守田です。(20111223 10:00)
311以降、僕は放射線防護の一点で、駆けてきましたが、その過程で本当に多くの方と出会いました。なかでもとても印象的だったのは、山水人に集う方たちはじめ、音楽をこよなく愛する方たちとの出会いでした。音楽の中でもレゲエが僕の中に入ってきて、「レゲエは放射能に効く!」という思いを僕の中に生ましめてくれました。
もはや出てしまった膨大な放射能とは、正面から対決していくしかない。可能な限り、避けることが一つの柱ならば、他方で、避けようもなく入ってくるものに対して、免疫力を最大限に上げて立ち向かうことがもう一つの柱になります。そのとき、私たちの心に潤いを与え、それどころかリズムを与え
てくれて、活力すら生み出してくれる音楽は、このたたかいの素敵なアイテムになります。
そんなことを思っているときに、京都の歌姫、MARLYN(マーリン)が呼びかけてきてくれて、12月11日に、京都北白川の素敵な自然食レストラン、Natural Food Villageで、歌とトークでのセッションを行うことができました。とても嬉しい場だったのですが、そのとき、僕の話はともあれ、MARLYNの歌が本当に凄かった。僕は彼女のコアなファンなのですが、さらにその思いが深まりました。
MARLYNの歌の凄さは、その大半が即興で奏でられること。どんどん彼女自身がトリップしているかのように歌っていくことで、聞いているこちらも引き込まれていきます。体がしびれるような感じを受けます。はじめて聞いたのは、僕もスタッフとして参加した6月の脱原発デモでのことでした。
参加者に好きに自分の主張をしてもらいたいと、トランジスターメガホンをまわしていたら、マイクを担いだ彼女が歌いだした。ちょうどデモが、京都のビル街である烏丸通りを通っているときで、彼女の歌がビルに反響して凄いことに。「あーいーを、うたおーう。だいちの、声にみみをすまそう、平和、平和」とそんな感じなのですが、とにかく言葉ではとても伝えられないすごいサウンドで、本当に驚きました。和製ビョークの登場だと思った!
このときのデモの様子がアップされているので、ぜひごらんください。デモが京都市役所につくところです。解散地での即興ライブで、メガホンをかついで歌っているのがMARLYN(マーリン)です。僕も壇上でメガホンを持って、彼女の歌をサポートしています。
http://www.youtube.com/watch?v=oUXT5o-NzhA&sns=em
また最近、彼女はギタリストや、楽器を演奏する人がよく使用しているものの、ボーカルにはあまり使われることがなかったあるマシーンを使っています。ループマシンというそうで、多重録音ができる機器です。いや楽器というべきか。ようは一人アカペラが可能になってしまうのです。ボーカル用のものは最近出てきたばかりなのですが、これがまた凄いサウンドを作り出していく。即興の一人多重アカペラで、僕は音楽には詳しくないですが、これは新しいジャンルなのではないでしょうか。
この日はライブの前に彼女にインタビューを試みることができたので、ここに紹介しますが、それによるとMARLYNは京都太秦生まれの滋賀育ち。今は湖南市と呼ばれる菩提寺付近で育ったそうです。現在29歳。もうすぐ30歳になります。歌い始めたのは、想像よりずっと遅くて、23歳のとき。最も3、4歳から18歳までエレクトーンを習っていたそうですが、それ以降はとくに音楽活動はしなかったのだとか。
そんな彼女に転機が訪れたのが23歳のとき。実はその前から歌いたいという思いが芽生え、ピークに達しつつあったそうですが、人前で一度も歌ったことがないし、音楽をやっている知り合いも一人もおらず、とにかく歌える場所を探していた。そんな中で、ダンスホールレゲエというジャンルに出合いました。
ラバダブという、マイクがオープンになっていて、参加者が自由に歌いだしてメッセージを発するスタイルの場で、とにかくマイクをとってみました。お客さんがほとんどおらず、スタッフと彼女ぐらいしかいない場だったそうです。でもそこで初めて歌った彼女、「私、結構歌えるかも」と思ったのだとか。
彼女の歌を聴いて、まわりにいたレゲエのDeeJayたち(レゲエではラッパーをディージェーと呼ぶのだそうです)が感心し、スタジオに誘ってくれました。そんなこともあって歌うことに目覚めた彼女、ひとりで大阪のクラブなどにも通いだした。
そのころの彼女はそれほど練習はしなかったそうです。それよりもとにかくクラブに通った。平日でも、オープンマイクで歌えると聞けば通ってマイクをとった。マイクをとってすぐに歌いだした。その頃の大阪には、平日でもレゲエの音がなるクラブがたくさんあったので、バイトを終えて、ひとり車を走らせ 夜な夜な歌いに通ったそうです。
しかも、そうやって歌いだすとすぐに見えてきたのは、ラバダブでは、自分の声を調整してくれる音響の人もいないし、いかに自分の声が響くか、届くか、常に考えざるをえないこと。それで工夫を重ねるうちに、歌を歌うために必要なアナログな筋肉が鍛えられていったと彼女。
その後、彼女はダンスホールレゲエの現場で、CDのリリースやLIVE活動をするようになっていきましたが、活動していくうちに、これは自分のやりたい音とは違うという思いを強めていきました。そんなとき、2007年に、高知で参加した「ヘンプギャザリング」というお祭りで、自由に歌わしてもらったそうですが、そこで自分の魂が求める方向がすごく見えてきた。お祭り参加は初めてでしたが、「みんなの、食や環境への意識の高さに衝撃を受けた」そうです。
