人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

佐藤久成ヴァイオリン・リサイタルを聴く~モンティ「チャールダ―シュ」、ラヴェル「ツィガーヌ」ほか

2014年02月16日 08時46分01秒 | 日記

16日(日)。昨日toraブログは開設からちょうど満3年を迎えました 昨日現在のトータル・アクセス数は29万5,300・IP、トータル・ページビューは96万7,048・PVで、直近1週間(2月9日~同15日)のgooブログでの順位は198万8,578ブログ中1,537位でした 毎日のようにご覧いただいている皆さまのお陰で、何とかここまでやってこれました。ありがとうございました 今日から4年目に入りますが、これからも毎日更新していきますので引き続きご覧いただければ幸いです

 

   閑話休題  

 

昨日の朝日朝刊に「佐村河内氏取り上げた番組 BPO、審議するか討議」という記事が載りました。超訳すると

「放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は14日、NHKスペシャル『魂の旋律~音を失った作曲家』他の番組を審議の対象とするかどうか討議を始めた NHKに対しては、同番組の映像の提出と、現時点での事実関係の説明も求める

これは当然のことでしょう。NHKが「調査する」と言いつつ、いつまでもモタモタしているからBPOが動くことになるのです 同じクラシック系の人物を取り上げたNHKの特集番組でも、フジコ・ヘミングのケースとは大きく異なります。徹底して調査すべきです

 

  閑話休題  

 

昨日、上野の東京文化会館小ホールで佐藤久成ヴァイオリン・リサイタルを聴きました 佐藤久成という名前は初めて聞く名前でしたが、なぜ私が彼のリサイタルを聴こうと思ったのかと言えば、コンサートのチラシに「宇野功芳企画第3弾」とあったからです 昨年私が聴いた170回のコンサートの中でベスト1に挙げたHJリムのベートーヴェン『ピアノ・ソナタ・チクルス』最終公演は、音楽評論家・宇野功芳氏の書いた評論を見て、騙されたと思って聴きに行ったものです。衝撃の出会いでした

 

          

 

佐藤久成は東京藝大卒業後渡欧。ザールラント音楽大学、ブリュッセル音楽院、ベルリン芸術大学ほかヨーロッパで研鑽を積みました ピアノ伴奏は指揮者・小林研一郎の娘・小林亜矢乃です

プログラムは前半がモーツアルトのヴァイオリン・ソナタ2曲(K.296とK.304)、後半がモンティ、サラサーテ、パガニーニ、ハイドン、ラヴェルなどの小品を並べています

自席はP列52番、右ブロック後方席です。会場は雪のなごりで足元が悪かったせいか、6割程度の入りです センターブロックのN列辺りに宇野巧芳氏の姿が見えます

プログラムの最初はモーツアルトの「ヴァイオリン・ソナタ ト長調K.301」です。コンサートのチラシにはK.296とあったのでそのつもりで予習していたのですが、急な変更だったのでしょうか?

K.301のソナタはコンサート旅行のため滞在中のマンハイムで1778年2月頃に書かれました 通常3楽章から構成されるソナタの中で、この曲と次に演奏するK.304は2楽章から構成されています

佐藤久成と小林亜矢乃が登場し、さっそく演奏に入ります。佐藤の演奏は今まで聴いた誰の演奏とも異なる独特なスタイルを持っていると感じました 彼は確かな技巧に裏付けられた絶対の自信を持ってモーツアルトに対峙します モーツアルトの父親はヴァイオリン教則本を書いたほどの人だったので、モーツアルト自身も父の手ほどきを受け、相当の腕前だったはず 佐藤は、まるで今作曲したばかりの曲をモーツアルト自身が演奏するかのように演奏します。「どう、いま書きあがったばかりのソナタだけど、いいでしょ!」と聴衆に語りかけながら演奏しているように見えます ちょっと引きずるように、思い入れたっぷりと弾きます。最弱音から最強音までのレンジが広く強烈なインパクトを与えます

2曲目のK.304のソナタも同じアプローチで弾きます。この曲は滞在先で最愛の母親を亡くした哀しみを反映した短調の曲ですが、佐藤は慈しむようにていねいにメロディーを奏でます

 

          

 

休憩後の第1曲目はモンティの「チャールダ―シュ」です。チャールダ―シュはハンガリー・ジプシー民族舞曲で「酒場風」という意味をもっています 佐藤はゆったりした部分は思い入れたっぷりと、速いパッセージは唖然とするほどのスピード感で弾きます

2曲目はサラサーテの「アンダルシアのロマンス」です。これはスペイン舞曲集の中の1曲ですが、佐藤は南スペインのアンダルシアの郷愁を漂わせるような曲想を色彩感豊かに演奏します

3曲目はパラディスの「シシリエンヌ」です。パラディスというのはウィーン生まれの盲目の女流音楽家で、モーツアルトがピアノ協奏曲第18番K.456を彼女のために作曲したことでも有名です。穏やかでいい曲です

4曲目はパガニーニの「ラ・カンパネラ」です。超絶技巧のフラジオレット奏法を駆使して、この難曲をいともたやすく弾き切ります

5曲目はポーランド出身のシマノフスキの「アルトゥーザの泉」です。静かで神秘的な音楽を奏でます

そして5曲目はハイドンの「セレナーデ」です。この曲の原曲は弦楽四重奏曲第17番の第2楽章です。研究によると、第13番から第18番までの弦楽四重奏曲はハイドンの信奉者でアマチュア音楽家のホーフシュテッターがハイドンの様式を真似して作曲した作品であるとの説が濃厚ということです。ちっとも知りませんでした 佐藤は、この有名なメロディーも、オーソドックスな演奏スタイルではなく、思い入れたっぷりに引きずるように演奏します

6曲目はベディンガーの「オード・エロティーク」です。ベディンガーはスウェーデン出身の作曲家ですが38歳の若さで死去しました。佐藤はゆったりとしたノスタルジックな曲を慈しむように演奏します

そして最後はラヴェルの「ツィガーヌ」です。ツィガーヌとは「ジプシー」の意味を持ちます。前半はピアノ伴奏なしの「ラッサン」を哀愁タップリと弾き、ピアノ伴奏が入る後半の「フリスカ」を圧倒的な力強さで弾き切りました。この曲は佐藤の真骨頂です

アンコールは、エルガーの「愛のあいさつ」を、誰も演奏したことのない弾き方で弾きました 次いでショパンの「ノクターン”遺作”」をロマンティックに演奏しました。まだまだ帰らない聴衆のために、ゴセックの「ガヴォット」を最後に演奏し、リサイタルを締めくくりました

佐藤久成の演奏は初めて聴きましたが、いい意味で個性的で素晴らしい演奏家だと思いました 伴奏の小林亜矢乃も佐藤のヴァイオリンによく付けていました。このリサイタルを企画した宇野巧芳氏にお礼を言わなければなりません。また是非聴いてみたいと思います

 

          

 

演奏に満足して東京文化会館を出ると、残雪の上で雀たちが胸を膨らませて寒さに耐えながらエサを探して彷徨っていました 「食料は見つかった?」と訊いてみたら、1羽の雀が「うん、チュンぐらいのが一つだけね。雀の涙ほどの同情ありがとう。でも、同情するならエサをくれ!」と答えました。ごめん、持ってないし

 

          

コメント
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