテット」をプログラムに入れるべきだったかも知れません。それ程、素晴らしい演奏だったということです

帰らない聴衆を前にして、2曲目のアンコールとして「ひばり」の最終楽章のフィナーレを超高速で演奏し拍手喝さいを浴びました

 

          

          

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大沢在昌著「ブラックチェンバー」を読む~620ページを超えるサスペンス

2014年02月13日 07時00分32秒 | 日記

13日(木)。昨夕はJ通信出版局のYさん、Kさん、当社X部長、若者T君と5人で地下のRで仕事の打ち合わせのため飲みました 2時間ほど飲んで、いきなりカラオケに行こうという話になり(多分X部長の陰謀による)、J社のお二人を拉致し、T君を除く4人で六本木のカラオケスナックAに行きました 私は、この店は本当にご無沙汰だったので、店のマスターから「今までどこで浮気してたんですか?」と嫌味を言われましたが、それにめげず3曲歌いました びっくりしたのはJ社のお二人です。Kさん(美人です!)は松坂慶子の「愛の水中花」を実に艶っぽく歌い、NHK「のど自慢大会」でお馴染みのザ・ピーナツの「恋のバカンス」などを、ほれぼれするするいい声で歌いました ロマンス・グレイのYさん(モテるだろうな、この人)は本当ならB面に入っているような隠れた名曲を、これも素晴らしい歌声で歌っていました この日は”採点なし”でしたが、もし採点したらお二人とも「K点越え」は確実だったでしょう X部長と私はいつものどーしようもない昭和歌謡を粛々と歌いました 次の客が来たので1時間ほどで退却しました。Yさん、Kさん、これに懲りず、またお付き合いください

 

  閑話休題  

 

11日付朝日朝刊文化欄に「偽りの『物語』感動生む『装置』に~佐村河内守氏問題への自戒」と題する同紙文化部・吉田純子記者の記事が載りました。超訳すると

「佐村河内守氏は、別人の曲を自作と偽っていた。熱狂の一翼を担った私たち記者もいま、足元を見つめ直さねばならないと思う2011年7月に本人にインタビューした際、彼から『守さん』と呼んでほしい、と頼まれ違和感を覚えた。相手が小学生でも『ちゃん』付けで呼ばない。そうして対等の立場に立つことで、周囲の人々に自身との『連帯』を意識させようとしたのではないか、と感じた 13年3月に放映されたNHKスペシャルは、とりわけ氏に強い光を当てた。『これだけの人が感動してくれているのに、専門家は僕のことを認めない』と不満げだった 増幅した偽りの『物語』は、現代の商業主義にのり、作品そのものへの評価を置き去りに、CD会社や興行主は都合の良い売り文句で大衆をあおり、メディアも格好の素材にした 佐村河内氏もそうした音楽市場の構図を知り抜き、自己宣伝を怠らなかった。彼が『障害』を印籠に偽りの連帯をつくり出そうとしていることに、祭りの渦中にある関係者たちは、誰も気づけなかった さまざまなメディアが熱いトーンで送り出した情報の数々は、人々の感動を生み出す『装置』になってしまった。佐村河内氏と私たちは多くの人々を傷つけた。あなたの『後悔』は本物なのか。子どもたちへの愛や被災地への思いは真実だったのか。もう答えの出ないであろうそれらの問いを、今後は自分の筆へと向け、自戒の礎としたい

週間文春2月13日号に載ったノンフィクション作家・神山典士氏の記事によると、18年間にわたり佐村河内守氏のゴーストライターをしてきた新垣隆氏(桐朋学園大学講師)は、『新潮45』(13年11月号)に載った音楽家・野口剛夫氏による論考「『全聾の天才作曲家』佐村河内守は本物か」を読んで、不安を持っていたということです 野口氏は「時にはバッハ風、時にはマーラー風の美しい響きの瞬間も随所にあるが、それらが刹那的な感動の域を超えることがない」と綴っていました

これを読んだ新垣氏は12月8日、佐村河内氏に宛てて「第3者による、ほぼ真相を突き止めてしまったものだ。いわばオセロゲームの四隅の一角を取られてしまった状態で今後の展望が可能か?」という内容のメールを送っています

私が思うのは、『新潮45』に野口氏の論考が載った昨年11月の時点で、他の報道関係者や音楽関係者が、野口氏に取材をするなり、佐村河内氏に突っ込んだインタビューをするなりできなかったのだろうか、ということです 『走っているものに、走っているものは、止まっているようにしか見えない』・・・・吉田記者の言う「祭りの渦中にある関係者たちは、誰も気づけなかった」というのは分からないでもないのですが・・・・

