トンネルの向こう側

暗いトンネルを彷徨い続けた結婚生活に終止符を打って8年。自由人兄ちゃんと天真爛漫あーちゃんとの暮らしを綴る日記

邪悪2

2006-01-12 20:59:48 | 思い出
この出来事は私にとって大きな傷となった

私は泣いて逃げたが自分の中で感情をストップさせて
こんな事なんでもない事だと思い込んだ

私は本当に何もしらない子供だった
実際にはもう二十歳そ過ぎていたが、全く男の人との経験は皆無だった
記憶の奥底に埋めた

私はこの傷を見ないようにするために彼女の問題に奔走した
彼女といて次々と起こる問題を処理していればこの事を忘れることが出来た

そのうち転機が訪れた
彼女は別の課へ移り私も1人で仕事が出来るようになった

そして私は彼女の課の男の人と付き合うようになった
初めての彼氏だった
彼といることで私は汚れた記憶を消すことが出来た
けれどその彼には何人も彼女がいる事にすぐ気がついた

彼はすぐ私に飽きて相手にしてくれなくなった
辛かった
すがってもすがっても彼がもう一度私を見ることはなかった
惨めで、悲しい毎日だった

彼女は私があきらめようとすると、わざと彼がよく遊びに行く
場所へ連れて行き彼に会わせようとした
そして「簡単にあきらめるなんて、だめよ」と責めた
彼女は自分が不倫を捨てられないように私にも苦しい恋を押し付けた

でも、私も自尊心が残っていた
「こんな惨めな思いは続けられない」とはっきりと彼女に言った
それが彼女にどんな思いを植え付けたのだろう

ある日彼女に呼び出された
「私、彼と付き合いたいの。彼からそう言われてあなたに了解が欲しいの」と言った
「了解もなにも彼とは別れていますから。別にもう終わってますから」

すると彼女は「そう。ならいいの」と言った
私はまだ彼の事をすっきり忘れていた訳じゃなかった

それから彼女は事あるごとに私を呼び出し、自分と彼の車の後部座席に私を乗せた
「送ってあげるわ。」と言って
断っても「じゃあ、すぐそこまで乗せてあげる」と強引に乗せた

そして2人で仲良くいちゃいちゃしては試すように、私を見た

私はその時、人の悪意というものを初めて感じた

私はこの人間が嫌いだと思った
私は人を嫌いになったことがなかった

誰かを嫌いになる事で自分が傷つくのが嫌だったからだ
だからどんな人とも平等に接するようにしてきた
苦手な人にはなるべく関わらないようにしてきたのだ

嫌いだと感じるともう修正は利かなかった
彼女の顔を見ることも話をする事もできなくなった
憎悪と嫌悪感しか沸かなかった

私を利用しつくした彼女を許せなかった
完全に無視の生活が始まった

今まで温厚と言われていた私の態度に周りの方が驚いた
そして理由を聞いてきた
私の中に邪悪な鬼が住んだ

私は悲しげに、ただ「我慢が限界を超えた」とだけ言った
それがどう相手に思われるか計算していた

私に賛同する人達が現れた
「私もあの人嫌いなのよ」と言って無視しだした

私に良くしてくれていた上司も心配して
「何かあったのか?。仲が良かったじゃないか」
私はまた悲しげに「私、もう駄目なんです」と俯いた

元々上司にも平気で口答えする彼女だったので
「あの人、気が強いからな。大変だったんだな」と同情してくれた
上司は口が軽く、瞬く間に他の上司にも彼女の悪い噂が広がった

彼女は孤立し、みるみるやつれていった
なんにも感じなかった
全てが計算どおりで、いい気味だと思った

けれど私の中に芽生えた憎悪はそう簡単には消えなかった
もっともっと彼女を苦しめたくなった
家に帰っても彼女への憎しみで心が休まらなかった

人を憎むというエネルギーはなんと疲れるのだろう
憎むたびに私も憔悴しきっていった
人を嫌うということに慣れていないつけは自分に跳ね返ってきた

彼女と顔を合わすたびに胃が痛くなり
彼女の声が聞こえるたびに頭がクラクラするほど怒りが沸いた

私はもうやめよう。
このままでは自分はこの感情に食われてしまう
自分が怖くなった

しかし彼女を許そうと思うのにどうしてもできなかった
気分のいい時に話しかければその反動は夜にやってきて激しい下痢に襲われた

結局私はドロドロとコールタールのような血の便がでるようになり
彼女の憎悪を消化できないまま逃げるように会社をやめた

彼女は初めて会った時から私の事を見抜いたんだと思う
それを彼女は自分のために利用したのだ

私も彼女の世話を焼くことによって満足していた部分もあった

寄りかかる人と世話をする人。
バランスが取れているときはいいけれど、一度崩れるとそこには恐ろしい
邪悪な鬼が待っているのだ

私はまだ彼女に会うことは出来ないと感じる
私の中の鬼が騒いでいるからだ

あの頃遊んだ仲間には会いたいけれど仕方がない
彼女にも会いたくないし、なにより
あの醜い自分にはもう2度と会いたくないとつくづく思う