19日(日)。昨日の朝日朝刊別刷り「be」の「between 読者とつくる」コーナーは「『アベノマスク』使ってますか?」というテーマでした 政府が全世帯に2枚配布した布マスク、いわゆる『アベノマスク」について「使っていますか?」という読者アンケートをしたところ、回答1863人のうち95%が「いいえ」と答えたということです
その理由は、「小さい」=913人、「使い捨てが入手できる」=690人、「無駄の象徴だから使いたくない」=553人、「首相以外であまり見たことがない」=550人、「ストックとして保存」=513人、「自家製で間に合う」=428人、「衛生面が不安」=384人、「洗うのが面倒」219人(以上、複数回答)となっています
たしかに「小さい」し、「首相以外であまり見たことがない」のが実情です
「無駄の象徴だから使いたくない」の自由コメントには、「マスクに使う金があれば、自動のPCR機器や防護服がどれほど購入できたか」という意見があったそうです 政府はマスクに260億円もの税金を投入しています。コメントはまったくその通りだと思います
「そのマスク、どうした?」との問いには、「家に置いてある」=1355人、「寄付した」=94人、「緊急持ち出し袋の中」=53人、「ほしい人にあげた」52人などとなっています
また、「アベノマスク」事業に反対が91%で、菅官房長官の「アベノマスク配布でマスク全体の需給改善、価格反落」の発言に「全く同意できない」が74%だったということです
このアンケートを見る限り 非常に残念な結果で、「アベノマスク」というよりは「アベノ増す苦」としか言いようがありません 国民の税金を使う事業を 一握りの人間の「思いつき」でやってもらっては困ります
ところで、同じアンケートを読売新聞や産経新聞が実施したら、傾向は同じようなものだと思いますが 相当違う数字が出てくると思います
ということで、わが家に来てから今日で2118日目を迎え、黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫されて亡くなった事件をきっかけに広がった人種差別への抗議デモを受け、エスパー国防長官は17日、すべての米軍施設で、南北戦争で南部連合が使った旗を掲揚することを事実上禁止し、南軍旗の使用を擁護しているトランプ大統領と一線を画した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
大統領選での敗戦が濃厚になってきたトランプに反旗を翻す幹部が増えていくか
「みみずくは黄昏に飛びたつ 川上未映子 訊く / 村上春樹 語る」 (新潮文庫)を読み終わりました 村上春樹は1949年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。「風の歌を聴け」(群像新人文学賞)でデビュー 「海辺のカフカ」「1Q84」「騎士団長殺し」など著書多数。川上未映子は1976年、大阪府生まれ。2007年にデビュー小説「わたくし率 イン 歯ー、または世界」が第137回芥川賞候補になる。2008年「乳と卵」で第138回芥川賞受賞。著書多数
この本は、川上未映子が村上春樹に行った4度にわたる合計13時間に及ぶインタビューに、その2年後に当時を振り返って5度目の短いインタビューをした内容を付け加えたものです
村上氏が巻末の「インタビューを終えて」に、
「次々に新鮮な鋭い(ある場合には妙に切実な)質問が飛んできて、思わず冷や汗をかいてしまうこともしばしばだった 読者の皆さんも本書を読んでいて、そういう『矢継ぎ早感』をおそらく肌身に感じ取ってくださるのではないかと思う」
と書いていますが、まさにその通りだと感服します 10代の頃から村上氏のファンだったという川上は、村上春樹の初期のエッセイから最新の長編まで、すべての作品と資料を精読し、決死の思いでインタビューに臨んでいます 時に村上氏が「そんな昔のこと覚えていないよ」と答えると、川上は「〇〇に書いてあります」と資料を基に指摘します さすがの村上春樹もたじたじになっている様子が目に浮かぶようです
村上氏の発言で興味深いものがいくつもあるのですが、「読者を眠らせないための、たった2つのコツ」というのがあります それは次のような内容です
「文章を書くときの基本方針はほとんど2つしかない 一つはゴーリキーの『どん底』の中で、乞食だか巡礼だかが話している時、一人が『おまえ、俺の話、ちゃんと聞いてんのか』と言うと、もう一人が『俺はつんぼじゃねえや』と答える 普通の会話だったら、『おまえ、俺の話聞こえてんのか』『聞こえてら』で済む会話だ。でもそれではドラマにならない。『つんぼじゃねえや』と返すから、そのやり取りに動きが生まれる。単純だけどすごく大事な基本だ もう一つは比喩のこと。チャンドラーの小説で、『私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい』というのがある これは何度も言っていることだが、もし『私にとって眠れない夜は稀である』だと、読者はとくに何も感じない。普通に読み飛ばしてしまう それが『太った郵便配達人と同じくらい珍しい』というと、『へぇ!』と思うだろう。『そういえば、太った郵便配達人って見かけたことないよな』みたいに。それが生きた文章なのだ そこに反応が生まれ、動きが生まれる。この2つのコツさえつかんでいれば、けっこういい文章が書ける。ハッとさせる文章ばかりで埋める必要はないけど、何ページかに一つはそういうのを入れなくちゃいけない。そうしないと読者はなかなかついてこない」
次に「文体は心の窓である」という発言も興味深いものがあります 村上氏は語ります
「小説を書くというのは一種の信用取引だから、1回失われた信用を取り戻すのはとても難しい 時間をかけて、『この人の書くものなら、お金を払って買って読んでみよう』という信用を築いていかなくてはならないし、その信用を維持していかなければならない。そのためには文章を丁寧に磨くことが大事になる 自分は文体がほとんど一番重要だと思うが、日本のいわゆる『純文学』では、文体というのは3番目、4番目ぐらいにくるみたいだ だいたいはテーマ第一主義で、まずテーマ云々が取り上げられ、それからいろんなもの、例えば心理描写とか人格設定とか、そういう観念的なものが評価され、文体というのはもっとあとに問題になる。でも、文体が自在に動き回れないようでは、何も出てこないだろうというのが自分の考えだ」
村上春樹の作品を読むと、確かに彼特有の文体があります これに関して川上が、「わたしなんかも文体でしたよね。『乳と卵』という小説に関しても文体のことしか言われないぐらいの感じだった」と語ると、村上は「あれ、文体のことしか言うことないよ。良い意味で。文体がすべての小説だと思うし、素晴らしい達成だと思う」と返します。読者はここに二人の共通点を見い出します
「文体」とともに、村上氏の「文章」に対する執念にはもの凄いものがあります 彼はパソコンで原稿を書いているらしいのですが、紙にアウトプットする前の段階で、第6稿まで書き直し(全てのバージョンを保存!)、それからプリントアウトし、その「ゲラ」に さらに校正作業を重ねるといいます プロの小説家はこういうものでしょうか 私などは、このブログを例にとると、見直しをせずにアップすることは決してありませんが、せいぜい第3稿止まりです
上にご紹介したのは興味深いインタビューのほんの一部です このほか 少年期の記憶、意識と無意識、フェミニズムについて、死後の世界のこと、創作上の秘密 等々 様々なテーマが取り上げられています 是非、本書を手に取って川上未映子の鋭いツッコミと、ユーモアを交えて答える村上春樹の応戦ぶりを堪能していただきたいと思います