私はクリームソーダが好きだ
あのきれいな透き通るようなグリーン
プチプチとはじける泡
上にのった真ん丸いアイスクリーム
真っ赤なチェリー
見ているだけで胸の中がうきうきしてくる
今日は市内にできた大型スーパーへ出かけた
のどが渇いたのでスーパーの中の食堂街へ行った
息子がクレープで娘にはクリームソーダを買ってあげた
娘は初めてのクリームソーダに大はしゃぎだった
小さな口をいっぱいあけてニコニコして食べた
「これこれ、この顔が見たかったのよね」と心の中でつぶやいた
私の育った家はイベントが嫌いだと前に書いたけれど、とにかくいつもと違うことをする事を父も祖母も嫌がった
毎日同じ時間に同じ場所で食べる
これが父にも祖母にも重要だった
旅行に行ってもおにぎり持参、車の中で食べるのが当たり前だった
私の子供の頃は今のように大型スーパーなどなかった
食品以外の物はデパートに行かなければならない
そのデパートも1年に何回も行けない
うちは土曜まで店をやっていて、日曜は大抵、畑仕事だった
農家と言うわけじゃなくて祖母の趣味なのだが規模が大きくて父も母も手伝わされていた
だから何処かへ出かける事も滅多になかった
父が背広を買う時だけデパートへ出かけた
でも背広売り場から他へ行くことはない
まっすぐ背広売り場へ行きまっすぐ帰ってくる
デパートにおもちゃ売り場があることすら知らなかった
ジュース1杯飲ませては貰えない
もちろんレストランなんて論外だった
その背広がなかなか決まらない
何時間でも待たされた
退屈で退屈でいつしかデパートは嫌いな場所となった
ある日母が突然私達をバスに乗せて15分位の小さなスーパーに連れて行った
そのスーパーの地下に小さな喫茶店があった
暗い狭い階段を下りると模型の料理が並んだショウケースが置いてあった
そこにはスパゲッティとクリームソーダとオムライスしかなかった
すると母は私達を中の椅子に座らせ店の人になにやら注文をした
そして「買い物をしてくるから、帰ってくるまでに食べ終わっているんだよ」と言って脱兎のごとく店から出て行った
残った私達は黙って座っていた
すると目の前にオムライスとキラキラと輝くクリームソーダが1人ずつ並んだ
いつだって3人で1つのおやつを分けて食べていた
キャラメルもチョコレートも滅多にあたらない
1人で全部食べてみたいが夢だった
それが三つ私達の前に並んだ
見ているだけで時間が過ぎた
母が帰ってきて「何やってんの。早く食べて。バスに間に合わなくなっちゃう」と言った
慌てて食べた。クリームソーダもクリームを食べただけでお腹がいっぱいになってしまった
「しまった。もっと食べればよかった」と見とれていた事を悔やんだ
でもそれからもたまに突然のようにその喫茶店へ連れて行ってくれた
決まって買い物を済ます短い間だった
夕食に遅れれば父や祖母が不機嫌になるからゆっくりする訳には行かなかったのだろう
それが私たちにも分かっていた
何処に入ったか分からない位に急いで食べた
いつもメニューはオムライスとクリームソーダと決まっていた
でも嬉しかった
最近私は辛かった記憶の中にこんな風に楽しかった事も思い出すようになった
前に読んだ本に
「辛かった記憶の中からいい記憶も思い出して、辛い自分の物語を楽しい物語に作りかえることが出来たなら回復の1歩」と書いてあったのを思い出した
母も今日の私のように目をキラキラさせてクリームソーダを食べる私達を見たかったのだろうか
そう思うとなんだか胸がぽかぽかと暖かくなった
あのきれいな透き通るようなグリーン
プチプチとはじける泡
上にのった真ん丸いアイスクリーム
真っ赤なチェリー
見ているだけで胸の中がうきうきしてくる
今日は市内にできた大型スーパーへ出かけた
のどが渇いたのでスーパーの中の食堂街へ行った
息子がクレープで娘にはクリームソーダを買ってあげた
娘は初めてのクリームソーダに大はしゃぎだった
小さな口をいっぱいあけてニコニコして食べた
「これこれ、この顔が見たかったのよね」と心の中でつぶやいた
私の育った家はイベントが嫌いだと前に書いたけれど、とにかくいつもと違うことをする事を父も祖母も嫌がった
毎日同じ時間に同じ場所で食べる
これが父にも祖母にも重要だった
旅行に行ってもおにぎり持参、車の中で食べるのが当たり前だった
私の子供の頃は今のように大型スーパーなどなかった
食品以外の物はデパートに行かなければならない
そのデパートも1年に何回も行けない
うちは土曜まで店をやっていて、日曜は大抵、畑仕事だった
農家と言うわけじゃなくて祖母の趣味なのだが規模が大きくて父も母も手伝わされていた
だから何処かへ出かける事も滅多になかった
父が背広を買う時だけデパートへ出かけた
でも背広売り場から他へ行くことはない
まっすぐ背広売り場へ行きまっすぐ帰ってくる
デパートにおもちゃ売り場があることすら知らなかった
ジュース1杯飲ませては貰えない
もちろんレストランなんて論外だった
その背広がなかなか決まらない
何時間でも待たされた
退屈で退屈でいつしかデパートは嫌いな場所となった
ある日母が突然私達をバスに乗せて15分位の小さなスーパーに連れて行った
そのスーパーの地下に小さな喫茶店があった
暗い狭い階段を下りると模型の料理が並んだショウケースが置いてあった
そこにはスパゲッティとクリームソーダとオムライスしかなかった
すると母は私達を中の椅子に座らせ店の人になにやら注文をした
そして「買い物をしてくるから、帰ってくるまでに食べ終わっているんだよ」と言って脱兎のごとく店から出て行った
残った私達は黙って座っていた
すると目の前にオムライスとキラキラと輝くクリームソーダが1人ずつ並んだ
いつだって3人で1つのおやつを分けて食べていた
キャラメルもチョコレートも滅多にあたらない
1人で全部食べてみたいが夢だった
それが三つ私達の前に並んだ
見ているだけで時間が過ぎた
母が帰ってきて「何やってんの。早く食べて。バスに間に合わなくなっちゃう」と言った
慌てて食べた。クリームソーダもクリームを食べただけでお腹がいっぱいになってしまった
「しまった。もっと食べればよかった」と見とれていた事を悔やんだ
でもそれからもたまに突然のようにその喫茶店へ連れて行ってくれた
決まって買い物を済ます短い間だった
夕食に遅れれば父や祖母が不機嫌になるからゆっくりする訳には行かなかったのだろう
それが私たちにも分かっていた
何処に入ったか分からない位に急いで食べた
いつもメニューはオムライスとクリームソーダと決まっていた
でも嬉しかった
最近私は辛かった記憶の中にこんな風に楽しかった事も思い出すようになった
前に読んだ本に
「辛かった記憶の中からいい記憶も思い出して、辛い自分の物語を楽しい物語に作りかえることが出来たなら回復の1歩」と書いてあったのを思い出した
母も今日の私のように目をキラキラさせてクリームソーダを食べる私達を見たかったのだろうか
そう思うとなんだか胸がぽかぽかと暖かくなった