明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(311)原発検査の手抜き実態を毎日新聞が暴露

2011年11月02日 12時00分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111102 12:00)

福島第一原発2号機で、核分裂反応が起こっている可能性が高い中、毎日
新聞が、原発検査の手抜きの実態を暴露する記事を出しました。こういう
記事を出してくれるのはありがたい。毎日新聞は、10月31日にも、福島
第一原発作業現場での被曝実態の暴露も行うなど、いい記事を連発して
います。現場の記者さんたちの努力に感謝です。

記事の核心は次の点です。「原発関連施設の唯一の法定検査機関で独立行
政法人の「原子力安全基盤機構」(東京都港区)が、対象の事業者に検査
内容の原案を事前に作成させ、それを丸写しした資料を基に検査している」
ようするにほとんどやらせの検査が横行しているということです。「チェッ
クの形骸化に専門家から厳しい批判の声が上がっている」とありますが、
検査など行われていないに等しいと言えます。

例えば東北電力東通原発1号機(青森県東通村)に納入予定の沸騰水型
軽水炉用核燃料を検査する際に、「同社が検査内容の原案で燃料棒の長さ
(約4メートル)を、事前に国に届け出た規定値の範囲より3~5センチ
短く誤って記載したため、機構も要領書の値を間違えた。検査員は結局、
要領書さえ見ず、同社が作成した別の文書と照合し、燃料棒の長さを妥当
として合格判定を出した」ことなどが起こっています。

こんないい加減な手抜き検査が横行しているのですから、これだけでも
日本のすべての原発に安全性がないことが明らかであり、一刻も早く残り
の原発も止めるべきです。にもかかわらず昨夜、抜き打ちで玄海原発の再
稼働が強行されていますが、あまりにも人々を愚弄した行為だと言わざる
を得ません。

注目すべきことは、こうした手抜き検査の実態と、核分裂が起こる状態が
まったく排除できていないのに、「冷温停止状態」を云々する福島第一
原発の現状とがリンクしていることです。同じ手抜き、安全性無視、情報
隠蔽の体質を持った人々が、携っているからです。ここに私たちの前に
ある危機の本質がある。

僕は原発はかりに、きちんとした管理体制を行っても安全運転は不可能だ
と思っています。きちんと管理・点検したら、危険個所が次々と発見され
るはずだからです。にもかかわらず危機を直視せず、安易に「安全」を語
る体質が、このような杜撰な検査体制に反映しているのです。これが構造
的に危機を抱える原発の危険性をさらに大きくしています。

私たちは再度、全ての原発を止めよとの声を高めていかなければなりません。

************************

原発検査:内容、業者が原案を作成 丸写しが常態化
毎日新聞 2011年11月2日 2時30分(最終更新 11月2日 2時42分)

原発関連施設の唯一の法定検査機関で独立行政法人の「原子力安全基盤
機構」(東京都港区)が、対象の事業者に検査内容の原案を事前に作成さ
せ、それを丸写しした資料を基に検査していることが毎日新聞が情報公開
で入手した文書で分かった。丸写しは常態化しており、中には国に「合格」
と報告した後にミスが判明した例もある。チェックの形骸化に専門家から
厳しい批判の声が上がっている。所管官庁の経済産業省原子力安全・保安
院は来春、規制強化を目指し「原子力安全庁」(仮称)に改組されるが、
機構の検査についても改善を迫られそうだ。

機構の法定検査は、検査項目や合格判定基準などを記載した「要領書」と
呼ばれる資料を基に行われる。毎日新聞は機構の検査実態を調べる中で、
東北電力東通原発1号機(青森県東通村)に納入予定の沸騰水型軽水炉用
核燃料を検査するための要領書と、検査内容の原案を入手した。

原案は、燃料を加工・製造した「グローバル・ニュークリア・フュエル・
ジャパン」(神奈川県横須賀市)が作成し、表紙を含めA4判61ページ。
検査目的▽項目▽サンプル検査の対象となる燃料ロット(燃料棒の束)の
抽出法▽燃料棒の寸法(規定値)--などが記載されている。一方、機構
の要領書はA4判62ページ。表紙は差し替え、2ページ目を除く3ペー
ジ目以降は書式や活字のフォントも含め一言一句原案と同じだった。

機構によると、原案は08年9月、電子データの形でグローバル社から無償
で受け取った。機構の検査員は同12月18日、原案を丸写しした要領書を
持参して検査に臨んだ。

この際、同社が検査内容の原案で燃料棒の長さ(約4メートル)を、事前に
国に届け出た規定値の範囲より3~5センチ短く誤って記載したため、機構
も要領書の値を間違えた。検査員は結局、要領書さえ見ず、同社が作成した
別の文書と照合し、燃料棒の長さを妥当として合格判定を出した。

検査員は国に合格判定を報告(合格通知)する前の09年2月、誤りに気づ
いた。その後の内部調査で、08年10~12月に行われた同社に対する3
回の検査でも同じミスが判明。これら3回については、いずれも国に合格
通知していた。機構の工藤雅春・検査業務部次長は取材に、丸写しが常態化
していることを認めた。しかし「事業者も内部で同様の検査をしているので、
原案を作ってもらっても問題ない。原案の誤りに気づけば修正している」と
説明している。【川辺康広、酒造唯】
http://mainichi.jp/select/science/news/20111102k0000m040168000c.html
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明日に向けて(310)2号機で核分裂反応が起きている可能性が高い!