報道によると、渦中の佐村河内氏は12日未明、代理人の弁護士を通じて直筆の謝罪文を公表し「3年前くらい前から、耳元でしゃべってもらうと、言葉が聞き取れる時があるまでに回復していました。・・・・・本当に多くの人たちを裏切り、傷つけてしまったことを、心から深くおわびいたします」と謝罪しています 私は、被災地の子供たちを傷付けたことは罪が大きいと思います。近く公の場で謝罪するとのことですが、本当に人前に出て来られるのでしょうか

 

  閑話休題  

 

大沢在昌著「ブラックチェンバー」(角川文庫)を読み終わりました 大沢在昌は91年の「新宿鮫」で吉川英治文学賞と日本推理作家協会賞を受賞して一躍有名になりました その後も直木賞をはじめ数々の賞を受賞しています

警視庁の河合はロシアマフィアを内定している最中に何者かに拉致されるが、殺される寸前に『ブラックチェンバー』と名乗る謎の組織に救われる この組織は国際的な犯罪組織に大きな打撃を与える一方で、奪った金を資金源にして活動を広めている 拉致されたのではなく、スカウトされたことが判り、河合は組織に加わることとなる ロシアマフィアと日本の暴力団がからんだ大陰謀が企てられ、河合はその渦の真っただ中に身を置くことになる はたして、誰が悪で誰が善なのか、誰が味方で誰が敵なのか・・・・・・。こんな組織があったら大変なことになる、と思わざるを得ない620ページを超えるサスペンス小説です

 

 

          

 

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東京藝大チェンバー・オケでモーツアルト「ホルン協奏曲第1番、第4番」ほかを聴く

2014年02月12日 07時01分56秒 | 日記

12日(水)。昨日の朝日朝刊社会面に「『HIROSHIMA』売り上げ急増」という小さな記事が載りました。超訳すると

「ゴーストライターによる代作が問題化している佐村河内守名義の「交響曲第1番」の売り上げが、一連の騒動を受けて急上昇している 約2,000枚を売り上げ、オリコンの週間ランキング(3~9日)で前週の300位圏外から27位に浮上、クラシック部門で1位になった

この2,000枚の購入者の動機は個々に異なるでしょうが、純粋に音楽が聴きたいと思って購入した人がどれ程いたのか、はなはだ疑問です 少なくない人が「ヤフオク」などに出品して小遣い稼ぎをしようとしているのではないか、と想像します 同CDはつい先日出荷が停止されましたが、すでに18万枚以上が市場に出回っています。どうせ買ったのなら、誰の作曲であろうが、一度は純粋に音楽として聴いてみてほしいと思います

 

          

 

  閑話休題  

 

昨日、上野の東京藝大奏楽堂で東京藝大チェンバーオーケストラ第22回定期演奏会を聴きました プログラムは①ハイドン「交響曲第94番ト長調”驚愕”」、②モーツアルト「ホルン協奏曲第1番ニ長調K.412+K.514(386b)」、③同「ホルン協奏曲第4番ホ長調K.495」、④プロコフィエフ「交響曲第1番ニ長調”古典”」です。年に2回のうち1回は指揮者なしで演奏するとのことで、今回の公演は指揮者なしです。②③のホルン独奏は東京藝術大学准教授・日高剛です

東京藝大チェンバーオーケストラは2003年に創設され、同大学音楽学部と大学院に在籍する弦楽器の学生たちが中心となって活動している室内オーケストラです

 

          

 

全席自由のためどこに座るか迷いましたが、室内楽規模のオケなので出来るだけ前の席にしようと、1階6列24番のセンターブロック右通路側席を押さえました 会場は入場料1,500円と格安のためか8~9割方埋まっている感じです

オケのメンバーが登場します。左から第1ヴァイオリン、第2バイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスというオーソドックスな編成です。相変わらず女性奏者が多く、男子学生は数えるほどしか見当たりません 前半のコンサート・ミストレス(女性のコンサート・マスター)は、第62回全日本学生音楽コンクール大阪大会高校の部第1位、東京藝大大学院修士課程1年在学中の石田紗樹です。この人の演奏はかつて聴いたことがあります。JTアートホールだったでしょうか

チューニングの後、通常だと指揮者が登場するわけですが、今回は指揮者なしでの演奏なので、石田の合図により阿吽の呼吸でハイドン「交響曲第94番ト長調」第1楽章が始まります