こうした関心は、「ラスタマン」に出会ったことがきっかけだそうです。もともとラスタマンとは、ラスタファリ運動という、1930年代にジャマイカで起こったアフリカ回帰をめざす宗教的思想運動を担う人のことで、1970年代にレゲエの巨匠、ボブマーリーなどによって広がったものだそうです。
彼女が具手的にであったラスタマンの名は、佐藤陽介さん(兵庫県在住)。オーガニック、食と健やかなお産を伝え続けている方だとか。それで彼女、食べ物のことを深く考え、学び出した。食べ物を通して、今の社会のシステムが見えてきた。彼女にとって身体は楽器です。その楽器を大事にしなくてはいけない。そう考え出したときに、彼女は宇宙とのつながりを感じると同時に、添加物まみれの食品、加工食品があふれかえっている現実に目がいきだした。同時にそれを見て「おかしい」と思う感覚を失っていた自分に気がつきました。学ぼうと思ったそうです。食から社会のシステムを知り、そこから原発はあかんという意識に繋がることは自然でした。
同時に彼女の歌もより研ぎ澄まされていきます。彼女が深めていったのは即興です。これを彼女が歌うとき、彼女は頭を使わないという。ヨガのような瞑想状態に入る。自分が地球にいることを感じる瞬間が大事だと思っていて、自分が宇宙の一部であることを思い出させるのが、彼女にとって歌うことなのだそうです。歌うことが楽しくて楽しくて気持ちよくてしかたない、それをひたすらやっていたら、いつのまにか自分の歌を聞いて喜んでくれる人がいるようになって、ああ自分の好きなことをやっていけばいいんだと思ったそうです。
それではメロディラインはどうなるの?という僕の質問に彼女は「勝手にメロディーが降りてくる。宇宙、そこからつながる空間に、メロディや歌詞が浮かんでいて、それをつまんでいる感じ。目の前にヒューンときた空気の感じを、そのまま筆にのせて絵を描く感じで歌ったりする」と語りました。
「メチャ楽なんですよね」と彼女は笑います。「だから身体をきれいにしておきたい。メロディが出てくる。自分を通して出てくる。そんな私にとって自分の身体を美しく保つ責任があると思う」とも。そのために食べるものを、常に意識をするようになりました。愛を込めて作られた野菜を食べたりしているといいます。
こうした心境には歌いだしてすぐにはたどり着くことはなかった。ダンスホールレゲエでは言葉をよく使うので、自分も言葉を使った曲をつくろうともしたそうです。でもその後にもともと好きだった即興に戻った。言葉も降りてきたものをつかまえて歌った方がしっくりくるのだそうです。ではその言葉はどこから降りてくるのか。「どこから降りてくるんやろう。それを解明したら、すぐに守田さんにいいますわ」と彼女。「それを知るとこれからの歌も変わるかもしれない」とも。
この先はどうするのか。曲をたくさん書こうと思っているそうです。春からハードコアのバンドの人たちと、ツアーを組む予定です。歌うときの衣装も提供してくれる人がいて、その人たちとも一緒に動きたいのだとか。でも曲を作ると即興ではなくなるのではという問いに対して、「作るときは即興で、それをパッケージングしようと思っています」とのこと。
彼女の話は以上ですが、インタビューをしながら、僕は、凄い!と思いつつも、やはりなという印象を強く受けました。彼女をはじめてみたあのデモライブのとき、僕は彼女には何かが降りてきていて、それが彼女を通して外に出てきていることを強く感じました。そんな彼女のことを僕は「巫女さん」のようだと感じました。巫女さんというのは、他に当てはめるべき言葉がみつからずに使う表現でもあるのですが、確かに僕には彼女が宇宙につながっているようにみえました。
その姿は、魂を揺さぶられるほど感動的でありながら、どこか無性に懐かしくなるものでした。私たちには、実は本来、誰にもこうした能力が宿っている。宇宙とつながることのできる感受性です。でもそれを私たちは、科学にたよりすぎて忘れてしまったのではないか。彼女の歌は、何かそんな忘れていた大切な何かを感じさせてくれる。だから「懐かしい」としか表現しようのない切なく甘い感情に襲われるのです。
そう語ると、彼女は「とても嬉しい」と笑ってくれました。彼女も「サヨコ」という歌い手さんの歌声を聞くと、「懐かしくて、涙がめっちゃでる」のだそうです。そんな感性を彼女もとても大切にしている。
彼女は今後、もっと進化をしていきたいそうです。今は一人でやれることだけをやっている。バンドの人たちと一緒にできることなどをやりたいのだそうです。ちなみに彼女は、今、売り出し中のフライングダッチマンのメンバーと友だちです。とても仲がいいのだとか。それでクリスマスに大阪でジョイントライブをするそうです。12月24日大阪北新地のcaptainkangarooです。だいたい夜の9時ごろからの出演だとか。お店の紹介は以下をご覧ください。
http://r.tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27009320/dtlrvwlst/608058/627065/