守田です。(20111230 23:30)
医療問題の続きです。(366)で、日本の医療制度が、医療を受ける側からみ
れば、素晴らしい状態が保たれていることを紹介しましたが、これに対して
アメリカ在住の友人、キムクンミさんが、自身の体験を通して知った、アメ
リカ過酷な医療事情をメールで伝えてきてくれました。とても共感したので
クンミさんの承認を受けて、この場で紹介することにします。
詳しくはクンミさんのレポートを参照していただきたいのですが、アメリカ
は、公的な医療保険制度が部分的にしかないため、日本に比べるとはるかに
医療が受けにくい現状があります。人々は民間保険に入っていますが、無保
険者が、4700万人、7人に1人もります。そのため受けにくさは貧富の差に直
結していて、さまざまな矛盾が噴出しており、テレビドラマ「ER」や、映画
「シッコ」等々な様々な場で紹介されています。
それでアメリカの医療費は抑えられているのかというと、まったくそんなこ
とはなくて、OECD諸国の中で最も医療支出が多いのがアメリカです。平均が
対GDP比の9.5%に対してアメリカは17.4%。これはさまざまな高度医療が
発達していながら、それを受けられない非常に多くの層がいることも反映
しています。大金持ちしか受けられない医療もたくさんあります。
こうした現状に対して、公的医療保険の整備を掲げて奮闘しつつ、実現にこ
ぎつけることができなかったのがクリントン夫妻でした。二人は日本の公的
医療保険制度を高く評価していましたが、ヒラリーは日本に視察にきたとき
に、極めて意味深なコメントを残しています。「日本の医療制度が医療スタ
ッフの聖職者のような努力で保たれていることが分かった」と述べたのです。
日本の医療スタッフへの賛辞として受け止められましたが、こんな労働条件
はアメリカではとても採用できないという「皮肉」だったとも言われていま
す。こういうとアメリカの医療スタッフはゆったり働いてるようにみえてし
まうかもしれませんが、そんなことはけしてないことは「ER」などをみると
わかります。日本はそれをはるかにうわまわるのです。
ともあれアメリカの現状をクンミさんのメールからご推察ください。
*********
守田さん
ほんとうに、これからの日本で医療体制がどうなっていくのかが大きな問題
になりますね。安心してお医者さんにみてもらえる、お医者さんを信頼でき
る、そんな制度になってほしいと切に望みます。
アメリカに来て、日本の医療を外からみるいい機会をえています。
こちらはご存知のように、日本とは違い保健制度が民間なので、そうとうい
い保険をもっていないとお医者さんにみてもらうなんて、ぜいたくのきわみ
です。ほんとうに「病気」のときだけです。
たとえば、日本なら、子供が熱をだしたり、風邪気味だったりしただけでも、
市販の風邪薬よりもお医者さんにいって診てもらってました。
こちらでは、風邪くらいでお医者さんにいくことはまずありません。お金の
問題だけじゃなくて、制度の問題もあります。アポイントなしでみてくれる
ことはないからです。
昨夜から高い熱がでてるから、朝になったらお医者さんにみてもらおう、な
んてできないのです。もちろん病院にはいけますが、テレビドラマにあるよ
うな「ER=緊急医療」扱いなのです。
場所によって違うのでしょうけれど、NYのそれもブロンクスのERはすざまし
いものです。義母が脳梗塞を起こして、ナーシングから救急車で運ばれたと
きに3回、ERにいきましたが、なかでもひどかったのは、ものすごく広い
ホールにストレッチに乗せられた患者さんが壁の奥から順に並べられて、そ
の列が10列くらいになっているのです。
どんなだか、想像ができないとおもいますけど、例をあげれば、狭い映画館
にはぎっちり椅子が並んでますよね。その椅子の一つ一つが患者を乗せたス
トレッチ、みたいな状態です。ある意味、壮観ですらあります。
もちろん、救急ですから、交通事故の人も運ばれてきます。
義母のように脳梗塞の発作を起こした人もいます。ケンカかなにかで、顔中
血だらけになっている人もいます。そういう人たちがストレッチに乗せられ
て、端から順にずらーっと何列も並んでいるのです。
もちろん、もうちょっとマシなところもありましたが、たいていはそんな感
じです。
そんなところに、昨日から熱があるので、、、なんて、ちょっと行けません。
薬局いって熱さましのんで、寝とく、、、となります。
学校を休むときも、「熱があるので、病院にいってみます」なんていったら、