この曲は1791年(つまりモーツアルトが死去した年)ロンドンで書かれた通称「ザロモン・セット」のうちの1曲ですが、第2楽章の途中で急に大きな音を出して聴衆をビックりさせることで有名な曲です まさにユーモア作曲家ハイドンの真骨頂の名曲です

さて、「指揮者なしでの演奏はいかがなものか?」と、半ば不安げに聴きはじめたのですが、杞憂に終わりました 演奏する若者たちの真剣な眼差しが印象的です。弦も管も素晴らしく、交響曲を確立したハイドンの名曲を愉悦に満ちた見事なアンサンブルで聴かせてくれました

次いで、東京藝大卒業後、広島交響楽団、日本フィル、読売日響、NHK交響楽団と渡り歩いて、現在東京藝大准教授を務める日高剛が登場し、モーツアルトの「ホルン協奏曲第1番」を演奏します 協奏曲では珍しく2楽章から成ります。モーツアルトは24歳年上のロイトゲープのために4曲のホルン協奏曲を書きましたが、そのうちの1つです 現在有力視されている説によると、第1楽章をモーツアルトが1791年に完成した後、死去したため、弟子のジュスマイヤーが翌1792年に第3楽章を補筆して完成させたようです。したがってケッヘル番号はK.412+K.514(386b)となっています。この曲は第1番となっていますが、第3楽章の完成が1年後になった関係で、作曲順は2番→4番→3番→1番ということで最後の協奏曲という可能性が高いとのことです

日高は牧歌的なフレーズを朗々と奏で、明るく伸び伸びと演奏しました 第2楽章の冒頭のメロディーを聴くと、まるで歌劇「魔笛」のパパゲーノが出てきて歌い出しそうな感じさえしました

 

          

 

休憩後は、コンミスが長尾春花に代わります。彼女は2008年にロン=ティボー国際コンクール第5位入賞者です 私はかつて、彼女がドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲を、たしか東京交響楽団をバックに演奏したのを覚えています その後、同じこの奏楽堂でメンデルスゾーンの弦楽八重奏曲で第1ヴァイオリンを弾いたの記憶しています

モーツアルト「ホルン協奏曲第4番」は歌劇「フィガロの結婚」初演から2か月後の1786年6月に完成しました。プログラムの解説によると、当時のバルブのないナチュナルホルンで演奏するにはかなり高度なテクニックが必要な曲だということです ロイトゲゲープという演奏家がいかに技巧的に優れていたかが分かります

第1楽章の冒頭を聴いた瞬間、オケの音が引き締まったのを感じました。もちろん、第1番と第4番の曲想の違いはあるのですが、コンミスが代わったことによる影響もあるのではないか、と感じました 前半のコンミス石田紗樹はどちらかというと明るく感情を外に出すタイプ、それに対し後半の長尾春花は生真面目で感情を秘めるタイプ、と言ったら良いのでしょうか。その点、4曲のプログラムにおけるコンミスの役割分担は絶妙だったと言わざるをえません

この曲は第1楽章と第3楽章にホルンのカデンツァがありますが、日高は何の困難もなく明るいモーツアルトを表現しました。さすがは5年間N響で首席代行を務めただけのことはあります

最後はプロコフィエフ「交響曲第1番”古典”」です。再びオケだけの演奏に戻ります。この曲は1917年に作曲されました。彼自身「現在ハイドンが生きていたら作曲したであろうような作品を書こうと思った」として作った曲です 全曲を通して明快で溌剌とした曲です。第1楽章、第2楽章と顔色を変えず生真面目に演奏していたコンミスの長尾が、第3楽章に入ろうとするとき、若干腰を浮かして「さあ、みんな行くわよ」という感じで満面の笑顔で弾き始め、第2ヴァイオリン首席に移った石田をはじめ他のメンバーが長尾に呼応して生き生きと演奏し始めたのが印象に残ります

そして、最後の第4楽章のフィナーレを迎えます。指揮者なしでモルト・ヴィヴァーチェを突っ走ります 指揮者がいても、彼らはそっちのけで弾き切るのではないか、と思うほど乗りまくっています 爽快な素晴らしい演奏でした

