人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

バッハ・コレギウム・ジャパン第106回定期公演を聴く~ハナ・ブラシコヴァ絶好調!

2014年02月24日 07時00分20秒 | 日記

24日(月)。昨日の日経朝刊「美の美」は「”水”の生命力」をテーマに、フェルメールの「デルフトの遠望」、モネ「水連」、スーラ「オンフルールの入り口」などとともに東山魁夷の代表作「緑響く」を紹介しています

 

          

 

解説には次のようにあります

「湖のほとり、森閑とした山を背景に、針葉樹の木々が湖面に反映する。実像と鏡面の虚像が織りなす緑のタペストリーのような画面に、ぽつんと白い馬が配される 作品の構想を考えていた時、画家の頭の中にモーツアルトのピアノ協奏曲第23番が鳴り響き、そこに思いがけなく1頭の白い馬が姿を現したという

この絵については画家本人が「東山魁夷館所蔵作品集」の中で次のように語っています

 「一頭の白い馬が緑の木々に覆われた山裾の池畔に現われ、画面を右から左へと歩いて消え去ったーそんな空想が私の心のなかに浮かびました。私はその時、なんとなくモーツアルトのピアノ協奏曲の第2楽章(※)の旋律が響いているのを感じました おだやかで、控えめがちな主題がまず、ピアノの独奏で奏でられ、深い底から立ち昇る嘆きとも祈りとも感じられるオーケストラの調べが慰めるかのようにそれに答えます 白い馬はピアノの旋律で、木々の繁る背景はオーケストラです」 

※第23番イ長調K.488の第2楽章「アダージョ」。

これを読んで面白いと思ったのは、音符は左から右へと書かれているのに、東山氏の頭に浮かんだ白い馬(ピアノの旋律)は画面の右から左へと歩いて行った、ということです。日本人的と言えばいいのか・・・・ 

それにしても、東山魁夷という人は相当クラシック音楽を深く鑑賞していたのだな、と思います なんというナイーヴな感受性の持ち主なのでしょう。さらに、もっと驚くのは自分の感じたイメージを的確に文字として表現できる能力の高さです

 

   閑話休題  

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールでバッハ・コレギウム・ジャパンの第106回定期演奏会「ルター派ミサ曲2」を聴きました プログラムはJ.S.バッハの①ミサ曲ヘ長調BWV233、②ミサ曲イ長調BWV234がメインで、間にコンティの「わが魂はやつれ果て」が置かれ、最初にオルガンにより①おお、汚れなき神の子羊BWV619、②キリスト、汝、神の子羊BWV618、③プレリュードとフーガ・ヘ長調BWV540が演奏されます。出演はソプラノ=ハナ・プラシコヴァ、カウンターテナー=ロビン・ブレイズ、バス=ペーター・コーイ、テノール=中嶋克彦、指揮=鈴木雅明、オルガン=鈴木優人です 

 

          

 

最初に鈴木優人が2階正面のパイプオルガン席に着き、バッハを演奏します 「キリスト、汝、神の子羊BWV619」と「おお、汚れなき神の子羊BWV618」を続けて演奏し、最後に「プレリュードとフーガ・ヘ長調BWV540」を堂々たる響きで奏でました 日曜日の午後、まるで教会のミサに参列しているような気分です パイプオルガンの深く豊かな響きに浸っていると、にわかクリスチャンになったようで敬虔な気持ちになるから不思議です ウクライナに平和を 北朝鮮の人民に完全な自由と安定した生活を 

拍手の中、オケのメンバーが登場します。「ミサ曲イ長調BWV234」はフルート2本が活躍します。前田りり子、菅きよみが右サイドにスタンバイします バス=ペーター・コーイ、カウンター・テナー=ロビン・ブレイズ、ソプラノ=ハナ・ブラシコヴァによるソロがあります、いずれもいつものように素晴らしい歌声を聴かせてくれました。中でもとくに印象に残ったのは第4曲「クイ・トリス・ペッカ―タ・ムンディ」を歌ったハナ・ブラシコヴァの美しい歌声です ノン・ヴィブラートで歌う美しい歌声は「クリスタル・ヴォイス」というのが相応しい透明感のある純粋な声です

 

          

 

休憩後の最初の曲は、J.S.バッハ(1685-1750)とほぼ同時期に活躍していたフランチェスコ・バルトロメオ・コンティ(1681-1732)の作曲によるソプラノ・カンタータ「わが魂はやつれ果て」です 解説によると、バッハは1716年この曲をヴァイマルで筆写し、後にケーテンでも上演したとのことです この曲に合唱は登場しません。この曲でもコンミスの若松夏美のヴァイオリンをバックに歌うハナ・ブラシコヴァの透明な声が心に沁みました

最後は「ミサ曲ヘ長調BWV233]です。この曲はホルンとオーボエ各2本とファゴットが活躍します 2曲目の「グローリア」はミサ曲ロ短調の軽快な曲想を想起させるウキウキした音楽です この曲でも三宮正満のオーボエをバックに歌うハナ・ブラシコヴァのクリスタル・ヴォイスが会場を沈黙させました

合唱を含めてソリスト陣は絶好調でしたが、中でもハナ・ブラシコヴァの存在感が群を抜いていました。プラシコヴァはプラハ生まれ、2002年にプラハ音楽院を卒業、ペーター・コーイなどに師事しました。いつまでもクリスタル・ヴォイスを聴かせてほしいと思います

BCJの定期公演では、必ず事前に公演プログラムを買い(1,000円也)、ひと通り目を通してからコンサートに臨むようにしています 50ページにも及ぶ分厚い冊子で、かつ専門的な内容なので、いつも必死こいて読んでいます その中に「グラモフォン」誌2013年12月号に掲載された記事(B.C.Jがバッハの教会カンタータ全曲録音を達成したという記事)が転載されています

その記事の中で「妻の環は合唱のアルトを歌う」というくだりを見てびっくりしました 要するに、バッハ・コレギウム・ジャパンは鈴木雅明一家オールキャスト・オケなのです 指揮の鈴木雅明を中心に、妻の環はアルト、息子の優人はオルガ二スト、実弟の鈴木秀美はチェリストといった大家族なのです バッハのカンタータ全曲演奏会と全曲録音の偉業を達成するのにこれほど心強い絆はなかったでしょう

 

          

 

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