次の日にはお医者さんが、どういう症状できたか、学校にきても問題はない
かなどと書いた手紙を要求されます。 それくらい病院にいくというのは特
別なことです。
もう一つ、私の感じた日本と米国の違うところは、「病院」って何するとこ
ろ?ということです。
私の印象での日本の病院は、「健康を維持するところ」という感じでした。
こちらの病院は、専門医が診断を下して治療するところ、という感じです。
どう違うのか、というと、さっきあげた義母のことですけど、まず脳梗塞を
起こすとしますよね。私の母親が脳梗塞を起こしたときは、もちろん日本で
したが、まず病院にいきました。先生が診断し、検査します。治療がはじま
ります。母の容態が安定したら今度はリハビリがはじまります。普通に生活
が送れる状態になり、退院し、家にもどります。
ところが、米国だと、義母が脳梗塞を起こしました。救急車で病院に運ばれ
ます。診療と診断があります。
本人の意識が回復しなくても、心拍や血圧などの状態が安定するとナーシン
グホームに救急車で移動します。
ホームで引き続き、計器で心拍・血圧などの状態を図り、食事も自力でとれ
ないので胃にチューブをつけて液状の栄養物を流しこみながら回復をまちま
す。念のためにいいますけど、これ、病院じゃないんですよ。
ナーシングホームにも医者はいますが、この人は患者の状態を判断する仕事
をします。医者が治療が必要と判断すると、病院に送られるのです。どんな
に近くても、片道7万円もする救急車で。
守田さんが、日本は医療支出がOECD平均を下回っているとデータをだされて
ましたが、私はこれをみると、ひとりだどれだけ病院にみてもらってるか、
ということでなくて、日本の医療のほうが安価なんだなーとおもいました。
だって、絶対、米国のほうが個人が病院にいってる回数が少ないし、でも医
療に支払うお金はものすごいですから。 薬が高いのか、お医者さんやナー
スの人件費が高いのか、不動産や流動資産が高いのかわかりませんが、とに
かく高い。
私は日本では安心して病院にいっていました。これはほんとにすごいこと
だったんだな、とつくづくこちらにきておもいました。
日本の病院制度がアメリカみたいにはなって欲しくありません、絶対に。
くんみ
医療問題の続きです。(366)で、日本の医療制度が、医療を受ける側からみ
れば、素晴らしい状態が保たれていることを紹介しましたが、これに対して
アメリカ在住の友人、キムクンミさんが、自身の体験を通して知った、アメ
リカ過酷な医療事情をメールで伝えてきてくれました。とても共感したので
クンミさんの承認を受けて、この場で紹介することにします。
詳しくはクンミさんのレポートを参照していただきたいのですが、アメリカ
は、公的な医療保険制度が部分的にしかないため、日本に比べるとはるかに
医療が受けにくい現状があります。人々は民間保険に入っていますが、無保
険者が、4700万人、7人に1人もります。そのため受けにくさは貧富の差に直
結していて、さまざまな矛盾が噴出しており、テレビドラマ「ER」や、映画
「シッコ」等々な様々な場で紹介されています。
それでアメリカの医療費は抑えられているのかというと、まったくそんなこ
とはなくて、OECD諸国の中で最も医療支出が多いのがアメリカです。平均が
対GDP比の9.5%に対してアメリカは17.4%。これはさまざまな高度医療が
発達していながら、それを受けられない非常に多くの層がいることも反映
しています。大金持ちしか受けられない医療もたくさんあります。
こうした現状に対して、公的医療保険の整備を掲げて奮闘しつつ、実現にこ
ぎつけることができなかったのがクリントン夫妻でした。二人は日本の公的
医療保険制度を高く評価していましたが、ヒラリーは日本に視察にきたとき
に、極めて意味深なコメントを残しています。「日本の医療制度が医療スタ
ッフの聖職者のような努力で保たれていることが分かった」と述べたのです。
日本の医療スタッフへの賛辞として受け止められましたが、こんな労働条件
はアメリカではとても採用できないという「皮肉」だったとも言われていま
す。こういうとアメリカの医療スタッフはゆったり働いてるようにみえてし
まうかもしれませんが、そんなことはけしてないことは「ER」などをみると
わかります。日本はそれをはるかにうわまわるのです。
ともあれアメリカの現状をクンミさんのメールからご推察ください。
*********
守田さん