会場一杯の拍手に応え、アンコールにいま演奏したばかりのプロコフィエフの第4楽章を演奏しました 

プログラムに挟み込まれたチラシによると、次会の定期演奏会は6月21日(土)午後3時からで、プログラムは①エルガー「序奏とアレグロ」、②オネゲル「交響曲第2番」、③ワーグナー「ジークフリート牧歌」、④モーツアルト「交響曲第41番”ジュピター」で、指揮は新国立劇場芸術監督で東京藝大で後進の指導に当たっている尾高忠明とのこと 残念ながら私は、その頃コンサートの日程が超過密ダイヤのため聴きに行けません 全自由席1,500円は超格安です。チケットの前売りは2月26日開始予定とのこと。学生オケを馬鹿にすることなかれ 迷うことなくお薦めします

 

 

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都響によるメンデルスゾーン「ピアノ協奏曲第1番」、コルンゴルト「交響曲嬰へ調」ほかチケットを買う

2014年02月11日 08時42分48秒 | 日記

11日(火・祝)。最初に昨日の問題の答えです 問題は、下の写真はCDアルバム『クラシカル・バーブラ』の曲目紹介ページですが、「大きな誤りがあります。それはどれでしょう?」というものでした

 

          

 

正解は「7シューマン」です 歌劇「リナルド」より”Lascia Ch'io Pianga”(私を泣かせてください)の作曲者はヘンデルです よく見ると下に英語で答えが書かれています(ケータイでご覧の方は見えないかもしれません)。それにしても、このCDが発売された1976年の当時は大らかだったのですね。こういう大誤植をシカトして平気で発売してしまうのですから 発売元は天下のCBSソニーですよ。奥さん

 

          

 

  閑話休題  

          

コンサートのチケットを3枚買いました。1枚は3月4日(火)午後7時からサントリーホールで開かれる「がんばろう!日本 スーパーオーケストラ」公演です オール・チャイコフスキー・プログラムで①「弦楽セレナーデ」から第1楽章、②ヴァイオリン協奏曲ニ長調、③交響曲第4番ヘ短調。指揮は高関健、②のヴァイオリン独奏は渡辺玲子、オケは在京オケを始めとする混成楽団です このコンサートがあることをつい先日まで知らなかったので、チケットを買うのが遅れてしまい、結局P席を押さえました。P席というのは舞台の裏側の席のことです。メリットは指揮者の指揮姿を正面から見られることです 今まで一度もP席で聴いたことがないので、返っていいチャンスかも知れません。入場料は全席指定3,000円と格安です

 

          

 

2枚目は3月9日(日)午後2時から東京芸術劇場で開かれる東京フィルのコンサートです。これは都民芸術フェスティバルの一環として開かれる公演です プログラムは①ボロディン:歌劇「イーゴリ公」より”ダッタン人の踊り”、②シューマン「ピアノ協奏曲イ短調」、③チャイコフスキー「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」。指揮は渡邊一正、②のピアノ独奏は今野尚美です

実は3月9日には、会員になっている新国立劇場のコルンゴルトのオペラ「死の都」のゲネプロがあり、抽選で当たれば観ることができるのです 私は抽選に応募したのですが、いつ当選者が発表されるのか不明で、ゲネプロの時間も判らないので、これを諦めて、どうしても生演奏で聴きたいシューマンの「ピアノ協奏曲イ短調」がプログラムに組まれている東京フィルのコンサートに行くことにしたのです これもチケットを買う決断が遅くなったため、3階のB席しか残っていませんでした

 

          

 

3枚目は5月27日(火)午後7時からサントリーホールで開かれる東京都交響楽団第771回定期コンサートです プログラムは①メンデルスゾーン「ピアノ協奏曲第1番ト短調」、②コルンゴルト「交響曲嬰へ調」。指揮はマルク・アルブレヒト、①のピアノ独奏はサリーム・アブード・アシュカールです これは2曲とも聴きたいと思ったプログラムですが、とくにメンデルスゾーンの隠れた名曲を是非、生で聴きたいと思いチケットを買いました。メンデルスゾーンと言えば、あの有名な「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」しか頭に浮かばない人たちに是非聴いてほしい名曲です

 

          

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オルフ:世俗的カンタータ『カルミナ・ブラーナ』を聴く~東京交響楽団第617回定期演奏会

