昭和13年に俺は故郷の柏崎で
徴兵検査を受け甲種合格となり、
生い立ちからして馬に慣れているだろう
ということで騎兵科にまわされ、
その暮れに入隊通知を受けた。
生まれて初めて体験する
軍隊での生活はろくなものではなかった。
行き先は満州で、
配属された舞台の隊長に身体検査を受けた時
空の財布の中に入れておいた
写真を見咎められ、
これは誰だと質されたので
「私の好きなタイプの女です」と答えたら、
「なぜこんなものを持っている」
とさらに聞かれたので、
「こんな女を将来女房にしたいと思っていました」
と答えた途端いきなり殴り倒された。
持っていた写真は当時有名な
アメリカ映画「オーケストラの少女」
の主演女優、ディアナ・ダービンだったのだが。
「天才」
石原 慎太郎 著
軍隊でのくらしは
ろくなものではなかったとか
いやはや・・・
でも角さん自身も、
入隊時のひととなり、
これまたろくなものではないような
敵国の女優の写真を
持っているなどもってのほか
これが当時の一般人の常識だったはず
でも彼には戦争に関係なく好きな映画、
そして大好きなアイドルだったのだろう
その思考パターンがなんともハチャメチャ...!
入隊後、すぐに満州に配属、
そんな状況の中、真面目一本の人間など
戦争、そして軍隊での暮らし
不安とストレスに多くの人が体を壊したに違いない
でも角さんは殴られようがどうしようが、
機転と幸運とに支えられ、
暮らしはろくなものではなかったと言えるほど
現状を受け入れ、
遊びココロ豊かに過ごしたに違いない
こういう精神力は見習いたいものである
とはいっても手にした個性的能力というよりは
元来持って生まれた器量と言えるにちがいない
早起き鳥
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