ほんとうに、これからの日本で医療体制がどうなっていくのかが大きな問題
になりますね。安心してお医者さんにみてもらえる、お医者さんを信頼でき
る、そんな制度になってほしいと切に望みます。
アメリカに来て、日本の医療を外からみるいい機会をえています。
こちらはご存知のように、日本とは違い保健制度が民間なので、そうとうい
い保険をもっていないとお医者さんにみてもらうなんて、ぜいたくのきわみ
です。ほんとうに「病気」のときだけです。
たとえば、日本なら、子供が熱をだしたり、風邪気味だったりしただけでも、
市販の風邪薬よりもお医者さんにいって診てもらってました。
こちらでは、風邪くらいでお医者さんにいくことはまずありません。お金の
問題だけじゃなくて、制度の問題もあります。アポイントなしでみてくれる
ことはないからです。
昨夜から高い熱がでてるから、朝になったらお医者さんにみてもらおう、な
んてできないのです。もちろん病院にはいけますが、テレビドラマにあるよ
うな「ER=緊急医療」扱いなのです。
場所によって違うのでしょうけれど、NYのそれもブロンクスのERはすざまし
いものです。義母が脳梗塞を起こして、ナーシングから救急車で運ばれたと
きに3回、ERにいきましたが、なかでもひどかったのは、ものすごく広い
ホールにストレッチに乗せられた患者さんが壁の奥から順に並べられて、そ
の列が10列くらいになっているのです。
どんなだか、想像ができないとおもいますけど、例をあげれば、狭い映画館
にはぎっちり椅子が並んでますよね。その椅子の一つ一つが患者を乗せたス
トレッチ、みたいな状態です。ある意味、壮観ですらあります。
もちろん、救急ですから、交通事故の人も運ばれてきます。
義母のように脳梗塞の発作を起こした人もいます。ケンカかなにかで、顔中
血だらけになっている人もいます。そういう人たちがストレッチに乗せられ
て、端から順にずらーっと何列も並んでいるのです。
もちろん、もうちょっとマシなところもありましたが、たいていはそんな感
じです。
そんなところに、昨日から熱があるので、、、なんて、ちょっと行けません。
薬局いって熱さましのんで、寝とく、、、となります。
学校を休むときも、「熱があるので、病院にいってみます」なんていったら、
次の日にはお医者さんが、どういう症状できたか、学校にきても問題はない
かなどと書いた手紙を要求されます。 それくらい病院にいくというのは特
別なことです。
もう一つ、私の感じた日本と米国の違うところは、「病院」って何するとこ
ろ?ということです。
私の印象での日本の病院は、「健康を維持するところ」という感じでした。
こちらの病院は、専門医が診断を下して治療するところ、という感じです。
どう違うのか、というと、さっきあげた義母のことですけど、まず脳梗塞を
起こすとしますよね。私の母親が脳梗塞を起こしたときは、もちろん日本で
したが、まず病院にいきました。先生が診断し、検査します。治療がはじま
ります。母の容態が安定したら今度はリハビリがはじまります。普通に生活
が送れる状態になり、退院し、家にもどります。
ところが、米国だと、義母が脳梗塞を起こしました。救急車で病院に運ばれ
ます。診療と診断があります。
本人の意識が回復しなくても、心拍や血圧などの状態が安定するとナーシン
グホームに救急車で移動します。
ホームで引き続き、計器で心拍・血圧などの状態を図り、食事も自力でとれ
ないので胃にチューブをつけて液状の栄養物を流しこみながら回復をまちま
す。念のためにいいますけど、これ、病院じゃないんですよ。
ナーシングホームにも医者はいますが、この人は患者の状態を判断する仕事
をします。医者が治療が必要と判断すると、病院に送られるのです。どんな
に近くても、片道7万円もする救急車で。
守田さんが、日本は医療支出がOECD平均を下回っているとデータをだされて
ましたが、私はこれをみると、ひとりだどれだけ病院にみてもらってるか、
ということでなくて、日本の医療のほうが安価なんだなーとおもいました。
だって、絶対、米国のほうが個人が病院にいってる回数が少ないし、でも医
療に支払うお金はものすごいですから。 薬が高いのか、お医者さんやナー
スの人件費が高いのか、不動産や流動資産が高いのかわかりませんが、とに
かく高い。
私は日本では安心して病院にいっていました。これはほんとにすごいこと
だったんだな、とつくづくこちらにきておもいました。
日本の病院制度がアメリカみたいにはなって欲しくありません、絶対に。
くんみ