2014年02月10日 07時00分36秒 | 日記

10日(月)。東京都知事選は残雪が大きく影響したせいか過去3番目の低い投票率に止まり、大方の予想通りの人が選ばれました 昨日は投票日だったので、近くの小学校に投票に行きました 実質的には3~5人による票の獲得競争ですが、何と16人もの候補者が立候補しました 立候補するには都民でなくともOKです(”殿、ご乱心”のH候補は湯河原在住ですね)が、当選せず、一定の票を獲得していないと供託金の300万円は戻ってきません。いわゆる”泡沫候補”と呼ばれる人たちは、それを覚悟で立候補しているのですから、何らかのメリットがあると確信しているはずです 例えば「世間に名前を売る」とか。しかし、名前を売ってどうしようというのでしょうか?テレビのバラエティ番組に出演して「いやー、立候補したんだけど、私の崇高な主張が都民の理解を得られなくて落ちちゃいました、ハハハハ・・・」とか言うのでしょうか? それ以前にテレビ局から声がかからないでしょうが。それにしても、スマイル党総裁のマック赤坂は偉いよな、落ちるの判ってて何度も立候補するんだから。今回は投票してやろうかな・・・・でも、お先マック・ラじゃスマイルも出ないしな、やっぱ止めとこ というわけで、政策本位で選んでおきました。それでよろしかったでしょうか?、今風に言い換えると、それで大丈夫でしょうか 

 

  閑話休題  

 

昨日、サントリーホールで東京交響楽団の第617回定期演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲、②同「交響曲第38番ニ長調”プラハ”K.504」、③カール・オルフ:世俗的カンタータ「カルミナ・ブラ―ナ」で、③のソリストは、半田美和子(ソプラノ)、高橋淳(テノール)、与那城敬(バリトン)、合唱は東響コーラス、横須賀芸術劇場少年少女合唱団、指揮は飯森範親です ソリストの3人は新国立劇場のオペラ作品に何度か登場しているのでお馴染みです

 

          

 

会場入り口で配られたプログラムに「謹告」と題するシートが挟み込まれていました 

「本誌『シンフォニー』P33の記事、佐村河内守:交響曲第1番について」とあり、「マスコミ各社の報道により既にご存知の方も多いと思いますが、佐村河内守:交響曲第1番が、佐村河内守氏の作品ではないことが判明いたしました。当楽団といたしましても突然の情報に驚いており、思いを込めて演奏した作品であっただけに残念なことでございます。以下、CDの発売元であります日本コロンビア株式会社の公式発表(2/5付)を掲載いたします」として、コロンビア社の「商品の発売元として責任を痛感しており、深くお詫び申し上げます」というコメントを掲載しています

 

          

          

               (『シンフォニー』P33の記事=中央)

 

東京交響楽団が、「思いを込めて演奏した」作品としているのは嘘偽りのないことだと思います CDを聴けば判りますが大友直人指揮東響は渾身の演奏をしています

さて、昨日は雪の影響もほとんどなかったようで、会場はいつも通り満席です P席だけが合唱が入るため空いています。オケの配置を見て、おやっと思いました。向かって左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン、そして管楽器奏者の後ろにコントラバスが横に並んでいます。日本のオケでこの配置を見たことはほとんどありません 数年前にロイヤル・フランダース・フィルがトりフォニーホールで演奏した時に採用していたことを思い出しました 

最初のモーツアルトの2曲は総勢40人前後の小編成で演奏します。指揮者・飯森範親はタクトを持たず、モーツアルトの2曲は暗譜で指揮をします まず、「フィガロの結婚」序曲です。飯森+東響にとっては挨拶代わりの曲、軽快なテンポで音楽を進めます 次の「交響曲第38番K504”プラハ”」も軽快なテンポで、歌劇「フィガロの結婚」のすぐ後に作曲しプラハで大成功を収めたこの曲の魅力を引き出します

休憩時間が終わり、コーラス陣がP席(舞台の裏側)に入場します。向かって左から女声、中央後列に女声、前列に少年少女、右サイドに男声がスタンバイします

カール・オルフはドイツの作曲家(1895-1982)ですが、バイエルンのボイロン修道院に所蔵されていた「カルミナ・ブラーナ」の写本と出会い、作曲を思い立ちます オルフはラテン語、フランス語、ドイツ語などで書かれていた写本の中からテクストを選んで舞台音楽として編成しました 全体は25曲から成りますが、序(2曲)、第1部「春に」(8曲)、第2部「居酒屋にて」(4曲)、第3部「求愛」(11曲)から構成されています

さすがの飯森も、この曲についてはタクトと譜面は欠かせません。バリトンの与那城敬とともに登場します 第1曲「おお、運命よ」が力強い管弦楽と合唱で始まります。この曲全体を支配するのはリズムです。打楽器が効果的に使われます。また、強弱のレンジが広く、ダイナミックな音楽が展開します

