4日(土)。一昨日の朝日朝刊「オピニオン&フォーラム」ページの『耕論』のテーマは「タテ書き絶滅危惧?」でした 歌人の井上法子さん、日本語学者の屋名池誠氏、情報学者のドミニク・チェン氏の3人がインタビューに答える形でそれぞれの考えを述べています 読んで一番参考になった屋名池誠氏の「左右逆 時間の流れを示す」の概要をご紹介します
「文字を配列していく方向を『書字方向』と言う。言語は通常、タテ書きかヨコ書きか、一つの書字方向にしか配列できないが、日本語はタテにもヨコにも書いたり読んだりできる、世界でも類を見ない言語だ もっとも、幕末までは、タテ書きしか用いられない時代が続いていた 言語では発言の順序が重要な意味を持つ。『大洪水が起きた』と『ダムが決壊した』の順序を入れ替えたら、原因と結果が逆になってしまう この順序は、タテ書きでは右から左へ、西洋の横書きでは左から右へと示されるので、その方向で時間の流れが読み取られる 日本の屏風や絵巻物は左へ行くごとに季節が進むが、西洋の絵巻物は逆で、左から右へ時間が流れていく 日本や東洋の美術品を専門に扱う美術館の順路は右から左へと進み、キャプションは作品の右側についている。こうした違いは、時間的順序を空間に変換するとき、『右 ⇒ 左』になるのか、あるいは『左 ⇒ 右』になるのか、つまり、書字方向の違いに端を発している タテ書きの代表格は新聞だが、書字方向がその内容とはあまり関係ない、文字の『入れ物』にすぎない 現にデジタルでは、新聞はヨコ書きで問題なく配信されている。韓国では90年代に新聞が全てヨコ書きに変わった。今後のデジタル機器の進化にもよるが、日本の新聞も一気にヨコ書き化が進む可能性は否定できない タテ書きが根強く残りそうなのが漫画だ。日本の漫画は右から左へ読み進め、時間もそう流れる。ひとコマ内に2人が描かれていたら、先に話す人物は右側にいる必要がある。書字方向が構図と深く関わっているため、海外の翻訳版も日本と同じ右から左へ読んでいくスタイルで発刊されている。タテ書きが未来も生き残るかどうか、カギを握っているのは、漫画なのかもしれない」
これを読んで思い出したのは、今でも時々、軽トラックなどの車体に書かれた会社名が、昔の戦時中の表記のように、右から左へ書かれていることです 例えば、普通は「株式会社 安倍晋乃介商店」と書くところを、「店商介乃晋倍安 社会式株」と書かれているのです これは、タテ書きの名残で、分かりやすく言えば、タテ書きの文章を右から左へ1行1字で書いたものと同じことです
考えてみれば、このブログも横書きだし、読むのはタテもヨコもあるけれど、書く場合はヨコのケースが圧倒的に多いように思います テーマの通り「タテ書きは絶滅危惧」になるのでしょうか
ということで、わが家に来てから今日で2103日目を迎え、北朝鮮の朝鮮中央通信は3日、金正恩委員長が朝鮮労働党政治局拡大会議で、周辺国で新型コロナウイルスの感染者が再び増えているとして 防疫強化策を継続するよう指示したと伝えた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
周辺国じゃなくて自国じゃないの? でも危機意識は米国大統領より高いみたいだ
昨日、夕食に「鶏のから揚げ」を作りました 最近は週一で作っているような気がします
昨日、神楽坂のギンレイホールでサメフ・ゾアビ監督による2018年ルクセンブルク・フランス・イスラエル・ベルギー合作映画「テレアビブ・オン・ファイア」(97分)を観ました
ギンレイホールで観るのは3月25日の是枝裕和監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演「真実」以来、ほぼ3か月ぶりです 座席は一人置きに座る配置になっています。開演前には新型コロナウイルス感染予防のための協力依頼がアナウンスされます また、スクリーン上には映画館の運営資金確保のため6月19日からクラウドファンディング(目標1千万円)を始めたので協力を、という画面が流れました 後でギンレイのホームページを見たら、開始4日目で目標額を突破したと書かれていました。凄いと思います
さて映画の内容は
イスラエルに住むパレスチナ人の青年サラーム(カイス・ナシェフ)は、1960年代の第3次中東戦争前夜を舞台にした人気メロドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」の制作現場で言語指導として働いているが、撮影所へ通うため、毎日面倒な検問所を通らなくてはならない ある日、検問所のイスラエル軍司令官アッシ(ヤ二ブ・ビトン)に呼び止められ、とっさにドラマの脚本家だと嘘をついてしまう。アッシはメロドラマの大ファンだという妻に自慢するため、毎日サラームを呼び止め、脚本にアイディアを出し始める。サラムは迷惑に思いながらも、アッシのアイディアが制作現場で採用されたことから脚本家に出世することになる しかし、ドラマが終盤に近付くと、結末の脚本を巡って、アッシ(イスラエル)と制作陣(パレスチナ)の間で板挟みになったサラームは窮地に立たされる 知恵を振り絞ったサラームはトンデモないエンディングを思い付く
この作品は、パレスチナ系イスラエル人のサメフ・ゾアビ監督が、複雑なパレスチナ情勢を皮肉とユーモアに包んで描いたコメディです
イスラエル軍司令官アッシは、「テレアビブ・オン・ファイア」のヒロインであるラヘル(パレスチナ人スパイ)とヒーローであるイェフダ(イスラエル軍の将軍)が最後には結婚するよう脚本を書くようにサラームに求めます アッシの主張の背景には、1993年にイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)との間で合意された「オスロ合意」(正式には「暫定自治政府原則の宣言」)があります 合意内容は①イスラエルを国家として、PLOをパレスチナの自治政府として相互に承認する、②イスラエルが占拠した地域から暫定的に撤退し5年にわたって自治政府による自治を認める。その5年の間に今後の詳細を協議するーというものです しかし、両者の関係正常化は未だ解決されていません
つまり、「結婚」というのはイスラエルとパレスチナの双方が「オスロ合意」を守る、ということを意味しています それをイスラエルの軍司令官に言わせたのです
映画のフィナーレについては、アッシが二人が結婚するハッピーエンドの脚本を求めたのに対し、制作陣(パレスチナ)は二人は結婚式を挙げるが、その場でラヘル(パレスチナ人スパイ)がブーケに隠した自爆装置のスイッチを押して式場を破壊するーという脚本を求めたため、サラームは大いに悩むのですが、式場に もう一人の意外な主役を登場させることによって、結婚式も挙げるし、爆弾で誰も死なないフィナーレを作り上げます この脚本は見事です。思わずニヤリとしてしまいました
この映画は、中東和平会議やパレスチナ問題など、中東地域の過去の歴史を勉強してから観ると一層理解が深まり、本当の面白さが分かると思います