2011年11月02日 09時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111102 09:30)

朝方から大変なニュースが飛び込んできました。福島第一原発2号機の
格納容器から、核分裂が起こった時に出て来る放射性キセノンが検出
されたというのです。東電は核分裂の可能性ありとして、中性子を吸収
するホウ酸水の緊急注入を行いました。

HNKニュースによると、2号機では10月28日から「格納容器の中から
気体を吸い出し、フィルターを通して放射性物質を取り除く装置の運転
を始めていて、この装置の出口付近で放射性物質の種類や濃度を測定し
て分析して」いたそうです。それで1日の分析でキセノンが検出された。

ということは、核分裂反応はそれ以前から起こっていた可能性がありま
す。核分裂が起こっては止まり、また起こるという「遅発臨界」が継続
していた可能性がある。それが28日から観測しはじめて、1日になって
ようやく把握された可能性があります。

では核分裂はどのようにして起こったと考えられるのか。東大大学院の
岡本孝司教授が次のように説明しています。「原子炉内外にある放射性
物質から出る中性子が燃料のウランなどと反応して、局所的、一時的に
核分裂反応が起きる可能性は十分に考えられる。」

原子炉内外にある放射性物質とは何か。中性子を出すというのですから
自発的な核分裂を起こしている物質であり、プルトニウム240などが考え
られます。これが炉の内外にあり、中性子を放出して、ウラン235やプル
トニウム239の核分裂を引き起こしている。

岡本教授は次のようにも言っています。「原子炉の周辺の中性子を詳し
く測ることで、どこに核分裂反応が起きる原因があるかを調べ、核分裂
反応を確実に起こさせないようにする必要がある」「メルトダウンした
燃料が原子炉内外のどこに存在しているか把握したうえで、核分裂反応
が起こらない状態にもっていかなけなければならない」。

つまり「メルトダウンした燃料が原子炉内外のどこに存在しているか」
把握できてないことの指摘であり、当然にもそれはさらに核分裂反応が
進む可能性の指摘でもあります。岡本教授は「冷温停止状態とは言い難
い」とも指摘していますが、それは当然のことで、それよりも2号機が
非常に危険な状態にあることが指摘されるべきです。

さらなる破局的な事態への進行の危機は未だ去っていない。2号機、いや
福島第一原発全体へのさらなるウォッチを強化せねばなりません。

*************************

2号機で核分裂反応か 原子炉注水
NHK NWES WEB 11月2日 6時38分

東京電力福島第一原子力発電所の2号機の格納容器から、核分裂反応が
起きた時にできる放射性物質のキセノンが検出され、東京電力は核分裂
反応が起きている可能性が否定できないとして、原子炉に核分裂反応を
抑えるホウ酸水を注入しました。

福島第一原発の2号機では、先月28日から格納容器の中から気体を吸
い出し、フィルターを通して放射性物質を取り除く装置の運転を始めて
いて、この装置の出口付近で放射性物質の種類や濃度を測定して分析し
ています。その結果、1日に行った分析で、核燃料のウラン235が核
分裂してできる放射性物質のキセノン133と、キセノン135が検出
されたということです。キセノン133は放射性物質の量が半分になる
半減期が5日と短いため、東京電力は、再び核分裂反応が起きている可
能性が否定できないとして、午前3時前から1時間にわたって原子炉に
核分裂反応を抑えるホウ酸水の注入を行いました。東京電力によります
と、原子炉の温度や圧力、それに敷地周辺の放射線量を計測しているモ
ニタリングポストの値に大きな変動はないため、核分裂反応が起きてい
ても規模は小さいとしています。経済産業省の原子力安全・保安院によ
りますと、検出されたキセノンの濃度は低く、原子炉の温度などに変化
がないことから、今のところ燃料が再び溶融しているとは考えにくいと
していますが、ホウ酸水を注入したあともキセノンの検出が継続されな
いかどうか、状況を見極めるとしています。

福島第一原発2号機で、キセノンが検出されたことについて、原子力が
専門の東京大学大学院の岡本孝司教授は「現在の2号機は、核燃料が溶
け落ちて核分裂をする物質が散乱していると考えられ、核分裂反応が起
きにくい状態になっているが、原子炉内外にある放射性物質から出る中
性子が燃料のウランなどと反応して、局所的、一時的に核分裂反応が起
きる可能性は十分に考えられる。しかし、原子炉にはこれまでも大量の
ホウ酸を注入していたことなどから、核分裂反応が連続的に起きる臨界
になる可能性は考えにくい。原子炉の周辺の中性子を詳しく測ることで、
どこに核分裂反応が起きる原因があるかを調べ、核分裂反応を確実に起
こさせないようにする必要がある」と話しています。また、国や東京電
力が年内の実現を目指している、原子炉が安定的に冷却できている冷温
停止状態の判断について、岡本教授は「冷温停止は、核分裂反応が止ま
り、再び反応が起きないよう制御できている状態のことで、今回のよう
に局所的であっても核分裂反応が制御できていない状態であれば冷温停
止状態とは言い難い。メルトダウンした燃料が原子炉内外のどこに存在
しているか把握したうえで、核分裂反応が起こらない状態にもっていけ
なければならない」と指摘しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111102/t10013667531000.html
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