第4曲でバリトン独唱がありますが、気持ちよく聴いていると、1階席左サイド後方席で、男性が歌を口ずさんでいるのが聴こえました バリトン歌手に合わせて歌っているつもりのようなのですが、まったく外れています。多分、周囲の人も唖然として注意ができなかったのだと思います 春がまだ遠いのに、時々このような周囲の迷惑を顧みない徘徊老人が出現します 一般の聴衆は、何も高いお金を払って見も知らぬ老人の独り言を聴きにきたのではないのです。そこのところ分かっていただけないでしょうか

第1部が終わり、第2部「居酒屋にて」に入ろうとするとき、舞台左袖からテノールの高橋淳が、酔っぱらいのような足取りで現われ、舞台中央の椅子にどっこいしょと腰を下ろします そして第12曲「焙られた白鳥の歌」をファルセット(裏声のような高い声)で歌います。迫真の演技と歌声で嘆き歌います

第3部「求愛」に入り、「カルミナ・ブラーナ」で一番有名な歌、第21曲の「揺れ動く、わが心」がソプラノの半田美和子によって歌われます。本当に美しい曲です

そして最後の第25曲「おお、運命よ」になだれ込みますが、これは第1曲の力強い歌の繰り返しです 

「おお、運命よ。月のように姿は欠ける。常に満ち、常に欠ける。不快なこの世にもつらいのは一時。次には気まぐれに遊戯の心に味方する。貧乏も権力もしょせん氷のようにとかし去る・・・・・」

圧倒的な迫力のフィナーレで全曲を締めくくります。ブラボーと拍手の嵐です

本当に久しぶりに「カルミナ・ブラーナ」を聴きましたが、管弦楽と合唱による圧倒的な大迫力の作品です。飯森の指揮のもと、東響のメンバー、ソプラノの半田美和子、テノールの高橋淳、バリトンの与那城敬、東響コーラス、横須賀芸術劇場少年少女合唱団は渾身の力で20世紀最大の世俗的カンタータを歌い上げました マーラーやブルックナーの交響曲と同様に、この曲も、家の中でチマチマとCDで聴いていても、曲の良さが分かりません。生演奏で聴いてこそ感動があります

ところで、この曲を聴くといつも思い浮かべるのは、映画「インディー・ジョーンズ」で使われた恐怖を煽り立てる音楽です メロディーを聴くと、明らかに「カルミナ・ブラーナ」をパクったのではないかと思うような音楽なのです 皆さん、心当たりありませんか?

最後に、この曲で歌われる第21曲「揺れ動く、わが心」で忘れられないのはポピュラー・シンガー、バーブラ・ストライザンドが歌ったCDです 「クラシカル・バーブラ」(1976年)のタイトルで発売されたCDに収められた曲の中に「In Trutina」という曲名で入っています このアルバムにはドビュッシー「美しい夕暮れ」、フォーレ「パヴァーヌ」、フォーレ「夢のあとに」などの美しい歌が収録されています。素晴らしいのでお薦めしたいのですが、かなり古いCDなので廃盤になっているかもしれません。その時はごめんなさい

 

          

 

ところで、このアルバムの曲の紹介ページは次のようになっています。この中に大きな誤りがあります。さてどれでしょうか?答えは明日のブログで発表します。これがすぐに分かる人は相当のクラシック通です

 

          

 

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三ツ橋敬子+東京フィルで「シェエラザード」、ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」を聴く

2014年02月09日 08時53分55秒 | 日記

9日(日)。昨日は天気予報通り、朝から雪が降っていました 午後3時から文京シビックホールで”響きの森”コンサートがあるので、11時頃、開催するのか中止になるのか、同ホールのホームページで調べてみると、公式ツイッターに「予定通り開催する」と出ていました。その直後、同じ”響きの森”の定期会員であるAさんからメールが入りました。「意地悪雪 で交通機関が心配なので、今回のコンサートは断念します ブログを楽しみにしています」という内容でした。AさんとTさんは共に80歳を超えてコンサート通いする元気なシニア・レディですが、雪で足元が危ういので、それが賢明だと思います 「お二人の分もしっかりと聴いて、ブログに書きます」と返信しておきました

 

  閑話休題   

 

毎年6月にサントリーホール『ブルーローズ』(小ホール)で開かれている「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン」が、今年も6月7日から22日まで開かれます 昨日はサントリーホール・メンバーズ・クラブの先行発売日だったので、午前10時の受付開始時間早々に、あらかじめ行くことを決めていた公演のチケットをインターネット経由で予約しました

 

          

 

今回予約したのは次の8公演です

Ⅰ.6月7日(土)午後6時開演 「オープニング 堤剛プロデュース2014」 ①ブラームス「ピアノ三重奏曲第1番」、②同「弦楽六重奏曲第2番」 チェロ=堤剛、ピアノ=若林顕、ヴェイオリン=依田真宣、ヴィオラ=高橋梓、弦楽四重奏=クァルテット・エクセルシオ

 

          

 

Ⅱ.6月13日(金)午前11時開演 「ENJOY! ウィークエンド」 ①ボロディン「弦楽四重奏曲第2番」より第3楽章「ノクターン」、②メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」より第1楽章ほか。弦楽四重奏=クァルテット・エクセルシオほか

Ⅲ.6月13日(金)午後2時30分開演 「ENJOY! ウィークエンド」 ①ベートーヴェン「モーツアルト”魔笛”~”恋か女房か”による12の変奏曲②同「チェロ・ソナタ第5番」。ピアノ=小山実稚恵、チェロ=堤剛

※ⅡとⅢはウィークデーの昼間の時間帯なので、当然休暇を取ることになります。何があっても休みます

Ⅳ.6月13日(金)午後7時開演 「ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会Ⅰ」 ①弦楽四重奏曲第1番、②同第7番、③同第12番。キュッヒル・クァルテット(ウィーン・フィルのメンバー)

Ⅴ.6月15日(日)午後2時開演 「ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会Ⅲ」 ①弦楽四重奏曲第3番、②同第9番、③同第14番。キュッヒル・クァルテット

Ⅵ.6月17日(火)午後7時開演 「室内楽アカデミー ゲストコンサート」 ①メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」ほか。パシフィカ・クァルテット(大ファンです)ほか

 

          

 

Ⅶ.6月21日(土)午後7時開演 「ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会Ⅵ」 ①弦楽四重奏曲第6番、②ピアノ・ソナタ第9番(ピアノ=河村尚子)、③弦楽四重奏曲ヘ長調(ピアノ・ソナタ第9番の作曲者による編曲)、④弦楽五重奏曲(ヴィオラ=店村眞積)。キュッヒル・クァルテット

Ⅷ.6月22日(日)午後1時半開演 「ミュージックガーデン フィナーレ」 ①ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第9番」、②ヴィヴァルディ「四季」より「春」「夏」ほか。ヴァイオリン=ライナー・キュッヒル、フルート=佐久間由美子、ヴィオラ=川本嘉子、ハープ=吉野直子、弦楽四重奏=パシフィカ・クァルテット、クァルテット・エクセルシオほか

 

          

 

本当はキュッヒル・クヮルテットのベートーヴェンの弦楽四重奏曲は6月14日のⅡ(第2番、第8番、第13番)も、19日のⅣ(第4番、第10番、第15番)も、20日のⅤ(第5番、第11番、第16番)も含めてすべて聴きたかったのですが、すでに他のコンサートの予定が入っているので涙をのんで諦めました

ところで、サントリーホール・メンバーズ・クラブに入会(無料)すると会員先行発売でチケットが買えるばかりでなく、このチェンバーミュージックガーデンに関しては「早割」制度があって、かなり格安で買えます 例えば6月13日のキュッヒル・クァルテットによる「ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全曲演奏会Ⅰ」の公演は指定6,000円ですが、指定早割は4,000円です

もちろん、インターネットからの申し込みで、チケットぴあでの受け取りを選んだので、システム利用料210円、発券手数料105円、決済手数料210円の計525円が上乗せされますが、それでも4,525円で、通常通り買う場合の6,000円に比べれば大幅に格安です

会員先行発売開始日の発売開始時間に予約を入れて、苦労してチケットを取った経験からすると、主要公演のほとんどが一般発売(2月22日)を待たずにソルド・アウトになる可能性が高いと思われます もし、どうしても聴きたいコンサートがあったら、すぐに会員登録してインターネットで予約を入れた方が良いと思います その場合「座席を指定する」か、「座席をお任せする」かを問われたら、「お任せする」を選んだ方が良いでしょう。多くの人が同時刻に同じ席に殺到する可能性が高いので、欲しい席はほとんど確保できないからです。ご健闘をお祈りします

 

  閑話休題  

 

昨日、午後3時から文京シビックホールで”響きの森クラシックシリーズ”コンサートを聴きました プログラムは①ベルリオーズ「”ローマの謝肉祭”序曲」、②ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」、③リムスキー・コルサコフ「シェエラザード」で、演奏は三ツ橋敬子指揮東京フィル、②のピアノソロは舘野泉です

 

          

    

開演時間の3時になりましたが、会場に空席が目立ちます いつもの3分の2くらいしか埋まっていないと思われます。AさんやTさんのように、雪のせいで、高齢者の方々を中心に会場に来るのを断念した方が多かったのではないかと思います 逆に言えば、このシリーズは多くの高齢者の会員によって支えられている、と言えなくもないでしょう

指揮者の三ツ橋敬子は、2010年第9回アルトゥーロ・トスカニーニ国際指揮者コンクールの準優勝者で、東京フィル100年の歴史の中で、定期演奏会を任された初の日本人女性指揮者です

いつものように髪を後ろで束ねた小柄な三ツ橋がさっそうと登場、コンマスの三浦章宏氏と握手し指揮台に登壇します。1曲目のベルリオーズ「序曲:ローマの謝肉祭」は、つい先日、川瀬賢太郎指揮読売日響による演奏で聴いたばかりです

 

          

 

三ツ橋のタクトで激しい音楽が開始されます。そして、すぐにアンダンテのゆっくりした部分に移行します アレグロの激しい場面の音楽作りもいいのですが、三ツ橋の本領はこうしたアンダンテの場面の方がいいと思います 歌うべきところはテンポを落として十分に歌わせ”カンタービレ”の魅力を発揮します それは彼女がイタリアのヴェネツィアに住んでいることに無関係ではないような気がします。そこが、先日の川瀬賢太郎との違いかも知れません

ピアノが舞台左袖からセンターに移動し、2曲目のラヴェル「左手のための協奏曲」に備えます。この曲は、第1次世界大戦で右腕を失ったオーストリアのピアニスト、ヴィトゲンシュタインの依頼によって作曲されました 単一楽章の曲ですが、「ピアノ協奏曲ト長調」と同様、ジャズの手法が用いられています

指揮者とともにソリストの舘野泉が登場、ピアノに向かいます。冒頭、コントラバスによる重低音の中、コントラファゴットがテーマを奏でます 管弦楽が頂点に達したところでピアノが重々しく登場し、そのまま長いカデンツァに入ります 聴いていて、とても左手だけで演奏しているとは思えません。切れ目なく続くのは、行進曲風のリズムです。ここからが第2部で、ジャズのイディオムが採用されています そして再び緩やかな音楽の第3部に入り、長いカデンツァが演奏され、フィナーレになだれ込みます。ここでも舘野による、まるで両手で演奏しているかのような名人芸を聴くことになります

大きな拍手 に迎えられ、舘野はカッチー二の「アヴェ・マリア」(吉松隆編曲)を左手でロマン豊かに演奏しました

 

          

 

休憩後はリムスキー・コルサコフの交響組曲「シェエラザード」です。彼は元々は海軍の軍人だったとのこと。珍しい職歴ですね

シェエラザードというのは「千一夜物語(アラビアン・ナイト)」の語り部となる女性の名前です。「妃の不貞に怒ったサルタンの王シャーリアールは、処女と初夜を過ごし、翌朝殺すという習慣を続けていた。しかし、聡明なシェエラザードは、王に毎晩面白い話を聞かせ、遂にはそれが千一夜にも及んで、王の残忍な心は消えてしまった」という物語です

三ツ橋が再度登場、タクトを振り下ろします。小柄な三ツ橋は動作を大きくし、管弦楽からスケール感と色彩感を醸し出します この曲でも、第3楽章「若き王子と王女」のアンダンティーノのようなゆったりした部分を、カンタービレで十分に歌わせます 最初から最後まで全体を”締めていた”のは曲の随所で名人芸を見てせてくれたコンマス・三浦章宏氏によるヴァイオリン独奏でした ”音による物語”を十分堪能したコンサートでした 

コンサートが終わった午後5時になっても、まだ雪は降りやまず、道路は雪で滑りやすくなっていました。AさんもTさんも来なくて良かったと思います。雪で滑って骨折でもしたら元も子もありませんから それにしても、今日は朝から晴れ間さえ見えます 昨日、コンサートを諦めた方々は「昨日と今日と天気が逆だったら良かったのに・・・・・・とため息をついていらっしゃるのではないでしょうか。同情に耐えませんが、自然には勝てません 私は今日もコンサートに行くので同じことです

 

 

          

 

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